割とガチなバトルしてるなぁ、という本人の感想。
トレーナーズスクールを出た穂乃果とことりは、帰宅する生徒達に手を振った後、向き合った。
「ありがとう! 穂乃果ちゃんのおかげで、すっごく楽しい授業ができちゃった!」
「穂乃果こそ! ことりちゃんと歌えて楽しかったよ!」
二人仲良く笑った後、ことりは大きく深呼吸をした。
「……穂乃果ちゃんは、ジムに挑戦しに来たんだよね?」
「うん、そうだよ。勝てば七個目!」
「じゃあ、私も全力で迎え撃ちます」
「やっぱり、ことりちゃんがジムリーダーなんだね」
「うん。穂乃果ちゃんといると凄く楽しいし、ずっと隣に立っていたい。__でも、私はジムリーダー。穂乃果ちゃんがチャレンジャーなら、バトルしないといけないの」
ことりが一瞬目を伏せると、
「ことりちゃん、ポケモンバトルは、別に喧嘩するわけじゃないんだよ。仲良しでも、友達でも、バトルしていいんだよ! お互い全力をぶつければ、もっと仲良くなれると思うんだ!」
「穂乃果ちゃん……」
穂乃果は、拳を突き出す。
「穂乃果は、ことりちゃんとバトルしてみたい。もっとことりちゃんの事を知りたい!」
「……うんっ! 私も!」
ことりも優しく、自分の拳をぶつけた。
「それでは、サウジムリーダー、ことり対チャレンジャー、穂乃果のバトルを始めます。ジムリーダーの使用ポケモンは四体。チャレンジャーに制限はありません。なお、チャレンジャーにのみ交代が認められます」
審判が両手のフラッグを掲げ、
「バトル開始!」
「ムクホーク、ファイトだよっ!」
「ウォーグル、お願いします!」
「ホーク!」
「ウォウ!」
ポケモン図鑑を取り出した穂乃果は、
「ノーマルと飛行タイプ……。ことりちゃんは、飛行タイプなのかな? __飛ばして行くよ! ムクホーク、インファイト!」
指示を受けたムクホークは、ウォーグルに肉薄すると鉤爪を振り下ろした。
「ウォーグル、つばめがえし!」
対してウォーグルは急旋回すると、攻撃が空振りしたムクホークに突撃した。
「ウォウ!」
「あのウォーグル、速い……! でも、ムクホークの特性はいかく。物理攻撃は軽減でき……」
「ウォーグル、ふるいたてる!」
「ウォーウ!」
「っ!」
ウォーグルの目付きが変わったのを感じた穂乃果は、大きく息を吸い込んだ。
「ムクホーク!」
「ウォーグル!」
二人の声が重なる。
「「ブレイブバード!」」
互いに一直線に特攻したムクホークとウォーグルは、中心で交錯。凄まじい衝撃と爆風がフィールドを包み、
「ムクホーク、戦闘不能! ウォーグルの勝ち!」
そこには、倒れ伏すムクホークと、羽ばたくウォーグル。
「ああ……お疲れムクホーク」
ムクホークを戻した穂乃果は、ウォーグルとその先のことりを見据える。
「ことりちゃん、強い……。ムクホークがこんな簡単に負けちゃうなんて……。__ダグトリオ、ファイトだよっ!」
穂乃果が繰り出したダグトリオを見て、ことりは少し訝しむ。
「地面技は効かないのに……?」
「ダグトリオ、ストーンエッジ!」
「ダグ!」
「! 岩タイプの技! ウォーグル、かわして!」
「ウォウ!」
上下左右に飛び回り、飛来する礫を避けたウォーグル。
「ふふ、空を飛べるウォーグルの方が、有利だよ。__ブレイブバード!」
得意げなことりに、穂乃果は力強い笑みを返した。
「それは分からないよ! __あなをほる!」
地面に潜ったダグトリオ。突撃していたウォーグルは、慌てて急上昇した。
「地面に激突なんて、しないよ?」
余裕の表情で、現れるダグトリオを待っていたウォーグル。
だが穂乃果は、変わらない笑顔。
「ストーンエッジ!」
「⁉︎」
ウォーグルの真下。そこの地面を突き破って、一直線に礫が襲いかかった。
