私は魔女だ。
・・人からも追われ。
・・妖怪からも避けられ。
・・同じ魔女からも敵視され。
・・ずっと一人だった。
家族は居た。父と母と義理の妹。・・・しかし
妹は人間に捕まり売られ。
父は妖怪に食べられ。
母は魔女に灰にされ。
・・・私は一人になった。全ての種族を怨んだ。しかし、力のない私はどうする事も出来なかった。
・・・初めは辛かった。・・・死のうとも思った。
だが、そんな勇気すら持ち合わせていない私は自殺等出来なかった。
・・・そのうち孤独に慣れてきた。・・・・・・そして感情を忘れた。
山奥にひっそりと隠れ住み。自分が殺されない為だけに、魔法を研究していた・・。
・・自己防衛。それだけの為に。自分以外は全て敵だった。
そんな時。一人の吸血鬼と一人の人間が、私の家に来た。
ここに来るものは、私を捕まえにくる人間。私を食べにくる妖怪。私を殺しにくる魔女。
・・・いずれか以外はない。殺られる前に殺る・・・。
私は人間がドアをノックし、入ってきた瞬間、魔法で人間を殺した・・・。
・・・はずだった。
人間は生きていた。吸血鬼の男が身を挺し、人間の女を庇っていた。
・・ッ!?
私は驚いた。吸血鬼が人間を庇う・・。他人が他人を庇う・・。
私は意味が解らなかった。
自己犠牲等、私の人生ではなかったことだ。皆、自分をなにより優先させるもの。
人間、妖怪、魔女、そして吸血鬼なら尚更・・・。
女を庇い、私の全力の魔法をまともに受けた男は・・・・・・・無傷だった。
しかし私は、それ以上に庇うという行為に驚いていた。
そして男から今まで感じたことのない凄まじい殺気を感じた。
・・・殺される。私はその殺気だけで、勝てないと云う事が解った。・・・・諦めた。いつかその日がくると解っていた。
別になにも思わなかった。弱者は淘汰される・・・自然の摂理だ。私は今まで運が良かっただけなのだ。
『ちょっと!待って?』
女が男の前に立ちはだかり、制止した。
男から嘘の様に殺気が消えた。女は私に宥める様に聞いてきた。
『あの魔法・・。貴女、生まれついての魔女よね?』
私は小さく頷いた。女は嬉しそうな顔をしている。
・・・私は売られる事に気付いた。自決が出来ない私は死ぬより酷い目にあう。
・・・自分の人生を呪った。
『・・・貴女?うちにこない?』
・・・・ッ!?
『・・・うち?』
思わず私は聞き直した。何年かぶりに言葉を発した。
『そうよ!うちよ?悪い様にはしないわ!?』
色々と疑問に思った・・。
が、殺されるか助かるかの二択だと割り切り、ろくに考えもせず承諾した。
女は柏手を叩き、喜びながら私に名前を聞いてきた。
『ところで貴女、御名前は?』
『・・・パチュリー・ノーレッジ』
『パチュリー?・・うん!パチュリー!これからは貴女も私達の家族よ!?さあ!行きましょう?』
(私達の?)私は、その先の言葉をうまく聞き取れなかった。
ただ、なにも考えず二人に付いて行った。道中、二人の名前を女から聞いた。
吸血鬼はスカーレット。人間は十六夜。吸血鬼と人間の夫婦。
そして昔話。どれもこれも信じられない事ばかりだった。
・・・そして目的地についた。そこにはとても大きな館があった。
(こんな大きな館に住むなんて、どこの富豪かしら?)
私はその館の中に入った。
そして案内された場所には・・・・
溢れんばかりの書物があった。唖然としている私に十六夜という女が話かけてきた。
『すごいでしょ?・・でもね?うちにはこれを扱いきれるような頭良い人いないのよねー?・・・でも、これだけの知識。使わないのも勿体ないじゃない?・・・そこで!貴女!パチュリー・ノーレッジの出番!ここで、この知識。研究しない?』
ッ・・・・・・!?
本棚をチラッと見ただけで、魔女なら喉から手が出る欲しい書物が山の様にある。
(・・・これだけの知識を手に入れれば、なんでも出来るようになるわ)
・・・・そう思ったが、私を試す罠とも考えられる。敢えて逆に聞いてみた。
『これだけの知識、私が手に入れたら・・・貴女達を殺して、この館を乗っ取るわよ?』
私がそう言うと、十六夜という女は急に私の顔に自分の顔を近づかせ
『うーん?・・・大丈夫!その顔はしない子の顔よ!それにする気あるなら言わないでしょ!?』
(確かに・・・あるなら言わずに知識を得て、殺すけど。顔で判断って・・・)
私は、この人が分からなかった。
『パチュリー?ここの全ての知識。早く得て、全部私に分かる様に教えてね?』
『・・え?』
『じゃあねー?後は任せたわよ?』
(教える?この量を?)
・・・。
・・・。
・・・。
こうして私はこの館、紅魔館で仕えることになった。
毎日食事もろくにとらず、寝る間も惜しみ、知識を漁り続けた。
ある日、そんな私を気遣い十六夜様が、身の回りの世話をするメイドを付けてくれた。
内緒の話だが、彼女の妹らしい。十六夜様もたまに来て、休憩と口実をつけては、三人でくだらない話をしたりもしていた。
・・・私は徐々に楽しいという感情が芽生えて来ていた。
そして十六夜様が来ない日を寂しいと思うようになっていた。
得た知識を教え、十六夜様が驚く。・・・それが楽しく。毎日毎日、本を読んだ。
自己の為の知識が、他人の為の知識になっていった。
ある時は、実験に失敗し、爆発して、三人で真っ黒になって笑ったり。
ある時は、ゾンビを作る薬を作り、十六夜様に怒られたり。
ある時は十六夜様の子、レミリア様に大切な書物を破られて、怒ったり。
ある時は、メイドの負担を減らせれる様に、手伝いをする使い魔を召喚したり。
今までの淋しさを取り返すように、毎日楽しく生きていた。
それに伴い、魔法の腕も上がっていた。
十六夜様の為、ここの知識を全て得ると誓った。
・・・そんな時、吸血鬼同士の大きな戦争が始まった。