雷氷の魔術師   作:怠惰なぼっち

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第26話

ーサラ・ヒューイットー

 

エド君の国家錬金術師の証である銀時計を盗もうとしたパニーニャの両脚の機械鎧(オートメイル)を見て、その整備師の元を訪れたいと考えたウィンリィちゃん。

機械鎧のこととなれば、その暴走が止まらないことを知ってる私達は仕方なく、その整備師であるドミニクさんの元を訪れたんですが…。

今エド君は、身につけている機械鎧をドミニクさんに調べてもらうため、またパンツ一丁にされてます。

 

「ふん…、クローム17%、カーボン1%ってとこか…」

 

ドミニクさんは小さい金槌みたいなものをエド君の右腕にカンカンと当てながら、機械鎧を構成する金属の成分を推測します。

 

「強度は上げたいんですが、それでいて軽くもしたいんです」

 

ウィンリィちゃんはエド君の機械鎧をどのように鍛えたいのか、その考えを述べます。

 

「確かに、こいつの身体の割には重い機械鎧だな。装備者に負担がかかんのはよくねぇ。だからこいつ、年の割にちっせぇんじゃねえか?」

 

なるほど、エド君の装備してる機械鎧が重いから身長は伸びないと…。

本当にそうなんですかねぇ?

成長が遅くて、後から急に大きくなる人もいますし。

若しくは、最早手遅れとか…。

いえ、それは私が心配することではありませんね。

そのエド君はというと、

 

「ちっせ…、…いや待て!て事はもっと軽い機械鎧(もの)にすれば、オレの身長は伸びるのか⁈」

 

とドミニクさんに詰め寄ります。

尋ねられたドミニクさんの答えは

 

「可能性はあるな」

 

という素っ気ないものでしたが、エド君は嬉し涙を流すような勢いで喜んでいました。

 

「…うん!やっぱり決めたわ!」

 

エド君の機械鎧に改善の余地有りとわかったウィンリィちゃんが、何か決意を固めたみたいです。

 

「ドミニクさん、あたしを弟子にしてくだs「やなこった!」…もう少し考えてもらっても…」

 

ウィンリィちゃんの弟子入り願いを、言葉の途中でバッサリ切り捨てるドミニクさん。

 

「うるせい、俺は弟子をとらねぇ主義だ」

 

取り付く島がありませんね。

私の師匠のエヴァちゃんも「弟子は取らん」と言いながら、最終的には私やネギ君は弟子入りさせてもらいましたが、ドミニクさんはどうも難しそうです。

エド君も身長が伸びるかもしれないという希望のために、どこからいつ用意したのかわからない賄賂的な物をドミニクさんに渡そうとします。

 

「そこをなんとか…。こう、ちゃちゃっとオレの身長が伸びる機械鎧を伝授してもらえませんか?社長〜」

 

が、それすら一蹴。

 

「帰れ、このミジンコ」

 

しかも容赦ない追撃の一言付きです。

 

「ミジn…⁈」

 

「ドミニクさん、お願いします!」

 

「弟子なんざいらん」

 

「そう仰らずに!」

 

「用がそれだけなら帰れ」

 

「ミッ…、ミジンコって言った!ミジンコって!」

 

「エド、うるさい‼︎」

 

工房内は怒鳴り声で溢れかえりました。

まぁ、ドミニクさんのあの感じでは弟子入りも難しいでしょうね。

 

「ごめんね、うちの親父頑固者だからさ。諦めてよ」

 

と実の息子のリドルさんが言うくらいですし。

ウィンリィちゃんは諦めきれない顔ですが。

 

「おう!さっさと帰んな!」

 

ドミニクさんも私達を追っ払おうとするものの、残念ながらさっきの天気が嘘のような大雨です。

雷まで鳴っているので

 

「これじゃ帰れないだろうから、雨が止むまではうちでゆっくりしていきなよ」

 

というリドルさんのお言葉に甘えて、暫くお邪魔させていただくことになりました。

エド君はドミニクさんに軽い機械鎧をつけてくれとお願いに、アル君はエド君に付き合い、ウィンリィちゃんはパニーニャとリドルさんと雑談中。

私は特に用がないのでサテラさんの家事手伝いをします。

 

「身重なのに家事もされるって大変ですね」

 

「お義父さんとリドルは仕事で忙しいもの。妊婦だからって何もしないわけにはいかないわ」

 

とサテラさんは苦笑いで言いました。

確かにサテラさんが出産のために実家に帰ったとしたら、ドミニクさんとリドルさんでは不安が残りそうですね。

 

「サテラさん、これはどうしまs「ドサッ」…はい?」

 

振り返るとサテラさんが倒れていました。

なんとかお腹をぶつけないよう両腕を伸ばしていましたが、すぐに駆け寄り身体を支えます。

 

「大丈夫ですか⁈」

 

「う…う…、生まれる…」

 

はぃぃいっ⁈

生まれる?

