超次次元ゲイム ネプテューヌRe;Birth2 DARK SOULS INSERTION   作:ルーラー

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第二話 和樹とネプギア

 僕は(ぞく)にいう『正義の味方』というやつではない。

 だから僕は、僕自身が『悪人』と定義したやつに敵対するだけで、『正義の味方』気取りで『なにか』をしたことは一度もない。

 そして、『なにか』をしたのなら、評価にせよ報酬にせよ報いにせよ、相応のものが与えられてしかるべき、と思っていたりもする。

 

 まあ、わかりやすく言うと、僕は。

 

 

『もう、肝心なときにどこ行ってたのよ、アンタ。アンタがいなくなると同時に、黒いバイザーつけたヒーローが駆けつけてくれたからよかったものの……』

 

『あー、ごめんごめん。ちょっと、どうしても外せない用事が入っちゃってさ』

 

『まったく、本当に頼りにならないわよね、アンタって。どこぞのヒーローさまと違って』

 

『あ、あはははは……』

 

 

 みたいなのには耐えられないのだ!

 言うなれば僕は、仮面を被らない仮面ライダー!

 『ああ、あれ僕です! 僕がやったんです! さあ褒め称えよ民衆!!』って感じの、ちょっとばかり黒いヒーローなのだ!

 まあ、そんなわけだから。

 

「その、まあ、助かったには、助かったわよ……。ありがとね、ズッキー」

 

 なんてふうに、お礼を言われたい願望が、本当に強い。

 そして、それによって覚える満足感も、途轍(とてつ)もないものがある。

 その相手が、当初は僕を『雑魚』扱いしていたアイエフとなれば、なおさらだ。

 僕は感動にも似た充実感を胸に、アイエフへと顔を向け――

 

「わたしからもお礼を言わせてください、ズッキーさん。助けてくれて、本当にありがとうございました」

 

 口を開こうとした直前に聞こえてきた、ネプギアのあまりにも素直な感謝の言葉に、思わず「うえっ!?」と変な声を出してしまった。

 僕にそんな反応をされたネプギアは、なんかショックを受けた表情になり、

 

「『うえっ!?』って言われた!? なんで!? どうして!?」

 

 いやいやいやいや!

 『なんで』と『どうして』は、僕が言いたいセリフだって!

 もう一度言うけど、僕は、『なにか』をしたのなら、評価にせよ報酬にせよ報いにせよ、相応のものが与えられてしかるべき、と思っている。

 でもそれは裏を返せば、分不相応(ぶんふそうおう)なものをもらうと、たちまち申し訳なく感じてしまう、ということでもあって。

 なので僕は、ほとんど反射的にネプギアに返してしまった。

 

「だって、僕は別になにも……あ、いや、エンシェントドラゴンを倒したのは事実だから、なにもしてないってわけじゃあないんだけど、でも、大したことは本当になにひとつしてないんだって!」

 

「え? あの、それはどういう……」

 

「ちょっと、ズッキー! 私には感謝の言葉を半ば強要しておいて、ネプギアには『大したことはしてない』って、どういうことよ!」

 

 戸惑うネプギアに、怒るアイエフ。

 でも本当、無理なんだって!

 アイエフには、過去に散々『雑魚』扱いされた恨みみたいなものがあったからああ言えたけど、ネプギアの底意(そこい)ない感謝の言葉は、ちょっと、僕みたいな『黒い』人間には、無理。受け入れられない。

 

「と、とにかく! 僕は宿に泊まるためのお金欲しさにエンシェントドラゴンを倒しただけなんだよ! ネプギアたちを助けようと思ってしたわけじゃないんだ! 本当にたまたまそういう結果になっただけだから、ネプギアが僕にお礼言う必要は皆無(かいむ)なの!」

 

「でも、助けてくれたことも本当じゃないですか。謙遜(けんそん)なんてしなくていいと思います」

 

「してないから! 謙遜なんて、これっぽっちもしてないから!」

 

 顔の前でぶんぶんと手を振る僕。

 しかし、そんな僕にネプギアは笑顔を浮かべて。

 

「ズッキーさんって、本当は全然(えら)ぶらない人だったんですね。わたし、ちょっと誤解しちゃってたみたいです」

 

「うあー! その笑顔が眩しすぎるぅー! 違うんだって! むしろ僕は『我を(あが)めよ! 我を称えよ!』ってタイプの人間なんだって!!」

 

「とてもそうは見えないですよ」

 

 だ、駄目だ。

 もう、なにを言っても信じてもらえそうにない。

 分不相応な賞賛(しょうさん)の言葉は、ただ僕を苦しめるだけだというのに。

 

 そして、いまのやり取りで確信した。

 この娘は、僕の天敵だ。

 アイエフとはベクトルが違うけど、間違いなく僕の天敵だ。

 僕の思考は、基本、悪人のそれに近いから、彼女と話していると最悪、僕は浄化・消滅させられてしまいかねない。

 

「とにかく、本当にありがとうございました。ほら、アイエフさんとコンパさんも、改めてちゃんとお礼言いましょう?」

 

「これ以上、僕に聖水ぶっかけるのはやめてえぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 いや、本当、マジで戦闘不能になるからさあ!

