μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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第12話 神社での邂逅

「どうぞ」

「ありがとうございます……」

ツバサと再会した穂乃果は、一軒の民家に案内された。

ツバサは紅茶の入ったカップを二つ置くと、穂乃果の対面に座る。

「遠慮しないで。私の家だから、ここ」

「あ、はい……」

未だ緊張が抜けきらない様子の穂乃果は、ゆっくりとカップに口をつける。

同じように紅茶を一口飲んだツバサは、

「あなたも、カイトゥーン地方の伝説に興味があったのね」

「いえ……あったというか、通り道で寄っただけで……」

「あら、その割には楽しそうだったわよ? シロナさんとも意気投合していたみたいだし」

「シロナさんを知ってるんですか?」

驚いた表情を見せる穂乃果に、

「……あなたこそ、シロナさんを知らなかったの?」

「う……はい。そんな有名な人なんですか?」

「有名も何も、シンオウ地方のチャンピオンよ」

「え……ええぇ⁉︎ チャンピオン⁉︎ チャンピオンって、つまり一番強い人って事ですよね⁉︎」

身を乗り出してきた穂乃果に、

「え、ええ……本当に知らなかったのね」

その辺はゲームもやらなかったし……、と呟く穂乃果。

「…………」

聞こえたかは分からないがツバサはそれをスルーし、

「__ねえ、穂乃果さんにとって、ポケモンって何かしら」

「え? ポケモンが? __うーん……よく、分かりません」

「?」

「ごめんなさい! そもそも私、こういう事考えるのが苦手で……。でも何となく、ここは私がいるはずの場所とは違う気がするんです。ポケモンは可愛いし、強いし、頼りになるし……でも、」

「__何かが違う気がする」

「……はい」

「私も同じよ」

「え?」

下を向いていた穂乃果は、顔を上げる。

「でも、私にも答えは分からない。そもそも、自分が正しいのかも」

「ツバサさん……」

 

 

「付き合ってくれて、ありがとう」

そう言って、ツバサは手を差し出す。

「いえ、私も楽しかったです」

穂乃果も握り返す。

「__あ、そうそう。あなたにはこれをあげるわ」

そう言ってツバサは、何かを穂乃果に差し出した。

「これは……? 石……?」

「ちょっとした御守りよ。きっと、あなたを助ける時がくるはず。大切にしてね」

「分かりました!」

穂乃果は大きく頷くと、不可思議な石をしっかりとバッグにしまった。

「この先にあるのは、イースブータウン。すぐ近くで、ジムもあるわよ」

「へぇ……。どんな所なんですか?」

するとツバサは、イタズラっぽく微笑む。

「それは、自分の目で判断するの。それも、旅の醍醐味の一つでしょう?」

「う……そうですね。そうします!」

穂乃果は明るく笑うと、手を振ってチェリーバタウンをあとにする。

 

 

「おお……ホントにすぐだった……」

チェリーバタウンを出発して僅か一時間。穂乃果はイースブータウンへ到着した。

入り口では、柳と紅葉の木が出迎えてくれる。

タウン、という割には人が多いが、何となく落ち着いた空気を穂乃果は感じた。

「__と、まずはポケモンセンター」

チェリーバにはポケモンセンターは存在しないため、穂乃果のポケモンはロトムを除いて消耗したままである。

ジョーイさんにポケモンを預け、休憩していた穂乃果。他の人の会話にぼんやり耳を傾けていると、

「……神社?」

という単語が何度も出てきた。

「__お待ちどうさま。ポケモンは皆元気になりましたよ」

ちょうどやってきたジョーイさんに、穂乃果は訊いてみる。

「あの、神社って、何なんですか?」

「まあ、あなた、イースブー神社を知らずに来たの?」

「イースブー神社?」

かなり可哀想な顔をされたが、親切なジョーイさんは教えてくれる。

「イースブータウンには、大昔のポケモンを祀った神社があるの。この町ができる前からある、とても古い神社よ」

「分かりました行ってみます! ありがとうございました!」

お礼もそこそこに、穂乃果はポケモンセンターから駆け出す。

凄まじい行動力に、ジョーイさんは説明した姿勢のまま固まった。元気な後ろ姿は、すぐに見えなくなる。

 

