「──穂乃果ちゃんには、これも」
「これは、わざマシン〈トライアタック〉。攻撃と同時に、やけど、まひ、こおりの状態異常のどれかにする事があるの」
「ほぇー、やっぱり凄い技だね」
「これからも、頑張ってね!」
「うん! ──で……、次はどこに行けばいいのかなぁ?」
「決めてないの!?」
「うん。この辺、あんまり詳しくなくて……。あはは……」
この辺、とはカイトゥーン地方全体を指す穂乃果だが、今の花陽には分からず、
「ここからジムがある近い町というと……アロリームシティ、かな?」
「それってどこにあるの?」
「うーんと……とりあえず、外で教えるね」
穂乃果と花陽はジムを出ると、町の入り口付近へやってきた。
「スモーファウンタウンの入り口は、別れ道になってるの。右の道を行くと、凛ちゃんのいるスタスカシティで、左の道を行くとアロリームシティだよ」
「あれ? こっちにもスモーファウンフォレストって書いてあるよ?」
標識を確認した穂乃果が、疑問の声を上げる。
「スモーファウンフォレストには、二つの道があるの。穂乃果ちゃんが通ってきたのは西側で、アロリームに繋がるのは東側だよ」
「そうだったんだ。ありがとう!」
穂乃果が礼を言ったその時、
「──かーよちーん!」
西側から、こちらに向かって手を振る人物を見つけた。
「凛ちゃん?」
「あ、穂乃果ちゃんも一緒だ。もしかしてもうバトルしたの?」
「うん! ほら!」
穂乃果はバッジケースを開いてフラワーバッジを見せる。
「わぁ、かよちんでも適わないなんて、穂乃果ちゃん凄いにゃ!」
凛が飛び跳ね、
「うん。強かった」
花陽も頷く。
「そ、そんな。褒めすぎだよ。あはは……」
穂乃果は照れて頭をかくが、花陽の興味はすぐに移る。
「それより凛ちゃん、どうしてここに?」
「あ、そうそう。二人に伝えておく事があるのにゃ」
「私たちに?」
「この前の……オリジン団だったかにゃ? 町の人が調べてくれたんだけど、実はカイトゥーンの色んな所にいるみたいなのにゃ。ポケモンを盗ったりもするみたいだから、気を付けるにゃ!」
「穂乃果もこの前、森で捕まってたスボミー──今はロゼリアだけど……助けたんだよ! あの時は穂乃果もちょっと怒った!」
「そんな人たちがいるんだ……。気を付けようね!」
「うん!」
「にゃ!」
花陽達と別れた穂乃果は、再びスモーファウンフォレストへ。
こちらも道は整備されて歩きやすいが、
「そこのトレーナー、勝負だ!」
その分人通りも多い。当然、トレーナーも。
「お前を倒して、スモーファウンジムへの勢いつけるぜ! ──いけ、ジグザグマ!」
「よーし! ヒトカゲ、ファイトだよっ!」
「カゲー!」
「ジグザグマ、たいあたり!」
「ヒトカゲ、ひのこ!」
突っ込んできたジグザグマは、自分から食らいにいってしまう。
「なんのまだまだ!」
「ジグー!」
元気に起き上がったジグザグマに、
「ヒトカゲ、ひっかく!」
「カゲッ!」
強烈な一撃が入った。
「ザグ……」
倒れたジグザグマに、トレーナーは半ば呆然としている。
「今の……ひっかくじゃないよな……?」
「え? 違うの?」
「今のは……メタルクローだ!」
「じゃあヒトカゲ、メタルクローを覚えたんだね! 凄い! 凄いよヒトカゲ!」
「カゲ!」
「くっそー! 次は負けないからな!」
「穂乃果だって!」
走り去っていく少年を見ながら、穂乃果はぐっ、と拳を握る。
「私もポケモンも、もっともっと強くなれる……。頑張らなくちゃ!」
その後もバトルを重ねた穂乃果は、アロリームシティに到着した。
アロリームシティに穂乃果が最初に抱いた感想は、
「大っきい……」
だった。スタスカも規模はそこそこだったが、ここはそれ以上。道行く人々も、若者が目立つ。
「えーっと、ポケモンセンターは……ジムはどこだろ……」
キョロキョロと辺りを見渡していると、
「お、穂乃果じゃん」
「久しぶり~」
「ジムはどうだったの?」
「ヒデコ! フミコ! ミカ!」
ヒフミの三人と出くわした。
