ーサラ・ヒューイットー
リゼンブールに来て4日が経ちました。
ピナコさんとウィンリィちゃんは約束通りエド君の新しい
その時、アル君の魂と鎧を繋いでるのは、エド君の血で描かれた錬成陣だということを教えてもらいました。
自分の血を使って弟の魂をこの世界に留めたというんですから、やっぱりこの世界はヘビーですよね。
そして、エド君の手脚とアル君の鎧が戻ったので、次はセントラルにあるという国立中央図書館に向かいます。
「あれ、ウィンリィは?」
「徹夜続きだったから、まだぐっすり寝てるよ。起こしてくるかい?」
いよいよ出発という時になって、アル君が呟いた言葉にピナコさんが返しました。
まあ、機械鎧修理のために3日徹夜を続ければ、起きるのが遅くなるのも仕方ないでしょう。
それを理解してるからか、エド君も
「あー、いいよいいよ。起きてきたら、機械鎧の手入れはちゃんとしろだのって、あーだこーだうるさいから。じゃあな、ばっちゃん」
と答えました。
「ああ、気をつけて行っといで。ボウズども、嬢ちゃんもたまにはご飯食べに帰ってきな」
「うん。そのうち、また」
「ありがとうございました」
ピナコさんとデンに見送られて、駅に向かおうとしたら
「エド!アル!」
と2階のバルコニーから声が聞こえました。
寝ぼけ眼のウィンリィちゃんが手摺にもたれかかりながら、ヒラヒラと手を振りながら眠気全開の声で見送りの言葉を2人に送ります。
「いってらっさい」
それに対して、エド君はぶっきらぼうに
「おう」
とだけ答えて、さっさと行ってしまいました。
よっぽど恥ずかしかったんでしょうか?
「早くしろよ、アル!」
「兄さん、そんなに急がなくても…」
「うむ、図書館は逃げる事はないぞ」
「プレゼントを待ちきれない子供みたいですよ」
「子供いうな、サラ!来たぜ、セントラル‼︎」
とエド君がはしゃいでるように、私達はこの国の首都であるセントラルシティにやってきました。
さすがに一国の首都なだけあって、駅構内は人の往来が激しいです。
「アームストロング少佐、お迎えにあがりました」
その声が聞こえた先に2人の男女がいました。
ショートの黒髪に泣き黒子が特徴の女性と、金髪の男性、共通するのは2人とも軍人という事ですね。
「うむ、ご苦労。ロス少尉、ブロッシュ軍曹」
「あ、こちらが鋼の錬金術師殿でありますか」
「マリア・ロス少尉です。お会いできて光栄です!」
「デニー・ブロッシュ軍曹です。いやぁ二つ名通りの出で立ち!素晴らしい貫禄ですな!」
少佐が2人に挨拶すると、女性のロス少尉と男性のブロッシュ軍曹は、「鋼の錬金術師」だと2人が勝手に判断したアル君に挨拶しました。
全身鋼の鎧という姿のアル君と、右腕左脚が機械鎧のため服で隠れているエド君では、アル君の方が「鋼の錬金術師」っぽく見えるんでしょう。
こういうやりとりにも慣れてるのか、アル君は黙ってエド君を指差します。
すると、軍曹が言っちゃいけない一言を口にしてしまいました。
「え?あっちのちっこいのが本物?」
その瞬間、エド君が暴れそうになったのを少佐が襟首を掴んで抑えます。
「では我輩は、このまま
少佐はここで別行動になるようで、そう言いました。
すると、さっきの怒りを忘れたかのように、エド君がニコニコと別れを告げます。
「え?何?ここでお別れ?お疲れさん!残念だなぁ!バイバイ‼︎」
そこまで嬉しそうに言わなくてもいいのでは?というような喜びようですが、少佐にはその気持ちが伝わらなかったみたいです。
「我輩も残念だ‼︎まっこと楽しい旅であったぞ‼︎また後ほど会おう‼︎」
そう言って少佐は涙を流しながら、エド君を思いっきり抱き締めました。
イーストシティでの悪夢が甦ります。
「ボキッ」とか「ベキッ」とか「ミシッ」っていう聞こえてはならない音が、エド君の身体から発せられました。
少佐はというと満足いくまで抱擁しきったからか、
「あとは任せた!」
と魂が抜けたような顔のエド君を2人に預けます。
そこで、まだ軍の護衛が自分につくと気付いたエド君は納得いかないと声をあげますが、少佐はさも当然と言わんばかりです。
「東方司令部によると、
「少佐ほど頼りにはならないかもしれませんが、腕に自信がありますので安心してください」
そう言う少尉と軍曹に連れられて、私とエド君達3人は軍が手配した車に乗りました。
「ところでこちらのお嬢さんは…?」
「ひょっとして彼女さんですか?」
「なんでこの怪力女が彼女かーっ!」
少尉と軍曹の質問にエド君が叫ぶように答えますが、怪力女って紹介は失礼じゃないですか?
