超次次元ゲイム ネプテューヌRe;Birth2 DARK SOULS INSERTION 作:ルーラー
『デルフィナス』の扱いなど、原作と違うところが多々ありますが、そのあたりはご容赦ください。
それでは、できるだけ多くの人に楽しんでいただけることを願いつつ。
プロローグ 始まりのその少し前
――僕には友達がいる。
とてもとても明るくて、ちょっと……いや、かなり普通じゃない、『異世界の女神』っていう友人が――。
いまから二ヶ月ほど前のことだ。
僕はその『異世界』――ゲイムギョウ界で、半年ほど旅をしてきた。
もちろんそれは、言うまでもなく命がけのもの。
ぶっちゃけ、ゲイムギョウ界には強制的に放り込まれたようなものだったから、最初の頃は理不尽だと思いもした。
そりゃ、確かに僕は『強くなりたい』って思ってたし、実際、口に出して言いもしたけれど。
でも、だからって、なんでゲイムギョウ界なんてところに放り込むんだよって、命がけの旅なんてしなくちゃいけないんだよって、そんな気持ちはどうしたって消えてくれなかった。
でも、向こうの世界で女神を自称する少女と出会って、彼女の友人たちも含めて一緒に旅をして。
彼女以外の女神たちと敵対することになって、それまでは足手まといでしかなかった僕は、もう、強くならざるをえなくなって。
そして『デルフィナス』っていう共通の敵が現れたことで、四人の女神たちが友好条約を結んで、『デルフィナス』を女神たちと共に打倒して。
そうして僕は、四人の女神たちと肩を並べて戦えるくらいには強くなって、この世界に戻ってきた。
最後の決戦のあと、最初に出会った少女――僕の友達である女神と、『お互いが危機に陥るようなことがあれば、絶対に駆けつけよう』って『
僕がゲイムギョウ界で得た、僕のかけがえのない『
どちらかといえば
そんな彼女の名は、ネプテューヌといった。
あの世界に行かなければ、絶対に出会えなかった少女。
普通に生きていたら、まず交わることのなかった二つの人生。
だから……うん、やっぱり、あの世界に行ってよかった。
あの世界に放り込まれて、本当によかった。
ネプテューヌに出会えて、本当によかった。
そう心の底から思ってるから、やっぱり僕は今日も回想してしまう。
あの半年の間の出来事を、彼女と過ごした楽しかった日々を、何度も何度も頭の中で再生してしまう。
その中には、もちろん、辛いことや悲しいことだって、あるわけなのだけれど――。
◆ ◆ ◆
「――あつっ……!?」
右の掌に焼けるような痛みが走ったのは、スーパーで今日の夕飯の材料を買い揃えているときのことだった。
それに僕は、買い物カゴを左手に持ち替えて右手を開く。
そして、まじまじと掌を見てみると、そこには……。
「消えて、る……? いや、そうじゃない。これは……」
僕の右の掌に刻まれている、
その
「よかったあ……」
ネプテューヌが『盟約の
だからこれは、彼女が『もう友達やーめたっ』となったから起こった現象というわけじゃ、絶対にない。
でも、やっぱり
「……って、いやいや! 安心してる場合じゃない!」
思わず声を大きくしてしまった僕に、周囲の買い物客たちが
だって、ネプテューヌがそうと望んでいないのに、『盟約の破棄』が行われかけたということは。
控えめに言っても、彼女の身が危険に晒されているってことになる……はず。
「友達を助けるのは当たり前、だもんな。ネプテューヌ」
そうつぶやいて、僕は。
カゴに入れてあった品物を、全部元あった棚に戻して。
急いでスーパーを飛び出て、狭い裏路地へと向かって走りだした。
「――さて、と」
裏路地に入ると同時に周囲を見回し、人の目がないかを確認する。
そして僕は呪文を詠唱し、
「
自宅にある地下室から、剣やローブといった装備を取り寄せるための魔術を発動させた。
