ーサラ・ヒューイットー
大佐とエルリック兄弟に、中佐が暴いたホムンクルス達の計画を話しました。
私もグリードから聞き出したホムンクルスの能力や、その親玉である「お父様」と呼ばれる存在がいる事を告げます。
この話し合いによって、中佐は今まで通りリゼンブールで隠れ、大佐は賢者の石を持つマルコーさんの保護と軍内部の調査を、私とエルリック兄弟は大佐の指示で行動する事となりました。
それから2日経ったのですが、未だに連絡はありません。
誰が敵かもわからない状態ですから、大佐も迂闊に動くことはしないんでしょう。
でも、エド君には死んだように偽装したロス少尉の無事を確認させてやる、と言ってたのでそろそろ連絡が来るはずなんですが…。
そんな事を考えていると扉がノックされました。
ソファーに寝転がってたエド君が起き上がり、
「はいはい、どちらさ…ぬぉっ!」
扉を開けて誰か尋ねようとして変な声をあげました。
私も扉の方に目をやると、右腕の機械鎧をおさえて倒れこんでるエド君と、その原因と思しきアームストロング少佐がいました。
少佐はいつもの軍服ではありません。
「いきなり何すんだ、少佐‼︎」
エド君が非難の声をあげますが、
「むっ?いかん!機械鎧が壊れてしまった!これはいかんな!」
少佐はそれを無視してエド君に話しかけます。
そのままエド君の袖を捲ったので私も機械鎧を確認すると、確かに二の腕をカバーしてるフレームが凹んでます。
凹んでるだけで壊れたという程のものではないとは思いますが…。
「うむ!これは由々しき事態!すぐに修理が必要である!どれ、我輩がリゼンブールまで送ってしんぜよう!」
少佐がそう言ったので、これが迎えなんだとわかりました。
大佐は「少佐を迎えに出す」と言ってましたからね。
機械鎧の修理というもっともらしい理由をつけて、エド君を連れて行くという事なんでしょう。
かなり強引な方法という気もしますが、理由さえできれば問題ないのでしょう。
「ああ、アルフォンス・エルリック。お主は目立つからここにいるように!ヒューイット殿…もここにいたまえ!さて、すぐに汽車の手配だ!行くぞ、エドワード・エルリック‼︎」
そう言って、エド君の襟首を掴んで少佐は部屋を出て行きました。
アル君は唖然として、一言も発してません。
「おでかけカ?」
背後から声をかけられたので振り向くと、リンが窓に腰を掛けてました。
「リ…リン!なんでそんな所に⁈」
驚いたアル君が声をあげます。
「ほら、不法入国と留置所脱走の犯罪者だかラ。国家錬金術師なら軍のホテルを使うと思って、シラミつぶしに探しても見つからなくテ。でもよくよく考えれば、サラ・ヒューイットというわかりやすい目標がいたから、どうにか辿り着いたヨ」
「サラさんが目標になるってどういう事?」
リンの説明に質問するアル君。
「リンやフーお爺さん、ランファンさんも私のように気を感じ取る事ができるんですよ」
リンが変な事を言う前に、アル君の質問に答えます。
「ん?君達はサラの莫大n「で、リンは私達に何の用ですか?」」
ほら、やっぱり。
リンは私が普通の人にしてはおかしい魂を持ってる事に気付いてますから、私としてはその話題をされたくないんですよね。
話を遮られたリンが私を見ますが、
「まあ、いいヨ。ヤブヘビは勘弁だからナ。それよりもバリー・ザ・チョッパーから話は聞いタ。君達、面白い事になってるネ」
と言うに止まりました。
バリー・ザ・チョッパーとは知らない名前ですが、知り合いでしょうか?
「そうだよ、リン!なぜあんな人と一緒に行動してたの⁈」
「バリーと取引してネ。俺は留置所から逃げ出せル。彼はマリア・ロスという女性を留置所から逃がス。さらに彼女は死んだ人間となっているから居場所をシンに用意すル。その代わり、彼の身体の秘密を教えてもらうはずだったんだが、彼はわからないので君に訊くよう言われた訳ダ」
なるほど、ロス少尉は焼死している事になってるので、リンの伝手で国外に逃げるんですね。
それはいいんですが、結局バリーとは誰なんでしょう?
「アル君、バリー・ザ・チョッパーとはどなたですか?」
「少尉と出くわした時にいた鎧の人ですよ。あの人も鎧に魂を定着させてるんですが…。そっか、少尉は本当に生きてるんだ」
アル君がホッとしたように呟きました。
少尉とリンを脱走させたあの鬼鎧がバリー・ザ・チョッパーだったんですね。
最初に見た時はアル君と戦ってて、この間は少尉を逃してた。
という事は大佐の指示下にあったという事でしょう。
どういう経緯があったんですかね?
