雷氷の魔術師   作:怠惰なぼっち

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第43話

ーサラ・ヒューイットー

 

エルリック兄弟とマスタング大佐を連れて、リゼンブールのピナコさんに匿われてるヒューズ中佐の元へやってきました。

中佐が知ってしまっために殺されそうになった原因であるホムンクルス達の計画や、私が得たホムンクルスの情報を5人で共有し、今後どのように活動するかを考えます。

 

「私はすぐにドクター・マルコーの確保に動こう。それから上層部についても探りを入れようと思う」

 

「俺は悪いがこれ以上力になれそうにない。ホムンクルスに目をつけられてるからな。セントラルに戻ったところで足を引っ張る事になりかねん」

 

大佐は賢者の石を持つマルコーさんの保護と、誰が敵かわからない軍上層部の調査をし、中佐は敵に狙われてる事もあるのでリゼンブールで隠れておくそうです。

 

「オレ達は「鋼の、少し待ちたまえ」…何だよ大佐?」

 

エド君も何か言おうとしますが、大佐が待ったをかけました。

 

「君には2、3日以内にアームストロング少佐が迎えに来る事となっている。理由はロス少尉の件だ。彼女の無事をその目で確認したまえ。アルフォンスは目立つのでセントラルで待機だな。サラ君にもセントラルにいてもらいたい」

 

「オレとアルについてはわかるけどよ、サラは何でだよ?元々旅人だってんだから、いつ危険に晒されるかわからねぇのに、ずっとここに縛り付けるのはよくないだろ?」

 

大佐が私にも指示を出した事に、エド君は納得できないみたいです。

ロス少尉については私が生きていると教えただけで、今どこでどうしてるかまではわかりません。

それを解消するために少尉の上司である少佐と共に行動しろ、という事でしょう。

アル君は全身鎧に身を包んでる姿は良くも悪くも目立つので、少尉の事を隠しておきたい大佐としてはじっとしてもらいたい、と。

私については、まあ予想はつきますけどね。

 

「サラ君はエンヴィーを退けたばかりか、ラストを捕らえている。それだけ大きな戦力をみすみす手放すなど、できるわけがなかろう」

 

大佐は何を言ってるんだと言わんばかりに、エド君に告げます。

再生能力持ちなんて厄介な相手を撤退させたり、捕まえたり。

そんな事ができる者はそうそういないはずですが、それをやった者が目の前にいるんです。

協力を仰ぐのは当然ですね。

 

「ですがサラさんはこのせか「いいですよ、アル君」…サラさん?」

 

おそらく、アル君は私が異世界の人間だからと言おうとしたんでしょうが、関わってしまったからには手助けくらいはしたくなるのが人情でしょう。

 

「私は私ができる事をするだけですから。あまり私に過剰な期待をされても困るので、皆さんにも頑張ってもらいたいとは思いますけどね」

 

「…?よくわからんが、サラ君も協力してくれるという事でいいのかな?」

 

「ええ、ですが私ばかり働かせないでくださいよ」

 

「それは当たり前だ。本来これは我々軍人の仕事なのだから」

 

という事で、大佐は軍関係の対応、私とアル君はセントラルで待機、エド君は少佐と行動、と当面の目標が決定しました。

 

「それではこちらに長居するのもよくないので、そろそろお暇しましょうか」

 

「そうだな。私もまだ事務処理が残っているので少々急がねばならん」

 

大佐はロス少尉の件でまだ仕事が終わってないのでしょう。

そんな時にリゼンブールに連れてきたのは何だか悪い気がしますね。

 

「大変だなぁ。早く俺みたいに理解のある嫁さんをもらえよ」

 

「他人事だからと好き勝手言うんじゃない!全く、変な心配をかけるなヒューズ」

 

「悪かったよ、ロイ」

 

やはり大佐と中佐は親友といった感じの仲みたいです。

軍の捜査が怪しいからと、独自に動くくらいですからその絆は強いんでしょう。

 

「ばっちゃん、オレらもう帰るよ」

 

「あんたら、こんなに遅いと汽車もないだろ?今日は泊まっていきな」

 

エド君がピナコさんにセントラルへ戻る事を伝えると、汽車はないから泊まるよう誘われました。

 

「ご厚意はありがたいのですが、我々にはセントラルで早急にやらねばならない事があるのです。それに帰る伝手ならサラ君が用意してくれております」

 

大佐がピナコさんにそう返します。

すると

 

