雷氷の魔術師   作:怠惰なぼっち

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第15話

ーサラ・ヒューイットー

 

賢者の石の秘密を知るため、元第五研究所に忍び込んだエルリック兄弟を追いかけると、エド君は鎧の頭と身体に魂を定着させられた兄弟と戦っていました。

刀で刺されそうになったエド君を助け、鎧の兄弟も捕まえて、いよいよ賢者の石を作った者について聞き出そうとしたところで、袖のないスパッツみたいな服を着た男の子?にお兄さんが壊されてしまいます。

男の子に?マークがついてるのは、身体の中の気配が一つだけではないからです。

似たような気配をマルコーさんを襲ったラストという女からも感じたので、同じような存在なんでしょう。

左脚には尻尾を咥えた竜の入れ墨がありますし。

私はすぐに弟さんの拘束を解除したんですが

 

「兄者‼︎兄者‼︎兄者ぁ‼︎ちくしょう!俺達はまだたたk…」

 

男の子は、私が部屋の隅に放った刀を態々拾っておいたみたいで、その刀を使って弟さんの血印を滅多刺しにして、鎧の弟さんも動かなくなってしまいました。

 

「ったくよー、おめーら貴重な人柱を殺しちまうところだったんだぞ?わかってんのか?おまけにこっちの事バラすところだったしよ。計画に差し支えたらどう責任とるんだコラ!なんとか言えよ!ああ⁈」

 

そう言いながら、弟さんの血印をガスガス刺してましたが、動かない事に気付いたのか

 

「あらー、根性ないなぁ。本っ当、弱っちくて嫌になっちゃうね」

 

なんて笑いながら言います。

見た目とは裏腹に残忍な性格なんですね。

 

「そうそう、初めまして。鋼のおチビさん」

 

ニコニコ笑いながら近付いてきますが、この男の子も不死身ならエド君には分が悪いどころではないでしょう。

なので、エド君の前に私が立ちます。

 

「エド君に危害を与えることは許しませんよ」

 

「誰か知んないけど、どいてくれないかなぁ。そこのおチビさんに用があんだよねぇ。それとも、あんたも殺してやろうか?」

 

男の子が凄んで言いますが、私だってそう簡単にはやられません。

 

「殺せるものなら殺s「チビチビとうるせーんだよ!てめぇが売った喧嘩だ‼︎買ってやるからありがたく…」…はい?」

 

私が返事してた横からエド君が叫びました。

チビチビと連呼されたのがムカついたのか、目の前で鎧の兄弟を殺されたのでキレたのか。

とにかく怒ってまた右腕を錬金で変形させようとしたんですが、手を合わせた瞬間「ゴキン」と音がしたかと思えば、右腕がブラリと下がってしまいました。

なんでしょう、肩が脱臼したような感じですかね?

 

「んなーっ⁉︎」

 

これからって時に腕が使えなくなって、エド君が叫びます。

啖呵切ったのにすぐに戦えなくなるって、カッコ悪いですね。

男の子も

 

「ラッキー♪」

 

と言いながらエド君に近付きます。

いや、私の存在を無視しようなんて、そうはいきませんよ。

 

「だから危害を加えさせないと言ったでしょう」

 

それだけ告げて、瞬動で勢いをつけた掌底を鳩尾に叩き込んで、男の子を吹き飛ばしました。

私をそこまで警戒してなかったからか、掌底がクリーンヒットして部屋の端まで行きます。

それにしても、見た目に反して随分重たい身体をしてるみたいで、手応えも思ってたよりズシリとしたものでした。

 

「ゲホッ、ゴホッ…。あんた何者だ?そんな形のくせに『スロウス』みたいなスピードとパワーなんて、人間じゃないだろ?」

 

「スロウス」というと「怠惰」ですか。

怠惰(スロウス)なのにスピードがあるってどういうことなんですかね?

