兄妹の甘くて淡い三日間   作:シロイルカ

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1話

俺は物部悠。

世界でたった一人の男の「D」であり、現在は「ミッドガル学園」という自治教育機関で訓練などを行っている。

学園の生徒会長は、物部深月。

深月は、偶然にも名字が同じな訳ではなく、俺の義理の妹だ。

クラスも一緒で、俺達は「ブリュンヒルデ教室」に所属している生徒である。

 

……そして、今日はそんな深月の様子が、いつもと違って何やらおかしい。

今回は、一体どうしたものだろうか?

ちなみに、今は演習場に向かう途中である。

 

 

「…………」

 

やっぱり、いつもの深月じゃないな。

いつもより大人しいし、何だか足元がフラついている気がするし……

……ん、待てよ? ということは……

 

フラーッ

 

「深月っ‼」

 

床に倒れ込みそうになった深月を、俺は瞬時に支えることができた。

そうか、やはりそうだったのか。

こいつ、どう見ても熱があるじゃないか…!

 

「深月さん⁉」

 

「深月ちゃん‼」

 

……でも、こうなってしまったものは仕方がない。

 

「モノノベ! 早く深月ちゃんを……」

 

「ああ、分かっている。俺が、このまま急いで保健室に連れて行く」

 

「……物部悠に頼むのは少し癪がありますが、仕方ありませんわね」

 

「深月ちゃんのこと、よろしくね? モノノベ!」

 

クラスの仲間達から許可をもらい、俺は深月を抱いて直ちに保健室に向かった。

他のクラスを通る度に、「あの唯一の男子生徒が会長をお姫様抱っこしてる」などと不平が聴こえるが、緊急事態だから仕方ない。

今、大事なのは、妹である深月だから!

 

 

 

 

保健室に到着すると、俺は深月を空いていたベッドに寝かせた。

起きたら熱を測ってやるか。

 

「…………」

 

……やっぱり、会長としての義務や日頃の演習などで疲れちゃったのかもな。

無事に良くなってくれるといいけど。

 

「……あれ…? ここって……」

 

すると、深月が目を覚まし、ゆっくりと体を起き上がらせた。

 

「良かった。起きたか」

 

「……兄さん……」

 

「この感じだと覚えていないとは思うが、お前、演習場へ向かう途中の廊下で、急に倒れてしまったんだよ」

 

「私が…?」

 

「多分、相当疲れていたんだと思う」

 

「……兄さんが、私をここまで運んでくれたのですか?」

 

「元々、倒れそうになったところを支えたのが俺だからな」

 

「……ほ、本当、相変わらずですね兄さんは/// 女性の体を平気で抱くなんて、破廉恥行為にも程があります……///」

 

熱があるからといって、いつもの深月と変化はなかった。

 

「お前のことでそれ所じゃなかったんだ。許してくれ」

 

「……それなら、仕方がありませんね…… 許してあげます///」

 

「ありがとう。……それより、起きたところ早速で悪いが、今から熱を測ってくれないか?」

 

と、俺は深月に体温計を渡した。

確率はかなり低いと思えるが、できれば、「実際には熱がなかった」ということを願っている。

 

 

 

 

ピピピ、ピピピ……

 

どうやら測り終わったらしく、深月は、脇の下から体温計を取り出して確認した。

 

「…………」

 

「どれどれ…………っておい。深月?」

 

俺も温度が気になって覗こうとすると、深月はその体温計を瞬時に隠した。

ん、怪しいぞ…?

 

「べ、別に、これは私自身に関係することなので、兄さんが確認することではないかと……」

 

「お前まさか…… なあ、いいから見せてくれ」

 

「それは嫌です!」

 

「…………」

 

……そうだ。

こいつは、この調子でも、一応体調を崩している病人だ。

だから、きっと普段よりも動きは鈍いはず。

深月には悪いが、こうなったら……

 

「ひょいっ」

 

「あ……!」

 

俺は、深月の体の後ろから、すんなり隠していた体温計をゲットすることができた。

すなわち、やはり動きが鈍くなっていた。

 

「……おいっ。これはマジなのか…?」

 

「だ、だから兄さんには見られたくなかったんです……」

 

「深月。お前、39度って…………明らかに高熱じゃないか‼」

 

というか、39度もあるのに、どうしてこんなにいつも通りの自分でいられるんだ……??

