超次次元ゲイム ネプテューヌRe;Birth2 DARK SOULS INSERTION   作:ルーラー

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第一話 出会いと再会

 さて、困った。

 本当に、困った。

 頭を抱えてうずくまりたくなるくらいには、困った。

 

 うん、ここは端的に言おう。

 言ってしまおう。

 口にしたからって解決するわけじゃないけど、それでも。

 

「そういえば僕、この世界でのお金は持ってなかったなあ……」

 

 要するに、無一文。

 なんというか、初めてゲイムギョウ界に来たときにも思ったんだけれど。

 どうして僕は、こう、毎度毎度『異世界にやってきた主人公』らしからぬ、現実的なことこの上ない問題に直面しなければならないのだろうか。

 

 ゲイムギョウ界には、やってこれた。

 『熾天の門(セラフィック・ゲート)』を作ったせいで来てそうそう疲労困憊(ひろうこんぱい)状態にはなってしまったものの、プラネテューヌの首都自体には、問題なく訪れることができた。

 あとは適当に宿をとって、今日のところは体力回復に専念して、明日になったら戦闘用の服に着替えて、街で情報収集するのがベストかな、なんて、そんなふうに考えていたのだけれど……。

 

「これじゃ宿になんて泊まれないし、回復アイテムを買うことだって難しい……というか、ぶっちゃけ不可能だ。ううむ、どうしたものか……」

 

 そうつぶやいてはみたものの、お金がないのなら、いくら考えても答えなんて『稼ぐ』以外出てこない。

 

「とりあえず、ギルド行ってクエスト受けるか」

 

 そんなわけで、僕は疲れた身体に(むち)打って、ギルドに向かうことにした。

 でも、悪いことは重なるもので。

 

「危険種、エンシェントドラゴンの討伐(とうばつ)? え、いまあるクエストって、これだけ……?」

 

 なんでも、西の森――バーチャフォレストの最深部から出てきて、頻繁に旅人を襲っているらしい。

 けど、いきなりこれかあ……。

 倒してくれば相応の報酬が受け取れるとはいえ、それでもちょっとばかり気が重くなる。

 

 いやまあ、倒せないってことはないと思うよ?

 剣だってちゃんといいもの持ってるし、しっかりと不意を突いて、連続で攻撃を叩き込めば、うん、いまの僕の体調でも問題なくこなせるクエストではあるだろう。

 でもなあ、その隣に『ザコの中のザコ、スライヌの討伐』(受注済み)なんてものがあると……。

 

「誰だよ、このクエスト受けたの。なんだって僕より先に受けたんだよ。僕のために残しておいてくれたっていいじゃんかよ……」

 

 まったく、僕は仮にも、この物語の主人公だっていうのに。

 あれか? 逆主人公補正でも働いてるのか? だとしたら、そんなの激しく要らないぞ?

 まあ、でも、クエストがひとつもないのに比べればまだマシ、というのもまた事実なわけで。

 

「仕方ない。とっとと行って倒してきますかね……」

 

 そうこぼしつつ、僕はプラネテューヌのギルドをあとにした。

 

 

 ちなみに、着替えは結局、建物の陰でこそこそとするハメになった。……くそう、こうなるって知ってたら、最初から向こうで済ませてきたのに。

 でもまあ、僕は男だから、外で着替えてもそこまで問題はない、のかな?

 いやいや、そんなことはない。そんなこと、あっちゃいけない。うん、あっちゃいけない……。

 

 ◆  ◆  ◆

 

 そんなこんなでやってきた西の森、バーチャフォレスト。

 黒いローブに長剣――バスターソード、そしてバイザーを目元に装着した僕は、遭遇するモンスターを次々と倒して回っていた。

 特に、スライムに犬の顔がついたようなモンスター、『スライヌ』なんてすでに一体何匹倒しただろう。

 もしもギルドにあったクエストが『スライヌの討伐』だったら、もうとっくに終えて報酬を受け取りにいけてるところだぞ、これ。

 

 ちなみに、僕のローブは上半身をメインに包むものであって、下にはズボンを穿()いている。

 もちろん、地球で愛用していたズボン、そのまんまだ。

 うん、本当、下を脱ぐ必要がなくてよかった。屋外でズボンを脱ぐ勇気なんて僕にはないし、持っていたくもないからさ。

 