 

神社の場所が分からなかった穂乃果だが、その心配は杞憂に終わった。

目立つ場所に、大きな赤い鳥居が口を広げていた。参拝客も多いのか、辺りは人で賑わっている。

「……何か、神田明神を思い出すなぁ。練習したくなっちゃう!」

知らず知らずの内にステップを踏んでいた穂乃果は、

「あー、もしもし、こんな人がいるのに踊ったりしたらアカンよ?」

の声で我に返った。

「! この声……!」

そして振り返った穂乃果は、

「希ちゃん!」

巫女姿の希を視界に捉える。

「んー? 前にどこかで会ったかなぁ?」

「私だよ! 穂乃果だよ!」

「穂乃果ちゃん……。聞いた事あるような気ぃするなぁ……」

「希ちゃんもダメか……」

穂乃果は一瞬肩を落とすと、

「でも希ちゃん、神社でお手伝いは変わらないんんだね!」

「何が変わらないんかはよー分からんけど、時間がある時はここに来るようにしてるかな」

「ふーん……さすがだなぁ」

「穂乃果ちゃん、旅してるポケモントレーナーやろ? せっかく来たんやし、お参りしてき。安全祈願に必勝祈願__あー、必勝祈願は、ウチの立場的に勧めるのはマズいかなぁ……」

「? どうして?」

すると希は、不敵な笑みを浮かべる。

「だってウチ、イースブージムのジムリーダーやからね。そんなウチがトレーナーに必勝を勧めたら、本末転倒やん」

「そういうものかな……」

難しい事が理解できない穂乃果は、首を捻るだけ。それから、

「希ちゃんがジムリーダーなの……?」

「そうや?」

「…………」

今までに無い緊張が穂乃果に走る。

「穂乃果ちゃん可愛いし、負けたら罰ゲームとか面白いかもなぁ?」

そう言って両手を“あの形”にする希。

「ひぃっ!」

すでに被害者の穂乃果には、トラウマモノである。

「冗談や。仮にもジムリーダーやからね。そんな事はせぇへんよ」

「よかった……」

かなり本気で胸を撫で下ろした穂乃果。

「ウチはしばらく手伝いがあるから、神社でゆっくりしていくとええよ。あとでジムに来てね」

「うん! 分かった!」

希と別れた穂乃果は、言われた通りまずは神社を探索する。

正面は玉石を敷き詰めた大通りで、奥には立派な本殿が見える。右側には歴史資料館があるらしいが、

「歴史……勉強……」

穂乃果はスルーを決めた。

「やっぱりまっすぐ!」

結局本殿へ直行に決めた穂乃果は、巨大な長い石段を登る。階段は登り慣れているせいか、非常に軽やかに駆け上がる。

ものの三十秒で登り切ると、目の前にイースブー神社の本殿が待ち構える。

「大っきいなぁ……」

ひとしきり見上げてから、穂乃果は中に入る。

「__あっ!」

そこにいたのは、

「壁画のポケモン……⁉︎」

少し前にチェリーバタウンのウテックス遺跡で見た、あのポケモンだった。

「……銅像?」

もちろん本物ではないが、より鮮明な形でそこに鎮座していた。

「伝説の……ポケモン……」

「そうや。カイトゥーン地方に伝わる、伝承に登場するポケモンなんや」

その声に振り返ると、

「希ちゃん!」

巫女服から着替えた希が立っていた。

「希ちゃん、何か知ってるの⁉︎」

「うーん……ウチも、というか伝承自体、あまり詳しく残ってないんよ……。分かるのは、むかーしむかし、このポケモンがこの地方を栄えさせて、そして大変な事が起きた、くらいのモンなんや」

「そっか……」

肩を落とした穂乃果に、

「まあ旅してるんやったら、どこかで出会うチャンスがあるかもしれへんやろ? 落ち込んでいてもしょーがないで?」

希はポンポンと背中を叩く。

「それより、穂乃果ちゃんジムへのチャレンジャーやろ? 手伝い終わったし、相手するで?」

「__うん!」

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