(ホムンクルス・・・月の技術。・・月の頭脳と呼ばれる[八意・永琳(ヤゴコロ・エーリン)]が昔成功させたが、月の民達に人道的に良くないとされ、その技術は抹消されてたはず・・。まさかこの世界で不完全とは云え、創りだす頭脳を持つ者がいるとは・・・・。しかし・・・。)
パチュリーの眼は焦点が合っていなかった。
・・完全に壊れる寸前。
・・美鈴に気付けた事すら奇跡と思えるほどに。
『・・・貴女。成功する前に、精神が持たなくなって・・・・死ぬわよ?』
パチュリーは、紫の進言を拒否した。他の事を考えれる余裕の無さが伺えた。
『レミィが苦しんでいるのよ!?部外者は黙ってて!!早く!早く咲夜を!』
『パチュリー様!落ち着いて下さい!それに、これは生き返るじゃなく・』
『解っているわよ!!!』
パチュリーは美鈴の言葉を遮り、怒鳴った。
[生き返る]・・・ではない。
これは・・・新しく[創りだす]だ。
・・・・。
『じゃあ。貴女は出来るの!?レミィを救えるの?咲夜を生き返らせれるの?やってみせてよ!?』
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・美鈴はなにも言えなかった。
自分には生き返らせるどころか創りだすことすら出来ない・・・。咲夜の為に何も出来ない。
・・美鈴は悔しくて黙った。
・・・・。
『はぁ・・。・・見てられないわね』
紫は呆れた顔をして、指で空間をつついた。
・・突如何もない空間が裂けた。次々と裂ける空間。
その大量の[スキマ]の様な物が部屋中を埋めつくした。
・・・そして、上のスキマから、大量の咲夜。いや、ホムンクルスの実験体が出てきた。
上から次々出てきて、それを全て下で回収。ひたすらその不思議な光景が繰り返された。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
『・・あったわ。』
そう言うと紫は、一体のホムンクルスを捕まえた。
『これが、成功体。実験No.1341398。・・貴女はあと1340687回も彼女を殺さなければ駄目だった。貴女はそこまでやれた?・・・・はあ・・。少しは目。醒めたかしら?』
パチュリーはそのおぞましい光景。そして、紫の言葉に少しではあるが冷静になった様子だった。
・・無理だったと気付いたのか膝をつき愕然としている。
・・それに気付けただけ、彼女はまだ壊れきっていなかった、という事だろう。
しかし、どうしても生き返らせたい美鈴は、不服だった。彼女は作り物の咲夜を受け入れれなかった。
『でも、こんなもの作らなくても紫さんなら・・・』
紫は、また呆れた顔をした。うんざりしている様子だ。
『だ・か・ら!死者蘇生は無理。と言ったでしょう?』
そして、山積みにされていた最初にパチュリーが失敗したホムンクルスの亡骸をスキマで回収していた。
・・・・・・。
『あと、ホムンクルスは成功してもオリジナルの心はないわ。知識はあり、姿形、身体能力はオリジナルと同一に出来ても、思い出、記憶等、そういったものは写せれない。・・だから、成功しても決して、それは本人とはいえないわ』
・・・・!?
『それじゃあ・・・私は一体、なにを・・・何の為に・・・』
失敗は許されない。・・それどころか成功すらも意味をなさない。
失った咲夜の遺体はもう戻らない。パチュリーが自己嫌悪に陥る。
・・・。絶望する中、美鈴が紫に懇願した。
『紫さん!?どうにかならないんですか?貴女は、この世界の管理者なんですよね?お願いします!私で良ければなんでもしますから!』
・・・・・・。
・・・・・・。
『記憶の移動なら、出来るわ。消す事も、呼び戻す事も。・・・ただ、根本的な人格がどうなるかは運頼みになるわね。成功すれば、オリジナルとの違いは、人かホムンクルスか、ていう事だけになるわ』
・・・・。
『それでもいいわ!』
暫く考えた後、力強く頼むパチュリー。
違いが人かホムンクルスかだけ・・・。
レミリアにさえ気付かれなければ、レミリアを救える。
・・・レミリアを救う。
その為に・・・。
そんなパチュリーに紫が問う。
『失敗したら、容姿、言葉、記憶を持つ、ほぼオリジナルに近い彼女が出来上がる。でも根本的な人格が破綻している。分かりやすく言えば、狂った彼女ね。その、狂った彼女を貴女達は殺せる?狂ったこと以外は全て本物よ?入れ物を除いて。・・・考える時間はまだあるわ。確率は・・・五分よ。』
・・・・・・。
それに対しパチュリーはすぐに覚悟した目で紫を見て頷いた。余程急いでいるのが分かる。
『・・分かったわ。じゃあ次は、成功したらの話ね。まあ、入れ物だけが違う、完璧な彼女が出来るわ。あと、ホムンクルスは寿命が短い、肌がボロボロ崩れだしたら、すぐに博霊神社に来る事。替えを用意してあげるわ』
『・・・・・じゃあ・・・始めるわよ?』
パチュリーと美鈴は頷いた。
そしてパチュリーはこの事を誰に対しても伏せるよう美鈴に言い、美鈴もこれを了承した。
・・紫がホムンクルスの頭を指でつく。
・・・・・・。
・・・・・・。
!!!!
