雷氷の魔術師   作:怠惰なぼっち

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第42話

ーサラ・ヒューイットー

 

「おや?またサラちゃんかい。今度はエドとアルも連れてきて。それにそちらの軍人さんは見た顔だね」

 

ヒューズ中佐にホムンクルスが企んでるだろう計画を、エルリック兄弟とマスタング大佐に話してもらいたくて、リゼンブールのピナコさんの家にやってきました。

出迎えてくれたのはウィンリィちゃんで、その背後からピナコさんも出てきます。

 

「その節はどうも」

 

と言って、大佐がお辞儀しました。

まさか、大佐とピナコさんに面識があるとは知りませんでした。

それはともかく、

 

「ええ、ヒューズ中佐からこちらの3人に説明してほしいことがありまして」

 

ピナコさんにそう伝えると、

 

「そうかい。ヒューズさんはリビングにいるから、上がりな」

 

と扉を開けてくれます。

「お邪魔します」と一言返してリビングに向かうと、奥さんのグレイシアさん、お嬢さんのアリシアちゃんとくつろぐ中佐の姿がありました。

 

「あー!てじなのおねーちゃん‼︎」

 

私に真っ先に気付いたアリシアちゃんが声を上げます。

その声でこちらに背を向けていた中佐とグレイシアさんは振り返りました。

 

「おー、嬢ちゃん!どうしt…って、ロイとエルリック兄弟を連れてきたって事は例の件か?」

 

「あら?サラちゃんじゃない。こんばんは。それにマスタングさんもお久しぶりです」

 

「ご無沙汰してます、奥さん」

 

中佐はアリシアちゃんと遊んでたのかニコニコしてたんですが、私の背後の3人の姿を見て真剣な顔つきになり、グレイシアさんは私と大佐に挨拶し、大佐もそれに返します。

 

「こんばんは、グレイシアさん、アリシアちゃん。ちょっとお話があるので、中佐をお借りしてもよろしいですか?」

 

「おねーちゃん、てじなみせてー!」

 

「アリシア、お姉ちゃんに無理言っちゃダメよ。ごめんなさいね、サラちゃん。大事なお話なんでしょう?私達は部屋を出るから」

 

私も2人に挨拶しますが、アリシアちゃんに手品とごまかした転移魔法の「一瞬で周りの光景が変わった」インパクトが強かったのか、何か見せてほしいとお願いされました。

グレイシアさんはアリシアちゃんを窘めますが、手品のお姉さんとキラキラした目で見られたら、それに応えたくなってしまいます。

 

「すみません、グレイシアさん。その代わりと言ってはなんですが、アリシアちゃん。面白いものを見せてあげるね」

 

そう言うと、さらに期待した顔で私を見るアリシアちゃん。

アリシアちゃんによく見えるよう、手のひらの表裏を返して見せます。

 

「はい、この手には何もついてないですね。私が呪文を唱えると指先に火が灯ります。いいですか?いきますよ、『火よ灯れ』」

 

人差し指の先に火がつき、アリシアちゃんは大喜びし、グレイシアさんも驚いてくれました。

中佐はなぜか呆れた顔で、エルリック兄弟と大佐は私の人差し指やら手に何かしら仕掛けがないか確認してます。

アリシアちゃんが落ち着いたところで、

 

「ごめんね、お姉さんたちはお父さんとお話があるから、今日はこれでおしまいなの。だけどアリシアちゃんがいい子にしてたら、また今度手品を見せてあげるからね」

 

と声をかけると、アリシアちゃんは「わかった!」と元気よく返事してグレイシアさんと部屋を出ました。

 

「嬢ちゃん、良かったのか?今のも…」

 

エド君達をチラチラ見ながら中佐が尋ねます。

 

「ええ、今のは魔法使いが最初に習う魔法ですね。そしてエルリック兄弟と大佐にも私が魔法使いであるという事は話してあります。セントラルでは中佐とご家族が行方不明扱いになってて、その説明の過程でバラさざるを得ませんでした」

