μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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完結って、何でしょうね


第16話 九つ水晶の輝き

長い山道を乗り越え、ようやく穂乃果はガジアスシティに到着した。

芝生に土の道路が伸びる、開放感のある土地が広がる。涼しいそよ風が、穂乃果の頬を撫でた。

「うーん、いい所だね!」

登山で疲れた身体で、穂乃果は大きく伸びをする。

ひとまずポケモンセンターで疲れを癒し、それから探索を開始する。

だが、街の様子がどうもおかしい。

「どうしたんだろう……。何となく、忙しないような……」

ひとまず案内を確認しジムに向かうと、

「あれ? 開いてない……」

門扉は固く閉ざされていた。

穂乃果が頭を抱えていると、

「あんた、トレーナーかい?」

初老の男性が声をかけてきた。

「あ、はい。ジムに挑戦しに来たんですけど……」

「ジムリーダーなら、リンモンタワーだよ」

「リンモンタワー?」

「ここからすぐの所に、ニュルドビレッジという小さな村がある。そこにある、カイトゥーン地方の秘宝を祀ったリンモンタワーという塔が賊に襲われたそうでな。ジムリーダーはそこの鎮圧に向かっておる。ここの住民は、万が一襲撃されないように住宅に避難してるんじゃ」

「そうだったんですか……」

「あんたも、ここでのジム挑戦は諦めて、次のジムを優先する事をお勧めするぞ」

それだけ言うと、老人は足早に近くの民家へ入っていった。

「賊って、泥棒なのかな……。だとしたら放っておけないよ! 助けに行かないと!」

穂乃果は拳を握り締めると、勢いよく駆け出した。

 

 

 

 

