μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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ミスリードできてましたかね?


第30話 進行、ウテックス山

チェリーバタウンへ降り立つと、そこには、

「来やがったなお邪魔トレーナー!」「簡単に進めると思ったら大間違いだぜ!」「数々の恨み、ここで晴らしてやる!」

見慣れたヘンテコ集団に囲まれた。

「オリジン団が、いっぱい……」

「やはり、ここに何かあるようね」

「でも、どこに向かえばいいのかな……」

「そうですね……。あまり時間も無いようですし……」

「敵の警備が厳重な場所を……」

五人が突破口を探す中、

「……遺跡だ」

穂乃果がポツリと呟いた。

「穂乃果?」

「ウテックス遺跡に、何かある。そんな気がする」

「具体性に乏しいですね……」

「でも、今はそれが一番可能性が高いわ」

「そうね……それに賭けてみましょう」

五人が頷き合うのを見たオリジン団員達は、

「何企んでやがる! ここは行かせねえぞ! ーーゴルバット!」「スカタンク!」「キリキザン!」「グラエナ!」「ゴースト!」「マルノーム!」「ゴローニャ!」

各々ポケモンを繰り出した。

「くっ……多い……!」

「へへっ、いくらお前らが強かろうと、数で押し切ればーー」

「りゅうせいぐん」

『『『っ⁉︎』』』

突如降り注ぐ攻撃。倒れ伏すポケモン達。

穂乃果が振り返ると、

「ここは私が引き受けるわ。皆は行って!」

シロナが声を上げた。

「シロナさん……」

「私なら大丈夫よ。こう見えて、シンオウ地方のチャンピオンなんだから」

「……分かりました!」

ウインクしたシロナに、穂乃果は強く頷き返す。

「行こう! 海未ちゃん! ことりちゃん! 絵里ちゃん!」

「はい!」「うん!」「ええ!」

シロナの攻撃に怯んだ団員達の隙間を縫って、穂乃果達はウテックス遺跡に向かって駆け出した。

「あっ、待て!」

「あなた達の相手は私よ」

「!」

「知っている事を話してもらうわよ。オリジン団の目的、方法、野望を」

 

 

