放浪者二人   作:草薙@シリアスくれ

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グランドライン前半の海にて

 カチャカチャと、食器と食器が擦れ合う音が響く。

 音の中心には、特徴的なその長く尖る耳を覗かせる、一人の少女の姿があった。

 彼女は、取り出した食器と幾つかお菓子を入れたバケットを、キッチンの片隅に置いておいたワゴンへと乗せ、船のテラスへと運ぶ。

 テラスには、可愛らしい白を基調としたテーブル一つと椅子が二人分置かれており、その内の一つには、蒼い髪を持つある種特徴的な髪型をした、着物のような服を着た女性が腰掛けていた。

 

「……リラ、ティータイムにしましょうか」

 

 

 リラ、そう呼ばれた女性は一つ頷くと、今日(こんにち)のお茶請けは何かを尋ねる。少女はそれに答えながら、ティータイムを始める準備を進めーー少しして、とても和やかなティータイムが始められた。

 

 

 

 

 ーーさて、突然だが、ここで一つ、昔話を聞いていただきたい。

 これは、とあるエルフ族の少女の話。

 

 少女は、幼い頃から持って生まれた強い、否、強過ぎる力により、恐れられ、また虐げられてきた。

 そのうち少女の耳へは、力を押さえつけるためのお粗末なピアスが取り付けられ、それにより、なんとか他人並の生活が送れていたのだった。

 

 それから、数年が経ったある日の事。

 力を抑えていても恐れられる自身に対し、そして世界に対し嫌気がさした少女は、ある禁忌を犯してしまった。

 

 悪戯半分で行ったその禁忌は、彼女にとって不測の事態を招き、その中で、一人の少女と出会う。

 一つ違いで年も近い彼女達はあっという間に仲良くなり、いつしか、一緒に居て当たり前のコンビになっていた。

 そんな中、二人は声を揃えて言う。

「二人だけで世界を回ろう」

 彼女達は、顔を見合い同時に笑った。

 

 

 ーーそんなこともありましたね、と、そうエルフ族の少女、エレフは言う。

 話し込んだお陰で紅茶はすっかり冷めきって、淹れたてとはまた違う、一味深い旨みを醸し出していた。

 

「……それにしても、珍しいわねぇ。エレフが突然、グランドラインを出たいー、なんて」

「偶には、平和が欲しいんですよ」

 

 目の前の少女、リラは笑う。

 軽蔑とも、嘲笑とも違う、親しげな笑みを浮かべて。

 それに答えるエレフの表情も、また微笑みを浮かべていて。きっと、二人の間でしか通じない何かがあるのだろう、二人ほぼ同時に吹き出した。

 

 遠くから、大砲が放たれる音が聞こえる。

 二人はため息を着くと、物騒だ、と呑気に呟いた。

 

 降ってくる大きな球は、進行方向にある海賊船から放たれたようだ。

 しかし、彼女達はくすくすと声を漏らす。まるでそれは、その攻撃は意味がないとでも言うように。

 次の瞬間、球は見えない壁に勢い良くぶつかりーー粉々に砕けた。

 

 そこから、二人は立ち上がる。

 己等の船に攻撃を仕掛けたことに対しての、罪を味あわせる為に。

 

 

 ーー刹那とも取れる時に海賊船は海の藻屑と消え去り、後には海を逃げ惑う船員達のみが残ったという。

 これが、二人の実力なのか。

 

 二人は、何事も無かったかのように船を進ませた。

 目指すは、東の海(イーストブルー)

 そこから、少しずつ運命の歯車がズレる事など、今は、まだ誰も知らない。




6/5,17:39 発見した誤字を修整
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