八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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恋する乙女と思った?残念!恋する乙女(おつおんな)でしたっ!





続・ゼクシィで行こう! 〜恋する乙女は夢を見る〜

 

 

 

平塚先生が謎の行動を取り始めてからはや数週間。

忘れていったのか故意なのか、よく教壇の上に私物の雑誌(ゼクシィ)が置かれているなどの奇行が目立つようになり、クラス内でも度々噂となっている。

 

「やべぇ……平塚先生そろそろ結婚すんじゃね?」「なっ!これでようやく気を遣わなくて済むようになっかもっ」

「ねぇねぇ聞いた〜?静先生、出来ちゃった婚するって噂だよ〜!?」「ウッソー!」

 

もちろん噂となっているのはクラス内なので、エブリタイムクラス外の俺は噂をしているわけではない。ただ耳に勝手に入ってくるだけだ。

 

……しかし平塚先生。俺たち以外の生徒にも普通に気を遣われてたのかよ……

静泣いちゃうから決して聞かれないようにしてっ!

 

ま、喜ばしい事なのではあるが、所詮は噂なのだろう。俺にはどうしても腑に落ちない点があるからだ。

なぜならほんの数週間前に職員室で魂の叫びを聞いたから。

あれから急に結婚話が持ち上がったとか、ましてや出来ちゃった婚など到底有り得ないんだよな〜、残念ながら。

 

「おーい、みんな席につけー」

 

一時限目の現国授業の為に、ガラリと漢らしく扉を開けて入室してきた平塚先生なのだが、教壇の上に忘れ去られた?私物の雑誌に気がついた途端に真っ赤にもじもじと教室内を見渡し、なぜか俺と目が合うとわざとらしく独り言のような小さな声で

 

「きゃっ!忘れちゃった☆」

 

とか呟いてやがった。

そんな平塚先生を、クラス中の生徒がチベットスナギツネみたいな目で見てやがる。

 

いやこれマジで単なる噂だけじゃ無いのかも知れませんね(白目)

 

 

× × ×

 

 

さらに数日過ぎて、俺はようやくGWという名の自由を手に入れた。

つっても受験生の身である俺は結局勉強に明け暮れるんだけどな。

 

とはいえたまには息抜きも必要だぁ!と、日曜の今日は朝からスーパーヒーロータイムで熱くなり、プリっプリでキュアっキュアなやつに涙して、その流れで題名の無さそうな音楽番組から流れてくる音楽をBGMに読書をしていた時だった。

 

ブブブっとスマホのバイブが鳴りだした。

液晶画面を見てから、そっとスマホを置いて見なかった事にするまでがデフォ。

いやだって、休みの日に平塚先生から掛かってきた電話に出たいヤツなんか居るわけねぇだろ。

しばらく鳴っていたが、ようやく止まった次の瞬間にはメールが到着。

いやいつ打ったのっ!?

 

恐る恐るメールを開く。嫌だ見たくないよっ!

 

 

[比企谷くんこんにちは、平塚です。麗らかな初夏の空気が心地よい大型連休をいかがお過ごしでしょうか?もしかしてまだ寝てるのかな?(笑)私は毎日早寝早起きでとても充実した休暇を過ごしておりますよ?ふふっ、先日は早起きのあまり気持ち良く散歩などしていたら、とても可愛らしい犬を連れた素敵な老夫婦とすれ違いましてね。可愛いワンちゃんですね、と声を掛けたら、とても嬉しそうにお辞儀されてしまいました(笑)あんな風にいつまでも仲良く過ごされている素敵な老夫婦を見ると、私などはすっかり和やかな気持ちになってしまいます(笑)ところで]

 

 

長げぇわ!まだ続くのん?

 

 

[せっかくの連休ですし、たまにはラーメン屋さんにでも行きませんか?ちょっと比企谷くんと久しぶりにラーメンが食べたくなってしまったもので……♪と思い先ほど何度か電話を掛けたのですが中々繋がらないので、こうしてメールをさせて頂いた次第です。……………電話、気付いてますよね?……………メール、今見てますよね?…………もうそろそろ到着しますのでよろしくおねが]

 

 

「到着しちゃうのっ!?」

 

ピンポーン……

 

うそまじで……?

え!?なに?なんかカメラとか仕掛けられて無いよね?