街内の全戦力をシロナにぶつけたのか、遺跡までの道には誰もいない。

「本当に遺跡に何かあるんですか?」

走りながら、海未が口を開いた。

「分からない……けど、何かが穂乃果を呼んでる気がするの」

「そんな曖昧な理由で……」

「穂乃果のカンが馬鹿にならない事は、皆体験済みじゃないかしら?」

「それは……そうですが……」

絵里の言葉に、海未は言葉に詰まる。

「とにかく、今は穂乃果ちゃんについて行くしかないよ、海未ちゃん」

否定材料が無い以上、海未も頷くしかない。

四人が遺跡奥の洞窟に入ると、いつぞやの巨大壁画が出迎える。

「行き止まりですよ……。ここに何が……」

「手分けして、手掛かりを探しましょう」

穂乃果が頷くとほぼ同時に、視界の端を黒い影が横切った。

「あれ、アンノーン……」

『M』の形を模したアンノーンは、無感情の一つ目で穂乃果を見つめる。

「ねえ、アンノーン。この遺跡の秘密とか、何か知らないかな。教えて欲しいの」

そして、話しかけてみる。

「お願い! 私達、行かなくちゃいけないの!」

「…………」

アンノーンは静かに穂乃果を見つめ返す。

「…………!」

「…………」

そのまま十秒ほどが経過し、

「…………」

アンノーンはフワリと壁画の方へ浮遊して行った。

「ダメかな……」

穂乃果が肩を落とすと、アンノーンは壁画のある一点に向かって不思議な光線を撃ち出した。

「あれは……めざめるパワー!」

「めざめるパワー?」

海未の声に、穂乃果は首を傾げる。

「アンノーンが唯一覚える技よ。タイプも威力も分からない、不思議な技なのよ」

穂乃果の隣に来た絵里が、補足説明をする。

「でも何で、そんなのを壁画に……」

ことりの声は、途中で途切れた。

アンノーンが技を撃ち込んだ場所、そこが崩れると、崩れた石片が積み重なり階段を生成した。

『…………』

四人同様、口を開けて固まった。

「…………」

アンノーンは、これでいいかと言わんばかりに穂乃果を見つめ直すと、どこかへ消えていった。

「あっ、ありがとう〜! アンノーン!」

我に返った穂乃果は、慌てて姿の見えぬアンノーンに手を振った。

「驚きました……。まさか、この壁画にこんな秘密が隠されていたなんて……」

「誰だって驚くわよ……。どういう仕組みなのかしら……」

「昔の人って、謎が多いねぇ〜」

「でも、おかげで進めるようになった! 行こう!」

海未、絵里、ことりが衝撃の余韻に浸っている中、穂乃果は前を見る。

階段は真っ直ぐ、描かれた伝説のポケモンの足元へ消えている。

「……この先に、何が待ってるんだろう……」

不安を覚えながらも、穂乃果は階段を登っていく。

四人が壁画の向こう側へ到達すると、階段は音を立てて穴を塞いだ。

「……ホント、どういう仕組みなのかしら」

ただの壁になった穴を撫でながら、絵里が呟く。

「見て、絵里ちゃん!」

ことりの声に、絵里は視線を前に戻す。

「これは……!」

そこには、敷き詰められた砂利による道。所々風化が見られつつも立派な石段。何かを模した石像。明らかな人工物が並んでいた。そして何より、

「照明……? 何故ここに……?」

煌々と灯りを灯す電球。そのおかげで周りの様子が分かるのだが、歴史を感じる石造りの中、明らかに雰囲気から浮いていた。

「……何者かが、ここを拠点として使っているって事ね」

「何者かって……」

「まあ、十中八九オリジン団ね」

絵里は息を吐くと、

「ウテックス山の中が、遺跡として続いていたなんてね。こんな大発見に喜んでいる余裕が無いなんて」

辺りを見渡す。

「行こう、皆。何となく、急がないといけない気がする」

一歩進んだ穂乃果が、振り返って三人に視線を送る。三人も、深く頷く。

「でも……どこに行けばいいのかな」

「そうね……。道や階段があるとはいえ、複雑に入り組んでそうだし……」

ことりと絵里は、いくつもある階段を見て二の足を踏む。

「とにかく、目指すのは山頂です。上へ登って行けば、辿り着けるでしょう」

「そうだよ!」

「はぐれて迷うと大変ですし、固まって移動しましょう」

方針を定め、四人はいよいよ行動を開始する。

階段を登り、砂利を踏みしめ、四人は山の内部を登っていく。

「……何だか、静かだね」

「ええ……人もポケモンも、全く見当たらないわ」

「壁画の隠し扉の先ですし、そう簡単に入り込める場所ではないという事でしょうか」

「……ちょっと、怖いかも」

岩の成分のせいなのか、声の反響も少ない。まるで別世界へ進んでいるような感覚に、四人の足が僅かに早まった。