「でもこれ、けっこうキリないな。早いところエンシェントドラゴンを倒して帰りたいのに」

 

 でもって、宿でゆっくりしたいのに。

 ……いや、うん、わかってる。わかってるさ。悠長(ゆうちょう)なことを考えてるっていうのは、わかってる。

 でもさ、やっぱり体調調(ととの)えてからじゃないと、旅をするのはキツいって。ほら、身体が資本っていう言葉もあるわけだしさ。

 

「本当、一体どこの誰が『スライヌの討伐』なんて子供のお使いレベルのクエスト受けたんだか。あの程度の報酬じゃ、小遣い稼ぎにもならないだろうに」

 

 自分のことは思いっきり棚に上げてつぶやく僕。

 というか、そこそこ長い時間探し回ったんだし、もう『倒してきました』って嘘の報告をしてしまってもいいんじゃないだろうか。

 もう報酬分の労働はしたって、たぶん。

 

 と、そんな最低なことを考えていた僕の耳に、人間の悲鳴らしきものが飛び込んできた。

 声の感じから推測するに……子供がモンスターに襲われてるってところだろうか。

 

「……エンシェントドラゴン、かな?」

 

 だといいな、なんて呑気(のんき)に思いながら、僕は声のしたほうに向かって走りだす。

 そして、いくらも行かないうちに、ドラゴンという種族名に相応しいその巨体が見えてきた。

 同時に、このモンスターと死闘を繰り広げていたらしい、三人の女の子たちの姿も。

 

 けれど、いまはモンスターを倒すのが最優先。

 ふざけた気持ちも、三人の少女の存在も追い出して、僕は頭を戦闘モードに切り替える。

 倒すべき敵は、土色のウロコを持つ巨大なドラゴン、ただ一体。

 

 それにしても、本当に大きい。

 その巨大さたるや、身長が百八十センチある僕が見上げても、まともに顔が見えないほどだ。

 でも、だからこそ生まれる死角というものもある。

 

 僕は腰に提げた(さや)から抜いてあったバスターソードをかまえ、ドラゴンの足元に向かって突進した。

 そして、

 

「――クロスコンビネーションっ!」

 

 その右脚、左脚に、幾度となく斬りつける!

 頭上から聞こえてくるは、竜の漏らす苦鳴の声。

 それを耳にするのがどうしても苦痛で、僕は次で終わりにしようと土色の竜から大きく距離をとった。

 

 そうして剣を左手に持ち替え、魔法陣を刻んである右の掌を開き、ドラゴンに向け。

 僕は、わずか一節の呪文を詠唱する。

 

「――闇に呑まれろ」

 

 魔法陣という一点に集まる、僕の魔力。

 それを、僕は。

 

暗黒呪法(ダークネス)っ!」

 

 『闇の波動』という攻撃魔術に変え、撃ち放った!

 

 エンシェントドラゴンへと迫りゆく、すべてを呑み込む黒き奔流(ほんりゅう)

 それは狙い(たが)わず土色の竜の腹に命中し、刹那(せつな)の間をおいて()のドラゴンを光の粒子(りゅうし)へと変換、消滅させた。

 これが、この世界における『死』。死ねば肉体すら残らない。……少なくとも、モンスターという存在に限っては。

 

 僕の胸に、危険種を倒した達成感なんてものはない。

 これは、必要だからやっただけ。

 襲ってくるモンスターを片っ端から倒していたときと同じで、自分が生きるために、クエストを達成するために討伐しただけ。

 生きるために他の生物の命を奪うという意味では、三度の食事と大差ない。

 

 僕はなんともいえないため息をつきながら、意識的に頭を『いつもの状態』に戻していく。

 切り替えなきゃ、やってられないから。

 自分が生きていくためにモンスターを犠牲にしたんだって罪悪感に、押し潰されてしまいかねないから。

 

 そうして、僕が来るまでエンシェントドラゴンと戦っていたのであろう三人の少女に目を向ける。

 おそらくはだけど、それは、結果的に僕が救うことのできた命。

 僕の行動を、きっと『正しい』って言ってくれるであろう、旅人たち。

 

 と、そこで気づいた。

 その三人の少女のうちの二人の顔、それが、とても見知ったものであるということに。

 