あと半月じゃなかったんですか⁈

 

「誰か!誰か来てください‼︎サテラさんが大変です!」

 

私の声を聞いて他の部屋にいたウィンリィちゃん、リドルさん、パニーニャが来てくれました。

どのような体勢が赤ちゃんに負担がかからないのかわからないので、私とリドルさんの肩にサテラさんの腕をかけ、寝室まで連れて行きます。

 

「予定日まで、まだ日があるぞ⁈」

 

リドルさんも突然のことに戸惑いを隠せません。

 

「ええ…。夕方から何となくお腹が変だったんだけど…。予定日まではまだだから気のせいだと思ってたら…」

 

サテラさんを寝室に運んでベッドに寝かせたところで、パニーニャがエルリック兄弟とドミニクさんを連れてきました。

 

「孫っ!孫が出る!孫がっ‼︎」

 

しかし、男衆はどうしたらいいのかわからず、オロオロするばかりです。

 

「落ち着いてください!この雨ではサテラさんを街の病院まで運べません」

 

「あっ、…ああ。俺がひとっ走り行って医者を連れてくる!」

 

ドミニクさんが合羽を急いで羽織り、家を飛び出しました。

 

「とりあえず、医者が来るまで我慢しろ。なっ?」

 

「我慢って言ったって、生まれる時は生まれるわよ」

 

リドルさんが励ますようにサテラさんに声をかけますが、サテラさんはそれどころではありません。

 

「だっ…、大丈夫だよ。親父がすぐ医者を連れて来てくれるから。みんなも落ち着いて…」

 

というリドルさんはまだ少しオロオロしてます。

初めての出産が急にやってきたとなれば、落ち着いていられませんよね。

私もオロオロしないだけで精一杯です。

でも、お医者さんが来れば問題ないはずです。

そう思っていたんですが、その考えも呆然とした顔で戻ってきたドミニクさんの言葉でひっくり返されました。

 

「橋が…、橋が焼け落ちている…」

 

リドルさんとパニーニャを残して確認に向かうと、昼間渡った橋が落雷によって焼け落ちてしまってます。

 

「こんな時こそオレの出番だろ!」

 

エド君が自分を鼓舞するように声をあげ、足元に手を当てました。

すると、エド君のそばの崖の縁が対岸へと伸び始めます。

なるほど、足元の地面を錬成して橋にするんですね。

錬金術特有の光とバシバシという音を立てながら橋が対岸目掛けて伸びていきます。

しかし、対岸まで半分の距離にも満たないところで錬成途中の橋は折れて、崖下に落ちてしまいました。

 

「なんで途中で止めちゃうの?」

 

ウィンリィちゃんには錬成を止めたように見えたみたいですが、私が見たところ止めたのではなく…

 

「…自重で落ちちゃったんだ。向こうまで渡れる橋を作るにはかなりの大質量を錬成しないといけない。でも錬成途中で橋自体が自分の重さに耐えられなくて折れるんだ。こっちから一方的に橋を渡すには距離がありすぎる…」

 

とアル君がウィンリィちゃんに答えました。

やっぱり錬成できなかったんですね。

 

「どうしたらいい?考えろ…考えるんだ…!」

 

エド君が額に手を当て知恵を絞ります。

 

「橋脚付きの橋を作れば…」

 

「下はこの雨で洪水だ。錬成途中で足元を掬われちまう…。それに質量保存の法則もある。そんなバカでかい物を作ろうとしたら、こっちの足元も足りなくなって…崩れるだろうな。何か方法は無いのか!」

 

アル君も意見を出しますが、それではダメみたいです。

私がフェイトのように「冥府の石柱」でも使えれば橋脚くらいは作れるんですが、残念ながら土属性の魔法は不勉強なんですよね。

 

「…時間が無ぇ。まだ雷も鳴ってて危険だ。いつまでもここにいる訳にはいかねぇ」

 

そう言って、ドミニクさんは連れていたロバに乗ります。

 

「ここの反対側に旧道があって、山一つ越えた隣街に繋がってる。医者を連れて来るには橋を使うより数倍は時間がかかるんだが、この際グダグダ言ってられん。おめえらは家に戻ってサテラを励ましてやってくれ。じゃあな」

 

そのままロバを走らせてしまいました。

 

「また肝心な時に…オレは無力だ…‼︎」

 

エド君が悔しげに俯いてつぶやきます。

しかし、今回はサテラさんと赤ちゃんの命がかかってますから、私も一肌脱ぎましょう。

 

「3人はサテラさんの所に戻ってください。私はドミニクさんを追いかけます」

 

「ちょっと、サラ!ドミニクさんを追ってどうするの⁈サラ‼︎」

 

申し訳なく思いつつもウィンリィちゃんの言葉を無視して、ドミニクさんが去った道を走りました。

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