μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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第3話 静かなゲット

 スタスカシティを出発した穂乃果は、すぐにスモーファウンフォレストに入った。

「えーっと何々……?」

 入り口の看板を読むと、『スモーファウンタウンへ行く人は、真っすぐ。ポケモントレーナーは、探索』と書かれている。

「穂乃果はポケモントレーナーだから、真っすぐ行かない方がいいのかな?」

 一瞬悩んだ穂乃果だったが、

「うん、そうしよう!」

 森の脇道へと進んだ。

 そしてすぐに、若干後悔した。

 まず、草むらの背がかなり高い。穂乃果の腰辺りまであり、しかもいたる所に深そうな池が点在している。

「歩きにくいなぁ……。これ、ポケモン見つかるのかな」

 それでもガサガサ進んでいると、

「──ん?」

「ボミ?」

 少しだけ開けた場所に、スボミーがいた。穂乃果と目があった。

「ポケモン発見!」

 穂乃果が表情を輝かせるのと、

「…………!」

 スボミーが逃げ出すのは同時だった。

「あぁ待って!」

 穂乃果も慌てて追い掛ける。草に紛れて見失わないように、必死に掻き分ける。

「ボミッ、ボミッ、ボミッ……!」

 短い足を必死に動かすスボミー。背の高い草が無ければ、速効で追い付かれていただろう。

「草が邪魔だなぁ……。──そうだ! ムックル、空から探して!」

「キュキュ!」

 ほどなくして、穂乃果はスボミーを見失ってしまった。

「どこ行っちゃったんだろ……。せめて図鑑に登録したいんだけど……」

 草を掻き分けていると、

「キュキュ!」

「ムックル! 見つかった?」

「キュキュ! キュキュキュ!」

 だが、様子が少しおかしい。何やら慌てた様子で、忙しなく飛び回る。

「どうしたの?」

 訊いてみたが、答えが返ってくる事もなく。ムックルは前方へ飛んでいってしまった。

「一体どうしたんだろう……?」

 首を傾げながらも、とにかくムックルを追い掛ける穂乃果。

 ようやくムックルが旋回する場所へ辿り着くと、

「──あっ!」

「ボミ……!」

 スボミーが網に絡まってもがいていた。

「どうしてこんな所に……?」

 疑問に思った穂乃果だったが、ひとまず網を解きにかかる。が、

「ダメ……」

 造りが頑丈なのか、穂乃果の力では解けそうにない。

「よーし……。ちょっと怖いかもしれないけど、すぐ自由にしてあげるから!」

 穂乃果はムックルを戻すと、別のボールを掴む。

「ヒトカゲ、ひっかく!」

「カゲ!」

 ヒトカゲのツメが、頑丈な網をバラバラにする。だが、少なからずスボミーにも当たってしまった。すぐには起き上がれないスボミーに、

「大丈夫? これで元気になるからね!」

 穂乃果は“キズぐすり”を使ってやる。

「ボミ……?」

 ダメージが回復したスボミーは、不思議そうに穂乃果を見上げる。

「よしよし」

 穂乃果がスボミーを撫でていると、

「ポケモンは捕まって……誰だお前?」

「っ?」

 振り返ったそこには、例の奇抜な格好。

「そのスボミー……お前が逃がしたのか?」

「あ! えっと……。お……お……お……リジン団!」

「何でオレらを知ってんだ?」

「だってスタスカシティで邪魔してたもん!」

「ああ! お前が例のお邪魔虫か!」

「む……邪魔したのはそっちじゃん!」

「我々には必要な事だったんだ! ──邪魔するなら、ちょっと諦めてもらうか! コイル!」

「ヒトカゲ、ひのこ!」

「ビー、ピー……」

 相性抜群の一撃が入り、呆気なく落下するコイル。

「ぐっ……、思ったより強い……」

「カゲ!」

「ヒトカゲか……。ふん、ならさっき捕まえたコイツだ!」

 オリジン団の下っぱが新しく投げたボールから出てきたのは、

「パー!」

「あれは……?」

 穂乃果がポケモン図鑑を確認する。

「ウパー……。水タイプ……」

「ウパー! あわ!」

「パー!」

「カゲッ……!?」

「ヒトカゲ!」

 直撃を受けたヒトカゲはかなり深刻なダメージと見られ、しかもその泡がまとわりついて動きが阻害されている。

「よし! トドメだウパー!」

「このままじゃヒトカゲが……」

 引っ込めようかとボールを穂乃果が掴んだ瞬間、

「パ……!?」

 ウパーの体力が、どこかへ吸い取られていく。

「なっ……!」

「これって……すいとる!? じゃあ……」

「ボミー!」

「スボミー!」

 穂乃果に回復してもらったスボミーが、ウパーに向かって攻撃を繰り出している。

「水タイプに草タイプは効果抜群……。スボミー、闘ってくれるの?」

「ボミー!」

「よーし! スボミー、すいとる!」

 相性抜群の二撃目が入り、たまらずウパーはダウン。

「ぐ……! 野生ポケモンが協力するとか、そんなのアリかよ……」

 悔しそうに呟きながら、下っぱは姿を消した。

「ふぅ……。何とか勝てたね……。ヒトカゲもお疲れさま」

「カゲッ」

 ヒトカゲをボールに戻し、穂乃果はスボミーに向き直った。

「スボミー、ありがとね」

「ボミ」

 スボミーは、じっと穂乃果を見上げる。

「……もしかして、一緒に行きたいの?」

「ボミ!」

 スボミーの表情が一気に明るくなった。その場で飛び跳ねる。

「じゃあ……はいこれ」

 穂乃果が差し出したモンスターボールに、スボミーは自分から触れる。

 スボミーが吸い込まれたボールは、一切の抵抗なくカチッと制止した。

 穂乃果はそのボールを拾い上げ、優しく手で包む。

「よろしくね、スボミー」

 

