やはり俺の魔王攻略は間違っている。   作:harusame

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最近、友人の魔王な彼女に落ち着きがない件について。

今回の依頼者は文化祭の実行委員長だった。

 

「文化祭のメインイベントで出演予定だった外部バンドが急遽キャンセルになったのよ。今から代わりのバンド探すのも日数が足らないし、どうしたらいいのか…」

 

テンパり気味の委員長を落ち着かせるため私は紅茶を差し出す。柑橘系の香りが部屋に広がり始めて部屋内の空気を和らげる。

 

委員長と長机を挟んで向かい合っている人物がよく通る声で応える。

 

 

「その依頼、引き受けましょう」

 

 

 

そう応えた彼女はこの「相談室」の主で私の大学の友人だ。

 

 

 

×××

 

 

 

私の大学の友人はすんごい女の子だ。

 

文武両道で何でもそつなくこなすし、同じ学生や教授からも慕われている。見た目もザ女子大生って感じで、ミスキャンパスにも選ばれている。

 

みんなはスターやアイドル扱いだけど、敵対する子には容赦ないし、一部からはとても恐れられている。彼女を上手く表そうとすると、あざといとか小悪魔的ではもの足らない。魔女や女王というのもなんか違うし。

 

そう。あれだ。魔王だと思う。

魔王系女子ってなんか新しいジャンルになりそう。

 

彼女は何故か部室棟に自分の部屋を持っている。何の特権なんだろうね。

 

ちなみに彼女は大学の組織にも属していない。でもなんかいろんな自治会やら委員会の代表の方々に頼られているみたいで、引っ切り無しに相談者がこの部屋に訪れる。

 

いつしかその部屋は「相談室」と呼ばれていた。

 

彼女と知り合ったきっかけも私が自分のサークルのいざこざで「相談室」を訪れたことだったんだけどね。

 

彼女はいろんな人から頼られるんだけど、基本的に人を遠ざけようとする。この「相談室」も彼女一人でやってるみたいだし。敵を作りやすい性格だから周りに味方を置かないっていうスタイルなのかな?

 

私も初対面の時にはけっこう冷たくされたけど、相談の時に出された紅茶の銘柄当ててから少し打ち解けたんだよね。サークルのいざこざを解決したお礼に紅茶を差し入れしに行ってから徐々に仲良くなった訳。そこから通い詰めているうちに、なんか他の相談者の受付やら整理やらを手伝うことになってたし。

 

気が付いたら秘書みたいな立場になってた訳。

 

 

 

×××

 

 

 

依頼の件なんだけど。

 

軽音部とか音楽サークルにお願いしたら?と思ったんだけど、そうは簡単にいかないらしい。

 

そもそもメインイベントのバンド演奏は文化祭で一番目立つ。どのバンドもやりたがっており、過去争いになったことがあったらしい。そのため外部のバンドを使うのが恒例となっていた。(まあ、知名度があるバンドの方が盛り上がるというのもあるみたい)

 

既に、この噂を聞きつけて、学内のバンドが何組も出演を名乗り上げているみたい。

 

「代わりを名乗り出てくれたのはありがたいのだけど、みんな出演を譲らなくて…。しまいにはコンテストをして決めるとか言い出して収拾付かなくなるし…。文化祭までもう日数もあまりないし、準備で忙しいのにコンテストって…。そもそも誰が審査するのよ。誰が選んでも絶対角が立つし。大学内の一般の人からコンテストしたらって言い出すし?そんな手間と労力と時間をどこから捻り出すの?馬鹿なの?死ぬの?今でさえギリギリでやってるのに…」

 

委員長はかなりお疲れのようだ。相談に来て、一気にそんな愚痴を吐き出していた。

 

ちなみにこの委員長は自治会の活動もしていて、ここの相談者の常連なんだよね。

 

「他に頼る人がいなくて!お願い!あなたなら各バンド達を黙らせることできるでしょ?」

 

実行委員ちゃんは半泣きで喜んでいる。よっぽど困ってたんだろうね。

 

でもうちの魔王ちゃんはそんな反社会的な人じゃないからね?まあ、そのカリスマと人脈と知略を持ってすれば簡単にできるだろうけどさ…。

 

でも今回はどう対処するんだろうね。なんだかんだ言いながら、そばで見るのを楽しみにしている私。

 

