μ'sバトルスタート!   作:『シュウヤ』

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更新ペース上がらず、申し訳ありません


第9話 執念の進化

ポケモンセンターを出た穂乃果は、真っ直ぐ北を目指す。詳しい場所を聞かなかった穂乃果だが、目的地はすぐに分かった。

「“時々、雨が降るけど、水が〜無くちゃ大変〜。乾いちゃだめだよ。皆の夢の木よ育て〜!”」

ピアノの音と、澄んだ歌声が聞こえてきたからだ。

「この歌……」

穂乃果は、ドアについた窓から中を覗く。

「“さあ、大好きだばんざーい! 負けない勇気〜。私たちの今が、ここにある〜。大好きだばんざーい! 頑張れるから、昨日に手を振って、ほら〜、前向いて〜”」

ふう、と一息ついた真姫が顔を上げると、

「ヴェエ……」

パチパチパチ! 謎の感心顔で拍手をする穂乃果と目が合った。

「凄い凄い! やっぱり歌上手だね!」

そのままドアを開けて入ってきた穂乃果に、真姫はジト目を向ける。

「確か……穂乃果とかいった? 何の用?」

「真姫ちゃん、ジムリーダーなんでしょ?」

「っあっ、あなた、挑戦者だったの? 早く言ってよね!」

「ご、ごめん……。__でも、バトルしてくれるよね?」

「まあ、するのは構わないけど……私、別にジムリーダーになりたいわけじゃなかったのよね。音楽も同じ」

どこか遠い目をして話す真姫。

「__あなたにする話じゃないわね。忘れていいわ」

軽く肩をすくめた真姫は、穂乃果を置いて離れを出ていく。

「真姫ちゃん……」

真姫の心の声が聞こえた気がして、穂乃果はしばらく、その後ろ姿を見つめていた。

 

 

「__それでは、ウェスリードジムリーダー・真姫VSチャレンジャー・穂乃果のバトルを始めます。ジムリーダーの使用ポケモンは三体。チャレンジャーに制限はありません。なお、チャレンジャーにのみポケモン交代が認められます」