「そういや、前回ヒューズさんらを連れて来たのもサラちゃんだったね」

 

ピナコさんが言いました。

 

「その辺りも訳ありなんですよ」

 

私は笑って誤魔化します。

 

「また、何も聞くなって事だね。まあいいさ。ただ、次来る時はもう少し早い時間に来てもらいたいもんだ。まさか、毎回毎回夜になってから来るつもりかい?」

 

確かに前回も今回も夜遅くとまでは言わなくとも、他所様を訪ねるには正直宜しくはない時間です。

ただ緊急事態という事もあって、不可抗力な面もあるんですよね。

なので、

 

「そうならないよう努力します」

 

と答えておきます。

他に言いようがありませんし…。

 

「とりあえず、気をつけて戻るんだよ。そうだ、ウィンリィ呼んでこようか?」

 

ピナコさんは気を利かせますが、

 

「ああ、いいよ。どうせ機械鎧のメンテがどーだとうるさいだけだし」

 

とエド君はバッサリ。

 

「兄さんは素直じゃないなぁ」

 

アルくんは心なしか苦笑いのような声です。

 

「また時間ができればおいで」

 

玄関先でピナコさんが言いました。

 

「どうもお邪魔しました」

 

「じゃあな、ばっちゃん」

 

「またね、ばっちゃん」

 

「それでは失礼します」

 

大佐、エルリック兄弟、私がそれぞれ挨拶して道を歩いていきます。

振り返ると既にピナコさんは家の中に入ってました。

私達も舗装された道からそれて、草むらに入りました。

 

「では影の転移魔法(ゲート)を展開しますが、よろしいですか?」

 

「ああ、オレ達は準備できてるぜ」

 

「私も構わん。そうだ。ホムンクルスによる一連の事件が終われば、サラ君の魔法というのを教えてもらえないかね?」

 

セントラルへとさあ帰ろうという段階で、唐突に大佐が尋ねてきました。

 

「オレもそれ気になってたんだよな。サラ、どうなんだ?」

 

「ボクもできれば教えてほしいです」

 

大佐につられてエルリック兄弟も尋ねます。

 

「どうでしょう?そもそも、この魔法というのは私の地元の古い言語を使ってるんですよ。まずそこから始めないといけません。しかも魔法を使うための魔力には個人差がありますし、体質的に魔力を持つのに魔法を使えない場合もあります。さらに問題なのが、私は人に教える事が下手という事です」

 

3人とも私を見て先を促します。

 

「イーストシティで料理を教えた事があったんですが、どうしても私のイメージ通りに伝わらなかったんですよね。それでもお店は繁盛したんですが、私に言わせてもらえれば、料理の師匠の味とは全然違いました。私が教えたゴートンさんも実際に私が作ったものを食べて違う事を認めてましたから。やはり私は教えるのが下手なんでしょう」

 

「サラ君にも苦手なモノがあったんだな」

 

「大佐を軽く吹っ飛ばしたかと思えば、めっちゃ美味え料理も作れんのにな」

 

「誰にでも不得意の一つや二つはありますよ」

 

大佐やエルリック兄弟から慰めのお言葉をもらいましたが、別にそれで凹んでるとかないんですけどね。

それとも馬鹿にされてるんでしょうか?

 

「そんな事より早く戻りますよ。大佐は特にセントラルに仕事を残しているのでしょう?ではまた集まってください」

 

3人が私の周りに近付いたのを確認して、

 

「では転移魔法を発動します」

 

そう告げて他の3人とまとめて影の中へとズブズブ潜っていきます。

そして浮かび上がれば、私達が泊まってて見慣れ始めたホテルの一室です。

 

「改めてその魔法便利だよな。リゼンブールとセントラルが一瞬だぜ。いつも汽車に揺られてんのが馬鹿らしくなる」

 

エド君が恨めしげに私を見ながら言いました。

 

「そんな目で見られても教えられませんし、私の魔法で楽な思いはさせませんよ。私だってその汽車の移動に付き合ってるじゃないですか。あれは風情があっていいものだと思いますよ」

 

「鋼の、いい加減諦めたらどうかね?さて、私は例の件があるのでこれで失礼させてもらおう」

 

大佐がエド君をたしなめます。

そして、早速仕事に取り掛かるみたいですね。

 

「わざわざ忙しい中ありがとうございました」

 

「いや、こちらもいろいろ知る事ができてよかった。とにかくこの国の人を救うためにもよろしく頼む」

 

そう言って、大佐は部屋を出て行きました。

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