μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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物語はこれにてひと段落。ただ、まだ完結はしませんよ?


第33話 歌声、響く

「…………」

空を仰ぐツバサに、穂乃果は歩み寄る。

「……あの、ツバサさん」

ツバサは顔を前に戻すと、

「あなたの勝ちね。私の力は、あなたには届かなかった。あなたの想いの強さが、私を超えた。それがこの結果ね」

そう告げた。

「……あの、私は……」

「いいのよ。あなたはあなたの信念を貫いた。今の世界の存続を願った。そうでしょう?」

そんなツバサに対し何かを言いかけた穂乃果は、

「……はい」

言葉を飲み込んだ。

「あなたがこの事態をどう鎮めるのか、見させてもらうわね」

ツバサは山の中へと続く階段を下りながら、

「あ、そうそう。私が起動した九つ水晶で操られているパミュークスは、私がいなくなれば束縛から解放されるわ。多分怒ってるだろうから、頑張ってね」

「うぇええ⁉︎」

サラッと大事な事を言い残して消えていった。

「…………」

穂乃果がゆっくり振り向くと、

「…………」

パミュークスが、無言のまま鎮座していた。表情は変わらないので分からないが、その迫力と眼光で、痛いくらいに感情が伝わって来た。

「お、怒ってるなぁ……」

穂乃果が一歩退いた時、

「キュオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォッ!」

パミュークスが吠えた。

「ぐうっ……!」

その音量に、穂乃果は思わず耳を押さえる。

そして、パミュークスの口を中心として、空気が波打って見えた。

「あれは……?」

確かめようとするが、穂乃果の平衡感覚も揺れて立ち上がるのでやっとだった。

「ーー穂乃果!」「穂乃果ちゃん!」「穂乃果!」「穂乃果ちゃん!」

「みんな!」

そこへ、山の中からメンバーが次々飛び出して来た。第二陣の希達もいる。

「シロナさんがオリジン団を食い止めててくれて」

「そしたら、さっき急にオリジン団が引き上げて行って……」

「“未来は彼女に託した”って言い残して……」

「ツバサさん……」

穂乃果は、見えぬ先にいるもう一人のリーダーを思う。

「……それよりも、これはどういう状況にゃ⁉︎」

「これが、カイトゥーン地方伝説のポケモン……」

穂乃果以外の八人も、パミュークスの姿を認める。

「ぐっ……! この声を何とかしないと……!」

そして同様にふらつく。

「何を……してるんだろう……」

「世界を、創り変えようとしてるんや……!」

希が口を開く。

「伝説のポケモンは、怒らせたらいけない存在や……。無理矢理起こされて、相当ご立腹なんやろなぁ。怒りで我を忘れてるんやと思う……」

「そんな……どうすれば……」

にこが呟く。

「……歌おうよ」

不意に、穂乃果の声が響いた。

十六の目が、穂乃果を見る。

「ことりちゃん!」

「は、はい! ほ、穂乃果ちゃん?」

呼ばれたことりは、返事をしてから首を傾げた。

「この前教えてもらった歴史だと、昔の人は歌って伝説のポケモンに感謝したんでしょ?」

「う、うん……」

「だったら、皆で歌おうよ! 思いっ切り、今の気持ちを歌おうよ!」

「歌うって、何の歌を……」

その問いに、穂乃果は答えない。代わりに、目を閉じて息を吸い込んだ。

そして、

「ああ、ほのかな、予感から、始まり」

歌い出す。

「ああ、望みが」

「星空、駆けて」

それにつられるように、希と凛がほぼ無意識に歌い出す。

「花を、咲かせる」

「にっこり笑顔は」

花陽とにこの口から、自然に歌詞が漏れた。

「「ずっと、おんなじさ」」

「「友情の笑顔!」」

残ったメンバーも、歌い出す。知らないはずの歌を、当たり前のように口ずさむ。不思議な気持ちはしたが、誰一人として不快さは感じなかった。

「「「忘れない、いつまでも、忘れない」」」

「「「こんなにも、心が一つになる」」」

「「「世界を見つけた」」」

それどころか、楽しい、嬉しいという気持ちが湧き上がってくる。気が付けば、九人全員が笑顔になっていた。

『喜び、共に、歌おう、最後まで』

九人の声は重なり、強く、そして美しく響いていく。

『僕たちはひとつ!』

パミュークスも、いつしか狂気の声を止め、歌声に耳を傾けるように頭を下げていた。

『ことりの、翼がついに、大きくなって、旅立ちの日だよ』

歌声に酔いしれるように、パミュークスは静かに佇む。

『遠くへと、広がる海の、色暖かく』

九人の歌声は波となって、カイトゥーン地方を包んでいく。

『夢の中で、描いた、絵のなんだ、切なくて』

本来届かないはずの場所まで、聞こえないはずの歌声が響く。

『時を、巻き戻して、みるかい?』

波紋のように、世界へ広がっていく。それに呼応するかのように、九人とパミュークスの間に浮遊する九つ水晶に暖かな光が宿る。

『NO NO NO!』

九つ水晶の光が、眩く輝き出す。

『今が最高!』

瞬間、九つ水晶が音を立てて砕け散った。

「ああ、ほのかな、予感から、始まり」

名の通り九つの欠片に分かれた水晶は、九人の目の前へと落ちてくる。

『ああ、光を、追いかけて、来たんだよ』

それを、それぞれが優しく両手で受け止める。

胸に抱き、揃って優しい笑顔を浮かべる。

カイトゥーン地方の危機は去った。μ'sの歌声が、壁画の文言を再現し世界の改ざんを防いだのである。

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