 

 ◆  ◆  ◆

 

 乱れきった僕の息がなんとか整ったのは、それから数分後のことだった。

 なんというか、まさかネプギアとの会話でここまで精神的ダメージを負わされることになるとは。

 消耗したスタミナは、エンシェントドラゴン戦の比じゃないぞ、これ。

 

 まあ、ともあれ。

 コンパが荷物袋から回復アイテム、ネプビタンを取り出し、みんなに渡し始めたところで、ネプギアが再度口を開いた。

 あ、もちろんネプビタンは僕ももらっている。しゃべりすぎて喉が渇いてたので、さりげなく、手だけ差し出して、さもそれが自然な流れであるかのように、そっと栄養ドリンクの(びん)みたいなそれを受け取らせてもらった。

 

「そういえば、まだお互い、ちゃんと自己紹介してませんでしたよね」

 

 別に必要ない気がするんだけど……あ、いや、そうでもないか。

 ネプギアは、僕の本名をまだちゃんとは知らないわけだし。

 そう思いなおし、僕は「じゃあ、僕から」と手を挙げた。

 

「僕は瀬川(せがわ)和樹(かずき)。アイエフとコンパには『ズッキー』とか不本意なあだ名で呼ばれてるけど、本名は瀬川和樹」

 

「不本意、だったんですか?」

 

「めちゃくちゃ不本意だとも。以前の旅のときにも、一体アイエフたちに何度訂正を求めたことか」

 

 だから、『和樹』と呼んでもらえると嬉しいんだけど、と続けようとしたところで、ネプギアがポンと両手を合わせた。

 

「じゃあ、和樹さんとお呼びしたほうがいいですね」

 

「そんなあっさりと!?」

 

「え、え? だって、不本意なんでしょう? それに、アイエフさんたちに訂正を求めたとも言ってましたし。なら、このほうがいいんじゃないかなって……」

 

「女神だ……。女神がいるぞ……。ネプギアは僕の天敵じゃなくて、むしろ女神だったのか……!」

 

「て、天敵? えっと、言ってることの意味が、よく……。あと、わたしはまだ女神ではなくて……」

 

 うん、女神はもちろん、ただの(たと)えだ。

 あ、でも、ネプテューヌの姉だったら、ネプギアもまた女神なんじゃ……?

 

「と、とりあえず、次はわたしの番ですね。……えっと、わたしはプラネテューヌを守護する女神――ネプテューヌの妹で、ネプギアといいます」

 

「妹っ!? 嘘ぉ!? 姉じゃなくて、妹!?」

 

「あ、あはは……。実は、ときどき間違われたりします……」

 

 だろうなあ……。

 しかし、そうか。妹だったのか。

 

「上が駄目だと下がしっかりするのは、どこの世界でも同じなんだなあ……」

 

 僕にも義理の妹がいるのだけれど、僕というかなり駄目な兄を持ったせいか、やっぱり義妹(いもうと)は僕よりもしっかりしているし。

 と、見るとネプギアがちょっとだけ機嫌を損ねたような表情になっていた。

 

 あー、さっきの発言は、ネプテューヌのことを『駄目な姉』と言ったのと同じだもんなあ。

 僕からすれば、ちょっと口が滑ったというか、言葉のあやに近いものだったのだけれど、さすがにここは謝っておくべきだろうか。

 と、そんなことを考えていたら、僕までネプビタンを飲んでいることにようやく気づいたのか、アイエフが唐突に声をあげた。

 

「ちょっと、ズッキー! 怪我もしてないやつがネプビタン飲んでるんじゃないわよ!」

 

 そして僕からネプビタンをひったくろうとしてくる。

 もちろん、僕はそれを死守。

 

「コンパも! なんでコイツにまでネプビタン渡すのよ!」

 

「すごく自然に手を伸ばされたので、それでつい、です……」

 

 答えるコンパは、しまった、みたいな表情をしていた。

 まあ、確かに僕は怪我してないからなあ。

 でも、エンシェントドラゴン戦の前に『(ゲート)』を作っているから、肉体的疲労はかなり溜まっていたり。

 

