μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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第15話 フォルムチェンジ

穂乃果がイースブータウンを出発してすぐ、道は上り坂、そして階段が続いた。

比較的階段は登り慣れている穂乃果だが、それを長時間続く経験は無いし、何より、

「……飽きてきたかも」

退屈を覚え始める。

険しい道のせいか、歩くトレーナーも少ない。疲労の蓄積と退屈が相まって、あまり人に見せられない表情をしていた。

そのせいか、足元がおろそかになっていたのだろう。一部が崩れていた階段を踏み外し、

「うわわわわっ⁉︎」

さすがの反射神経で転倒だけは回避し、そのまま尾根を五メートルほど駆け下り、平らになっていた場所で止まった。

「…………こ、怖かった……」

しばらく肩で息をしていた穂乃果は、やがて立ち上がる。

「ここは……」

辺りを見渡し、上を仰ぎ、下ってきた尾根が登れないほどではないと知る。

登るかどうか悩んでいた穂乃果の視界を、

「ビビビビ……」

「バチュチュッ」

コイルとバチュルが横切った。

「あれは……」

ポケモン図鑑で確認した穂乃果は、ゲットするか定かではないがとりあえず追いかける。

途中、エレキッドやシビシラスといったポケモンを見かける。

「何か、電気タイプが多いような……」

穂乃果が首を傾げつつ歩を進めると、

「__うわっ……」

何やら開けた場所に出た。そこには、

「何これ……テレビ? あ、こっちは冷蔵庫だ。あっちには扇風機……。電子レンジもある」

様々な電化製品が無造作に山積みにされていた。そしてその周りに、コイルをはじめとするポケモンが群がっていた。

「あ、だから電気タイプが多いのかな。__電気って、食べ物なのかな……」

警戒の色を見せるポケモンたちに気を付けながら、穂乃果はスクラップの山を探索開始。

とはいえ、一つ一つが重量のある電化製品。持ち上げる事はおろか動かす事も困難なので、ためすすがめつして状態を確認する程度である。

「これ……もう絶対動かないよね……。あ、でもこっちは微妙に音がする」

電化製品の状態は様々。完全に金属の塊と化したものや、まだ照明が灯るものまで。中には、原型すらとどめていないものもある。

「でも、何でこんな所に……? __はっ、まさか不法投棄⁉︎ それは穂乃果、許せないよ!」

実際にはその通りなのだが、穂乃果にそれを知る術は無い。

「ゴミはゴミ箱! 海未ちゃんに言われたもん!」

微妙にずれた事を言いながら、スクラップの山で憤慨する穂乃果。

「__ん? __わわわっ! 何⁉︎」

突然、穂乃果が身に付けるモンスターボールの一つが、盛大に暴れ出した。

たまらず上へ放り投げると、

「ウィィィィィッ」

「ロトム?」

中にいたロトムが飛び出した。

「どうかしたのー?」

穂乃果は呼びかけてみるが、ロトムはせわしなく飛び回るだけ。

「うーん……電気タイプだから、嬉しくなっちゃったのかな?」

穂乃果がロトムを眺めていると、

「____!」

空気が変わった。それとほぼ同時に、周りにいたポケモンたちが一目散に逃げていく。

「何だろう……この感じ。海未ちゃんに怒られる時と同じ雰囲気が……」

例えとしてそれはどうなのかとツッコミを入れたくなるが、それをいてくれる人はこの場にいない。

「__はっ! まさか本当に海未ちゃんが⁉︎ ……でも、別に怒られるような事してないし……」

的外れな事で悩む穂乃果の前に、

「ドサ……」

木々の陰から大きな何かが現れた。

「! あれは……⁉︎」

とっさにポケモン図鑑を取り出し、電化製品の山の陰に隠れる穂乃果。

『ドサイドン。がんせきポケモン__』

ポケモン図鑑から無機質な説明が流れ、穂乃果は種類を把握する。

「ドサイドン……。大っきいポケモンだなぁ……」

穂乃果が見つめる先で、ドサイドンはおもむろに近くのパソコンらしきものを叩き潰した。完全にスクラップと化したパソコンを見つめ、じっとするドサイドン。

「何やって……」

穂乃果が首を傾げていると、先ほど逃げたバチュルたちが数匹、恐る恐る姿を見せた。

「ドサ」

ドサイドンが何かを伝えると、

「「「バチュ……」」」

バチュルたちはドサイドン目掛けて、電撃をぶつけた。

「え⁉︎」

今度は驚く穂乃果の前で、電撃を浴び続けるドサイドンは満足そうに、そして元気になっていく。