「ーー!」

不意に、先頭を歩く穂乃果の歩みが止まった。

「わぷっ」

後ろを歩く絵里がぶつかる。

「どうしたのよ……。急に止まったら危ないじゃない……」

「何か……聞こえない?」

「え?」

穂乃果の声に、全員が耳をすます。

「…………風?」

「うん、風の音……だね」

微かに、風が抜ける鋭い音が聞こえる。

「という事は……」

「出口が近いって事だ!」

穂乃果は顔を輝かせると、勢いよく駆け出した。

「あっ、ちょっと穂乃果! 一人で進んだら危ないでしょ!」

絵里の声を背後に聞きながら、しかし穂乃果は止まらない。

「! この上か!」

目の前に、明らかに今までと違う巨大な石段が現れた。かなり長いが、頭上に光が見える。

「あの先に何かが……」

「ヤミラミ、シャドーボール!」

「っ⁉︎」

不意に飛んできた指示に、穂乃果はその場を飛び退る。数瞬遅れて、穂乃果が立っていた場所の砂利が衝撃で飛び散った。

「悪いが、ここから先に行かせる訳にはいかない」

「あなたは……⁉︎」

姿を見せたその人物に、穂乃果は息を飲んだ。

「ここまで来たのに、ごめんなさいねぇ〜」

さらに、もう一人。

「……英玲奈さん、あんじゅさん……!」

穂乃果の前に立ち塞がったのは、見間違えるはずもない、AーRISEの二人。

「あら、私達を知ってるのねぇ」

「どうしてここに……!」

「もう分かっているだろう? 我々の計画の、リーダーの邪魔をされる訳にはいかないんだ」

「それじゃあ、まさか……!」

「これ以上話す必要もない。ここまでだ! ヤミラミ、シャドーボール!」

「ムーランド!」

「ワフッ!」

濃い影の塊は、ムーランドにぶつかった瞬間霧散した。

「相性を考えたか……。だが、それはそちらも同じ」

「ーー穂乃果!」「穂乃果ちゃん!」「穂乃果!」

ようやく追いついた三人は、目の前の二人を見て足を止める。

「こんな所にいたのね……!」

「ええ。しかも、今までの相手とは少し違うようです」

「ちょっと手強そうだね……」

「絵里ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃん。穂乃果、この先に行かなくちゃいけないの。だから……」

やや申し訳なさそうに、三人に視線を送った穂乃果。返ってきた答えは、

「分かってるわ」

だった。

「何かしら事情を知っているのでしょう?」

「行って! 穂乃果ちゃん! ことり達なら大丈夫!」

「皆……うん! ありがとう!」

笑顔で礼を言った穂乃果は、英玲奈とあんじゅに向き直る。

「……行くよ、ムーランド。突破する!」

「ワウ!」

「ムーランド、すてみタックル!」

「攻撃が効かないのは、どちらも同じだぞ?」

ほくそ笑んだ英玲奈の目の前で、

「ヤミィィッ⁉︎」

ヤミラミが派手に吹っ飛ばされた。

「なっ……⁉︎」

「うそ……どうして⁉︎ ーーゴルーグ、出てきて!」

「もう一度すてみタックル!」

「ゴルッ……!」

「どうしてノーマルタイプの技が、ゴーストタイプに当たるの……⁉︎」

困惑する二人。それを後ろから見ていた海未が、

「“きもったま”……?」

ふと呟いた。

「ノーマルタイプや格闘タイプの技が、ゴーストタイプにも当たる特性です。いやしかし、ムーランドの特性は違うはず……」

「……もしかして、隠れ特性……?」

引き継いだのは、絵里。

「隠れ特性?」

「ええ。ポケモンには、普通とは違う、珍しい特性を持った個体がいるのよ。普通では、まず出会えないのに……」

「じゃあ、あのムーランドがそうだって事?」

ことりは、すでに英玲奈とあんじゅの横を抜け、石段を駆け登る穂乃果を見やる。

「あ、そっか……。シロナさんが言ってた、びっくりする事って、これの事だったのかな……」

「……あの子には、驚かされっぱなしね」

「……まったくです」

やれやれと苦笑した三人は、

「悪いけれど、穂乃果を追わせはしないわよ?」

「私達が相手です」

「手加減しませんよ〜!」

それぞれポケモンを繰り出し、バトルを始める。

一方、

「はっはっはっ……!」

一心不乱に石段を駆け登る穂乃果は、すぐにそれを登りきった。

光射す出口から外へ飛び出すと、眩しさに思わず目を細める。だが、

「よく来たわね、穂乃果さん」

聞こえてきた声に、前を見据える。

そこには、穏やかな笑顔でこちらを見つめる、

「ツバサさん……!」

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