「なあ、アイエフ。僕、割と本気で体力回復したいからさ。今回は見逃してくれないか? ただ喉が渇いたから飲みたかったってだけじゃないんだよ、本当に」

 

「む……、まあ、そういうことならいいけど」

 

 アイエフは僕を嫌ってるけど、でも決して非情というわけじゃない。

 ふざけることなくちゃんと頼めば、こっちが真剣に言ってるって理解してくれるのだ。

 さて、それはそれとして。

 

「で、ネプギア。ネプギアのことはなんて呼べばいい? ネプギアって呼び捨て? それとも『さん』づけか『ちゃん』づけ?」

 

「あ、和樹さんの好きに呼んでくださっていいですよ?」

 

「ん? そう? 一応、候補には『ギアっち』や『プギー』、『ネプテューヌ・マークⅡ』もあるんだけど。う~ん、どれがいいか迷うなあ……」

 

「ね、ネプギアでお願いします。呼び捨てで……」

 

「了解。それじゃあ、ネプギアで」

 

 ぶっ飛んだところのある『あのネプテューヌ』の妹とはいえ、ネプギアとはまだこれが初対面。

 彼女はネプテューヌと違って、根っから真面目な性格してるみたいだし、これ以上ふざけるのはネプギアのためにもやめておいたほうがいいと見た。

 なにより僕には、長々とふざけすぎて、アイエフやノワールを不快にさせてしまった前科(ぜんか)があったりもするし。

 うん、ボケでも戦闘でも、引き際を見極めるのは大事。本当に大事。

 

「ところで、ネプギア。ネプギアはネプテューヌと違って、女神じゃあないの? さっきの戦闘、ネプギアは普通に『人間の状態』で戦ってたと思うんだけど」

 

 女神は変身――『女神化』することで、その戦闘能力を飛躍的に上昇させることができる。

 そして『女神化』した女神は、性格が変わり、見た目も変化し、『プロセッサユニット』という装備一式を身にまとう。

 

 特に『プロセッサユニット』によるパワーアップは、本当にすごいものがあり――ああ、でも、目のやり場に困るんだよなあ、あの服装。

 なぜか露出度が高かったり、身体に張りつくような形状だったりするものだから。

 いやまあ、僕がちゃんと頭を戦闘モードに切り替えていれば、そこまで気にはならないんだけど。

 

 本当、なんで『露出度が高いのに、防御力は上がる』のだろう。

 ううむ、これは考察の余地があるな。ありまくりだな。

 と、そんなことを考えていた僕に、ネプギアがおずおずと話しかけてきた。

 

「あ、えっと、その……わたし、女神化できなくて……」

 

 うん? いま考えるべきはそっちじゃなくて、『プロセッサユニット』の構造じゃ……って、いやいや、それは違う。

 僕、たったいまネプギアに訊いたじゃないか。『ネプギアは女神じゃあないの?』って。

 ああもう、この、自分の思考にすぐ没頭(ぼっとう)してしまう癖は、本当に僕の大きな欠点だなあ……。

 

 ええと、それで、ネプギアはいま、なんて言った? 女神化できない、だったっけ?

 

「それは、自分はまだ女神としては未熟だから、みたいな理由で?」

 

 僕のその問いかけに、彼女はなぜか伏し目がちになってしまった。

 なんか、ネプギアをいじめてるみたいで、ちょっと罪悪感が……。

 

「……まあ、答えたくないんなら、別に無理して――」

 

「未熟というのは、そのとおりです。わたしは、女神候補生ですから」

 

 遮られた。

 でもまあ、答えは得られたからよしとする。

 でも、口にされた単語は初耳で、僕はこれといった理由もなく同じ言葉を繰り返してしまった。

 

「女神、候補生……?」

 

 そっか、候補生、か。

 なんか、まさしく『未熟者』って感じだなあ。

 

「そっか。だから、いまはまだ女神化できない、という――」

 

「いえ、そうじゃないんです……」

 

 またしても遮られた。

 でも、それに文句を言う気は起きなかった。

 だって、膝の上に置かれているネプギアの両手が、固く握られ、震えていたから。

 

 そうして訪れたのは、沈黙。

 でも、それもすぐに破られた。

 

「女神化は、できるんです。でも、わたし、怖いんです。女神化して、戦うのが……」

 

 という、ネプギア自身の告白によって――。




ネプギアの一人称は、そのほとんどが『私』なのですが、ゲーム内には一部、『わたし』になってる箇所がありました。
なのでこの作品では、女神化前は『わたし』、女神化後は『私』と一人称を使い分けようと思います。
ほら、『わたし』には柔らかいイメージ、『私』には凛としたイメージがありません?
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