μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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NGな人がいるかもしれません。ごめんなさい


第31話 伝説のポケモン、降臨!

「ツバサさん……!」

「とうとうここまで来たのね、穂乃果さん」

神殿のように石柱が連なる、ウテックス山の頂上。そこで二人は対峙していた。

「ツバサさんが……ツバサさんは、オリジン団だったんですか⁉︎」

詰め寄りそうな穂乃果に、ツバサは涼しく答える。

「ええ、そうよ。オリジン団は、私が組織したの。もっとも、指示の多くは他の幹部達がやってくれていたのだけど」

「どうして……! オリジン団が、色々酷い事をしてきたの知ってるでしょう⁉︎」

「どうして、か。前に、あなたに訊いたわよね。この世界をどう思ってるのか」

ツバサは、雲に隠れた下界に視線をやる。

「あの時のあなたの答えで、私は確信したの。ここは、私達が生きる本当の世界じゃない、って」

「えっ……⁉︎」

そのツバサの言葉に、穂乃果は少しだけ目を見開いた。

それを、ツバサは見逃さない。

「その反応、やっぱり心当たりがあるのね。あなたは知っている。ここではない、真実の世界を」

「私も、どうしてこうなったのかまでは……」

押し黙った穂乃果。

「……私は、ずっと考えてた。記憶に無くても、カンのような何かが頭から離れなかった。私は本当は、何者なのかって」

ツバサは独り言のように、訥々と語り続ける。

「悩み苦しみ、何とか状況を打破しようと必死になった。神話を知ったのも、その頃ね。その時思った。伝説のポケモンの力を借りれば、きっと私は答えに辿り着けるって。それから英玲奈とあんじゅに協力してもらって、今のオリジン団を作り上げた。まあ、彼らの多くは、私達ほど深くは考えてないようだけど」

ツバサはクルリと穂乃果に背を向けると、

「『この地に存在しパミュークス。それは歌唄い、その歌声は全てを創り滅ぼし、また創る。パミュークス、なすべきものを創造す。しかし暫く後、諍い起こる。パミュークス怒り、これを鎮める。その力強大なりて、世界滅びる。パミュークス嘆き、再び創造す。人々これを怖れ崇める。パミュークス、霊峰にて眠りにつく。我々記す。諍い殺戮起こりし時、パミュークス怒り顕現す。全て滅び、また生まれ変わる。それを逃るる術ただ一つ。九つ水晶携え、自らの歌声と力合わせ、従いせしめるのみ。この予言、叶わぬ事祈る』」

何かの文言を口にした。

「…………?」

唐突な堅苦しい文章に、穂乃果は怪訝な顔をする。

「あなたも見たんじゃないかしら? ウテックス遺跡の壁画に記された、古代文字を」

「あっ……!」

以前、シロナが解読した古代文字の文章と一致する。

「でもあれは、風化が激しくて全部は読めなかったのに……」

「言ったでしょう? 私達は、神話について本気で調べたの。ちょっとかじった程度じゃあ、分からない所までね」

「…………!」

鋭くなる穂乃果の目線。

「せっかくここまで来てくれたし、話しておきましょうか。と言っても、そんな複雑じゃないわ。大筋は壁画の文句の通りよ。大昔、この地で、あるポケモンが目を覚まし、そのポケモンは今とは別の世界を創った。でも、そこの人々はそれを当たり前と思った。ポケモンの存在を知りながら、それを蔑ろにしたの。その結果、ポケモンは怒った。そして、自らの力を以ってその世界を滅ぼした。ポケモンにとってもそれは本意じゃなかったのね。荒廃した世界を嘆き、再び世界を創り直した。それが、今のカイトゥーン地方よ。ポケモンの力を目の当たりにした古代の人々は、それを恐れた。再び世界が滅ぶ事のないよう、そのポケモンを崇め伝承として未来に残した。ーーそれが、カイトゥーン地方に残る伝説よ」