疑問一色の穂乃果は、ポケモン図鑑を確認し、そして理解する。

「特性、ひらいしん……。電気技を吸収しちゃうんだ……」

感心した穂乃果は、ふとバチュルたちに目を向ける。すると、

「バチュ……」

「! あのバチュルたち、元気が無い……。もしかして、無理矢理やらされてるのかも……!」

穂乃果は、目の前の状況を何となく理解する。

「あのドサイドン、悪者かも! よーし……。__こらー!」

穂乃果は立ち上がり、ドサイドンに向かって吠える。

「ドサ?」

ドサイドンは何事かとこちらに視線を向け、同時に、浴びていた電撃がやむ。

「ドサー!」

するとドサイドンは、怒ったように声を上げる。そして再び、電撃が飛来する。

「むー……。あのドサイドン、やっぱり悪者だ……! お仕置きするんだから!」

確信を得た穂乃果は、相性を考えロゼリアのボールを手に取る。

「ウィィィィィッ!」

その前にロトムが躍り出た。

「ロトム? もしかして、電気タイプのポケモンがいじめられたのが許せなかったの?」

「ウィッ!」

「よーし! 頑張るよロトム! あのドサイドンを懲らしめるんだから!」

穂乃果は意気込み一つ、ロトムに指示を飛ばす。

「シャドーボール!」

「ウィィッ!」

ロトムが放った影の塊は、ドサイドンに命中。だが、

「ドサァ!」

「! 受け切られた……!」

それを物ともせず、反撃を敢行してくる。

突如出現した礫の大群が、ロトムを襲う。

「ロトム、大丈夫⁉︎」

「ウィ!」

「あの技……ストーンエッジだっけ。結構強いよあのドサイドン……!」

野生の強さを垣間見た穂乃果は、気を引き締める。

「ロトム、おにび!」

ロトムが放った青白い炎は、ドサイドンへ肉薄する。

だが、ドサイドンの体が僅かに輝いたかと思うと、異常な速さでそれを回避する。

「何あの速さ!」

穂乃果が驚愕していると、ポケモン図鑑が答えを教えてくれる。

『ロックカット。素早さを上げる技』

「そんな技まで使えるなんて……」

穂乃果が立て直すその間に、ドサイドンはロトムに急接近しストーンエッジをかます。

「ウィィーッ!」

「ロトム!」

慌てて呼び掛けるが、ダメージは深刻に見える。

「このままじゃ……。やっぱり、相性のいいロゼリアに交代した方が……」

「ウィィーッ!」

だがそんな穂乃果の呟きをかき消すように、ロトムは起き上がる。

「ロトム……」

ロトムの決意を感じた穂乃果は、掴んでいたロゼリアのボールを離す。

その時だった。

ロトムの体が、近くにあった洗濯機に吸い込まれていった。

「な、何事⁉︎」

当然驚き慌てる穂乃果。そんな穂乃果を安心させるかのように、ロトムは洗濯機の中から出てくる。__のだが、

「ロトム……だよね?」

「ウィ!」

姿が変わっていた。四角い体に、青い色。そう、さながら、洗濯機のような姿に。

「これって……進化なの?」

穂乃果はポケモン図鑑を確認してみるが、表示はロトムのまま。

「!」

だが、そこに補足の説明が追加されていた。

『ウォッシュロトム』

「“ロトムは、モーターに潜り込む事で、姿を変える事がある”……。__じゃあ、今のロトムはウォッシュロトムって事?」

「ウィ!」

「凄い! 凄いよロトム! しかも新しい技まで覚えて!」

ひとしきり興奮した穂乃果は、

「ドサァッ!」

ストーンエッジを放ってきたドサイドンへ向き直り、

「ロトム、__ハイドロポンプ!」

「ウィィィィーッ!」

ロトムが放った渾身の高圧水流は、迫り来る礫をあっさり粉砕。

「火力も上がってる……⁉︎」

そして、

「ドサァ!」

ドサイドンへと直撃した。

「グゥ……」

たまらず倒れたドサイドンを見て、

「やった! 勝てたよロトム!」

思わずロトムに抱き付く穂乃果。

「ウィ!」

ロトムも満足そうに笑った。

「__あ、そうだ。洗濯機になれたなら、他のにもなれるのかな?」

早速好奇心が爆発した穂乃果は、電化製品の山を調べてみる。

「……ダメだぁ。他は全部壊れてる……」

だが、モーターそのものが壊れているのか、ロトムが入り込む事もできなかった。

「__でも、よかった。私たち、また強くなれた」

流石の切り替えを見せた穂乃果は、ウォッシュロトムの頭に手を乗せた。

「これからもよろしくね、ロトム!」

「ウィィッ!」

 

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