雷氷の魔術師   作:怠惰なぼっち

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第14話

ーサラ・ヒューイットー

 

エド君とアル君がアームストロング少佐に

 

「危ない事をするな‼︎」

 

と釘を刺されたその夜、案の定2人は賢者の石に隠された秘密を知るために宿を抜け出しました。

念の為にと、私の魔力を込めた糸を2人に巻き付けておいたんですが、それがこの宿から離れているのがわかります。

向かっているのは、昼間調べた第五研究所だった建物の方向ですね。

現在は廃屋ということらしいのですが、果たしてどうなっているのやら。

とりあえず、軍からエド君達の護衛任務を受けているロス少尉とブロッシュ軍曹に、2人が抜け出したことを報せましょう。

私は自分の部屋を出て、隣のエド君達の部屋に行きます。

部屋の前では少尉達2人が護衛として扉の前に立っていました。

 

「お疲れ様です。どうですか、2人の様子は?」

 

「こんばんは、サラさん。昼間とは打って変わって静かなものよ。少佐の言葉で大人しくなったのね」

 

「でもここまで静かだと、かえって不安になりますよね」

 

少尉と軍曹が返事をくれましたが、その不安は大当たりですよ。

 

「身体を元に戻すヒントの在り処を見つけたんです、少佐が大人しくしろと言って黙ってる2人だとは思えません。ちゃんと確認した方がよくないですか?」

 

「そ、それは確かに!」

 

すぐに扉をノックする少尉。

 

「エドワードさん、いらっしゃいますか?エドワードさん、エドワードさん!軍曹、フロントでスペアキーを借りて来なさい‼︎」

 

「はいっ!」

 

少尉は指示を出し、軍曹が鍵を取りに行ってる間も扉を叩いて、中にいる筈のエド君達に呼びかけを行います。

そして、鍵を借りてきた軍曹が扉を開けると、やっぱり部屋の中には誰もおらず、窓は開け放たれていて、ベッドのフレームに結ばれたロープが窓の外へと投げ出されてました。

 

「やられた‼︎」

 

「あ〜〜、職務怠慢でアームストロング少佐に絞りあげられるぅ〜〜」

 

軍曹が頭を抱えながら呟きます。

絞りあげられるというのは、物理的になんでしょうか…?

 

「…あのガキども〜っ!護衛(こっち)の身にもなれって言うのよ‼︎」

 

少尉もエド君達が勝手に抜け出したことに怒り心頭のようです。

額には井形が浮かんでますし。

 

「じゃあ、私も2人を追いかけますね」

 

そう言って、窓枠に足をかけます。

 

「ちょっ⁉︎サラさん!何をするつもりですか⁈」

 

「私は私のやり方で元第五研究所に向かいますので、お二方もすぐに追いかけてきてください。では、また後で会いましょう」

 

2人が何かを言う前に窓から飛び降りました。

ここは宿の3階ですが、私には何の問題もありません。

着地してすぐに影の転移魔法(ゲート)を展開し、ズブズブと潜って行きます。

行き先はエド君達がいる元第五研究所ですが、2人に巻き付けておいた魔力の糸が、若干離れた位置にあるんですよね。

これは二手に分かれたということなんでしょうか?

とりあえず、片方の糸の反応がある場所から近くの影を転移先とし、顔の上半分だけ覗かせました。

そこでは、アル君と2丁の包丁を持った鎧が戦っています。

ですが、アル君には相手の動きがちゃんと見えてるみたいで、相手が包丁を振り回しても避けて逸らして、反撃で拳をお見舞いしてとまだまだ余裕が見られます。

これなら、油断しない限り負けることはないでしょう。

ということで、もう一方の反応がある建物内部に、そのまま影の転移魔法で移動します。

こちらでは、エド君と刀のような刃物を持った鎧が戦っているんですが、エド君のあちこちに切り傷ができてて、ちょっとボロボロになってます。

武器として、右腕の機械鎧を錬成して手の甲の先に刃物をつけていますが、エド君は身体が小さい分リーチも短いですから、武器がそれだけでは不利でしょう。

しかし、一瞬の隙を突いて鎧の頭を斬り落としました。

鎧は仰向けに倒れますが、驚いたことに中に誰もいません。

それでも動いてたということは、あの鎧もアル君と一緒で魂だけが鎧にくっついてる存在なんですね。

右腕を元に戻したエド君が頭を持ち上げて、その鎧と何やら話を始めます。

ですが、倒れた鎧が起き上がりました。

エド君が頭と話をしてるってことは、鎧と魂をくっつけてる血印は頭の方に描かれてる筈なんですが…。

それは後で考えましょう。

今はエド君に斬りかかろうとしてる鎧を止めないと。

影から身体を出して、瞬動でエド君と鎧の間に立ち、相手が突いてきた刀の鋒を指先で摘んで止めます。

 

