μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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ストーリー、始動!


第11話 カイトゥーン地方の神話

シロナと名乗った女性と歩きながら、穂乃果は会話に花を咲かせていた。

「シンオウ地方から?」

「ええ」

「__って……どこですか?」

「どこ、と訊かれると答えに困るけど……このカイトゥーン地方と同じく、大きな山があるわ。自然は豊かで街は発展していて、とてもいい所よ」

「へぇ……。行ってみたいなぁ」

「オススメは、やっぱりカンナギタウンかしら。歴史の古いのどかな所よ。私の家もあるし。__さ、着いたわ」

穂乃果が顔を前に向けると、まず幾つもの石柱が目に飛び込んできた。

いたるところに配置された石柱を見渡しながら、穂乃果は訊く。

「これ……何か意味があるんですか?」

シロナは石柱の一つに手を触れる。

「私にも分からないわ。無造作に配置されたものなのか、それとも意図して置かれたものなのか……。それを考えるのが、考古学の楽しい所でもあるの」

「うーん……。分かるような分からないような……」

思案顔の穂乃果に、

「今はそれでもいいわ。いつか分かる日が来るかもしれないもの」

シロナは石柱から手を離し微笑んだ。

「先に進みましょう。ここの見所は、なんと言っても一番奥なんだから」

「奥? 奥に何かあるんですか?」

その質問に、シロナは答えない。

 

 

「__おお〜……」

遺跡の最深部にある建物へと入ると、すぐに一面に巨大な壁画が広がった。

壁画から十メートルほど離れた場所でも、全てを視界に収める事はできない。

極彩色で彩られた巨大な絵を口を開けて見上げていると、

「__ん?」

視界を何かが横切った。

目線で追いかけると、黒い身体に大きな一つ目。そんなよく分からない生物が浮遊していた。

「あら、アンノーン……」

「アンノーン? あれ、ポケモンなんですか?」

「ええ。生態も生息地も確立しない、謎の多いポケモンよ。歴史と深い関わりがあるらしいけど……」

「…………」

そのままアンノーンを目で追っていた穂乃果は、

「__あっ」

「どうかした?」

「あそこ、壁画にもアンノーンがいます!」

穂乃果が指差した先には、まさしくアンノーンが無数に描かれていた。

「……あれ? でも形が違う……?」

「アンノーンの形は様々なの。現在は二十八種類が確認されているわ」

「そんなに……」

穂乃果は眼前を飛ぶ、『M』を彷彿とさせるアンノーンを眺める。だが、それもしばらくするとどこかへ姿を消してしまった。

すると穂乃果の意識は、再び壁画に戻る。

「__あれ……あそこ、何か文字が書いてある……」

「え? どこかしら」

「そこです」

穂乃果が指差したのは、壁画の下部分。目線の高さとほぼ同じ。

「本当……。よく気が付いたわね、穂乃果ちゃん」

「いやぁ……たまたまですよ」

と言いつつ、エヘヘと頭を掻く穂乃果。

シロナは文字に近づくと、

「古代文字ね……」

「読めるんですか?」

「ちょっと待ってね」

何やら文献を取り出す。

「そもそも、文字自体が消えかかっているし……部分的にしか分からないわね」

「それでも分かるんですか⁉︎」

穂乃果は駆け寄り、そして詰め寄る。

「い、今教えるわ……」

少し気圧されたシロナは、咳払い一つ壁画に向き直る。

「えっと……『このち……んざいしパ………クス。それはうた…たい、そ………ごえはすべ……つく…ほろ……、またつ…る。パ………クス、なす……ものをそ……うす。しかし………くのち、いさか…お…る。パ………クスいかり、これ……ずめる。そのち…………うだい…りて、せか………びる。パ………クスなげき、ふたた………ぞうす。ひとびとこれをおそ……がめる。パ………クス、れいほ……て……りにつく。われわれしるす。いさ……さ…りくおこ……とき、パ………クスいか……んげんす。すべ……ろび、また………かわる。それを……るすべただひとつ。ここ…つ……しょうたずさえ、みずからのう……えとちからあわせ、したが……しめるのみ。このよげん、かな……こといのる』……」

シロナが文章を読み終えると、

「えっと……どういう事?」

案の定穂乃果は首を傾げた。

「どうやら、カイトゥーン地方の神話を記した文章みたいね。風化が激しくて、これ以上は内容が分からないわ……」

シロナは諦めたように文献を閉じた。

「少なくとも、ここに描かれたポケモンとは無関係とは言えなさそうだけど」

「神話……」

穂乃果は、壁画の最上部に描かれた絵を眺める。

こことは違う神殿のような場所で、人々がひれ伏している。その先には、数多のアンノーンに囲まれたポケモンらしき生物が堂々と鎮座している。その姿は、馬とライオンを合わせたような立派な体躯を持ち、神々しいオーラを放っている。口元の波は、声だろうか。