「紹介が遅れました。私、サラ・ヒューイットと言って、エド君達と旅をしている者です。確かにエド君の彼女ではありませんが、怪力女でもありませんよ」
「嘘吐け。少尉達も気をつけな。こいつ、弟のアルの鎧を軽々と持ち上げるんだぜ」
エド君のセリフに驚いて私を見る少尉達。
そんなに驚いたように見なくても、これくらい普通ですよ、普通。
「そ、そう言えば弟と仰いましたが、こちらの鎧の方が弟さん…?」
「はい」
少尉が戸惑うように尋ね、アル君もその質問には慣れているのか素直に答えます。
すると、軍曹が至極当然の疑問をぶつけました。
「それにしても、何故鎧のお姿で…?」
そう思うのも当たり前ですよね。
私はアル君はいつも鎧を着用しているものなんだろうと思って気にはしませんでしたが、普通はそこを変に思いますよね。
まだ
エド君とアル君は顔を見合わせ、
「「趣味で」」
と苦し紛れに答え、少尉達はヒソヒソ話を始めます。
大方、「趣味で鎧を着てるとか意味わかんない」みたいな事を言ってるんでしょう。
細かい事は気にしないに限りますよ。
そうこうしている内に私達を乗せた車は図書館へと到着したみたいで、エド君が騒がしくなります。
「あ!見えてきた、見えてきた‼︎」
「ええ、あれが国内最大の蔵書量を誇る国立中央図書館です。全蔵書を読み切るには、人生を100回繰り返しても足りないと言われております」
人生を100回繰り返しても足りない蔵書量ですか。
図書館島とどっちが多いんでしょうかね?
「そして、その西隣に位置する建物が、お二方の目的とする第一分館です。ここには様々な研究資料や過去の記録、各種名簿等が収められています」
早速という感じでエド君とアル君は第一分館に入って、マルコーさんの本を探しにいきました。
ですが、この第一分館だけでもかなりの蔵書量があるのに、闇雲に探しても見つけるのは大変でしょう。
こういうのは、専門家に聞くに限ります。
私は受付にいて、本を読み耽ってる司書と思しき眼鏡の女性に声をかけました。
「すみません」
「…」
「すみません!」
「え?ああ…はい!」
「ティム・マルコーさん名義の研究書がこの第一分館にあると聞いたんですが、どこにあるかわかりますか?」
「ティム・マルコー…マルコー…ええ!この分館に収めてありますよ。よければこちらにお持ちしましょうか?」
「そうですね、よろしくお願いします」
そう言って、眼鏡の人はマルコーさんの本を探しに行きました。
それにしてもよっぽど本が好きなんでしょうね。
本に集中しすぎて私の声が聞こえなかったみたいで。
しばらく待っていると、眼鏡の人が沢山の本を抱えて戻ってくるのが見えました。
本の重さでフラフラして、危なっかしいことこの上ありません。
「そんなに一遍に抱えては大変ですよ。私が持ちましょう」
そう言って、眼鏡の人が持っていた本を全部抱え受付まで戻ります。
「すすす、すみません!お手数をおかけして」
「いえいえ、これくらい全然重たくないので。マルコーさんの著書はこれで全部ですか?」
「同じ量がもう一回分あるんですが…」
「では、それも一緒に取りに行きましょう。すみません、ロス少尉は研究書を置いておくので、この受付で待っててください。それとブロッシュ軍曹はあの2人を呼び戻してきてください」
と一緒に受付で待っていた少尉と軍曹にお願いして、残りの著書を眼鏡の人と共に取りに行きました。
眼鏡の人に案内されて残りの著書を回収して受付に戻ると、エド君達も受付にいて先に回収していた著書を読んでいます。
「なあ、司書の姉ちゃん。これ本当にマルコーさんの?」
「はい!ティム・マルコー著の料理研究書、『今日の献立1000種』です」
え?料理本?
「じゃあ、これ全部借りて行くから。アル、これ持って本館の方に行こう」
「うん、あっちは辞書が揃ってるしね」
そう言って手続きを済ませ、2人と軍曹はマルコーさんの著書を手分けして持って、本館に行ってしまいました。
賢者の石の研究書を探してる筈なのに、何で料理本なんでしょう?
まあ、エド君達が納得してるならそれでいいんですけど。
とりあえず、眼鏡の人にお礼を言っておきましょう。
「あれだけの量の本を、自力で探すのは大変だったと思います。助かりました」
「いえいえ、これも私の仕事ですから」
「ただ、本が大好きで司書という職に就かれたのでしょうけど、本にのめり込みすぎて仕事を疎かにしてたら、クビになっちゃいますよ。気をつけた方がいいですよ」
「た、確かに先輩からも注意されてました。そうですよね、母の病気もあるので気をつけないと…」
「では、私もこれで失礼します。お仕事頑張ってください」
そう言って中央図書館本館に行ってしまった3人を追うべく、一礼して少尉と一緒に分館を出ました。
眼鏡の司書はもちろんシェスカです。
原作では既にクビになってましたが、
第一分館火災イベントがなかったので
原作通りクビになってたら出番もなくなって
それはかわいそうかと思ってこういう形で出しました。