μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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第2話 初めてのジムバトル

「ううぅ~……っ! テンション上がるにゃーっ!」

 最初に穂乃果の耳に飛び込んで来たのは、そんな声。

 次いで穂乃果の目に飛び込んで来たのは、華麗なアクロバットをかます小柄な人影。

「にゃ? 挑戦者かにゃ?」

 振り返ったその顔を確認した穂乃果は、

「凛ちゃん!」

「にゃにゃにゃ? どうして凛の名前知ってるにゃ?」

「う……やっぱり忘れちゃってるのか……。──でもやっと、μ'sのメンバーに会えた!」

「みゅーず? よく分からないけど、挑戦なら受けて立つにゃ!」

 凛はビシッと穂乃果を示す。

「よーし……! 私だって、負けないんだから!」

 

 

「──それでは、スタスカジムリーダー・凛VSチャレンジャー・穂乃果のバトルを始めます。ジムリーダーの使用ポケモンは二体。チャレンジャーに制限はありません。なお、チャレンジャーにのみポケモン交替が認められます」

 審判の説明を聞きながら、穂乃果は最初のポケモンを選ぶ。

「──バトルスタート!」

 審判が旗を振る。

「コジョフー、いっくにゃー!」

「ジョフー!」

 元気に構えをとったコジョフーを、穂乃果はポケモン図鑑に登録。

「よーし……。──ヨーテリー、ファイトだよっ!」

「はぁ!?」

「ちょ、穂乃果!」

「ノーマルタイプは苦手だって言ったのに!」

 ヒフミが応援席から抗議を飛ばす。

「いやぁ……せっかくだから、あまり使った事のないポケモンがいいなー、って……」

「「「…………」」」

 言葉を失ったヒフミを放置し、穂乃果は向き直る。

「いっくよー! ──ヨーテリー、たいあたり!」

「甘いにゃ! かわしてこっちもたいあたり!」

 ヨーテリーの攻撃を華麗にかわし、コジョフーが反対に横から攻撃を仕掛ける。

「ジョフー!」

「キャンッ!」

 吹っ飛ばされたヨーテリーは、なんとか体勢を整えて踏み止まる。

「ただ突っ込むだけじゃ、凛には勝てないよ?」

 えっへんと胸を張る凛。

「やっぱり凛ちゃんは凄い……」

 拳を握り締めた穂乃果は、ゆっくり息を吸い込む。

「ヨーテリー、交替!」

 続いて穂乃果が繰り出したのは、

「ムックル、ファイトだよ!」

「キュキュイ!」

「よーし、じゃあ今度はこっちから行くよー! ──たいあたり!」

 コジョフーが一直線に駆け出し、ムックルに肉薄する。

「飛んで!」

 穂乃果の指示に、ムックルは空中を舞う。攻撃が外れたコジョフーは、勢い余ってたたらを踏む。

「今だ! つつく!」

 ムックルは急降下して、その小さなくちばしでコジョフーの背中を捉える。

「ジョフー!」

 吹っ飛ばされ倒れたコジョフーだったが、なんとか立ち上がる。

「穂乃果ちゃんもやるにゃ! テンション上がるにゃー!」

 凛はその場でピョンピョン飛び跳ねる。

「コジョフー、にらみつける!」

「フー……!」

「キュ……」

 コジョフーの鋭い眼光に、ムックルはたじろぐ。

「たいあたりにゃ!」

「つつくで迎え撃て!」

「ジョフーッ!」

「キュキューッ!」

 一直線に向き合った二匹は、猛スピードで交錯する。

 衝突音。砂埃が舞い上がり、二匹の姿が見えなくなる。

 離れた所にいたヒフミの三人は、いち早くそこから飛び出した影を見つけた。

「どっち!?」

 懸命に空中で体勢を立て直そうとするそれは、

「コジョフー……!」

 だが健闘虚しく、地面に叩きつけられてしまう。

「え、じゃあ──」

 慌てて治まっていく砂埃を見ると、

「キュキュイ!」

 ムックルが元気にはばたいていた。

「「「おおっ!」」」

 ヒフミが色めきたつのと、

「コジョフー、戦闘不能! ムックルの勝ち!」

 審判が宣言するのは同時だった。

「やった! やったよムックル!」

 今度は穂乃果が飛び跳ねる番。