 

「そういうあなたの方が人間じゃないでしょう?あなたの中にたくさんの人間の気配を感じますよ」

 

「…あんた、ホントに邪魔だなぁ。そこのおチビさんを眠らせて、ここから退場願おうと思ってたけど、もういいや。じゃあね」

 

そう言って男の子は逃げてしまいました。

あっさり行ってしまいましたね。

まあ、目的通りエド君の護衛は出来たので良しとしましょう。

 

「エド君、大丈夫ですか?」

 

「ああ、右腕が上がらないだけで指は動くから。肩が外れた感じだな」

 

「そうですか。これからどうします?邪魔者は逃げて行きましたけど」

 

「そうだな、もう少しこの部屋を調べy「ズーン」…なんの音だ?」

 

エド君はこの部屋を調べようと言うつもりだったんでしょうが、下から何かを爆発させる音が複数聞こえます。

それとともに、「ドドドドドド」という地響きが鳴り始めました。

 

「マズいですね。さっきの人はこの建物を壊すつもりですよ」

 

「仕方ない。サラ、ここから逃げるぞ!」

 

「そうですね。ただ建物の通路をご丁寧に逃げてると遅くなるかもしれないんで、ショートカットしましょう」

 

そう言って、

 

「リインカーネイション

来たれ氷精(ウェニアント・スピリートゥス) 闇の精(グラキアーレス・オブスクーランテース)

闇を従え(クム・オブスクラティオーニ) 吹雪け(フレッド・テンペスタース) 常夜の氷雪(ニウァーリス)

闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)

 

呪文を唱えて「闇の吹雪」を天井に向けて放ちます。

黒と白の奔流が天井に穴を開け、勢いは止まらず空へと伸びていきました。

「闇の吹雪」を撃ち終えると地響きで揺れる建物にポッカリと穴が開き、三日月が顔を覗かせます。

 

「サラ?今のは何だよ⁉︎」

 

「今のは傷の男の時に見せた氷の矢の術の上位版ですよ」

 

嘘は言ってませんよ。

エド君はポカーンと口を開けて惚けてますが、それどころじゃないんです。

 

「これで、脱出口は出来ました。さて、おんぶとお姫様抱っこ、どちらがいいですか?」

 

「おんぶとお姫様抱っこってどういうことだよ?」

 

エド君がわからないというか、わかりたくないといった感じで言いますが、

 

「決まってるでしょう、上に開けた出口から逃げるんです。エド君では無理でも、私は跳べます。だからエド君を抱えるのにどちらがいいかと訊いているんです」

 

と一刀両断しました。

女子に抱えられることに抵抗があるのか、エド君はウンウン唸りながら悩んでいます。

ですが、その間にも建物は崩壊に近づいているんですよね。

 

「時間切れです。これ以上待てないんで、お姫様抱っこにしますね。では失礼します」

 

そう言って、膝裏と背中に手を添えて、お姫様抱っこの状態にしました。

 

「ちょっ⁈ちょっと待てって!あの高さまで飛べるわけないだろ⁉︎」

 

「舌を噛んじゃうので、口は閉じててくださいね。では行きますよ!」

 

それだけ告げて、足の裏に魔力を込め瞬動を発動。

宙に跳ぶと、まだ建物内なのでさらに虚空瞬動で建物の外へと脱出しました。

建物を出ると、すぐにアル君の方に降ります。

そこにはエルリック兄弟を探しにきたロス少尉とブロッシュ軍曹もいました。

 

「大丈夫ですか?」

 

「兄さん⁉︎」

 

「「…」」

 

アル君は突然建物が崩れ始めて、エド君を心配してたみたいですね。

少尉達は私が空から降ってきたことに驚いて、口がパクパクと動いてます。

 

「建物の崩壊が本格的に始まってきてるので、ここから逃げますよ。でないと巻き込まれてしまいます」

 

3人にそう言って、私は敷地外に出るべくエド君を抱えたまま走りました。

私の言葉に3人も慌てて走り出します。

全員が敷地外に抜けたところで、建物は自重に耐えきれず、遂に轟音と共に崩れ落ちました。

建物の崩壊で塵や埃が舞い上がります。

 

「エド君はあちこち切り傷ができてるので、病院に行きましょう。見たところそんなに深くはなさそうですが、念のためですね」

 

という私の言葉で、少尉の知人の病院へと行きました。

軍の病院では、色々問い質されて軍の暗部になる可能性がある賢者の石の話もしないといけなく、それは拙いという少尉の配慮です。

なお少尉の連絡によって、エド君が怪我をしたと聞いたアームストロング少佐はすぐに病院へ駆けつけ、大袈裟に涙を流しながら

 

「心配したぞ!エドワード・エルリックーっ‼︎」

 

と言って、ご自慢の筋肉で思いっきりエド君を抱き締めました。

相変わらず、「ベキッ」とか「ボキッ」とか「グキョッ」という身体から鳴らしてはいけない音を響かせたせいで、エド君の入院期間が少し伸びたのはご愛嬌…なんでしょうか?

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