 

これはマズい。だが今日は幸い家に居るのは俺一人だ。小町も友達と遊びに行っている。

ここは居留守一択でしょ……

 

ピンポーン……ピンポーン………………………………ピンポピンポピンピンピンピピピピピピピピピピピンポーン……

 

やべぇよ……百烈拳なの……?

インターホンがひでぶっちゃうっ!

 

息を潜め本を読み続ける事およそ五分。

ようやく静かになったかと一息ついて本から視線を上げると、なんか目が合った。

 

「ひぃっ!?」

 

視線の先には、庭からリビングの窓を覗き込んでいる平塚先生がいらっしゃいました。

こーらっ!静ちゃん!教師の癖に不法侵入なんかしちゃダメだゾっ☆

もちろん教師以外も不法侵入ダメ!絶対!

 

目が合った途端にとてもニッコリとした平塚先生からは、今日は逃げられないのだろうなと思いました。

 

 

× × ×

 

 

「すまんな……比企谷……なんの応答も無かったから、なにかあったものかとちょっと心配になってな……なってね?」

 

玄関にて本当に申し訳なさそうに不法侵入を謝罪する先生を見て、まぁ俺も電話もメールもインターホンも無視したしな、と、ちょっと可哀想になってしまった。

だってあの平塚先生がすげぇしゅんってしてんだもん。

 

「いや、俺も読書に夢中になりすぎて電話とか全然気付かなかったんで。心配して頂いてありがとうございます」

 

嘘です全て確信犯です。

 

「そっ!そうか!しかしなにもなくて良かった良かった!」

 

と、急にぱぁっと笑顔の花が咲いた。

ホント悪い人じゃねぇんだけどなぁ、この人……

しかし休日に生徒の家に押し掛けるとかさすがに引くわ。てか怖い。

 

「よしっ!それじゃあ行くかっ」

 

嬉しそうに同行を促してくる先生だが、俺に選択権は無いんですかね無いんです。

 

仕方ないので先生に待っていてもらい、外出の準備をしてきた。

まぁラーメン食いに行くくらいならいいだろう。GWになんの予定も無くて寂しいんだろうな。

いやいや、結婚の噂とかは!?

 

しかし今日の先生は、割と丈の短めな黒の大人なワンピース姿か……せ、先生がスカートとは……無駄に美人だから困んだよなぁ。なんか脚とか引き締まっててこれまた無駄に綺麗だし。

それにラーメン食いに行くだけで、なんでそんなにお洒落なんだよ……

 

 

先生は先に運転席に乗り込むと、俺には助手席に乗り込むようにと手招きした。

指示に従い助手席のドアを開けると……

 

「…………………」

 

いやなんでだよ……

助手席には、先生の私物のゼクシィが置かれていた。

っておい!その下にはたまごクラブひよこクラブとかまであんじゃねぇかよ!!

 

え?なに?もう妊娠までしちゃってるのん?この件に触れた方がいいのん?

 

「……お、おっと、スマンスマン!つい最近の愛読書を助手席に置きっぱなしのままだったよ!」

 

言いながらゼクシィ達を後部シートへ大事そうに移動させる。

 

「あ、や、大丈夫です……」

 

イカンこれはなんか知らんが触れたら負けな気がする……

俺は黙って助手席へと腰をおろした。

 

な、なんかはにかんだ表情で触れて欲しそうに横目でチラチラ見てくるんですけどっ!

くっ……触れちゃダメだ触れちゃダメだ触れちゃダメだ触れちゃダメだ!

 

「……もうっ」

 

比企谷ったらしょうがないなぁっ!ってくらいのニュアンスで、軽くクスリと微笑んだあとやれやれと溜め息を吐く平塚先生。

僕はどうしたら正解だったんでしょうか……?

 

 

× × ×

 

 

車に乗る事どれくらいだろうか?

