μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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ストーリーだと、訳分からない特性のポケモンっていますよね


第22話 対等な二人へ

「私の三体目は……この子!」

力強い瞳で、ことりはボールを投げた。

「キシャー!」

「行くよ、エアームド!」

「鋼タイプに飛行タイプ……。どっちでも草タイプはいまひとつか……」

厳しい顔で図鑑を閉じた穂乃果は、

「ロズレイド、一旦戻って!」

ロズレイドを引っ込めた。そして掴んだボールは、

「ロトム、ファイトだよっ!」

「ウィ!」

「ロトムなら、エアームドの攻撃はいまひとつ……! 逆に、電気タイプは抜群!」

穂乃果は得意げな顔で拳を握る。

「__ふふっ、そう簡単には行かせないよ。エアームド、つるぎのまい!」

「キシャシャ!」

エアームドの動きに合わせて、周囲の空気が変わっていくのを穂乃果は感じた。

「仕掛けるよ! ロトム、ほうでん!」

「ウィィーッ!」

四方八方に伸びる電撃に、

「ブレイブバード!」

エアームドは突っ込んだ。技の衝突によって、電撃は四散してしまう。それと同じく、エアームドの勢いも殺される。

「くっ……やっぱり威力が上がって……」

「つじぎり!」

「⁉︎」

爆風から身を庇った穂乃果の耳に、柔らかく、だが鋭い声が聞こえた。

「ロトム、気を付け__」

「キシャア!」

「ウィッ⁉︎」

穂乃果の勧告も間に合わず、ロトムは目の前に現れたエアームドの斬撃を食らった。

「だ、大丈夫⁉︎ ロトム!」

「ウィ……ッ!」

気張るロトムだが、見るからにダメージは深刻である。

「あの一瞬で攻撃してくるなんて……。ロトム、ボルトチェンジ!」

即座に放たれた電撃は、まだ近くを飛んでいたエアームドを捉えると、跳ねるように戻ってきた。

ロトムはその電撃に包まれると、そのままボールへと戻った。

「電気タイプのロトムは、ことりちゃんのポケモンに絶対有利……。今は休んでてね」

聞こえるかは分からないが、ボールの中のロトムにそう囁くと、穂乃果はもう一度あのボールを放った。

「ロズレイド、ファイトだよっ!」

「ロズレイ!」

「リーフストーム!」

颯爽と放たれた攻撃は、エアームドに直撃。

「キシャ⁉︎」

「よし……! いまひとつだからって、効かないわけじゃない! もう一度リーフストーム!」

「ロズレイッ!」

「キシャア!」

たまらず後退したエアームド。

「流石は穂乃果ちゃん……。相性なんて関係ない力技……。でも、まだまだエアームドは闘える! __ブレイブバード!」

「キシャァァァァッ!」

突貫してきたエアームドに、

「……よしっ。ロズレイド、フラッシュ!」

穂乃果は有効な作戦を再び講じる。

「……ふふっ」

「…………っ⁉︎」

その瞬間、ことりが不敵に微笑んだのを穂乃果は見逃さなかった。

ぞわっ、と不安が駆け巡る中、衝突音で我に返った。

強烈な光が消え行き、もうもうと立ち込める粉塵が晴れたそこには、

「ロズレイド、戦闘不能! エアームドの勝ち!」

倒れ伏すロズレイド。

「そ、そんな……。どうして……」

あれほどまでに決まった作戦がアッサリ攻略された事に、穂乃果は疑問とショックを隠せない。

「私のエアームドの特性は、“するどいめ”。目眩しなんて効かないよ?」

エアームドの頭を撫でながら、ことりはニッコリ笑顔。

「そんな特性を持ってたなんて……」

いとも容易く戦術が破られ、歯噛みする穂乃果。

「……でも、まだ終わってない!」

その瞳に宿る光は、曇るどころか輝きを増す。一直線に、前だけを見て。

「ロトム、ファイトだよっ!」

「ウィ!」

「ハイドロポンプ!」

「ウィィーッ!」

撃ち出された高圧水流は、

「かわして!」

間一髪の所で虚空へ消えた。

「ブレイブバード!」

間髪入れず突っ込んできたエアームドに対し、

「受け止めて!」

穂乃果は相性を生かして受け切る。

「まだまだ! エアームド、つじぎり!」

「キシャ!」

接近した事でさらなる追撃を仕掛けるエアームドに、

「……分かってたよ」

穂乃果は笑みを滲ませた。

目の前で今まさに攻撃態勢に入っていたエアームドに向かって、

「おにび!」

青白い炎がぶつかった。

「キシャ⁉︎」

「っ⁉︎」

しかし攻撃の勢いが消える事はなく、エアームドはその鋭利な翼でロトムを切り裂いた。

「ウィ!」

「受け切られた……!」

攻撃が直撃したにも関わらず、ロトムのダメージはあまり深刻でない。

「まだまだ! ロトム、たたりめ!」

休む暇を与えず、穂乃果は立て続けに指示を飛ばした。

「ウィィーッ!」

突如出現した人魂のような不気味な光はエアームドの周りを漂うと、唐突に消える。そして、

「エアームド、戦闘不能! ロトムの勝ち!」

エアームドは地面に倒れ伏した。

「……まさか、つじぎりの瞬間を狙っておにびを撃ってくるなんてね。そして攻撃力が下がった一撃を耐えて、威力が上がるたたりめで攻撃……」

「うまくいった作戦は、またやりたくなっちゃう! ……穂乃果も同じだから、よく分かるんだ〜」

「穂乃果ちゃんがそこまで考えてるなんて……」

「ええ〜! 酷いよことりちゃん! ……でも、ほとんどカンでやった事だから、間違ってないか〜。あははー……」