それに応えて、長剣と
「これでよし。……ゲイムギョウ界に行くと、魔術じゃ地球に干渉できなくなっちゃうからな」
でも、ここで着替えるのは抵抗あるなあ。
なので僕は、白いワイシャツに黒いズボンという普段着のままで、地面に落ちているローブを腕に引っかけた。
もちろん、剣とバイザーも忘れず回収。
「着替えるのは、向こうに着いてからでいいよな」
さて、ものすごく唐突だけれど、僕は
ゲイムギョウ界だけじゃなく地球にも、こういう『不思議な力』はあるものなのだ。ただ、聖教会や魔道学会といった組織によって隠されているだけで。
そして僕には、多分に性格的な意味合いで『魔道士』の適性があるらしい。
だけど、
そもそも、僕はまだ十八歳の高校三年生だ。
ゲイムギョウ界に半年ほど行ってたせいで一度留年してしまった、高校三年生だ。
裏の世界のことを詳しく知るのは、受験が終わってから……いや、大学を卒業してからでもいいくらいだろう。
そして、そんなことよりもいまはネプテューヌだ。
彼女の身に一体なにが起こっているのか、正直、これでも心配でたまらないのだ。
精神状態のコントロールは比較的得意なほうだから、一応、平静を保ててはいるけど、でも、それでも……。
「――
両手を前に伸ばし、僕は短くつぶやいた。
こことは異なる世界に干渉するための術、魔術とは似て非なる術、
「月は欠け 星も消え 世界は闇へと包まれた」
詠唱の内容自体は、人それぞれ。
というか、自分にしっくりくるものじゃないと、魔術であれ希術であれ、発動させることなんてできやしない。
「過ごした日々は無に呑まれ 残るは
そして、これはやっぱり僕が根暗だからなのだろうか。
こういう、どこか破滅的な詠唱のほうが、僕の精神には合っているようだった。
「
難しい術式であればあるほど、詠唱は長くなる。
「
そして、長くなるに比例して、体力や精神力、魔力も激しく
自然、
まあ、その、うん。いまさらだけど、前もって『
「取り戻すことは叶わない やり直すことは
ふう、ここでようやっとひと区切り。
でも、詠唱の本番はむしろここからだから、本当に気が抜けない。
「されど 我は
だって、ほんのちょっとイメージが狂えば、『
「遥かな世界に住まう
汗が吹き出て、額を伝う。
これが目に入って精神集中が途切れたら泣くに泣けない。
だから僕は目を閉じて、もう一段深く自分の内側へと潜っていく。
「
もう、下手なことは考えない。
いや、考えられないといったほうが正しいか。
「月は満ちよ 星は輝け その
頭に思い描くは、ゲイムギョウ界の景色。
「手遅れなどありえない 救えぬことなど起こりえない」
そう、ありえない。
イメージできないなんてことは、絶対に。
だって僕の中には、その景色が色鮮やかに『記録』されているのだから。
「我が望むは 空間超えし
さあ、あともう少し。
あとたった
「世界を渡ろうという我が
よし、あと三節。
そこで身体が悲鳴をあげた。
でも、知るか、そんなこと。
それよりもずっと大事なことが、いまの僕にはあるんだから。
「大いなる神 創造主よ」
残るは二節。
さあ、紡ぎきれ、僕。
「汝の
僕の、かけがえのない友人のために。
危機に陥っているであろう、彼女のために。
……僕の、ために――。
「我に
――開けっ! 『
詠唱を終えると同時、目の前の空間が白く輝いた。
そしてその光は、縦に長い長方形へと形を変えて。
「――よし、成功……!」
確かな手応えを感じて、僕は安堵と喜びの声をあげた。
もっともそれは、疲労のあまり、絞り出すようなものになっちゃったけど。
それでも僕は、足取り確かに『
「すぐ、行くからな……。待ってろよ、ネプテューヌ……!」
そんなかすかなつぶやきだけを、元居た世界に残しつつ――。