「あー……残念。コジョフーお疲れにゃ! ──まだまだ行くよー! リオル、頑張るにゃ!」

「オルッ!」

 凛の二匹目は、リオル。隙の無い構えを見せる。

「大丈夫! ムックルならいけるよ!」

「キュイ!」

「つつく!」

 ムックルがまたも急降下を仕掛ける。

「かわすにゃ!」

 リオルは紙一重で側面に回り込み、

「ローキック!」

「オルッ!」

 低く構えて蹴りを放った。

「キュ……!?」

 バランスを崩したムックルは、寸前で地面への激突を回避する。

「危なかった……。あそこから攻撃してくるなんて……」

「凛のリオルは強いにゃ! 飛行タイプにも負けないにゃ! ──からてチョップ!」

 リオルは高々とジャンプし、右腕を振りかぶる。

「ムックル、よけて!」

 ムックルは右に逃げようとしたが、その動きが鈍い。

「──オルッ!」

「キュキャッ!」

 直撃を許してしまい、地面に叩き落とされる。

「ムックル!」

 穂乃果が声を上げたが、

「ムックル、戦闘不能! リオルの勝ち!」

 審判の旗が振られた。

「お疲れムックル。でも、どうして……」

 穂乃果が首を傾げていると、

「穂乃果ー! ローキックには、相手の素早さを下げる効果があるの!」

 ヒフミから声が飛んだ。

「その通りにゃ! ついでに、コジョフーのにらみつけるで防御も下がっていたにゃ」

「そっか……。私、知らない事ばかりだ。──でも負けないもん!」

 穂乃果は意気込み一つ、ヒトカゲを繰り出す。

「よーし! ヒトカゲ、ひのこ!」

「カゲ!」

「かわしてローキックにゃ!」

 飛んでくる炎を掻い潜り、一瞬で接近したリオルは蹴りをかます。

「やったにゃ! これでもう追い付けないにゃ! リオル、からてチョップ!」

 凛が得意気に指差し、リオルは振りかぶる。

「まだまだ! ヒトカゲ、相手の姿をよく見て!」

「カゲ……ッ!」

「オルッ!」

「──そこ! 掴んで!」

 リオルの攻撃が当たった瞬間、ヒトカゲはその腕をガッチリ抱え込んだ。

「ええっ!?」

 流石の凛も驚き、その間に、

「ヒトカゲ、ひのこ!」

「カゲーッ!」

 超至近距離で炎を浴びたリオルは、面白いように吹っ飛ばされた。

「リオル!」

「リオル、戦闘不能! ヒトカゲの勝ち! よってこの勝負、チャレンジャー・穂乃果の勝ち!」

 審判が、勝敗を宣言する。

「やった! 勝った! 勝ったよヒトカゲ!」

「カゲー!」

 ヒトカゲとクルクル回る穂乃果を見ながら、凛は少しだけ寂しそうな笑顔を見せた。

「あーあ、負けちゃったかぁ……。でも楽しかったにゃ! 穂乃果ちゃん、ありがとうにゃ!」

「いえいえこちらこそ! 穂乃果も楽しかったよ!」

 穂乃果と凛は握手を交わし、

「あ、そうにゃ。穂乃果ちゃんには、このスターバッジをあげるにゃ。スタスカジム制覇の証になるにゃ!」

 凛はバッジを差し出す。

「ありがとう凛ちゃん! よーし、一つ目のバッジ、ゲットだぜー!」

「おめでとう穂乃果!」

「最初はどうなるかと思ったけど……」

「勝ててよかったね!」

 ヒフミの称賛を受けながら、穂乃果はバッジケースをしまう。

「穂乃果ちゃん、この後どうするにゃ?」

「この後?」

「もし決まってないなら、スモーファウンタウンに行くといいにゃ」

「スモーファウンタウン?」

「そこで凛の友達、かよちんがジムリーダーをやってるにゃ」

「花陽ちゃんが?」

「かよちんも知ってるにゃ?」

「そりゃあそうだよ。だって──」

「だって?」

「な、何でもない……」

 穂乃果は慌てて首を横に振る。

「皆μ'sの事覚えてないんだった……」

「穂乃果ちゃん、変わってるにゃ~」

 凛が呆れ顔を向けると、「あはは……」と穂乃果は苦笑い。

「穂乃果、スモーファウンに行くの?」

「だったら、北に真っすぐよ」

「あそこは、確かノーマルタイプの使い手だったよ」

「そっか。色々ありがと!」

「いいって。あたし達もう行くけど、ジム戦頑張ってね」

「うん!」

 