 

「出演を希望するバンドからギター、ベース、キーボード、ドラムを選出するわ」

 

「即席バンド作るの?それって逆に大変じゃ。それに選ぶ方法で揉めるんじゃない?」

 

委員長が当然の疑問をぶつける。私もそう思った。

 

 

「私が選ぶ」

 

静かだけどはっきりと意志を伝える声が響く。

 

「え?」

 

「それとボーカルは私がする」

 

「ええ!!」

 

その返答には私も驚いた。

 

「………いい。いいわそれ!!却って盛り上がるわよ、それ!!学内のバンド選抜達とミスキャンパスのボーカルバンド。今回限りの夢の競演。あなたの知名度を考えれば下手な外部バンドより十分いける!!それもらった!!」

 

テンションがいきなりMaxになった委員長をさておき、私は頭にはてなマークが浮かんでいた。

 

魔王ちゃんにはポリシーがある。

 

飢えた人に魚の釣り方を教えても、魚は決して上げないというものだ。けど、今回は積極的に魚を上げているんだよね。 それに依頼に対しては自分自身は積極的に関わらず、常に余裕というか壁を作ってて、結果を出すスタンス。

 

今回だって、バンド演奏以外に盛り上がるイベントをやって依頼そのものを解決じゃなくて解消するかなって思ったんだけど。

 

それに、あまり目立つのが嫌いで、ミスコンの時も依頼で仕方なく出ただけだった。

 

つまり、今回はいつものポリシーに反してまで、バンドのボーカルをやりたい理由があるのかな?

 

 

何故だろう?

 

 

 

×××

 

 

 

文化祭当日の朝。

バンドの準備を手伝ってたらあっという間だった。

 

委員長の期待通り、魔王ちゃんのカリスマのおかげで事はすんなりと進んでいた。まあ各団体を納得させるのに、いろいろあったけど。

 

 

しかし、本日の魔王ちゃんはどうも落ち着きがない。

 

 

準備やリハーサルからちょっと緊張してるし、しきりにスマホを気にしている。もしかして、見せたい人がいるのかな?私の乙女レーダーにビビっと来たんですよ。

 

だからストレートに聞いてみた訳。

 

 

「今日は誰か見に来るの?」

 

「えっ?べ、別に誰だっていいでしょ!」

 

 

……ほほー。

一級魔王ちゃん鑑定士の私からしたら間違いないですね。クロですよ。まっくろクロ助ですよ。

 

これは意中の方に間違いないですね。

 

魔王ちゃんはたいそうおモテになるのですが、大学にいる男性方達はまるで眼中に無い様子。「相談」に便乗して魔王ちゃんを口説こうとする輩もたまにいるくらい。そういうやつらを投げ飛ばした事があるのも武勇伝の一つ。

 

さてさて、そんな彼女をこんなにさせる殿方はどんな方なのか。私気になります!!

 

 

 

×××

 

 

 

魔王ちゃんのよく通る声が文化祭のメイン会場に響き渡る。

メインステージの会場では魔王ちゃん中心に即席バンドメンバーの演奏真っ最中だ。

 

オレンジの学祭のカラーTシャツでお揃いのバンドメンバーだけど、やっぱり紅一点の魔王ちゃんはよく目立つ。しかし短めのTシャツにミニスカートって誰の趣味だろう?しっかし、相変わらずプロポーションいいね。見てると抱き着きたくなるし。

 

演奏されてるのはクラスメイトとある日突然星を見に行くというストーリーをせつない恋心と共に歌った曲で心に留まるものだった。

 

そんなせつない曲を抜群の歌唱力で歌い上げる魔王ちゃんはそれは見事なもので、観客席は大盛況だし、通行人は思わず立ち止まって見入る多く、これは成功間違いない!