 

「そうだったのか。ロイやエルリックの2人にも、心配かけちまったな」

 

私の言葉で中佐は素直に謝りました。

 

「全く…、ここに逃げる前に、せめて私に連絡くらいはできなかったのか?」

 

「それができてりゃ俺もやってたさ。資料室で調べ物してたら、突然ホムンクルスの1人が襲いかかってきたんだ。そこを嬢ちゃんに助けてもらって、その足でここまで来たわけだ。俺は連中が知られたくないものを知ったから狙われたんだな」

 

大佐は中佐が連絡しなかったことを責めますが、それどころではなかったと中佐は主張します。

実際、私が駆けつけてなければ確実に殺されてたかもしれませんし。

 

「それで、中佐が知ってしまったヤバい情報って何なんだよ?」

 

「ん?嬢ちゃんからその辺は聞いてないのか?」

 

エド君の質問に、中佐は私を見ながら質問で返します。

 

「すいません、ここのところ立て込んでたので全く説明してないです」

 

「おいおい、嬢ちゃん…」

 

中佐が思わずといった感じで呻きました。

アメストリス国民の命が懸かってますから、責められても仕方ありません。

 

「中佐、あまりサラさんを責めないでください。僕達も師匠のもとで修行したり、僕なんてホムンクルスに拐われたりしたのをサラさんに助けてもらったので、タイミングがなかったんですよ」

 

そんな中佐に対して、アル君がフォローをしてくれます。

特に「ホムンクルスに拐われた」という部分に思うところがあったのか、

 

「そっちもいろいろあったんだな」

 

と中佐も納得してくれました。

 

「そのお陰というのもなんですが、ホムンクルスに関する情報も手に入ったので、その辺りも説明しますよ」

 

という訳で中佐の持つ情報と、私が持つ情報を出し合うことになりました。

まずは中佐が話し始めます。

この国が成り立った時点で、賢者の石を作る為の建国であった可能性が高い事。

それを示すかのように、領土を拡大する際生じた戦場に印をつけ、それらを繋ぎ合わせると国土錬成陣が出来上がる事。

建国当初からという事は国のトップからして黒と思われる事。

さらに言えば、ブラッドレイ総統が就任してから大規模な戦闘が続いてる事を考えても、総統自身が敵であろうという事。

これらはあくまで中佐の推測なんですが、状況的に的を得ている部分が多く、一つずつ詳らかにしていく度にエルリック兄弟と大佐は驚きを隠しきれません。

あまりの事態に最後の説明ら辺では呆然といった感じでした。

 

「まさか国土錬成陣を作っていたとはな。それも建国当初から300年もかけていたとは、普通なら誰も気付かなかっただろう」

 

「俺もエド達が第五研究所で見た賢者の石の錬成陣を教えてもらわなきゃ、気付かなかったさ。そのせいでホムンクルスってのに命狙われる羽目になったんだがな。さて、今度は嬢ちゃんの番だ。ホムンクルスの奴らの情報を手にできたんだろ?」

 

大佐の呟きに答えた中佐が私に話すよう促したので

 

「そうですね…」

 

そう言って、入手した情報を開示します。

まず、「お父様」と呼ばれるホムンクルス達の首魁がいる事。

ホムンクルスは賢者の石を核として人間を模して造られており、お父様から産み落とされる事。

そのため、お父様も賢者の石を持っていると思われる事。

それもホムンクルスを造る余裕がある程度には、賢者の石を保有しているだろうと。

さらに、アル君の情報によるとホムンクルスには再生能力があるそうです。

実際グリードはアル君の目の前で頭を潰されたにもかかわらず、元に戻ったそうですし、ラストも手足を再生させてましたね。

そのホムンクルスですが最低でも6人はいて、ひょっとしたらもう1人増えてるかもしれない事。

情報提供者であり、アル君を拐ったグリードは国土錬成陣から逃れるために隣国へと移ったので、問題ない事。

この件に関しては、エド君から少し問いただされました。

 

