雷氷の魔術師   作:怠惰なぼっち

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第38話

ーサラ・ヒューイットー

 

「だから…何でそいつらと一緒にいるんだよ⁈」

 

ラッシュバレーの街の修復作業から戻ってきたエド君が開口一番叫びます。

それも仕方ないでしょう。

エルリック兄弟がこの街で暴れまわった原因でもある、リンとその仲間の黒装束の2人が私の横にいるんですから。

その黒装束のおじいさんと女の子は私の事を警戒してるんですけどね。

 

「私も好きでリンさん達と一緒にいるんじゃありませんよ。私はエド君達を待っていて、この人達も2人を待っていた。ほら、私のせいじゃないでしょう?」

 

エド君の言葉にそう返します。

でも、私の存在に不老不死の可能性を見いだしてるリンにすれば、賢者の石も私をシンに連れて行くという事も諦めてないかもしれませんが…。

 

「俺としてはサラでも構わないんたがナ。それはともかく2人には悪いことをしタ。うちの連れはどうも血の気が多くてネ。まぁ、君達も負けず劣らずみたいだけド」

 

リンはエルリック兄弟に困った様な笑顔を向けながら、背後の黒装束2人を指差して言います。

それに対し、エド君は

 

「はっ!売られたケンカは買うのが道理だ!」

 

と腕組みして言い、

 

「君達⁈兄さんと同じケンカバカ扱いされた…」

 

とアル君はショックを受けていました。

っていうかアル君、エド君にちょっと失礼な事言ってますよ…。

それに降りかかってくる火の粉はちゃんと払わないと。

 

「それにしても、君達強いネェ。どうかナ?俺の部下になって、一国を治めてみなイ?」

 

リンはそんな2人を気にせず、ニコニコして言います。

いや、「一国治めない?」なんて何言ってるんでしょうかね?

誘い文句にしては真剣さを感じさせないセリフです。

エド君も私と同じ様に思ったのでしょう、

 

「寝ぼけた事言ってねぇで、とっととシンに帰りやがれ!」

 

と言いました。

 

「うう〜〜ん、目的を果たすまで帰る訳にはいかないんだよネ」

 

リンも、また困った顔をして言います。

 

「そんなん知るかよ。俺はセントラルに行かなきゃなんねぇんだ」

 

エド君の言葉に対して

 

「セントラル?じゃあ俺も一緒に行こウ」

 

と悪びれもせずに言うリン。

セントラルに行こうって言ったのは私ですが、その前にエド君にはやるべき事があります。

 

「エド君、とりあえずウィンリィさんの所に行きましょう。セントラルに行く前にその腕を直してもらわないと」

 

私に言われて思い出したのか、頭を抱えるエド君。

 

「あ〜、そうだった。こんな事になるんなら、さっさとセントラルに行っときゃよかった」

 

「兄さん、大佐に会うのが嫌だったからここに来るのノリノリだったじゃん」

 

「ラッシュバレー行きを提案したのはアルだろ⁈」

 

なんて、エルリック兄弟はやいのやいの言い合いを始めます。

 

「ここで口喧嘩しても仕方ないでしょう。ラッシュバレーには来てしまいましたし、機械鎧も元には戻らないんですから、早くウィンリィさんの所に行きますよ」

 

私が強い口調で言うと、2人とも諦めたのか最初の目的地だったウィンリィちゃんが修行しているガーフィールさんのお店へと歩き始めます。

私もそれに従い、リン達3人もその後をついてきます。

まぁ、彼らがどこへ行こうと私にどうこう言う資格はありません。

そもそも私自身がエルリック兄弟についていってる感じですから。

 

 

 

こうして少しハプニングはありましたが、ガーフィールさんの機械鎧工房へやって来ました。

 

「いよっ!ウィンリィさん。本日もご機嫌うるわしゅう」

 

エド君がどこに持っていたのか、扇子で頭をペシペシ叩きながらウィンリィちゃんに声をかけました。

 

「エド!アル!それにサラも!急にどうしたのよ?いつも連絡無しに来るんだからー。背後の3人も知り合いなの?」

 

声をかけられたウィンリィちゃんはニコニコ返事をしますが、エド君が傷付いた機械鎧の腕を見せた瞬間、笑顔を浮かべたままスパナをエド君にクリーンヒットさせてました。

その見事な一撃でエド君は昏倒してしまいます。

 

「こんにちは、ウィンリィさん。本当は顔見せ程度でこの街に寄ったんですが、ちょっと騒動がありまして。エド君の腕を修理してもらえませんか?」

 