「なっ⁉︎刀が動かねぇ‼︎」

 

「何でサラがここにいるんだ⁈」

 

「なんと⁉︎」

 

鎧の身体の方からも声が聞こえました。

ひょっとすると、頭と身体に魂がくっついてるのかもしれません。

とりあえず、

 

「エド君、私も一応護衛をやってるんですから、危ないことがあれば助けますよ。少佐が釘を刺したところで、ここに来る可能性が高いことも、この一月一緒に行動して予想してましたし。でも少尉達は怒ってましたよ」

 

とここに来た理由を言います。

 

「くそっ!いい加減刀を離せ‼︎」

 

鋒を掴まれてピクリとも動かないことに業を煮やしたのか、鎧の方が剣を掴みながらも蹴りや拳を繰り出してきます。

それを避けて躱して一撃も掠らせずに、

 

「エド君、この人どうするんですか?このまま暴れさせても意味ないと思うんですけど」

 

と尋ねます。

 

「あ、あぁ…。いろいろ訊きたいことがあるから捕まえたいんだけど、血印がどこにあるかわかんないんだ」

 

少し間があってから、答えが返ってきました。

何でボーッとしてたんでしょう?

まあ、いいです。

無傷で捕まえたいということなので、空いてる手で糸を操って鎧を磔にします。

その際、刀を振り回されないよう強引に奪い取り、部屋の隅へと放り投げました。

これで心配はないでしょう。

 

「はい、終わりましたよ。これで鎧の人も動くことはできません」

 

「それってユースウェルでやったヤツか?」

 

「ええ、操糸術という物です。文字通り糸を使っていろいろできるんで便利な術ですよ」

 

「兄者〜〜」

 

私とエド君が話してたら鎧の人から声が聞こえました。

さっきまで糸から逃れようとジタバタ踠いてましたが、観念したのか心なしかぐったりしたように見えます。

 

「うむ…、情けないが我らの負けだ、弟よ。まさか小僧に負けた直後に小娘にも負けるとはな」

 

頭の人が返事した内容から2人は兄弟のようです。

 

「今度こそ知ってる事を話してもらうぞ」

 

「それは言えん。さっさと我々を破壊してここを出て行け」

 

「…人殺しは勘弁しろ」

 

「ふん、甘ったるい事を。こんな身体の我々が人と呼べるものか。殺すのではなく、破壊しろと言ってるのだ」

 

エド君と鎧のお兄さんが押し問答をしますが、さっき弟さんに襲われる前は情報を聞き出そうとしてたんですね。

お兄さんがここから出て行けと言ってるあたり、この建物の番人をやっているから、エド君を襲ったんでしょう。

ということは、建物の外でアル君と戦ってる鎧もこの兄弟と同じ番人なのかもしれません。

 

「あんたらの事を人間じゃないと認めちまったら、オレはオレの弟も人間じゃないと認める事になる。オレの弟は人間だし、あんたらも人間だ。殺しはしない」

 

それを聞いたお兄さんは、

 

「ふ…はははは、はははははは」

 

と笑いだしました。

 

「兄者?」

 

「ははははは、面白い‼︎我ら兄弟、物心ついた時から、盗み、壊し、殺しを繰り返し、人非人よ、鬼畜よと蔑まれて生きてきた。人としての心どころか身体までも捨てた今になって、初めて人間扱いをされるとは…。ふははは、面白い!小僧!石について知りたいと言ってたな?」

 

この兄弟も随分ハードな人生を送ってきたんですね。

 

「兄者!喋ったら、俺達処分されちまうぞ‼︎」

 

「どうせ我々は侵入者を始末できなかったのだ。役立たずとして処分されるだろう。それに元より一度死んだこの身…。何を今更怖れる事がある?置土産だ、小僧。全ておしえてやる!但し、私は『錬金術には詳しくない』と言った通り、賢者の石については何も知らん」

 

「うぉいっ‼︎話になんねーじゃんかよ‼︎」

 

確かに、エド君は賢者の石について知りたいのに、それを知りませんじゃあ、意味がないですよね。

それよりも、さっきから変な気配が近付いているのが気になります。

 

「石については知らんが、それを作らせていた者…。即ち、我々にここを守るよう言いつけた者の事ならば…」

 

「それは誰だ⁉︎」

 

「そいつらは…「エド君下がって!」」

 

お兄さんが何か言いかけたところで、さっきの変な気配が急に動き出し、部屋に入ってきたかと思うと、お兄さんを踏み壊してしまいました。

 

「おいおい、何で鋼のおチビさんがここにいるのさ?」

 

そこには袖のないスパッツみたいな服を着た長髪の男の子?が立っていました。

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