ホムンクルス・・・いや、咲夜の目が開いた。ここで暴れたりしだしたら失敗だ。
(あれ?ここは?確か、私は、能力を使い・・・気を失っていたの?)
(パチュリー様と美鈴?パチュリー様痩せた?美鈴泣いてる?)
(で、あと一人・・・誰?)
ッ・・・・・!!
『きゃああああぁ!!』
・・・ッ!?
『失敗なの!?』
その覚悟はしていた。
・・全てが終わる。咲夜を殺したパチュリー。恐らくレミリアに殺される。パチュリーに加担した美鈴も同様。狂った彼女は全てを殺し尽くすだろう。
だが、悔いはない。
・・と言えば嘘になるが、自分が選んだ道。既に覚悟はある。
パチュリーが魔法詠唱を始めた。
・・・ッ!?
紫がそれを手で遮った。
『パチュリー様!なんで、私!』
『・・・・裸なんですかあ!!』
咲夜は慌てて、近くの布を羽織る。
その後、美鈴に近寄って来た。
バシッ。・・・なぜか叩かれた。
美鈴は、少し嬉しそうだった。
・・しかし、すぐに咲夜の肩にあるNo.を見て、表情が暗くなった。パチュリーと美鈴の表情は成功したにも関わらず暗かった。
・・ッ!?
『お嬢様は!?お嬢様はどこにいるんですか!?』
咲夜は暗い雰囲気の二人を見て、レミリアに何かあったのかと思い、慌ててレミリアの消息を聞く
・・・・・。
答えない二人。
・・・・・業を煮やした紫が口を開き、パチュリーに問うた。
『貴女の望んだ事が早くなっただけよ?さあ、これからどうしたいの?・・腹をくくりなさい。』
腹はくくってたはずだった。覚悟はしていた。
・・だが、実際これからの事を考えると本当にこれは咲夜の為、レミリアの為だったのか不安になっていた。
しかし、またも紫の言葉によって覚悟し直す。
『咲夜。今からレミィの所へ案内するわ。貴女も覚悟しといてね?』
『・・・・』
咲夜は、レミリアになにかあったという事には気付いた。
しかし・・・(案内)する。
その言葉がレミリアの生存を意味するものと取り、安堵しつつも、覚悟をし小さく頷いた。
そして、皆でレミリアのいる所へ向かった。
・・道中、パチュリーは再度、レミリアに咲夜の事を伏せる様に美鈴に念を押した。
そして・・・レミリアの自室の前に着いた・・・。
中からは明らかに異常が起きている雰囲気が出ていた。
入れば後悔する。入ってはいけない。そんな淀んだ空気が漂っていた。
しかし咲夜はノックもせずに、慌ててそのドアを開けた。
『お嬢様!!・・・ッ!!?』
中には、なにもない空間に怯えながら怒りながら、ブンブン手を振り回して切り裂きながら、奇声を発しているレミリアがいた。
・・・・それには、もう、あの頃の面影は全くない。完全な別物だった。
その別物は、咲夜に気付きジッと見る。
『予知?咲夜?あああ?違う?・・・・違う!咲夜は死ぬ!皆、死ぬ!偽物!?あああ!!もうやめああああ!!出てくるなあああ!』
『え?』
ダッ!
レミリアは咲夜に飛び掛かり。殺気の籠もった爪で咲夜を切り裂いた。
『咲夜さん!危ない!』
咄嗟に、美鈴が咲夜を庇った。
ザシュ!
美鈴は背中を斬られた。
『くっ・・・』
レミリアは美鈴、パチュリー、そして紫にも狂気に満ちた目をやった
『美鈴?パチュリー?居ないはず?私をまた殺しに?死んだはず?誰?金髪?いらない。なんで?違う。また出てきた・のね・・・・殺すのね?・・なら・・・うん・・また殺さなきゃあああ!!』
レミリアが襲い掛かってくる。紫は、黙ってそれを避けながら様子を見ている。
パチュリー、咲夜、美鈴の三人は、ひたすら切り刻まれながらも、レミリアを説得していた。
・・・・・・。
だが・・・その声は彼女には届かなかった。
『あー、本当!来るんじゃなかった。』
イラついた様子で、紫が三人をスキマの中に入れた。
三人が消えた事によりレミリアの動きも止まった。
『あはははは!ほら?偽物!消えた!次はどんなの!?なんなの?誰なの?あはははは!死ぬのよ?私も!咲夜も!パチュリーも!美鈴も!あはははは!』
紫は、静かにレミリアを見つめ・・・
『ふぅ・・・・面倒臭いけど・・・・・・・貴女・・』
『・・・少しお仕置きが必要ね?』
紫からレミリアのそれを越えた殺気が放たれる。そして部屋全体にスキマを展開した。
・・・レミリアはその殺気に気付いてか気付かずかニヤリとした。