つきましては、12時間連続投稿を行います。
これからもよろしくお願いします。
ーサラ・ヒューイットー
イーストシティに来て数日経ちました。
私はゴートンさんの店でバイトを続けています。
一応レシピをゴートンさんにも教えたんですが、なかなか
私は五月ちゃんに習ったんですが、ゴートンさんはそういうわけにもいかないですからね。
私の教え方が悪いんでしょうか?
その辺も要検討です。
そんなことを考えながら宿に戻り、いつものようにエド君達の部屋に顔を出します。
「ただいま戻りました。あら、どうかしたんですか?なんか2人とも暗いですよ」
「あ、サラさん。お帰りなさい。ちょっとありまして…」
アル君の表情は鎧で見えないものの、声のトーンは落ちているし、エド君も雨に濡れたままで椅子に座って頭を垂れています。
「そうですか。まぁ、何があったかは聞きません。ですが、エド君は身体をちゃんと拭いたほうがいいですよ」
「わかってるよ…。ちょっと放っといてくれ…」
「兄さん!」
「いえ、いいんです。お節介をかけました。では、今日は早めに失礼します。おやすみなさい」
それだけ言って部屋を出ました。
おそらく2人には辛いことがあったんでしょうが、私にはそれを知る術がありません。
構うなと言われれば、それ以上踏み込むこともできませんし。
私も自分の部屋に戻りました。
翌朝、前日の2人が気になったので、バイト前に声をかけようと思って扉をノックしました。
ですが、いつまで経っても返事がありません。
ひょっとして既に出かけてるんでしょうか?
昨日はかなり落ち込んでたんですが、もう立ち直ったんでしょうか?
それなら問題はないんですけど…。
ずっと扉の前にいるわけにもいかないので、仕方なく宿を出ます。
昨日もだったんですが、今日も随分雨が降っていますね。
ローブを羽織って大通りを歩いていると、「ドーン」と爆発する音が響き、さらに何かが崩れる音が聞こえました。
こんな街中で聞こえるような音じゃありません。
虚空瞬動で建物の屋根に登り、屋根伝いに瞬動で音がした方へと向かいます。
そして目にしたのは右側が抉り取られたように壊れたアル君の鎧と、右腕が壊され膝をつくエド君に、それを見下ろす褐色の男でした。
アル君の鎧近くの建物が崩れてるのを見ると、なるほど、あの男が今回の騒ぎの原因なんでしょう。
アル君はどこに行ったんでしょうか?
とりあえず、
「
氷の矢を11本作り、3本をエド君と男の間に撃ち込みました。
すぐにエド君から男が離れます。
「誰だ?」
男が私の方を見上げます。
私は瞬動でエド君と男の間に立ち塞がりました。
「人に名前を聞くときは、まず自分から名乗るものですよ?」
「サラ?ダメだ!逃げろ‼︎」
いやいや、エド君。
右腕がない君に言われたくありませんよ…。
「名など捨てた。貴様は鋼の錬金術師を庇うつもりか?」
「もちろんです。まだ列車代を返してないんで」
「ならば、貴様から排除する!」
そう言って男が私へと向かってきます。
何かの武術を修めているんでしょうね、動きも早く無駄がないんですが…私からすれば、
「遅いです。もう少し早く動いたほうがいいですよ」
男が突き出してきた右手を逸らして、影の袋から取り出した鉄扇で男の右肘を曲げ、その勢いを使って男を投げ飛ばしました。
自分の力で背中を打ちつけられる男。
私の力でやったら大変なことになりますからね。
なんとか受け身をとる男に対して、さらに背中で待機させてた氷の矢の残りを時間差で飛ばします。
男も最初は氷の矢を右手で触れて壊してましたが、最後の1本が男のかけてたサングラスを弾き飛ばしました。
眉間に大きなバツ印の傷がついてます。
それから、あの右手が触れると光とともに氷がなくなることから思うに、あれが傷の男の錬金術なんでしょう。
エド君みたいに「創る」錬金術があれば「壊す」錬金術もあるんですねぇ。
でも、その右手が追いつかなければどうでしょう?