 青いコートを身にまとい、茶色い髪を長く伸ばしている十六歳くらいの少女は、アイエフ。

 ふんわりとしたオレンジ色の長い髪を持ち、白いセーターと赤いチェックのミニスカートに身を包んでいる、アイエフと同じくらいの年齢に見える少女は、コンパ。

 どちらも、僕が初めてこの世界に来たときに、ネプテューヌも交えて半年ほど一緒に旅をした、僕の知り合いだ。

 

 でも、あとのひとりは知らない娘だった。

 薄紫色のロングヘアに、セーラー服みたいなワンピース。

 ネプテューヌにすごくよく似ていて、でも、まとっている落ち着いた雰囲気が、彼女とは明らかに違う少女。

 十字キーみたいな髪留めはネプテューヌのしていたそれと同じものみたいだけど……あ、もしかしてネプテューヌの姉とか従姉(いとこ)とかだったり? 見た感じ、ネプテューヌよりも少し上の、十四、五歳くらいにみえるし。

 

 そんなことを考えていたら、(ほう)けた表情になっていたアイエフが『信じられない』とでも言いたげに口を開いた。

 

「ア、アンタ――」

 

「え? アイエフさんのお知りあいなんですか?」

 

 そして、いきなり言葉を遮られていた。

 口を挟んできた薄紫色の髪の少女は、なんか怯えるように僕を一度見てから、説明を求めるかのようにアイエフへと視線を戻す。

 

「あ、えっとね、コイツが、いつだったかアンタにも話して聞かせた『ズッキー』。ネプ子たちと一緒にデルフィナスを倒した、あの『ズッキー』」

 

 ぐはあ!?

 え、ちょ、なに!? 僕、アイエフの中ではまだ『ズッキー』なの!?

 いやまあ、彼女とは別れてからまだ二ヶ月しか経ってないし、そもそも呼び名ってそう簡単に変わるものじゃないのかもしれないけどさあ!

 実際、以前(まえ)に旅してたときにも、一体何度『和樹と呼んでほしい』と頼んだか! そして何度無視されたことか!!

 

 けっこうな精神的ダメージを負った僕をよそに、彼女たちの話は進んでいく。

 

「ああ、この人がズッキーさん。でも、あの、なんか、聞いてイメージしてたのより、ずっと怖そうな人なんですけど……」

 

 ちょ!?

 え!? なに!?

 まだ初対面だっていうのに、そのネプテューヌ似の娘の呼び名も『ズッキーさん』で決定しちゃってるの!?

 あんまりだ! そんなのあんまりだあ!!

 

「ちょっとズッキー、そのバイザー取りなさい。ネプギアがなんか誤解しちゃってるわ」

 

「あんまりだあ、あんまりだあ……」

 

「ねえ、聞いてるの? ズッキー。早くバイザー取りなさい」

 

 あ、もしかしてアイエフ、僕に話しかけてきてるのか?

 ……ふん、ちゃんと『和樹』って呼ぶまでは、絶対に反応なんてしてやるもんか。

 

「ズッキー? ちゃんと聞こえてるなら早くバイザー取りなさい。おーい、雑魚(ざこ)のズッキー?」

 

「僕はもう雑魚じゃないよ!」

 

「なんだ、やっぱりちゃんと聞こえてたんじゃない」

 

「しまったあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 思わず頭を抱えてうずくまる僕。

 しかしアイエフは、そんな僕に無情にも要求を続けてきた。

 

「ほら、早くバイザー取りなさいって。ネプギアがすっかり怯えちゃってるのよ」

 

「怯え……? それにネプギアって……」

 

 言われてネプギアという娘のほうを見てみると……うん、確かに怯えてるな。

 このバイザーは『女顔である上に、鋭い目つきをできない僕が、敵に舐められないようにするため』につけているものだから、これでいいっちゃあいいんだろうけど。

 あー、でも、敵でもない女の子に怯えられるって、けっこうダメージあるんだなあ……。

 

「仕方ない、外そう……」

 

 つぶやいてバイザーに手をかける僕。

 アイエフはアイエフで呆れたように嘆息して。

 

「まったく、なにをしてるんだか。重度の厨二病患者じゃあるまいし」

 

「お前にだけは言われたくないよ! 大体、このバイザーを僕に勧めたのってアイエフじゃん!」

 

「我ながら、神がかったセンスしてると思うわ。実際、よく似合ってはいるわけだし。威圧感もたっぷり。……まあ、そのせいでネプギアが怯えちゃってるわけだけどね」

 