審判の声を聞き流しながら、穂乃果はツバサの言葉を思い出していた。

「真姫ちゃんは鋼タイプ……。それなら__」

「行きなさい、ギギアル!」

「ギギー!」

真姫が繰り出したギギアルを見て、

「何そのポケモン!」

「ちょっと! 私のポケモン、馬鹿にしたら許さないんだから!」

「ご、ごめん……」

謝りつつ、穂乃果はポケモン図鑑で鋼タイプである事を確認する。

「よし、リザード、ファイトだよっ!」

「ザード!」

「ギギアル、ギアチェンジ!」

穂乃果が指示を飛ばすより早く、真姫が動く。

「ギギー!」

「何してくるか分からないけど……リザード、かえんほうしゃ!」

「よけて!」

ギギアルは俊敏な動きで、迫り来る炎を避ける。

「! 速い……」

「ほうでん!」

ギギアルが放った電撃は、逆に直撃する。

「リザード! 大丈夫⁉︎」

「ザード……!」

気丈に立ち上がるリザードだが、足元はおぼつかない。

「このままじゃ……。__リザード、一旦戻って!」

少し悔しそうな穂乃果は、次のボールを掴む。

「ハーデリア、ファイトだよっ!」

「ワウ!」

「あなをほる!」

ツバサ戦同様、ハーデリアは地面に潜り見えなくなった。

「ギギ……?」

ギギアルが戸惑っている隙に、

「今だ!」

その掛け声に合わせて、ハーデリアが飛び出す。

「ギギアル、戦闘不能! ハーデリアの勝ち!」

「よしっ、まずは一勝……」

小さく拳を握る穂乃果だが、その表情は緊張が強い。

「案外やるじゃない。少し、見直したわ」

二つ目のボールを掴みながら、真姫が話し掛ける。

「ありがとう! でも、真姫ちゃんも凄いよ!」

「なっ……当然でしょ! 私を誰だと思ってるのよ!」

顔を赤らめてそっぽを向く真姫に、

「やっぱり、真姫ちゃんだね!」

「どういう意味よ!」

真姫は大きくため息をつくと、次のポケモンを繰り出した。

「行きなさい、ドータクン!」

「ドー…………」

「ま、また変なポケモンが……」

「変とか言うんじゃないわよ!」

二度目の応酬。

「でも……」

ドータクンを観察した穂乃果は、

「動きは遅そう。__よし、ハーデリア、あなをほる!」

「フフッ」

「……?」

真姫の漏らした笑みに、穂乃果は不安を覚える。

「__ワウ!」

その時、ハーデリアが勢いよく飛び出した。が、

「当たらない⁉︎」

ふわりと宙に浮かぶドータクンには、攻撃が届かない。

「ドータクンの特性は“ふゆう”。地面タイプの技は当たらないのよ」

髪の毛をクルクルしながら、真姫は得意げに話す。

「そんな……。じゃあ、とっしん!」

「ワウ!」

突貫を仕掛けたハーデリアだが、直撃を受けたドータクンは微動だにしない。

「効かないわね。__ジャイロボール!」

「ドー…………!」

ドータクンは高速回転すると、反動のダメージで動けなかったハーデリアを撥ね飛ばす。

「ハーデリア!」

「ハーデリア、戦闘不能! ドータクンの勝ち!」

「ああ……」

穂乃果は少しだけ肩を落とすと、すぐにぐっと前を向く。

「リザード、頑張って!」

若干顔色が優れないリザードだが、ふわふわと浮くドータクンを睨む。

「リザード、かえんほうしゃ!」

「ドータクン、ドわすれ!」

「ドー…………」

「! 確か、特防を上げる技……!」

穂乃果の予想通り、ドータクンは相性抜群の一撃を、多少ふらついたもののしっかり耐え切る。

「ドータクン、じんつうりき!」

ドータクンが攻撃モーションに入り、リザードは動けなくなる。

「ザ、ザード……!」

「リザード! 頑張って! 絶対大丈夫だから!」

拳を握って叫ぶ穂乃果に、

「そんな精神論……」

真姫は呆れ顔。

だが、

「ザ……__ザードッ!」

「ウソ……振り切った……?」

「よしっ! __リザード、かえんほうしゃ!」

「ザードッ!」

「ドー…………ッ!」

二度目の直撃。

「ドータクン、戦闘不能! リザードの勝ち!」

「やった! 凄いよリザー……」

不意に穂乃果の声が止まる。

「な、何? まさか……」

真姫も目の前の事態に驚く。

リザードはまばゆい光に包まれ、

「__グオォォォッ!」

「進化……。あれは__」

「リザードン……!」

穂乃果がポケモン図鑑を取り出す間に、真姫が呟く。

「運にも恵まれているワケね……。__分かったわ。やってやろうじゃない! __ハッサム!」

「ッサム!」

「虫タイプと鋼タイプ……。この相性なら!」

「甘いわね。アイアンヘッド!」

「ッサム!」

「グオッ!?」

ハッサムの強烈な頭突きがリザードンにぶつかる。ダメージこそ小さかったものの、リザードンは大きく仰け反って動けなかった。