「俺達がこの国に入る時世話になった人物がリゼンブールにいてナ。じいにマリア・ロスを送らせておいタ」
「大佐が言ってたのはこういう事だったんだ…」
「それでアルフォンスの身体の事を訊こうと思ったんだが…、そうもいかなくなったナ」
リンが窓の外を見て言いました。
リンが見た方向には花火みたいな空中で光るものがあります。
花火のように華やかな感じはなく、光る事で何かを知らせるような感じです。
「あれは…信号弾ですか?」
「そウ。これはバリーが言ってたんだが、『一連の件の真犯人を炙り出す』だそうダ。君達も行くかイ?」
「ロス少尉を嵌めた犯人の事が少しでもわかるなら、ぼくは行きたい」
リンの問いかけにアル君ははっきりと答えました。
「アル君がそう言うなら、私もお手伝いしましょう」
「なら、ついて来イ」
リンはそう言って窓から外へと出て行きました。
信号を見失わないためなんでしょうが、私はともかくアル君にそんな事ができる訳ありません。
なので私達も慌てて、宿の外へ向かうべく走り出しました。
宿を出て、屋根の上を走るリンの後を追いかけます。
追いかけてる私達に気付いたリンも信号の場所に見当がついたのか、屋根から降りて私達の前を先行します。
そのまま走っていると、向かっている先にホムンクルスの気配がある事に気付きます。
そして辿り着いた路地裏にはランファンちゃんと、犬の姿をしたエンヴィーがいました。
なぜ犬の姿なんでしょう?
そう思っていたら、ランファンちゃんの投げた苦無がエンヴィーに刺さり、その変身も解けてしまいました。
「な…何だ今の…⁉︎」
「このっ…。くそっ…。ブッ…潰してやろうか‼︎」
驚くアル君に、苦無でできた傷口を手で抑えながら呻くエンヴィー。
「ん?こちらさんも変わった中身だネ」
そんなエンヴィーの、ホムンクルス特有の魂の気配にリンも気付いたみたいです。
エンヴィーはリンの一言にハッとして、
「…ったく!次から次に始末しなきゃならん奴が増えやがって…‼︎」
と傷口を修復しながら呟きます。
「ふっかーつ」
そこにもう一体ホムンクルスが現れました。
どこからどう見ても太った男…、こいつがグラトニーなんでしょう。
「エンヴィー、こいつら食べていいの?」
「よしっ!行け!食え!丸かじりだ‼︎」
私達を見るなり「食べていいか?」と言ってるあたり、「暴食」の名に相応しいですね。
『うわ、こりゃまたすごいのが来たぞ』
『こいつも…ですね』
『何?殺しても死なないのか?それは…』
リンとランファンちゃんがシンの言葉でボソボソ話してます。
そして、手と口を広げてこちらに向かってきてるグラトニーに、クワッと顔を向けるリンとランファンちゃん。
「アルフォンス、サラ。俺達はこいつらに用ができタ。この路地の先にバリーがいるから、お前達はそちらと合流しロ」
「…でも」
「いいかラ!真犯人を探してるのだロ⁈」
なんだか死亡フラグが立ちそうなやり取りですよ。
「リンは彼らの異常さをわかってるんですよね?」
「わかってるとモ。だが、不老不死の手がかりが目の前に現れたのダ。このチャンスを無駄にするつもりはなイ」
リンがそこまで言うのなら、私達がどうこう言っても仕方ありません。
「アル君、ここはリン達に任せて行きましょう。早くしないとバリーを見失いますよ」
「二人とも気を付けてよ」
アル君がそう告げて走り出したので、私もその後を追います。
リンが示した路地を進むと、大佐の運転してる車が停まってました。
「大佐‼︎ロス少尉の件で動いてるんでしょう?」
「ああ、二人とも来るか?」
大佐の問いかけに
「はい!」
アル君は即答します。
私もついて行きますが、車は四人乗りで大佐は運転席にいて、助手席にはホークアイ中尉、後部座席にはすでにハボック少尉が座ってて、アル君が乗ったら私の席はありません。
「私も行きますが、車には乗りません。と言いますか、定員オーバーですので、私は走って追いかけますよ」
周りを確認しても一般の人は見当たらないので、瞬動で近くの建物の屋根まで跳び上がります。
下を見るとアル君達がポカンと見上げてたので、
「早く出発しましょう」
と言うと車は慌てたように発進しました。
平成28年2月29日の活動報告で告知してたとおり、
今回で一旦休載させていただきます。
次回がいつになるかはわかりませんが
なるべく早く復帰できればなぁと考えてます。