「騒動ってさっきの爆発騒ぎ?全く仕方ないわね…」

 

私の説明に納得したのか諦めがついたのか、ともかく目を回してるエド君の首根っこを掴んで店内に入るウィンリィちゃん。

 

「アルとサラも入って。そっちの人達もあんた達の客なんでしょ。一緒に連れてきていいわよ」

 

という事で、店の奥に案内されたんですが…。

この店の主であるガーフィールさんという人が、随分変わった人でした。

胸板が厚くて筋骨隆々、口ヒゲやアゴヒゲは細く、髪は短く整えて…ここまではまだいいんですが、パッツンパッツンなシャツとズボンを着て、仕草をクネクネさせてる姿…いわゆるオネェと呼ばれる方だったんです。

容姿と仕草が余りにもミスマッチだったので、ウィンリィちゃんに紹介された時は一瞬言葉が出てきませんでした。

対するリンはというと、ガーフィールさんに「美しい方」と言ってのけた辺り、いろんな経験してるんでしょう。

私にはそういう知り合いは、元いた世界にも「ネギま」の世界にもいなかったので。

 

「それで、今度はどこに機械鎧を壊しに行くのよ?」

 

ウィンリィちゃんが機械鎧の損傷具合を確かめながら、エド君に尋ねます。

 

「壊すの前提で訊くなよ!セントラルの知り合いの所に行くってサラが言い出したから、ついでに寄ろうと思ったんだ。おかげでえらい目にあったがな」

 

ジト目でリンを睨むエド君。

 

「いやぁ、悪かったっテ。こっちの娘がランファン、じいはフー。家に代々仕える一族なんダ。よろしくナ」

 

リンが笑顔で紹介すると、ぺこりとお辞儀をする2人。

まぁ、素直にお辞儀というか、不承不承という雰囲気が感じられますが…。

付き人がいる事や代々仕える一族を持っているという事は、リンはいいところの坊ちゃんなのかもしれませんね。

 

「セントラルに行くんなら、あたしも行きたいなあ‼︎ヒューズさん家にお礼しないと!」

 

ウィンリィちゃんの言葉に

 

「そうだ、兄さん!ヒューズ中佐‼︎」

 

「ああ、オレも入院の時、世話になったからあいさつしとかないと」

 

とエルリック兄弟も思い出したように言います。

しかし、ヒューズ中佐ですか。

困りました。

中佐はこの国の秘密を解いてしまったせいで、ホムンクルスのエンヴィーに命を狙われたんですよね。

その時は私がエンヴィーから中佐を助け、リゼンブールのピナコさん、ウィンリィちゃんのお祖母さんに中佐の家族ごと匿ってもらったままですから。

つまり、今セントラルに行っても中佐はいません。

それをバカ正直に話す訳にもいきませんし。

 

「あー…、ヒューズさんご一家はセントラルにはいませんよ」

 

「は?何でだよ?」

 

私の言葉にエド君は素直に質問します。

当然の疑問ですよねぇ。

 

「えーと…、その…。あれです!休暇ってやつですよ!この前セントラルを離れる前に『忙しさがひと段落したから家族とのんびり過ごす』と仰っていたので。私がリゼンブールを推薦したら、そちらに行かれました」

 

「あんな何もない田舎に行かせたのかよ?」

 

「のんびり過ごすにはいい環境だと思いますよ」

 

「本当に休暇なのか?そんな話中佐から聞いた覚えないぞ。なんか怪しいよなぁ」

 

訝しむように私を見るエド君。

 

「リゼンブールにいるのは本当ですって」

 

「まあまあ、兄さん。サラさんがボク達に、中佐の事で嘘ついても意味がないんだから。ここは素直に話を聞こうよ」

 

アル君が仲裁に入ってくれました。

 

「うーん、ヒューズさん達リゼンブールにいるんだ。どうしよう、まだ仕事残ってるし…」

 

困ったように呟くウィンリィちゃんに

 

「こっち来てから休み無しで働いてくれたから、息抜きに行ってらっしゃいな」

 

とガーフィールさんは「ウフフ」と笑いながら言いました。

ガーフィールさん、すごくいい人ですね。

見た目はちょっとあれですが…。

 

「それでは、私達はセントラルまでですが一緒に行きましょう」

 

こうして、ちょっと寄り道をしましたが、やっとセントラルに行く事になります。

ラッシュバレーの駅でパニーニャとガーフィールさんが見送ってくれたんですが、ガーフィールさんは身体をクネクネさせながらハンカチを振ってました。

とても印象的な姿でしたね…。

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