穂乃果は何も言わない。純粋に、好奇心があった。

「でもあなたの記憶と、カイトゥーン地方の時間は合わない。あなたが旅を始めたのはつい最近で、恐らくその時にあなたはカイトゥーン地方へやって来た。“産まれた”んじゃない。“やって来た”。私はそう考えてるの。そうすると、他にも気になる点が出てくる。あなたが親しくするジムリーダー達。彼女達もあなたと同じく、別の世界の住人じゃないかしら?」

ツバサはここで、穂乃果を真っ直ぐ見る。

「結論を話すわね。ーーこのカイトゥーン地方は、特別に創られた“存在しない世界”。あなた以外の人は記憶を改ざんされ、この世界で生きている、と」

「…………」

「どうかしら? これが、私の導き出した結論」

ツバサの声は、自信に満ちていた。今までの何ら変わらない、AーRISEのリーダーの声だった。

「……当たって、ると思います。確かに私は、こことは別の世界にいました。そこでは、海未ちゃんやことりちゃん、みんなは同じ仲間で……。私もどうして、この世界に来ちゃったのかは分からないんですけど……」

「それが分かれば充分よ」

「え?」

その言葉を待っていたかのように、ツバサは何かを取り出した。

「本来の記憶を持つあなたから、真実を知りたかった。仮説を証明する為に。そして、私の考えは正しかった。それで充分」

「それは……九つ水晶!」

「さあ、姿を現しなさい。全ての元凶、パミュークス!」

ツバサは九つ水晶を掲げると、空に向かって放り投げた。

九つ水晶は空中でいきなり停止。謎のスパークを纏うと、眼前の祭壇の手前に浮遊していった。

「パミュークス……⁉︎」

「ええ。この地に生きる、伝説のポケモン。あなたも壁画で見たでしょう?」

「あっ……! あのポケモン……!」

穂乃果の脳裏に、先ほど見た壁画、そしてイースブー神社での銅像が浮かぶ。

「このポケモンは、世界を滅ぼし、そして創る力を持っている。そして九つ水晶を使えば、その力もコントロールできる……。後は分かるでしょう?」

「まさか……!」

「そのまさか。今ある世界を消し、新たに私達がいた世界を創り出す。……いえ、創り直す、と言った方が正しいかしら?」

ツバサの微笑み。その笑顔に秘められた意思に、穂乃果は少しだけ身を引いてしまった。

そしてその背後では、激しくなるスパーク。不自然に渦巻く風。そして、

「キュオオオォォォォォ……!」

何かの、鳴き声。

「くぅ……っ!」

あまりに激しくなる風に、穂乃果は顔を庇う。

「これが、パミュークス。この世界の、ポケモン」

「っ!」

慌てて前を見た穂乃果の目に飛び込んで来たのは、白く、馬のような体格。目元から伸びる五本の線は、首からたてがみのようになびく。薄い青に輝く尾。穏やかにこちらを見つめる、真紅の双眸。見た事もない、ポケモンの姿だった。

「…………」

その荘厳な佇まいに、穂乃果は言葉を失う。だが、

「これから私は、パミュークスの力を使うわ」

「!」

ツバサの声で我に返った。

「この力を使えば、この世界は無くなる。その時、人々は今の記憶を失うわ。ーーでも穂乃果さん、あなたは全てを知る者。私に協力してくれれば、記憶は残してあげる」

ツバサは、穂乃果に手を差し伸べる。

「私と一緒に、元の世界へ帰りましょう?」

「……………………」

穂乃果は、たっぷり一分は黙った。下を向き、目を閉じていた。

「すうぅぅぅぅぅぅー…………。はあぁぁぁぁぁー…………」

そして深呼吸を一つすると、前を向いた。ツバサをしっかりと見据えた。

「…………」

そして黙ったまま、モンスターボールを一つ手に取った。その瞳は、揺るがない。

「……そう。残念ね」

ツバサは無表情のまま、手を下ろす。そして、

「それなら大人しく、そこで見ている事ね」

ボールを空に放った。

「ペルトー!」

「お願い、ムーランド!」

「ワフッ!」

「私は、この世界も好き。ポケモンも、色んな人も、みんな大好き。だから、なくしたりなんてさせない! 私が止めてみせる!」

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