 

 

 

 ようやく森を抜けた穂乃果は、スモーファウンタウンに到着。ひとまずポケモンセンターへ向かった。

「はい、皆元気になりましたよ」

「ありがとうございますジョーイさん!」

 ポケモンセンターを出た穂乃果は、即座にジムに向かう。

 スタスカジムと違い、プランターに植物が植えてある。

「おお、何か花陽ちゃんぽい! ごめんくださーい。花陽ちゃーん!」

 声をかけつつ、穂乃果は扉に力をかける。

「……あれ? 開かない?」

 が、扉は微動だにしない。

「ぐぬぬ……!」

 押したり引いたりするが、開く気配は無い。

「いないのかな……。どうしよう……」

 穂乃果が途方に暮れてジムの看板を見上げていると、

「スモーファウンジムに何か用?」

「!」

 振り返ったそこには、十歳ちょっとの少年。

「あ、うん。君は?」

「おれはスモーファウンジムの専属トレーナーだ!」

「へー。そうなんだ。凛ちゃんに聞いて、花陽ちゃんに挑戦しに来たんだけど……」

「スタスカのジムリーダーから? まあ仲良いもんな。──でも残念だったね。今はいないよ」

「え? じゃあどこにいるの?」

 穂乃果の問いに、少年はニヤリと笑う。

「教えてやってもいいけど……タダはダメだな。──ジムに挑戦するなら、その資格を試させてもらうぜ! おれと勝負だ!」

 ボールを取り出した少年に、穂乃果も応える。

「分かった!」

「行くぜ! コラッタ!」

「コル!」

「コラッタか……。やっぱりノーマルタイプなんだね。よーし! ──ヨーテリー、ファイトだよっ!」

「テリー!」

「コラッタ、たいあたり!」

 コラッタは小さい体で、ヨーテリーに接近。

「よけて!」

 それをヨーテリーは、危なげなく回避。

「よーし! ついさっき新しく覚えた技、──かみつく!」

「テリーッ!」

 側面から攻撃がぶつかる。

「コラァッ!」

 地面を滑ったコラッタは、ひとまず立ち上がる。だが、

「コル……」

 前脚が震え、相手から目を逸らす。

「ひるんだのか!?」

「かみつくの追加効果! チャンスだよ! たいあたり!」

「テリー!」

 動けないコラッタに、ヨーテリーがぶつかる。

「ああ!」

 少年の叫び声も虚しく、コラッタは倒れた。

「やった! 勝った! さあ次のポケモン!」

 その言葉に、少年は叫ぶ。

「いねーよ! おれはまだ一匹しか持ってないんだよ!」

「あ、そうなの? ──じゃあ穂乃果の勝ちだね!」

「ぐ……、でもそうだな。挑戦くらいはしてもいいんじゃねーか?」

「ホントに? ありがとう!」

 生意気な口調が消えない少年に、穂乃果は素直に礼を言う。

「はぁ……。──ジムリーダーは、この先にある田んぼにいるよ」

「田んぼ?」

「知らないのか? ──スモーファウンは、有名な米作りの町だぞ」

 

 

 少年に言われた通りしばらく進むと、緑一色の田園風景が広がった。

「ひゃー、凄いや。そっか。今は田植えの時期なんだ。──お?」

 辺りを見渡していた穂乃果は、やや離れた所に見知った後ろ姿を発見した。

「あれって……」

 近づいてみると、

「はあ~……っ! やっと田植えの季節だねぇ……! あと半年で美味しいお米が……♪ 待、ち、遠しい……!」

 などと怪しく呟くその姿は間違いなく、

「あはは……やっぱり花陽ちゃんだ……。──おーい、花陽ちゃーん」

「は、はいっ!?」

 真後ろから話し掛けられた花陽は、ビクッ、と背すじを伸ばす。

「え、えっと……?」

「私、穂乃果! 花陽ちゃんジムリーダーなんでしょ? 挑戦しに来たんだ~」

「あ、そうだったんですか……」

「凛ちゃんにも言われたんだ! ほら!」

 穂乃果はバッジケースを見せる。

「あ、スターバッジ……。凛ちゃんに勝ったんですね。おめでとうございます」

「うん! ありがとう! ──それで、次は花陽ちゃんに挑戦、って思って」

「分かり、ました。準備をしておくので、少ししたら来て下さい」

「うん!」

 花陽を見送った穂乃果は、

「よし、もうちょっと特訓しよう! ──皆、出てきて! ファイトだよっ!」

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