攻撃を全身に浴びたウォーグルは、
「ウォーグル、戦闘不能! ダグトリオの勝ち!」
たまらず墜落してしまった。
「まさか、地面の中から攻撃してくるなんて……。これが穂乃果ちゃんの闘い方……。やっぱり凄いなぁ」
一体倒されたことりが浮かべるのは、感嘆、尊敬に近い表情。それは決して、戦意を喪失した顔ではない。
「マンタイン、頑張って!」
「マンタ!」
「水と飛行か……。ダグトリオ、行ける?」
「ダグ!」
「よーし! あなをほる!」
再び地面に潜るダグトリオ。
今度のことりは、動じない。
「マンタイン、あまごい!」
「マンター!」
突如フィールドに、激しく雨が降り始めた。
「水タイプの威力を上げてきたのかな……。とにかく、ストーンエッジ!」
ウォーグルの時とは違い、やや斜め後方から地面を突き破っての攻撃。明らかに反応が遅れたマンタインだったが、
「かわして!」
「マンタ!」
「うそっ! 避けられた⁉︎」
尋常でない速度で動くマンタイン。
「だ、ダグ……⁉︎」
ダグトリオが困惑していると、
「ハイドロポンプ!」
超高速の一撃が襲った。
「ダグトリオ、戦闘不能! マンタインの勝ち!」
「そ、そんな……。速すぎるよ……」
「ふふっ、マンタインの特性はすいすい。天気が雨の時、素早さが上がるの」
「そ、そっか……。じゃあまずは、あの速さを何とかしないと……。__ロズレイド!」
「ロズレイ!」
「お願いね、ロズレイド。考えがあるの」
「レイ!」
マンタインに向き直ったロズレイドに、
「確かに草タイプに、水タイプは今一つだけど……マンタインはそれだけじゃないの! __エアスラッシュ!」
ことりから容赦なく指示が飛ぶ。
空気を切り裂いて飛んでくる刃は、動く暇を与えずロズレイドを襲った。
「うぅ、やっぱり速い……」
さらに、
「ロズ……ッ!」
反撃を試みたロズレイドの動きが止まった。
「ひるみ……⁉︎」
「何か作戦があるのかもしれないけど、そうはさせないよ! エアスラッシュ!」
「マンター!」
畳み掛けるような攻撃に、穂乃果は拳を強く握る。
「大丈夫……。チャンスは必ずある……」
マンタインの攻撃に踏みとどまったロズレイドに、穂乃果は集中する。
「マンタイン、もう一度エアスラッ__」
「フラッシュ!」
ことりの指示に被さるように、穂乃果の鋭い声が響いた。
「ロズレイッ!」
今まさに攻撃態勢に入っていたマンタインは、光を直視して視界がホワイトアウトした。
「マンタイン⁉︎」
空気の刃はあらぬ方向へと四散。順光のロズレイドには、その様子がよく見えた。そしてそれは、
「止まった!」
穂乃果も同じだった。
「ロズレイド、ギガドレイン!」
よく見えぬまま体力を吸収されたマンタインは、思わずふらつく。
「行っけぇぇぇ! リーフストーム!」
「ロズレイィッッ!」
若草の嵐はマンタインを包み込み、そのまま吹き飛ばした。
「マンタイン、戦闘不能! ロズレイドの勝ち!」
「やった!」
「すいすいが発動したマンタインが倒されるなんて……。穂乃果ちゃんの作戦って、何だったの?」
感心しながらも疑問が消えないことりは、そう訊ねていた。
「マンタインは確かに速かったけど、攻撃する時は狙いを定めるために動きが止まったの! そこを狙えば、何とかなるんじゃないかなー、って!」
「攻撃する時って……。一瞬なのに……」
驚き言葉を失ったことりに、穂乃果は笑顔を向ける。
「だって楽しいんだもん! ことりちゃんとバトルできて、穂乃果はすっごく楽しい! だから気付けたんだ!」
「…………」
正面のキラキラした笑顔を眺めながら、ことりは口元が綻ぶのを感じた。
「やっぱり、穂乃果ちゃんは凄い。__でも、私だって負けない!」