「
背中にさっきよりも多くの氷の矢を待機させ、
「名無しのおじさん。右手だけしか使ってないんですが、左手は使わないんですか?使えないんですか?私にはどうでもいいんですが…降参しませんか?それとも、まだやります?」
さすがにこの物量は捌けないと判断したのか、こちらに突っ込もうとはしてきません。
「そこまでだ」
聞き覚えのある声に振り向くと、銃を構えたマスタング大佐やホークアイ中尉、ハボック少尉、その他軍人さんが周囲を包囲しています。
しかし、傷の男の顔を見た大佐が驚きの声をあげました。
「イシュヴァールの民か…‼︎」
イシュヴァールの民?
どこかの部族なんでしょうか?
それは後で聞けばいいですね。
「…この人数が相手では分が悪いか」
男が呟くと、大佐が右手を上げ、周りの軍人さんも銃を構えます。
「おっと!この包囲から逃れられると思っているのかね?」
と大佐が警告を出しますが、傷の男は自分が立っていた足元を破壊して逃げていきました。
なるほど、そういう逃げ方もあるんですね。
「さて、サラ君もその氷をどうにかしてもらえるかな?」
大佐に言われて思い出しました。
私の背後に浮かんだ氷の矢101本の存在を。
「ああ、すみません」
そう言って矢の魔力を霧散させます。
「アルフォンス‼︎アル!大丈夫か、おい‼︎」
エド君はアル君の鎧に語りかけてます。
あれじゃ、まるで鎧がアル君みたいな…。
「この…バカ兄‼︎」
と言って空のはずの鎧が動き、エド君を殴りました。
あれは気が抜けてるところを殴られたので、痛かったでしょう。
それはともかく、やはりあの鎧がアル君だったんですね。
そりゃ、毛布も睡眠も食事もいらないわけですよ。
あれも訳ありの一つなんでしょうね。
エド君とアル君は傷の男への対応でなんか喧嘩してますが、喧嘩できるのも生きているからできるんです。
エド君の胸倉を掴んだアル君の腕がもげちゃいましたが、喧嘩するのも仲がいい証拠でしょう。
「いやぁ、助かったぜ嬢ちゃん!」
エド君達を見ていたら、後ろから声をかけられました。
振り返ると、眼鏡に黒髪、顎に髭を生やした男性と、高身長でガタイがいい金色の口髭と僅かな前髪だけの男性が立っていました。
「何がですか?」
「さっきの褐色、赤目の男…『
「いえいえ、私も彼らにお世話になってますから」
「それでもだ、礼を言わせてくれ。そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はマース・ヒューズ、階級は中佐だ。背後のデカいのはアームストロング少佐だ」
「アレックス・ルイ・アームストロング少佐と申します」
「これはご丁寧に。サラ・ヒューイットと言います。縁あってエルリック兄弟と旅をしてるんですが、まぁしがない旅人です」
「嬢ちゃんが作った氷の矢も錬金術なのか?」
まぁ、あれだけ大々的に見せたらそう聞かれてしまいますよね。
錬金術じゃないけど魔法って言っても信じてもらえないだろうし。
この世界は魔法の代わりに錬金術が発達した、科学寄りの世界なんですよね。
「この国で使われてる錬金術とは技術体系が違うので、錬金術とは言えないですね。強いて言えば魔術でしょうか?」
「魔術?そりゃ面白いジョークだ!さしずめ氷の魔術師だな‼︎」
「確かにヒューイット殿の術が発動する際、錬金術特有の錬成光が見られませんでしたな」
ガハハと笑うヒューズ中佐に対し、アームストロング少佐は私の言葉へ思ったことを口にします。
「私はこの国に来て日が浅いんですが、『イシュヴァールの民』って何ですか?」
「嬢ちゃんは知らないのか?じゃあその辺についてもエルリック兄弟と一緒に説明してやるよ。嬢ちゃんも傷の男に狙われる可能性が高いからな」
まあ、あのおじさんの邪魔をしたんですから狙われるでしょうねー。
「ではよろしくお願いします」
私の視線の先ではハボック少尉が右半身の壊れたアル君を担いでいます。
とりあえず、エド君とアル君は一段落ついたみたいですね。