ほんの数分のような永遠のような時間が過ぎていき、車は目的地へと到着した。

 

「比企谷、着いたぞっ」

 

ワクワクが止まらない少年のように車を降りる先生。

あんたどんだけラーメン好きなんだよ。

 

しかしそういえば今日はいきなり無理矢理連れてこられたが、どこのラーメン屋に来たんだ?なんも聞いて無かったわ。

車から降りて本日ご厄介になるラーメン屋の店構えを見て、俺は一言洩らした。

 

「あれ?ここって」

 

「ふふっ、どうだ比企谷。懐かしいだろう?」

 

そこは、随分前に平塚先生と一緒に来たラーメン屋だった。

 

「ふふっ、以前君に紹介して貰ったラーメン屋だからな。今日はここに来たかったのだよ……来たかったの……」

 

思い出したかのような言い直しもそろそろ慣れてきてしまった今日この頃。もちろん意図は解りかねますが。

キャラの路線変更でもしようとしてるんですかね。

 

 

しかし、だったらなぜこの店なのか?確かあの時……

 

「だったらあの時に先生が今度連れてってくれるって言ってた先生のお勧めの店でも良かったんじゃないですかね……?」

 

ま、もっともそこには卒業してからとか言ってたが。

 

「ま、まぁそれもそうなんだが……ここは思い出の場所でもあるし……その……ゴニョゴニョ……も、近くにあるからな……あるしね」

 

なんの思い出ですかね。

そしてゴニョゴニョってなんだよ。

突っ込む前にそそくさと店内へと入っていく平塚先生。いやだからなんで照れ照れしてんだよ。両頬を手で押さえながら流し目でこっちを見るんじゃありません!

 

 

以前来た時は行列に並んだのだが、今日はまだ開店直後という早めの時間だからか、すんなりと店内に入れた。

二人揃って迷わずとんこつを選ぶ辺りが漢らしいよね!

 

「コナオトシで」

 

相変わらず注文の仕方が格好良すぎる女だぜ。

………そういや格好といえば、以前来た時も平塚先生はこんなような黒のワンピース……むしろドレスを着て周りの客から目立ちまくってたっけな。

あの時なんで先生と一緒に来たんだっけか?なんで先生ドレスなんて着てたんだっけね。

 

そんな不毛な考えなど吹き飛ばし、しばし戦いへと集中する。戦いに集中せずに余計な思考に気持ちを紛らわすなんてラーメンさんに失礼だからな。

 

 

熱き戦いも、やはりラーメンさんの勝利で幕を下ろし店を出る。いやー、やっぱ旨いわ!ラーメン最強説は健在だねっ!

 

「では駐車場から車を取ってくるから入り口で待っていたまえ」

 

「は?は、はぁ」

 

若干“は”のゲシュタルト崩壊を起こしかねない俺の返事にはワケがある。

だって車取ってくるもなにも、駐車場目の前なんだもん。

来た時は俺も駐車場から来たよね?

 

まぁ一応、待ってろと言われたら待っているのが世の情け。

腹も一杯だし、お言葉に甘えるとしましょうかね。

 

もちろん目の前から車を取ってくるだけだから待つこと数秒、すぐさま車が横付けされました。

平塚先生が「乗りたまえ」と目で語り掛けてるので大人しくドアを開けると……

 

「………………」

 

「おっと!スマンスマン!……愛読書を助手席に置きっぱなしにしてしまったみたいだ!愛読書をっ!」

 

あっれ〜……?さっきその私物の愛読書(ゼクシィ他)って後部シートに置きましたよね……?

 

え?やっぱ触れなきゃダメなのん?

だが断る!

 

逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ!

触れてしまったら大事な何かを失ってしまいそうなのん。

 

だから黙って座る俺を、小指の爪を噛みながら悩ましげな表情でチラチラ横目で見てくるのやめてっ!

 

「さ、さぁ、行きましょうかっ!」

 

一切先生を見なかった事にして出発を促す。それはもう必死に。

 

「……意気地なしっ……」

 

いやいや小声でボソッとなに言ってんの!?

確かに俺は自他共に認めるヘタレではあるが、この状況で意気地なしってどういうこと!?どうしたら正解なのっ!?

 

ただし正解を出してはいけないのだと強く強く感じております。まる。

 

 

× × ×

 

 

まだまだ納得がいかない様子ではあるが、先生は渋々車を発車させた。

だがなぜか逆方向に……

 

「えっと……ラーメン食い終わったし、もう帰るんじゃないんすか……?」

 

「あ、ああ。もう一ヶ所だけ寄りたい所があってね……あ、あるの……」

 

言い直しに慣れてしまった俺も、さすがに平塚先生の「あるの……」はキツい。

くっそ……俺を殺す気かよ……

 

一体どこに連れてかれるのかと思いきや、車はほんの少しだけ走るとすぐに止められた。車を降りた先に広がった光景は…………

そう、ここは以前平塚先生が黒き衣(ドレス)を身に纏い、年下の従姉に負のオーラを撒き散らしながら仄暗い呪咀を吐いていた結婚式場兼教会だった……

え?もしかしてゴニョゴニョってここなの?

