「それでは、イースブージムリーダー・希VSチャレンジャー・穂乃果のバトルを始めます。ジムリーダーの使用ポケモンは四体。チャレンジャーに制限はありません。なお、チャレンジャーにのみポケモン交替が認められます」
バトルフィールドで対峙しながら、希は不敵に微笑む。
「穂乃果ちゃん、強いんだってなぁ? 楽しみや」
「強いかは分からないけど……頑張るよ!」
「頑張りーや。__行くで、ブルンゲル!」
「ブル……」
「わ、クラゲみたい……」
ポケモン図鑑を取り出した穂乃果は、ブルンゲルをチェックする。
「オスとメスで色が違うんだ……。希ちゃんのはピンクだから、メスだね」
「ほら、穂乃果ちゃんもポケモン出さんと」
「そうだった! __んーと……ロトム、ファイトだよっ!」
「ウィィィ!」
「ほう、珍しいポケモン持ってるなぁ。でも、強いかどうかは別の話や。__ブルンゲル、みずのはどう!」
「ブルー!」
「ロトム、かげぶんしん!」
ブルンゲルが放った水流は、ロトムの残像を蹴散らすだけに終わった。
「ロトム、10まんボルト!」
「ウィィィ!」
反対に、ロトムが放った電撃はブルンゲルへ直撃する。
「よし!」
「やるやん、穂乃果ちゃん。__でもな……」
希の笑みは消えない。穂乃果が相手を見ると、
「ブル」
「倒せてない⁉︎」
深刻なダメージではあるようだが、倒れるまでには至っていないブルンゲル。
「ナイトヘッド!」
「ブルゥ……」
ブルンゲルはゆらりと動くと、ロトムに近付く。
「ウィ……」
ロトムは、何故か苦しそうにもがく。
「ロトム! 頑張って! 10まんボルト!」
「ウィ……ウィィィィィィィッ!」
全力を振り絞ったロトムの攻撃は、
「ブルゥ……ッ!」
「振りほどいた……⁉︎」
ブルンゲルを強引に引き剥がした。
「アカン、ブルンゲル、もう一度ナイトヘッ__」
「させない! でんげきは!」
「ウィィィ!」
「ブルンゲル、戦闘不能! ロトムの勝ち!」
攻撃モーションに入ろうとしていたブルンゲルを不可避の電撃が襲った。
「よーし! 一体倒したよ! やったねロトム!」
「ウィィッ!」
二つ目のボールを掴みながら希は、
「あちゃー、やっぱり穂乃果ちゃん、強いなぁ。こうもあっさり倒されるなんて。__でも、本番はこれからやで? ムウマージ!」
「マージ」
登場したムウマージを、すかさず図鑑でチェック。
「やっぱりゴーストタイプか……」
「ムウマージ、シャドーボール!」
さてどうするか、と考えていた穂乃果の耳に、希の声が届く。
「え、ちょ__」
慌てる穂乃果の目の前で、影の塊がロトムを襲う。
「ロトム!」
「ロトム、戦闘不能! ムウマージの勝ち!」
無情に告げられた審判の声に、穂乃果は大きく肩を落とした。
「油断禁物や♪ 一体倒したからって、終わりやないんやで?」
「むう……そっか。__よし、ムクホーク、ファイトだよっ!」
「ホーク!」
「あれ? 話によるとムクバードだったはずやけど……」
「つい昨日進化したの!」
「とことん予想を裏切って来よるなぁ……」
希は感心したのか呆れたのか分からない笑みを浮かべると、
「ノーマルタイプにはゴーストタイプは効かない……考えたね、穂乃果ちゃん」
「……うん」
何となく穂乃果には分かっていた。相手はジムリーダーで、しかもあの希なのだ。ノーマルタイプを使うだけで勝てるなら、誰も苦労しない。
「ムウマージ、「ムクホーク、とんぼがえり!」でんげきは……」
「ホーク!」
希の声に被せて、穂乃果の指示が飛ぶ。ムクホークはムウマージに突っ込むと、そのままバウンドするようにボールへ戻る。
「ダグトリオ!」
「ダグ!」
すかさず穂乃果が投げたボールからは、ダグトリオが飛び出す。
直後、電撃がダグトリオを襲う。だが、
「……地面タイプやもんな」
ダグトリオはまったくダメージを受けない。
「よし、上手くいった!」
「穂乃果ちゃん、随分と巧妙な作戦考えるんやなぁ。見直したで」
「だ、だよね! __ただのカンだったなんて、希ちゃんには言えないよ……」
「? 何か言うた?」
「な、何でもない! __それより行くよ! ダグトリオ、じしん!」
自信満々に指示した穂乃果を見て、