倒れる前までもよく我慢が出来たなと、逆に感心してしまう。

 

「どうして見せたくなかったんだ?」

 

「だって、この温度が兄さんに気づかれてしまったら、無理矢理でも早退されてしまうじゃないですか…… 授業も、私自身は受ける気でいたのですから……」

 

……やっぱり、深月は真面目なんだな。

いや、「馬鹿真面目」と言っても過言ではないかもな。

 

「いくら俺に気づかれなくても、この状態で参加したらまずいだろ。今日と明日だけは、安静にして休みな?」

 

「明日もですか⁉」

 

「当たり前だろ? 演習のことはこれ以上考えるな。今は自分の体を大事にしろ」

 

「……分かりました……」

 

「ひとまず、今日のところは早退した方がいいだろうから、まずは部屋に戻る支度を済ませるか」

 

「はい」

 

……そうだ。

よく考えれば、この体温だと、さすがにこいつを一人にさせておくのはまずいよな……?

 

「……兄さん?」

 

「わかった。今日は、俺が一日お前の側についてやるよ」

 

「……えっ…?///」

 

おっと。用件を説明しないと、さすがに驚くか。

 

「こんな状態で、お前一人にさせておくわけにはいかないだろ? だから、今日は俺が一日付き添いをして、深月のそばにいてやるよ」

 

男子が女子の部屋に来て一日付き添いをすることは、普通では滅多に有り得ない。

でも、このような状況になってしまったからには、深月のためにも側にいてあげた方がいいと俺は感じたのだ。

 

「……と、特別ですよ?///」

 

「ありがとう。それなら、教室に置いてある荷物は俺が取りに行ってやるよ」

 

「いえ。兄さんに女性の荷物を運ばせるわけにはいかないので、私が取りに…………っ‼」

 

そう言って立ち上がろうとした瞬間、深月は頭痛を感じたのか、左手で頭部を押さえながらその場にしゃがみ込んでしまった。

 

「すみません。やっぱり、兄さんにお願いできないでしょうか? 今の私じゃ、立つのが精一杯です……」

 

「……だから言っただろ? ちょっと待ってろ」

 

そう言うと、深月を保健室に置いて、代わりに俺が用具を取りに教室まで向かった。

 

 

 

 

何分か経ち、俺は深月と自分の用具を持って保健室に到着。

 

「持ってきたぞ。ついでに、篠宮先生に早退することも伝えてきた」

 

「ありがとうございます。もしかして、兄さんも早退するのですか?」

 

「何を言っているんだ。付き添うんだから当たり前だろ?」

 

「……そっか。兄さん、私のために……」

 

「今、何か言ったか?」

 

「独り言です。それより行きましょう?」

 

「そうだな。ただ、お前、立つのがやっとなんだろ? 部屋まで歩けるか?」

 

「私も、それについて悩んでいたところです」

 

……何か、良い手段は無いのか……?

 

「……こうなったら、俺がまた深月を抱いて部屋まで連れて行くしかないか?」

 

「そ、それはっ。さすがの私でも、羞恥心が耐えられなくなるのでやめてください……///」

 

「俺だって恥ずかしいけど…………なら、抱くんじゃなくて、俺が深月を負ぶうっていう方法は? それ以外には思いつかないんだ」

 

「……そちらも恥ずかしい気にはなりますが、まあ、仕方ありませんね……///」

 

「ああ。許してくれ」

 

ようやく同意してくれたところで、俺は深月を負ぶって保健室を出た。

 

 

 

 

「見て? あの唯一男の人が会長を……」

 

「うわぁ……」

 

やっぱり、他のクラスを通る度に不平なとが聴こえてしまう。

仕方ないんだ。緊急事態なんだから!

 

「兄さん。やっぱり、負ぶわれていても羞恥心を感じてしまいます……///」

 

「だから許してくれって……」

 

後ろで負ぶわれている妹からも不満を言われてしまう。

まあ、それは仕方ない。とにかく、今は一刻も早く回復してくれれば、それで……




2話へ続きます。お楽しみに!
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