「アルを拐った悪党を、助ける必要なんてあったのかよ?」

 

「まあ、グリードを助けたという一面もありますが、彼は強欲だからかわかりませんが、部下思いな面もあるんですよ。その部下を助けるついでにグリードを助けたと考えましょう。部下を助けないというのは、死刑囚だからといって賢者の石の材料にしてしまうようなホムンクルス達と変わりませんよ。それに助けたからこそホムンクルスの情報も手に入った訳ですし、グリードもこちらに戻れなくなって一石二鳥だと思いませんか?」

 

そう言うとエド君も黙ってしまいます。

 

「では続けますよ」

 

私は7つの大罪という、感情になぞらえて造られたホムンクルスについて説明をしました。

1番目は「傲慢」で、子供の姿をした容れ物に本体である影が入っていて、その影が攻撃手段にもなっている事。

2番目の「色欲」と3番目の「強欲」は省略。

4番目は「嫉妬」で、容姿を変える能力を持ち、本来の姿は全長が10m以上ある化物との事。

5番目の「怠惰」はエンヴィー程大きくはないものの人から見れば巨体の持ち主で、名前のように普段は怠けているのに本気になれば、人には視認できないスピードで自身もコントロールできないほど動き回るという事。

6番目は「暴食」で戦闘能力は高くないものの、暴走すると何でも吞み込み、お父様が真理の扉を作るのに失敗してできた疑似・真理の扉へと送り込んでしまう事。

7番目は残る感情でいえば「憤怒」ですが、100年前にお父様と袂を分かったグリードは知らないという事。

ただし、100年も時間があれば新しいホムンクルスが誕生してる可能性も高い事。

ここまで説明すると、アル君から質問が上がりました。

 

「サラさん、グリードは他所に行って敵対しないので説明しなかったのはわかりますが、ラストはどうして説明なしなんですか?」

 

「ラストについては心配いりません。文字通り手も足も出ない状態ですから」

 

そう言いながら、影の袋からラストの氷柱を取り出します。

影から氷柱が出てきたのに驚き、さらにその中に美女とも言える女性が閉じ込められている事にギョッとする4人。

しかも、肘から先がないですからね。

 

「こいつがラストって奴なのか?」

 

「はい。彼女も再生能力を持ち、指先を自在に伸ばして剣のように扱ってたみたいです」

 

中佐の疑問に答え、思い出すのはドクター・マルコーの事。

マルコーさん自身はラストの爪で肩を貫かれ、マルコーさんの知り合いと思われる女の子も首を爪で挟まれて人質にされていました。

 

「ラストを捕らえてたのはいい事だと思うが、いつの間に捕まえていたのかね?」

 

「エド君が傷の男に機械鎧を壊されて、その修理にリゼンブールへ向かってた途中ですね。ドクター・マルコーという方がラストに襲われてたので助けたんですよ」

 

私が大佐の質問に答えると、エド君が声を上げます。

 

「あー!マルコーさんとこから出た時に忘れ物って言ってたのは‼︎」

 

「お察しの通り、マルコーさんにラストが接近してるのに気付いたので、ちょっと様子見に行ったんです」

 

そう言いながら、ラストの氷柱を影の袋に収納します。

 

「ドクター・マルコーといえば、医療系錬金術師で賢者の石を持っていたそうだな。その時の狙いはドクターか?」

 

「だとしたら、こちらで身柄を確保しておいた方がいいかもしれんな」

 

中佐と大佐は敵の狙いはマルコーさんだったのだろうと当たりをつけ、そう結論しました。

 

「私からは以上です。それでこれからどうしましょうか?」

 

私の言葉だけが部屋に響きました。

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