 

「ふふっ、懐かしいな……」

 

先生がはにかんだ笑顔で教会を眺める。

いやアンタそんな素敵な笑顔で懐かしめるような状態じゃなかったからね?

 

「あの時はかなり参っていたのだが君に助けだされたからな。正直なかなかの運命を感じたよ。辛い教会から連れ去られるなんて、まるで往年の名作映画、『卒業』のヒロインにでもなったかのようだったよ……」

 

クスリと微笑みながら、頬を染めて優しく俺を見つめる先生。

いやアンタ花嫁どころか花嫁に怨念送ってる側だったからね?なんなら連れ去られたのは俺の方だしね!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はそこらのラノベの鈍感系主人公ではない。むしろ敏感だ。

てか敏感じゃなくても、ここまでお膳立てされれば馬鹿でも解る。

 

俺は…………どこかで致命的なミスを犯したのだろうか……?どこかで知らず知らずの内にとんでもないヘマをやらかしていたのだろうか……?

恐怖と後悔に白目を剥きかけていると先生から声が掛かる。

 

「ときに比企谷」

 

「ひひゃひゃいっ!」

 

「君は確か八月くらいが誕生日だったかね?」

 

「そ、そっすね!は、八月八日が誕生日になりますっ!」

 

な、なぜ急にそんな話に……?

 

「……………そうか。それではあと三ヶ月もすれば、ついに君も18になるのか……………………………………………ふふっ、そうか比企谷ももう18かぁ、それは楽しみだな、なぁ比企谷……?」

 

 

まるで純真な少女のように赤らんだ頬で、平塚先生はいつぞやの…………そう、クリスマスイベント辺りで奉仕部が崩壊しかけていた時に連れていかれた東京湾河口の橋の上と同じように俺の肩を優しく抱いた。

 

だがあの時と明らかに違う、まるで包み込むように……ともすれば獲物を絡めとる蜘蛛の糸のような、粘っこくまとわりつくような、もう逃げ道などないかのような抱き方で……

 

 

「はっはっは!あー、楽しみだなぁっ!…………ねっ、比企谷っ……」

 

 

もじもじと内股になりながらもバシバシと背中を叩く平塚先生を戦慄の眼差しで見ながら俺は思う……

 

 

 

 

 

 

 

 

僕、もう終わりなのん?

 

 

 

 

終わり(意味深)

 

 

 






あ、ありがとうございました……
こ、これはヒドい(汗)こんなんでも楽しんで頂けたのなら幸いです(白目)


平塚先生まで書いてしまい、気付けばヒロインアンケートのメンバーをほぼ網羅しちゃってると言うね。
さがみんも狂宴で出しましたしね。たぶん次にアンケートやっても誰にも信じて貰えないんだろうな(苦笑)

しかしこれでほぼ網羅した事により、さすがにネタ切れ感が否めませんw
1話1話に全勢力を傾けてるから二週目とか無理ですっ><


てか短編なのに28話って!
私、あまりランキングとかに興味無いので知らなかったのですが、短編カテゴリーでのランキングってあるんですね。
で、そこ見たらコレが短編累計の4位になってました……

いやいや、他の短編作者さん達が1話完結とか少ない話数で累計ランキング入って頑張ってるのに、27話も使って4位に入っちゃってるのって、これってどうなの……?って真剣に思いました(-ω-;)
でも今さら連載に変更するのもなぁ……変更しようかなぁ……でも短編集謳ってるから短編は短編だしなぁ……



とまぁ、それとは関係無くほぼヒロインを網羅した事もあり、一旦この短編集を軽く締めようかな?と。
ま、誰も信用してくれないとは思いますけど!

とりあえず今までみたいに定期的な更新ではなく、思いついた時に思いついたネタをまったり更新できたらなぁ、とか思っております!

香織とか愛ちゃんとかのオリキャラもそのうちやるかもっ☆

ではでは!また近いうちにお会いしましょう!(近いうちなのかよ)


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