ニュルドビレッジは、ガジアスシティからの階段を登った先にあった。

持ち前の階段ダッシュで駆け登ると、数軒だけある民家が目に飛び込んでくる。

「本当に小さい村なんだ……。それで、そのリンモンタワーは__」

探す必要は無かった。穂乃果の目の前に、灰色のそれはそびえ立っていた。

「ひゃー……思ったより高い……」

高さにしておよそ百メートル強。小さい建物が並ぶ中、明らかに異質だった。

「とにかく、行かないと!」

塔の中に入ると、幾つかの小部屋、上へ登る階段など、やや複雑な構造が穂乃果を出迎えた。

「うっ……」

一瞬二の足を踏んだ穂乃果だったが、

「何とかなる!」

と飛び出した。

__するとすぐ、

「行かせるか!」

見覚えのあるヘンテコな格好の男。

「オリジン団⁉︎ 泥棒って、オリジン団だったの⁉︎」

「お前……噂のお邪魔トレーナーか!」

オリジン団の男はボールを掴むと、

「行け、コマタナ」

「ムクホーク、インファイト!」

穂乃果は足を止めずにムクホークを繰り出すと、即座に指示を飛ばす。吹っ飛ばされたコマタナを見て、

「つ、強ぇ……こんな強かったのか……!」

呆然とする男の横を走り抜け、穂乃果は近くの階段を駆け上る。

「……最近、階段登ってばかりかも……」

穂乃果がぼやくのとほぼ同時に、

「__なさい!」

声が聞こえてきた。

右側の部屋から聞こえてきたその声に、穂乃果は足を止めた。

「この声……」

さらに上へ続く階段を無視して、穂乃果は部屋のドアを開ける。そこには、

「そこをどきなさい! あれは選ばれぬ者が持ち出していいものじゃないの!」

「ぅ絵里ちゃん!」

金髪のポニーテール。

絵里は驚いたように振り返り、

「あなた……街の人じゃないわね。でもこの人達とも違う……」

こちらを向く絵里の背後には、五人のオリジン団員がポケモンで壁を作っていた。

「あれは……」

ポケモン図鑑を取り出し確認すると、

「マルノーム……」

重量感のあるマルノームが五体並ぶと、通り抜ける事は不可能。後ろのルートが正解なのは一目瞭然なのだが、それをさせないオリジン団。

「倒すしかないのか……」

穂乃果が呟くと、

「へへっ、マルノーム、たくわえる!」

「ノーム!」

マルノームは攻撃に備える。

それを見た絵里が、悔しそうに前を睨む。

「ああやって、耐久力を上げて時間を稼いでいるのよ。せめて、弱点さえつければ……」

「弱点……? __! まかせて絵里ちゃん!」

穂乃果はムクホークを戻すと、別のボールを掴む。

「ダグトリオ! じしん!」

「ダグ!」

「ノーム……ッ⁉︎」

ダグトリオの攻撃は、マルノーム五体全てに届く。

「じしんは全体攻撃技……。やるわね」

絵里は笑みを浮かべると、

「ここは任せるわ。私は上へ行って、泥棒を止めるわ」

穂乃果の肩に手を置いた。

「分かった! 任せて!」

「お願いね」

絵里は倒れ伏すマルノームの脇を通り抜け、階段を登っていく。

「あ、待て!」「くそっ、ジムリーダーは行かせるなって言われてたのに……」「追いかけるぞ!」

「__ストーンエッジ!」

『『『っ⁉︎』』』

絵里を追いかけようとしたオリジン団の背後から、礫が飛来する。

「穂乃果が相手だよ!」

「くっ……いつもいつも邪魔しやがって……!」

憎々しげにボールを掴むオリジン団へと、穂乃果は次の指示を飛ばす。

 

 

「__絵里ちゃん!」

五人のオリジン団にアッサリ勝利すると、穂乃果は階段を登ってそこにあった扉を開けた。

「あら、早かったわね。こっちも終わったわ」

絵里の前には、へたり込む三人のオリジン団。

「__さあ、答えなさい。ここに来て、何をするつもりだったの?」

絵里の問いに、オリジン団はそっぽを向く。

「お前らに話す事は無い。我々の思想を理解できないヤツらは、滅ぶしかないのだ!」

そう叫んだオリジン団の三人は、

「今回は退こう。だが、気付いた時にはすでに手遅れだろう!」

絵里と穂乃果の間を抜けて、部屋から姿を消した。

「何なのかしら……」

疑問符を浮かべたままそれを見送った絵里は、穂乃果に向き直る。

「ありがとう、助かったわ。__あなたが穂乃果ね?」

「! 分かるの⁉︎」

「希から連絡が来たのよ。__まったく……『スピリチュアルなトレーナーが挑戦しに行く』なんて、分かりにくいのよ……」

「あはは……希ちゃんらしいや」

若干がっかりしつつ、穂乃果は苦笑い。

「穂乃果、本当にありがとう。__おかげで、九つ水晶を守れたわ」

「ここのつすいしょう?」

「ええ。これよ」

絵里が示した先には、古びた台座に安置された、根元から九つに分かれた結晶体があった。

青や赤、緑や黄色。絶えず色を変え続けるその水晶は、穂乃果の視線を釘付けにした。

「綺麗……」

「これは遥か昔、カイトゥーン地方に伝わる伝説のポケモンが、私達人間に与えたと言われる秘宝なの。理由までは分からないけれど……繁栄を願ったとも、戒めのためとも言われているわ。__見える?」

絵里は塔の窓から、外を指差す。

穂乃果が視線を向けると、ウテックス山の山頂が見えた。うっすらとだが、何かの建造物が確認できる。

「ここから、唯一頂上が見えるの。何故か雪が積もらず、カイトゥーン地方の神話と何かしら関係があると言われているけれど……あの頂上に向かう道が無いの。野生のポケモン達も近寄らず、今まで謎に包まれたままなのよ」

「ほぇ〜……。よく分からないけど、凄いんだね〜」

「そうね。__ふふっ、こういう謎めいた事は、希が好きなんだけどね」

絵里は微笑むと、穂乃果の横を通り過ぎる。

「私は先に戻るわね。穂乃果はジムに挑戦しに来たんでしょう? 待ってるわよ」

「うん! 待っててね!」

絵里が部屋から出、辺りは静寂に包まれる。

「九つ水晶……」

不思議な輝きを放つそれを、穂乃果はしばらく見つめていた。

 

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