「アロリームに来てたんだ」
「うん! 今着いたところだよ!」
「旅は順調?」
「うん! バトルにも慣れてきたよ!」
「て事は、スモーファウンジムは?」
「うん! なんとか勝てたよ!」
三人の質問に次々答える穂乃果。
「穂乃果の事だから、すぐに諦めちゃうかと思ったけど……やるじゃん!」
「分からない事ばかりだけど……。あはは……。──と、そうだ。ねえ、アロリームジムってどこ? 私全然分からなくて」
その質問に、ヒデコは肩を落とす。
「ホント相変わらずね……」
「ジムはこっちにあるけど……」
「先にポケモンセンター行った方がいいんじゃない?」
「あ、そっか! ここまで、結構トレーナー多くて大変だったよー」
ヒフミにポケモンセンターを案内され、穂乃果はポケモンを回復してもらう。
ポケモンセンターを出た四人は、そのままアロリームジムへ向かう。
「アロリームジムはエスパータイプの使い手だよ」
「エスパータイプかぁ……。相性がいいポケモン、全然いないよ……」
「大丈夫だって。スモーファウンは知らないけど、リオルにヒトカゲで勝ったじゃん」
「そうだよ! 相性なんて関係ないよ!」
「そっか……。そうだよね!」
そうヒフミに励まされる内に、ジムの前に到着。
「う……三回目だけど、やっぱり緊張する……」
穂乃果は一度深呼吸すると、
「ジム戦お願いしまーす!」
扉を開けた。
そこにいたのは、
「──にっこにっこにー!」
「にこちゃん!?」
「にっこにっこにー! ──はい、アンタもやる」
アロリームジムリーダー、にこは穂乃果を指差す。
「まったく……こんなキャラ作りもできないのに、ジム戦なんて「にっこにっこにー!」百年早──って躊躇ないわねアンタ……」
即座ににこにー返しをした穂乃果に、やらせておいてにこは一歩引く。
「だってにこちゃんだもんね!」
「どういう意味よ!」
「そんな事より、バトルしようよ!」
「にこにとっては重要な事よ!」
ひとしきりツッコんだにこは、
「おかしい……! ペースが掴めない……!」
一人頭を抱える。
「ねーにこちゃーん」
「うるさい! 今それどころじゃないのよ!」
「え? どうして?」
「タイミングが悪いのよ! この忙しい時にジム戦とか、考えなさいよ!」
「ご、ごめんなさい」
吠えたにこに、とりあえず穂乃果は頭を下げる。
「で……何が?」
「アンタ、何も知らないのね……。──コンテストよ」
「コンテスト?」
「そ。ポケモンコンテスト。今からそれが始まるから、そっちに行くの。だからジム戦なんかしてる場合じゃないの。分かった?」
にこが言い放った言葉に、一応頷いた穂乃果。だが当然表情は納得せず、それを言葉にしたのはヒフミの三人だった。
「けど……」
「ジムリーダーなのに……」
「ジム戦放棄は……」
「……何よ」
そこへにこの睨みが飛ぶ。
「ポケモンコンテストの魅力が分からないなら、仕方ないわね。どうしても私を納得させたいなら、アンタ達もコンテストに出てみなさいよ。それで上位に食い込めるなら、考えてやってもいいわよ?」
「それって結局、コンテストに行くって事じゃ……」
「…………」
ヒデコの言葉に、にこは黙る。
「──分かった!」
そして唐突に叫ぶ穂乃果。
「な、何がよ?」
「私も出ればいいんだね! コンテストに!」
「は、はあ!?」
にこはあんぐりと口を開ける。
「素人がまともなパフォーマンスをできるわけが──」
「大丈夫! ライブみたいなものだよね!」
「アンタ、人の話聞かないわね……」
にこが額を押さえ、
「大体、そう簡単に出られるワケが──」
「あー……私の友達のお父さんがディレクターやってるから、頼めば出られるかも」
「……は?」
ミカが控えめに手を上げる。
「ホントに!? ──よーし! コンテスト、頑張るぞーっ!」
本格的に開いた口が塞がらないにこと、対照的に元気に腕を振り上げる穂乃果。
「ね、ねぇ、じゃあ私も……」
「あーごめんなさい。飛び入り二人はさすがに……」
「何でよ!」