「あー……」
何故か気の毒そうにする希。
それもそのはず。ダグトリオの攻撃は、ムウマージには届かない。
「な、何で⁉︎」
「ムウマージの特性は“ふゆう”や。地面タイプの技は当たらんのやで?」
「そ、そうなの⁉︎」
「……ごめん、さっきの褒め言葉、撤回するな?」
「そんなあ!」
悲痛な声を上げる穂乃果に、
「掴み所が無いトレーナーやんなぁ……」
希も苦笑する。
「地面技が当たらないなら、こっち! __ダグトリオ、ストーンエッジ!」
「ダグ!」
突如出現した尖った石片は、一直線にムウマージへ肉薄する。
「そんな技も持っとるんやね! ほんならムウマージ、パワージェム!」
こちらもガラスのような石片が出現。空中で二種の石片がぶつかり合う。
だが、ガラスのような見た目同様強度も弱いのか、相殺すらできずに砕けていく。
勢い衰える事なく飛来した石片は、ムウマージに襲いかかる。
「アカン……!」
「ムウマージ、戦闘不能! ダグトリオの勝ち!」
「ふー……やっぱり無理やったか。お疲れムウマージ」
希は数度頭を振ると、すぐに不敵な笑みを戻す。
「頼むで、ミカルゲ!」
「ミョーン……」
「また変なポケモンが……」
ポケモン図鑑を確認すると、
「魂を封じ込めた……⁉︎」
その内容と同時に、希に軽く畏怖を覚える穂乃果。
「おーい、もうええか? 始めるで?」
「あ、うん」
「行くでー? __ミカルゲ、あくのはどう!」
「ミョーン!」
放出された邪悪な光線を、
「あなをほる!」
ダグトリオは潜って回避。
ミカルゲが見失っていると、
「今だ!」
真下から体当たりをかます。
「よし、これならいける!」
かつて、ツバサとの初陣でハーデリアが使った戦法。
「ほほー。素早いポケモンやなぁ。__せやけど、同じ作戦は使わせへんで?」
希の笑みは、なおも崩れない。
「ミカルゲ、かなしばり!」
「ミョーン!」
「ダグ……ッ⁉︎」
ミカルゲの不気味な影が、ダグトリオを包む。
「ダグトリオ、大丈夫⁉︎」
「ダグ!」
ひとまずダメージが無い事に安堵した穂乃果は、ならばあの技の効果は何だろうと考えるが、
「おにび!」
希とミカルゲはそんな暇を与えてくれない。
「とにかく、もう一度あなをほる!」
穂乃果の指示はしかし、
「ダ、ダグ……⁉︎」
不自然に動きが止まったダグトリオには届かない。そして、青白い炎はダグトリオを包み火傷を負わせる。
「どうして……⁉︎」
不思議そうな穂乃果に、希の説明が入る。
「かなしばりは、相手が最後に使った技を封じ込めるんや。もう潜る作戦は使えへんで?」
「そ、そうだったんだ……。__でも、ミカルゲの特性はふゆうじゃない……。それなら! __ダグトリオ、じしん!」
ダグトリオの攻撃は、確かにミカルゲに届いたが、
「倒せない……!」
「おにびで火傷を負ったやろ? それで攻撃力が半分になってるんや」
「そっか……。__でも攻撃は効く! __ダグトリオ、じしん!」
「ダグ!」
穂乃果の超ポジティブシンキングに影響されたのか、ダグトリオも渾身の力で技を放つ。
その結果、
「ミカルゲ、戦闘不能! ダグトリオの勝ち!」
「あ、あれ?」
倒した本人が、驚いてしまう。
「このダメージ……急所に当てたんか……! 穂乃果ちゃん、持ってるね」
ミカルゲを戻しながら、希は感心したように呟く。
「これで、希ちゃんの手持ちは一体だけ……。いけるよダグトリオ!」
「ダグ!」
「んふふ……。中々強いダグトリオやけど、最後まで気ぃ抜いたらアカンで? __ゲンガー!」
「ガー!」
「ゲンガー……ってこのポケモンも特性ふゆうなの⁉︎」
ポケモン図鑑を確認した穂乃果は叫ぶ。
「そうや。__けど、技を使うヒマも無いで! __ゲンガー、たたりめ!」
「ガー!」
「ダグ……⁉︎」
ダグトリオの周りに出現した人魂のような光は、しばらく浮遊して消えた。だが、
「ダグトリオ、戦闘不能! ゲンガーの勝ち!」
「そんな⁉︎ どうして⁉︎」
ダグトリオはダウンしてしまう。
「んふふ〜、こればっかりは教えられんなぁ。自分で気付くしかないで?」
希は楽しそうな笑顔を浮かべる。
「お疲れダグトリオ。……ゲンガー、強い……! __でも勝つ! 絶対勝つ!」