「神話のポケモン……。もしかして、本当にいたりするのかな……」

いつしか穂乃果の口には、好奇心の笑みが浮かんでいた。

 

 

シロナと遺跡を出ると、

「__ねえ、穂乃果ちゃんのポケモンを見せてくれないかしら」

そんな事を言われた。

「ポケモンを?」

「ええ。実は私、この地方に来たばかりで、あまりこっちのポケモンを知らないの。見せてくれない?」

「いいですよ!」

穂乃果は一気にボールを掴むと、全て空に放る。

「グオ!」「ワウ!」「キュルル!」「リア!」「ダグ!」

「あら、ハーデリア。このポケモンはシンオウ地方にはいないわね」

シロナはハーデリアを優しく撫でる。

「クゥーン」

ハーデリアも、気持ちよさそうに撫でられる。

しばらくそうしていたシロナは、

「…………。穂乃果ちゃん、一つ図々しいお願いしてもいいかしら」

穂乃果を真っ直ぐ見つめる。

「何ですか?」

「このハーデリア、私に譲ってくれない?」

「えっ……?」

思わぬ申し出に、穂乃果は固まる。

「もちろん私からもポケモンをプレゼントするわ。ポケモン交換ね」

「交換……」

穂乃果はハーデリアを見下ろす。

「ハーデリアは、どうしたいの?」

だがハーデリアは、穂乃果を見つめ返すだけで何も答えない。

「自分で決めろって事なのかな……」

穂乃果は目を閉じてしばらく考えると、

「__シロナさん」

「ん?」

「ハーデリアは、しばらくお貸しします」

「貸す?」

「はい。他の地方から来たシロナさんといれば、ハーデリアはもっと色んなものを見る事ができる。きっと強くもなる。……でも、やっぱり私のポケモンなんです。誰と一緒にいても、私の」

「穂乃果ちゃん……」

「いつかまた会えた時まで、ハーデリアを預けます。私の答えです」

そう言って穂乃果は笑う。

「よろしくお願いします!」

シロナはしばらく黙ったままだったが、

「__やっぱり、不思議な存在ね。何か、私とは違うものを持っている……。そんな気がするわ。__分かりました。ハーデリアは、“預かり”ます。次に会った時、驚く準備が必要よ?」

シロナの微笑みに、穂乃果も顔を輝かせる。

「__はいっ!」

「じゃあ私からはこのポケモン。目撃情報も多くない、珍しいポケモンよ」

「いいんですか?」

「もちろん。穂乃果ちゃんなら、安心して任せられるわ」

穂乃果はシロナからモンスターボールを受け取ると、早速空に放る。出てきたのは、

「ウィィィィ!」

小さなプラズマのようなポケモンだった。

「名前はロトム。可愛がってあげてね」

「ウィィ?」

ロトムはシロナと穂乃果を交互に見ると、疑問に近い表情を浮かべた。

「ロトム、今日からあなたのパートナーは、この穂乃果ちゃんよ。素晴らしいトレーナーだから、きっとあなたも気にいるわ」

「ウィ? ウィ?」

ロトムは再び穂乃果を見ると、見定めるように飛び回る。それから、

「ウィィィィ!」

穂乃果の周りをグルグル回り始めた。

「うわわわわわっ⁉︎」

軽く目を回した穂乃果を見て、シロナは笑う。

「ロトムも気に入ったようね。よかったわ。__さて、こっちもよろしくね、ハーデリア」

「ワウ!」

ひとしきりロトムと戯れた穂乃果も、ハーデリアへと視線を向ける。

「しばらくお別れだね。__でも大丈夫! 次会う時までに、びっくりするくらい強くなってね! ファイトだよっ!」

「ワウッ!」

『任せておけ』とでも言いたげに一声吠えると、ハーデリアはシロナの持つボールに収まった。

「ハーデリアをよろしくお願いします」

「ええ。穂乃果ちゃんも、ロトムをお願いね」

 

 

「__ここでお別れね」

「そうですね……」

チェリーバタウンの入り口。ウェスリードへ向かうシロナを見送るべく、穂乃果も来ていた。

「また会えるわ。約束だもの」

「! そうですよね!」

「ええ。じゃあ、またね」

「はい! また会いましょう!」

シロナが見えなくなるまで手を振り続けた穂乃果は、一度休息してから出発しようと町の中へ戻る。シロナと出会った場所に来ると、

「あれ……?」

思わぬ人物と邂逅した。

「久しぶりね。元気そうで何よりだわ」

「ツバサさん……」

 

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