 

熱狂に包まれたステージで大活躍中の友達を私は誇らしく思うし、これなら意中の殿方も彼女にべた惚れですね。私が男だったらステージに乱入して告白しそうだし(笑)

 

さてさて、依頼は一件落着だけど、その後はどうなることやら。

 

 

 

×××

 

 

 

「いやー大成功よ!今までのメインイベントで一番盛り上がったんじゃないかな。会場入りきらなかったし。プロより人集めたんじゃないかな!本当にありがとう!また来年もやってよ!!」

 

委員長は大興奮でお礼を言ってきた。

まあ、ミッションコンプリートだね。

 

けど。

私が気になる、魔王ちゃん意中の殿方の件が残っている。

 

「あなたもお疲れ様」

 

メインイベントが終わり、相談室に戻ると魔王ちゃんからねぎらいのお言葉をもらった。

 

「そっちこそ、お疲れ様~。かっこ良かったよ。惚れ直したよ~」

 

「はいはい。何言ってるのよ」

 

「それはそうと、私から一つ依頼があるのです」

 

「……何?」

 

「今回の依頼は……いや、ライブは誰に見せたかったの?」

 

「依頼は個人のプライバシーには干渉しないものよ」

 

「分かってるよ」

 

「……」

 

魔王ちゃんの目付きが一緒鋭くなるけど、すぐにやれやれといった表情になる。

 

「まあ、あなたならいいか…」

 

 

おおー!!

ついに意中の殿方が!!

 

 

 

 

 

「父よ」

 

「へ?」

 

「私の父親。ライブを見せたかったの」

 

 

……彼氏さんかと思ったら、パパさんなのね。

魔王ちゃんは意外にパパっ子ちゃんでした。

 

 

 

×××

 

 

 

メインイベントが終わった後でも、文化祭はまだまだ盛り上がりを見せている。

 

 

「この後どうするの?」

 

「ええ、ちょっとここで待ち合わせをしていて」

 

「もしかしてパパさん?」

 

「いえ。あの人ライブだけ見たら帰ってしまってね…」

 

うわー、すんごい残念そう。

 

「来るのは弟。来年受験するから学祭見たいって。だから案内しようと思ってて」

 

「そうなんだ。私もそろそろサークルに戻ろうかな。出店の当番代わらないと」

 

「行ってらっしゃい」

 

「これ出店のチケット。弟君と後で寄ってよ!」

 

「分かった。寄らしてもらうわ」

 

「ではでは」

 

そう言って、部屋を出ようとしたところで目の前にいた青年とぶつかりそうになる。

 

「す、すいません」

 

「こ、こちらこそすいまー」

 

知らない青年だがこのタイミングで来たからそうなんだろうけど。

 

それよりも、彼の顔を見た瞬間に私の頭を電気でも走ったかのように、ものすんごいスピードで占めていった言葉が。

 

 

 

 

 

「君、何か面白い目ね」

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

「昔、雪乃さん達のライブ見たんでしょ?」

 

「何で知ってんだよ」

 

「...写真。小町さんから見せてもらった。高校の文化祭って」

 

「そうか。でもあれはトラブルがあって、繋ぎで結成したんだよな。あの時はみんな目立って凄かったんだ。雪ノ下の親友や俺の恩師、それに母さんも出てな…」

 

「その時、父さんは何してたの?」

 

「俺は後ろで見ていたな。遠い世界の出来事のようだった」

 

「今日も同じじゃない。前の席を用意してたのに…」

 

「まあまあ。俺は後ろで見てるくらいで丁度いいんだよ」

 

「……それで。どうだった?私のライブは?」

 

「うん。……目立ってたな」

 

「それだけ?」

 

「お前が一番目立ってたよ」

 

「そっ!そう……」

 

「母さんもそう言うだろ」

 

「…………あの人仕事じゃないの?」

 

「動画送っといた。それと母親をあの人呼ばわりすんなよ」

 

「……どうでもいい」

 

「つーか。曲は、なつメロ特集なのか?最近の奴らが分かるやつでもなさそうだが…。まあ、知ってる曲ばかりなんでおっさんとしては助かったが」

 

 

「いいのよ。私がやりたい曲だったから」

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

「あんた。あの子とちょくちょく会ってるみたいね」

 

「姉さん、何だよ突然」

 

「あの子に変な事したら雪乃さんに報告するからね」

 

「べ、別に変な事してねーよ。ただ、その普通に」

 

「…普通に?」

 

「普通に…お付き合い…させて頂いておりますが…」

 

「ふーん。まあ知ってるけど」

 

「知ってんのかよ」

 

「最近、あの子、アンタの事ばっかり話すからね」

 

「姉さんには言うなって言ったのに…。それに雪乃さんはマジで勘弁してくれ」

 

 

 

 

 

 

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