「ひるみ!?」

「そうよ。この技には、相手を怯ませる追加効果があるんだから。さあもう一度!」

「リザードン、避けて!」

鋼鉄の頭突きをかますハッサムを、リザードンは辛うじて回避する。

「でもこのままじゃ、いくら相性が良くても……」

穂乃果は一度リザードンを戻す。

「ムクバード!」

「キュルル!」

「つばさでうつ!」

「させないわよ。アイアンヘッド!」

「ッサム!」

ムクバードの出鼻を挫く一撃が入り、

「動け……っ!」

だがそのまま動きは止まる事なく、翼を叩きつける。

「よしっ!」

思わずガッツポーズをした穂乃果。しかし、

「バレットパンチ!」

「キュルルッ!?」

高速の連撃が、ムクバードを襲う。

「そ、そんな……」

「ムクバード、戦闘不能! ハッサムの勝ち!」

「__どう? わたしのポケモンは」

そう穂乃果と同等の胸を張る真姫に、穂乃果はかなり悩む。

「ロゼリアを出しても、多分勝てない……。でも、リザードンは……」

穂乃果はしばらくモンスターボールを見つめ、

「__うん。__頑張れ、リザードン!」

「ふぅん……消耗したリザードンなのね」

「リザードン、かえんほう「アイアンヘッド!」

穂乃果の声に重ねるように、真姫の指示が飛ぶ。

「ッサム!」

「グオゥッ!?」

またしても怯み、動けないリザードン。

「どうしよう……」

穂乃果が困り果てたその時、

「グオォォォ____ッ!」

リザードンが高らかに吠えた。

「な、何!?」

「これは……もうか!」

驚いた様子の真姫の声。

「もうか!? __って……何?」

「あなたね……。自分のポケモンの特性くらい、把握しておきなさいよ……」

真姫は呆れたように額を押さえる。

「ご、ごめん……。何か、にこちゃんの時も同じ事があったような……」

「いい? もうかは、体力が少なくなると炎技の威力が上がるの。覚えておきなさい」

「分かった。もう忘れない!」

そんなアホっぽいやり取りの最中にも、リザードンは静かにハッサムを睨む。

「ま、もうかが発動するって事は、体力は残り僅か。このまま畳み掛けるわよ!」

「ッサム!」

「アイアンヘッド!」

「グオゥ…………ッ!」

直撃をもらったリザードンだが、何とか踏みとどまる。

「__頑張れ! リザードン!」

「グオォォォッ!」

咆哮一つ。リザードンは燃え盛る炎を纏い、ハッサムへと渾身の体当たりをかました。

「何なの……!?」

熱風に顔を背けた真姫は、

「__! ハッサム!」

慌てて相棒の名前を呼ぶ。

だが、

「ハッサム、戦闘不能!」

それに加えて、

「グォ……」

「リザードン、戦闘不能! よって引き分け!」

その審判の声を聞いた真姫は、ふぅ、と肩の力を抜いた。

「私の負けよ。もうポケモンいないし」

そう言って、穂乃果へと歩み寄る。

「真姫ちゃん……」

「今の技は、フレアドライブ。とても強力だけど、自分にも反動のダメージがあるから、気をつけるのよ」

「うん」

「それと……私に勝ったんだし、仕方ないからこれをあげるわ。__ウェスリードジム制覇の証、プライドバッジよ」

やや投げやりにバッジを手渡す真姫。

「あとこれ。わざマシン《アイアンヘッド》。さっきから見せたけど、相手を怯ませる事があるわよ」

バッジとわざマシンを受け取り、穂乃果は笑顔を見せる。

「ありがとう!」

「じゃ、私はこれで」

「真姫ちゃん!」

歩み去ろうとする真姫に、穂乃果は慌てて声をかける。

「私……難しい事はよく分からないけど、__でも、真姫ちゃんは一人じゃないよ」

「は、はあ? 何言って__」

真姫が怪訝な顔を見せた時、

「__ああっ! もうバトル終わってるし!」

そんな声がジムに響いた。

「あれは……にこちゃん!」

「何よもう〜……。せっかく急いで来たっていうのに……」

ため息をつきながらやって来たツインテールは、真姫の姿を見つけるやいなや、

「あれ〜? 真姫ちゃん、もしかして負けちゃったの〜?」

挑発的な態度。

「ま、にこちゃんも負けたけどね。穂乃果、アイドルバッジ持ってるし」

「うぐっ……」

それに対し真姫は、あくまでクールに返す。

「せ〜っかく真姫ちゃん応援してあげようと思ったのにぃ〜」

「なっ……別に応援して欲しいなんて言ってないでしょ!」

「あれ〜? じゃあ応援して欲しくなかったの〜?」

「そ、そんな事言ってないでしょ!」

そんなやり取りを眺めながら、穂乃果は満足げな笑みを浮かべた。

 

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