「まったく、ああ言えばこう言う……」

 

 こいつとは本当に口ゲンカが絶えないなあ、なんて思いながらバイザーを外し、ズボンのポケットに仕舞う僕。

 するとネプテューヌの姉かなにかだと思われる娘が、目をぱちくりとさせてから、

 

「あ、あれ? なんか人畜無害(じんちくむがい)な一般人って感じの顔してるんですね。悪い意味で優しそう……」

 

 なんか酷いことを言っていた。

 いやまあ、悪気はなさそうだけど。

 でも『悪い意味で優しそう』って評価は、さすがに生まれて初めて受けたなあ。

 

 僕は特に言葉を返さず、ちょっとムスッとしながら地面にどっかり腰を下ろした。疲れているのだ、これでも。

 ともあれ、僕に(なら)って、ネプギア、アイエフ、コンパも座る。

 そして今度はコンパがネプギアに向いた。

 

「ギアちゃん、この人は決して人畜無害なんかじゃないですよ? ズッキーニさんは、絶対に敵に回しちゃいけない雑魚さんですから」

 

 待てや。

 

「なにその『ズッキーニ』さんって!? 僕の名前、いつから野菜と同じになったの!?」

 

「ズッキーニャさんじゃないだけいいじゃないですか」

 

「うん、それは某『竜を倒すために旅に出たけど、ラスボスが竜じゃなかったRPG』に出てくる最弱レベルのモンスターの名前だよね、そういうメタ発言するのはネプテューヌだけでお腹いっぱいだから、コンパまで言うのはやめようね!」

 

「わかりましたです。大人しくズッキーニさんにしておきますです」

 

「うん、それで……って、全然よくないよ! せめてズッキーって呼んでよ、お願いだから!」

 

「ズッキーさんはワガママですねえ。本当の本当にワガママさんですねえ」

 

「もうワガママでもなんでもいいからさ……。まあ、とにかくちゃんと呼んでもらえるようになってよかったよかった……」

 

 ズッキーニャさんだのズッキーニさんだの呼ばれたらたまらないって、本当。

 

「言っておくけど、ズッキー。いまアンタ、コンパに上手いこと丸め込まれたわよ?」

 

 ああ、気づいてるさ、そんなこと。

 でも半年かけて直らなかった呼称が、いまここで直るとは思えないし。

 それに……

 

「そもそも、『ズッキー』って一番最初に呼んだのって、よくよく思いだしてみればネプテューヌだし……」

 

「は? なんか話が飛んだわよ? ズッキー。――あと、ネプギア。コンパの言ってたことは本当だからね? コイツ、見た目からは想像もつかないようなえげつない作戦立てるから。絶対、敵にだけは回しちゃいけない」

 

 失礼な。……まあ、否定はしないけどさ。

 初めて他国の女神――ノワールと戦ったときにも『変身中に攻撃すればいいんじゃない?』って提案したし。

 でもってネプテューヌに『変身中の攻撃はご法度(はっと)なんだよ!』って怒られたし。

 他にも、敵を仲間割れさせたり、人質取った敵にアイエフを突っ込ませたりと、確かに色々やったなあ。うん、なにもかも皆懐かしい。や、まだあれから一年も経ってないけど。

 

「ところでさ、なんかアイエフもコンパも、どことな~く僕に対する当たりがキツくない? 特にコンパ。……僕、なんかした?」

 

「自分の胸に手を当てて、よく考えてみなさい」

 

「です」

 

 あ、あれ? なんかさらに不機嫌になった?

 仕方ないので、ちょっと目を(つむ)り、胸に手を当てて考えてみる。

 う~ん、でも僕がいまやったのなんて、エンシェントドラゴンを二人の代わりに倒しちゃったことくらいしか……って、ああ、もっと前――一緒に旅をしていたときのことを言っているのか?

 

 だとすると……どうしよう、思い当たる節がありすぎて、逆に見当がつかない。

 でも、なんだかんだ言って、大抵のことは時効にしてくれていそうなんだけどなあ、この二人なら。

 そんな二人が、揃って水に流せないこと、か。……あ、ひとつだけあった。うん、間違いない。あのことだ。

 

「できれば当たっていてほしくはないんだけど……もしかして、デルフィナスと戦うにあたって、僕が二人をおいていくようネプテューヌに提案して、実際においてっちゃったこと?」

 

 人差し指を立ててそう言うと、二人は重々しくうなずく――かと思いきや、なんかすごい剣幕で身を乗り出してきた!

