μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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第8話 病院の一人娘

「ツバサさん……」

「あら、私を知っているの? 高坂穂乃果さん?」

「え……どうして私の名前を……?」

 文字通り驚愕した穂乃果に、ツバサは不敵な笑みを浮かべて答える。

「だって有名だもの。次々とジムリーダーを撃破している、凄腕のルーキートレーナー、って」

「あ……なんだ……」

「あら、あまり嬉しそうじゃないわね。ルーキーじゃ不満かしら?」

「い、いえ、そういうわけじゃ……」

 歓喜と落胆、対極の表情を浮かべる穂乃果に、

「やっぱり噂通り。あなたって面白いわね!」

 ツバサは笑う。

「へ?」

「私ね、ずっとあなたに注目していたの。スタスカでオリジン団を追い払った時も、コンテストで優勝した時も」

「どうして……?」

ツバサはそれには答えず、

「ねえ、もし良かったら、私とバトルしないかしら? 噂の実力を確認してみたいの」

 かつて、UTXで対峙した時と変わらぬ不敵な笑みを思い出した穂乃果は、

「やります!」

 ほぼノータイムで宣言した。

 

 

 ーー適度な広さの空間を見つけた二人は、それぞれ向かい合う。

「じゃあいいかしら。使用するポケモンは一体。私はこのエンペルトで行くわ。……ロゼリアは、照明役よろしくね」

「リア」

闘えない事を若干残念に思いながら、ロゼリアは返事する。

「タイプは水と鋼か……」

ポケモン図鑑を確認した穂乃果は、少し迷ってボールを掴んだ。

「ハーデリア、ファイトだよっ!」

「ワウ!」

穂乃果の繰り出したポケモンを見て、ツバサは少し驚いた表情を浮かべた。

「ノーマルタイプは、効果今一つよ?」

「分かってます。でも、今のハーデリアなら!」

「何か秘策があるようね。楽しみ」

「よーし、ハーデリア、とっしん!」

「受け止めて!」

ハーデリアの突貫は、

「ペルト!」

エンペルトにガッチリと止められてしまった。エンペルトは数センチ後退したに過ぎない。

「やっぱりノーマル技じゃダメか……。ーーハーデリア、あなをほる!」

「ワウ!」

ハーデリアは地面に潜り、見えなくなる。

「なるほど……。地面タイプの技なら効果は抜群。ーーエンペルト!」

ツバサが注意を促そうとした瞬間、

「今だ!」

「ワウ!」

そのエンペルトの足元、真下からハーデリアが飛び出した。

「ペルトー!」

直撃を受けて高々と打ち上げられたエンペルトだったが、

「う……、やっぱりムリか……」

しっかりと着地する。

「相性が悪い相手にも対処できるように、対策を立てておく……。噂通りの実力ね」

「あ、ありがとうございます。ーー偶然覚えただけなんだけど……まあいっか」

やや苦笑の穂乃果は、

「ハーデリア、もう一度あなをほる!」

「ワウ!」

再び地面に潜ったハーデリア。だがツバサもエンペルトも慌てた様子は無く、

「エンペルト、穴に向かってハイドロポンプ!」

「ペルトー!」

「えっ!?」

エンペルトはハーデリアが空けた穴に大量の水を噴射し、

「ワウーッ!?」

その水に押し上げられるように、ハーデリアが地中から打ち上がった。

「強力な技だけど、地面の穴は繋がっているの。覚えておくといいわ。ーーエンペルト、ハイドロポンプ!」

「ペルトー!」

空中で身動きが取れず、

「ハーデリア!」

直撃。落下したまま、力無く倒れた。

「勝負あったわね」

「……はい」

穂乃果はハーデリアをボールに戻し、歩み寄るツバサに目を向けた。

「いい勝負だったわ。何かあなたに、可能性を感じたの」

「そう、なんですか?」

「ええ。よければ、またバトルしましょう」

穂乃果は、差し出された手をしっかりと握る。

「はい!」

踵を返したツバサは、思い出したように、

「そうそう、ウェスリードジムの専門も鋼タイプよ。今の戦法は悪くないから、対策に気をつける事ね」

そんな事を言い残して、アロリーム側の出口へと消えていった。

「ありがとうございます!」

姿が見えなくなる直前に、穂乃果の言葉が洞窟に木霊した。

 

 

 

 

『麓の洞窟』を抜け、しばらく街道を進んだ穂乃果は、ウェスリードシティに到着。

「うわぁ〜……」

アロリームシティでも似たような声を上げた穂乃果だが、今回は前回を上回るように聞こえる。

ウェスリードシティは、まるで秋葉原の町のようにビルが乱立する大都会だった。

「何か、音ノ木坂に戻ったみたい……」

入り口で若干放心しながら呟いた穂乃果は、

「まずはポケモンセンター探さないと」

すでにポケモントレーナーそのものの言葉を発しながら、歩き始めた。

 

 

探し求めていたポケモンセンターは、割とすぐに見つかった。

「はぁ〜……」

何しろ、他の町とは比べ物にならない大きさだったからだ。

「大きいなぁ……。まるで病院みたい……」

そんな事を呟いてから、

「……ん? 病院?」

ある事に思い至った。

「もしかして……」

穂乃果がポケモンセンターの中に入ると、

「冒険お疲れ様」

何度見ても同じ顔にしか見えないジョーイさんと、もう一人。

「……何? 何か用?」

やや冷たい顔を向ける、

「真姫ちゃん!」

「は、はあ? 何で私の名前を?」

「私だよ! 穂乃果!」

「穂乃果? 知らないわ。誰よ」

穂乃果必死の自己紹介も、軽く一蹴される。

「そうだよね……。真姫ちゃんも覚えてないよね……。あはは……」

「ヴェ……」

捨てられた仔犬のような目の穂乃果に、真姫は軽く怯む。

「も、もしかしたらどこかであってるかもしれないわね。私が忘れてるだけで」

「真姫ちゃん……!」

「どう? これでいい?」

やや投げやりな真姫だったが、穂乃果は笑顔。

「うん! ありがとう! ーーここ、もしかして真姫ちゃんのポケモンセンター?」

「そんな訳ないでしょ! パパとママの病院よ」

「あ、そっか」

「はあ……何か疲れた。ーーじゃあ私、もう行くから」

さっさとポケモンセンターを出ようとする真姫。

「え、ちょ……」

片手を上げかけた穂乃果を置いて、真姫はそのまま出て行ってしまった。

「…………」

手を下ろした穂乃果は、

「……むう、昔の真姫ちゃんみたい……」

そう呟く。

「ーーあなた、真姫のお友達?」

と、不意に背後からそんな声。

「は、はい!」

直立不動で返事した穂乃果が振り返ると、

「あ、真姫ちゃんの……、お母さん?」

「ええ、そうよ。よく分かったわね」

白衣に身を包んだ女性。

「見た所トレーナーのようだけど……、真姫のお友達?」

「えっと……、友達というか……」

歯切れの悪い穂乃果は少し悩んだ後、

「ーーでも、仲間でした!」

真っ直ぐ言い切った。

「そう……。それならお願いがあるの」

「お願い?」

「ええ。あの子、一応ここのジムリーダーなんだけど、あまりバトルに積極的じゃないのよ。この病院はあの子が継ぐ事になってはいるけど、それに縛られている気がするの。ーー仲間、のあなたの言葉なら、届くかもしれない。お願いしてもいいかしら……」

「真姫ちゃんがジムリーダー……。分かりました! 私も、真姫ちゃんとバトルしたいですから!」

「お願いね。真姫は、この町の北にある、離れにいると思うわ」

「はい!」

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