 

 穂乃果がポケモンセンターでポケモン共々疲れを癒していると、

「──穂乃果ちゃん、いるかにゃ?」

「凛ちゃん。どうしたの?」

 凛がやって来た。

「さっき、これを渡しそびれたんだにゃ」

 凛が差し出したのは、CDより二回りほど小さいディスクのようなものと、それを再生すると思われるコンパクトな長方形の機械。

「これは?」

「これはわざマシンだにゃ」

「わざマシン?」

「ポケモンに技を覚えさせるための道具にゃ。──これには〈ローキック〉が入っているにゃ」

「あ、凛ちゃんが使ってたヤツ?」

「そうにゃ。これを使えば、穂乃果ちゃんのポケモンも普通なら使えない技を使えるようになるにゃ! もちろん、使えないポケモンもいるけど……」

「へー! わざわざありがとう!」

「気にする事ないにゃ。──さ、ポケモンも元気になったみたいだし、出発するかにゃ? 見送るにゃ!」

「うん! ありがとう!」

 

 

 穂乃果と凛がポケモンセンターから出ると、町の外れに何やら人だかりができていた。

「どいて下さいよ……」「邪魔なんです……」「お外に行けないよ……」

 近づいてみると、住民の苦情が聞こえる。

「どうしたんだろ?」

「行ってみるにゃ」

 後ろに立ち、凛が声をかける。

「どうかしたかにゃ?」

「あ、ジムリーダー。──聞いて下さいよ。変な奴ら道を塞いでいて、外に出られないんです」

「「変な奴ら?」」

 二人が人を掻き分けて前に出ると、なるほど確かに奇抜な服装をした男女が二人、ドヤ顔で立っていた。

「なるほど……確かに変だ」

 謎の二人の前には、磁石のようなポケモンが連なって、それがフェンスの役割を果たしていた。

「コイルにゃ」

「コイルだね」

「ん? 何だお前ら」

「あ、右のヤツはここのジムリーダーですよ!」

 一瞬怯んだ二人を見逃さず、

「ここで何してるにゃ?」

 凛が訊ねる。

「我々はオリジン団!」

「この先で仲間が作業中なのだ。邪魔が入らないよう待っててもらおう!」

 高らかに言い放ったオリジン団何某へ、

「そんな話聞いてないにゃ! 迷惑してるからやめるにゃ!」

 凛は怒る。

「そうだそうだ!」

 それに穂乃果も乗っかるが、

「へっ、なら力ずくでどけてみな」

 どこ吹く風。

「「よーし……!」」

 穂乃果と凛はそれぞれモンスターボールを取り出し、

「ヒトカゲ、ひのこ!」

「リオル、ローキック!」

 コイル達を順に倒していく。

「「ああっ……!」」

 情けない声を上げたオリジン団に、凛は腕を組んで見下ろ──せないので見上げて言う。

「弱いにゃ! 出直してくるにゃー!」

「く、くそっ……!」

「だが作業は終わったみたいだ。残念ながらスカだったみたいだが」

 コイルが全滅させられ、オリジン団の二人は尻尾巻いて逃げ出していった。

「あ、逃げちゃった……」

「何だったのかにゃー?」

 あまりの呆気なさに首を捻った穂乃果と凛だったが、住民から感謝され、スモーファウンタウンへの道も開けた。

「じゃあね穂乃果ちゃん! かよちんによろしくにゃ!」

「うん! 行ってくる!」

 こうして穂乃果は二つ目のバッジを目指し、スタスカシティをあとにした。

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