 

「ズッキーさんが提案したことだったですか!?」

 

「ネプ子は、『自分から言いだしたこと』って言ってたわよ!?」

 

 あー、なるほど。わざわざ憎まれ役を買って出てくれてたのか、ネプテューヌ。

 でも、ごめん。なんか余計なお世話になっちゃったっぽい。

 『ネプテューヌが提案したこととはいえ、和樹とネプテューヌが自分たちをおいていったことには変わりない』だったのが『自分たちをおいていっただけじゃなく、ネプテューヌにそう提案したのも和樹だった。もう絶対許せない!』になっちゃったっぽいぞ。どうしたものか。

 

 でもなあ、と僕は表情をしかめて頭を()く。

 

「まあ、落ちついて聞いてくれ。そしてちょっと真面目に考えてみてくれ」

 

 おそらくは、エンシェントドラゴンとの戦闘によるものだろう、あちこちを擦りむいている三人を順に見ながら、僕は口を開いた。

 

「その怪我の度合いからして、あのエンシェントドラゴンには、三人がかりでも勝てるかどうかって感じだったんだろ? いまの戦闘」

 

「アンタは一瞬で倒したけどね」

 

「だから聞いてくれって! 頼むから最後まで! ……こほん。アイエフとコンパは――」

 

「わざわざ口に出して『こほん』って言う人、初めて見たです」

 

「いやだから、頼むからちゃんと真面目に聞いてくれよ、コンパ!」

 

「わ、わかったですよ……」

 

 ああもう! と頭を掻きむしり、僕は気を取り直して語り始める。

 

「そっちの娘……ええと、ネプギア? はともかくとして、アイエフとコンパはそれなりの期間、僕と、なによりネプテューヌと一緒に旅をして、他の国の女神とも戦っただろ? なのに二人は、あのエンシェントドラゴンに苦戦してた。

 そして、まがりなりにもデルフィナスと戦った僕は、あの竜をあっさり倒した」

 

「ズッキー。それ、自慢?」

 

「だから茶化(ちゃか)すなよ、アイエフ。僕の言いたいこと、お前ならもうわかってるだろ?」

 

「わかってるからこそ茶化したんじゃない。……でも、そうね。確かに私とコンパは一緒に行かなくて正解だった……のかも」

 

 そういうことだ。

 役に立つとか立たないとかじゃなく、ついてくれば二人は命を落としかねなかった。

 そして、もしそうなったら絶対にネプテューヌは悲しむだろうと思ったから、僕は『友好条約』が結ばれるやいなやネプテューヌに二人をおいていくよう提案して、他の三つの国の女神たちと五人でデルフィナスのいるギョウカイ墓場に向かったのだ。

 

 決して、二人を嫌っていたわけじゃない。傷つけたかったわけじゃない。

 そうするのが一番だと思ったから、そうした。

 ただ、それだけのことだ。

 

 少しの間、沈黙が流れる。

 それは僕を責めるようなものではなかったけど、でもやっぱり、居心地のいいものでもなくて。

 そんな空気を変えるように、アイエフが「そういえば」と話を振ってきてくれた。

 

「ズッキー、アンタはアンタで、どうしてこのタイミングでここにこれたのよ? まるで私たちが危なくなるのがわかってたみたいに」

 

「別に、アイエフたちの危機に駆けつけるために来たわけじゃないんだけどな」

 

「むっ。相変わらずね、そういう嫌な言い方」

 

 当たり前だ。

 二ヶ月程度じゃ、人なんてそうそう変わらない。

 それに、だ。

 

「それはそれとして、危ないところを助けられたって自覚があるなら、なにか質問するよりも先に、僕に言うことがあるんじゃない?」

 

「くっ……! 本当、アンタって嫌なやつ……!」

 

「嫌なやつでけっこうだよ」

 

 それで『あのアイエフ』から礼の言葉を引き出せるんなら安いものだ。

 そんなわけで、僕は再度黙り込んでしまったアイエフの顔を、しばらくニヤニヤと眺めることにする。

 今回の沈黙は、さっきまでのと違って、僕にはなかなかに心地のいいものだった。

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