「……カンであんな的確な対策をされたら、どうしていいか分からないよ……」

「ん? 何か言った?」

「ううん、何でも! __さ、私の最後の一体! 簡単に負けたりはしないんだから!」

ことりはボールを掴むと、真上に放り投げた。

「プテラ!」

「プテ!」

「ことりちゃん最後のポケモン……。ロトム、油断しないで行くよ!」

「ウィ!」

「ハイドロポンプ!」

「ウィィーッ!」

再び撃ち出された高圧水流は、

「ストーンエッジ!」

同じく撃ち出された礫の大群によって相殺された。

「この前のドサイドンには撃ち勝ったのに……! やっぱり野生のポケモンとは違うんだ……」

「一気に決める! プテラ、ゴッドバード!」

「プテー!」

指示を受けたプテラは、一瞬動きを止めると、威圧のこもった眼光でロトムを射抜いた。

「……っ⁉︎」

猛烈に嫌な予感がした穂乃果は、

「ロトム、近付かせないで! ほうでん!」

張り巡らすように放たれた電撃は、

「プテラ!」

「プテェェェ!」

凄まじいオーラをまとって突撃してきたプテラにぶつかると、呆気なく霧散してしまった。

そして衝突。爆音。粉塵が巻き上がった。

「ロトム!」

穂乃果が爆心地を見やると、

「ウィィ……!」

傷だらけになりながらも、何とか耐え切ったロトムの姿が。

「やっぱり、いまひとつじゃ倒しきれないよね……。ならもう一回!」

再び攻撃態勢に入ろうとするプテラ。

「くっ……次は耐えられない……! でもあんな凄い威力、どうやって止めたら……」

どうにかして突破口を探す穂乃果の目に、力を溜めるように構えるプテラが映った。

「……あれ、もしかして、攻撃までに時間がかかる……?」

そう呟いた穂乃果は、すでに頭を切り替えていた。

「一か八かだよ! ロトム、おにび!」

「⁉︎」

ことりの表情に、驚きと悔しさが半々覗く。

肉薄する青白い炎に、プテラは避ける事をしなかった。否、できなかった。

「やっぱり……! あの技はすぐには撃てない!」

「たった一回で見破るなんて……。穂乃果ちゃんには敵わないなぁ。__でも、私だって諦めない! プテラ、全力でゴッドバード!」

「プテェェェェェェッ!」

やけどを負いながら、真っ直ぐ突っ込んでくるプテラに、

「迎え撃つよ! ハイドロポンプ!」

「ウィィーッ!」

ロトムも本気の一撃を放った。

空中でぶつかる攻撃。勢いがせめぎ合い、膠着する二つの力。

「プテェ……!」

力を振り絞ったのか、ジワリジワリとプテラが押し始める。

「お願い、プテラ……」

ことりは、祈るように両手を握り締めた。

「負けるな、ロトム!」

穂乃果は、力を送るように右拳を突き出した。

「ウィ……ウィィィィィィィィーッ!」

トレーナーに応えたのは、ロトムだった。

増大した威力に、

「プテ……! プ……プテ……!」

プテラは押し返される。そして、

「行っ……けぇぇぇぇっ!」

「ウィィィィィィィ!」

「プテェーッ!」

「プテラ!」

「プテラ、戦闘不能! ロトムの勝ち! よって勝者、チャレンジャー、穂乃果!」

審判の旗が揚がった。

「勝った……。勝ったよロトム! 凄い凄い! 凄いよ!」

「ウィ!」

喜びはしゃぎ、ロトムを抱き締める穂乃果。それをことりは、羨望を込めた微笑みで見る。

「おめでとう、穂乃果ちゃん。これは、私に勝った証。サウジムから、メルトバッジを授けます」

「おお、これがことりちゃんのバッジ……」

「それから、このわざマシン。中身は〈ゴッドバード〉。とっても強力な攻撃技だよ。発動までに、少し時間がかかっちゃうけど……」

だから負けちゃったんだよね、とことりは苦笑い。

「……ねえ、ことりちゃん」

「なあに、穂乃果ちゃん」

「ことりちゃんは、穂乃果に勝ちたかったの?」

「え……?」

思わぬ質問に、ことりの表情が凍りついた。

「穂乃果は、ことりちゃんとバトルできて凄く楽しかったし、絶対に勝ちたいって思った。だから、全力でぶつかった。あ、ことりちゃんが手加減してた、とは思ってないよ? ……でもことりちゃん、さっき『そう簡単には負けない』って言ってた」

「…………!」

「それってつまり、ことりちゃんは勝とうとしてたんじゃなくて、負けないようにしてたんじゃないかな。……って、自分でもよく意味分からないけど……」

「……ううん、多分、穂乃果ちゃんの言う通り。私、どこかで穂乃果ちゃんには勝てないって思ってた。バトルの間、ずっと前だけを見てた穂乃果ちゃんに、負けちゃうんだろうなって」

「ことりちゃん……」

「こんなの、ジムリーダー、失格だよね」

目尻に浮かんだ水滴をこらえるように、ことりは笑顔を作った。

「……ことりちゃん。ことりちゃんは、すっごく強かった。強くて強くて、だから穂乃果も、絶対負けないように勝ちたい、って思った。だから、」

穂乃果は、ことりの手を取る。

「ことりちゃんは今のままで、もっと強くなって欲しい。穂乃果がいつだって凄いと思う、ことりちゃんだから」

「穂乃果ちゃん……」

「だから、またバトルしようよ! 今度こそ、本気で本気のことりちゃんとバトルしてみたいから!」

ギュッと握られた手。そこから伝わる温もりに、ことりは自然と笑顔になっていく。

「うんっ。約束!」

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