八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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ご無沙汰しております。恋する乙女の恋物語集でございます!


さぁ、ついに萌え死者続出待ったなし?の真のラスボスなあの子が、満を持しての再登場ですよ?
本っ当に本っ当にお待たせしました!





ぼっち王子はぼっち姫の居城へと【前編】

 

 

 

ついに来てしまったのか……

目の前にそびえる、特になんの変哲もないごく一般的な一軒家が、今の僕には監獄に見えますよ?

いや、ここに入ったあとに監獄に連れていかれるのん?

 

他人の家にお呼ばれするのなんて、子供の頃にお情けでお誕生会に呼ばれて以来だ。

もちろん呼んでもらえたはずなのに、コイツなんで居んの?って目で見られるまでが通常営業です。

 

一応手土産は持った。服装もカジュアル過ぎず真面目過ぎずなこの感じで問題ないだろう。

そして俺は意を決してインターホンに手を伸ばした。

ピンポーンと、普段ならなんてことのない音のはずなのに、今はギロチンが落ちてきた音に聞こえるからアラ不思議。

 

 

しばらくすると玄関がガチャリと開き、可愛らしいエプロン姿で長い黒髪をシュシュでポニーテールにした可憐な少女が顔を覗かせ、俺の顔を見るなりうっすらと紅色に染まる笑顔の花が咲いた。

 

「八幡いらっしゃい。待ってたよ」

 

「お、おう」

 

俺は今日、ついに鶴見家への強制呼び出しを食らったのだ。

 

 

× × ×

 

 

「八幡。早く入って。時間勿体ないから」

 

門までとてとてお出迎えに来てくれた留美は、俺の手をぎゅっと握り玄関まで引っ張っていく。

いやだから普通に手を繋ぐの恥ずかしいからやめて貰えませんかねルミルミ。

 

しかし後ろ姿しか見えない留美を見ると耳が真っ赤になっている事から、そんなに普通ってわけではなさそうだ。ふ〜っ、一安心だぜ。

やだむしろ恥ずかしいっ!

 

「入って」

 

「おじゃましまーす……」

 

ドアをくぐって玄関に入ると、たぶんリビングがある方向からであろう、スリッパでパタパタと走ってくる音がした。

や、やべぇ……ついに遭遇しちまうのか……大丈夫?可愛い娘がこんな目をした男連れてきちゃったら、普通通報しちゃうよね?

 

「あらいらっしゃ〜い!比企谷くんね?待ってたわよ〜?ふふふっ、結構イケメンじゃない!ママ安心しちゃったぁ」

 

パタパタと現れたのは、これまたエプロン姿のとても綺麗な女性。

さすが留美の母親だな。想像以上に美人だ。

しかもイケメンとかいうお世辞はどうでもいいとして、とりあえず即通報されるような事はなさそうだ。

 

「まったくもう留美ったら!ピンポン鳴った途端にすごい勢いで飛び出してっちゃうんだから〜っ」

 

「マっ……お母さん……うるさい。余計なこと言わないで……」

 

真っ赤に俯くルミルミ。

やばいなんか可愛いんですけど。

てか俺まで赤くなっちゃうからやめてね!

にしても普段はママって呼んでんだな。やっぱこの思春期に人前でママ呼びはちょっと恥ずかしいですよねー。

由比ヶ浜は除外な方向でオナシャス。

 

「えっと……初めまして。留美……さんの、知人?の比企谷と申します」

 

「あら、こちらこそ初めましてー!知人だなんて他人行儀ねぇ。留美の母親やってます……えっとぉ、ルミママって読んでくれればいいわよ?もしくはお義母さん?」

 

いや呼べるかよ。

 

「それにしても、うふふっ!そんなに仲良さそうに手ぇ繋いじゃってー!このこのぉっ」

 

「……!?」「……!?」

ひぃっ……留美に手を引っ張られたままだったことをすっかり失念していた……

慌てて離すが時すでに遅し。なんか超によによしちゃってるんですけどこの人……

 

「い、いやいや違うんですよ?げ、玄関まで留美……さんに引っ張って来られたってだけでっ」

 

「大丈夫大丈夫!ちゃんと分かってるからっ」

 

どっち方面で分かってるんですかね。

 

「マ、お母さんもううるさいっ……ほら八幡、早く上がって……………あと留美さんとかキモいからやめて。……留美」

 

「お、おう。おじゃまします……あ、こんなもんでスミマセン。えっと……つまらないものですけど……」

 

「まぁ、わざわざこんなことしてくれなくてもいいのに〜!うふふっ、でもありがと。有り難く頂くわね、比企谷君っ。あ、八幡君の方がいいかしらっ?」

 

「……ひ、比企谷でお願いします……」

 

「ふふっ、了解よ?八幡君っ」

 

「…………」

 

僕もうダメです。出会い頭から完全にペース握られちゃってますやん。

 

 

× × ×

 

 

リビングに通された俺は、現在一人ソファーにてくつろぎ中である。くつろげるかよ。

リビングから見えるキッチンにて、鶴見母娘は昼飯の準備をしてくれているらしい。

 

そっか。だからエプロン姿でポニーテールだったのか。なんかすっげぇ可愛かったなルミルミ。

……いや、あくまでも兄的な目線でね?

ポニテでエプロンしたルミルミに「お兄ちゃん、ごはん出来たけど食べんの……?」とか冷たく言われた日にはなにかに目覚めちゃいそう!すでになんか目覚めかけてね?

 

しかし意外だったのはルミママだよな。

留美の母親だからもっと落ち着いてるクール系美女かと思ってたら、由比ヶ浜マよりもさらにフランクな感じだったな。

フランク過ぎてぼっちには引きつった笑いしか出来ないレベル。ちなみにシリアスな笑いでは無い。

 

 

あんな明るい母親なのに、なんで留美はあんなに落ち着いてるんだ?父ちゃんが落ち着いた人なんだろうか?

 

父親と言えば、今日はゴルフコンペに行ってて夜遅いらしい。

留美が連れてきたとか知られたら、どうやらマジで俺殺されちゃうらしいから、アクシデントで早く帰って来ちゃいましたー!的なお約束は是非ともやめて頂きたい。

いや別にフラグとかじゃないからね?

 

そんな不安にゾクゾクしていると留美がててっと走ってきた。

 

「八幡。ごはん出来たよ。行こ?」

 

優しげな微笑みで俺の手を引っ張る留美を、嬉しそうな笑顔でルミママが見つめてます。

だからやめてっ!ルミルミ!

 

 

「うおっ……すげぇ」

 

テーブルに着くと、そこにはなんとも旨そうな料理が並んでいた。

上に掛かったたっぷりチーズがトロットロそうなミートドリア。ソーセージと野菜がゴロゴロしているポトフ。揚げたてのフライドチキンに温玉が乗ったシーザーサラダ。

 

前に留美がお母さん料理が得意だから期待してて?とか言ってたけど、マジですげぇ旨そう。

 

「どう?お母さんのごはん美味しそうでしょ」

 

「おう、すっげぇ旨そう。……でも、留美もコレ手伝ったのか?すげぇな」

 

「……………っ!べ、別になんてことない……」

 

エプロンの裾を両手で握ってモジモジする留美が可愛すぎて、思わず頭をポンポンと撫でてしまった。

 

「いやマジですげぇって。留美はいい嫁さんになりそうだな」

 

「うぅ……八幡の……変態」

 

なんで?

 

「ほらほらぁ、いつまでもイチャついてるんじゃないわよ?冷めちゃうから早く食べましょっ?」

 

軽く洗い物をしていたルミママが、エプロンで手を拭きながらテーブルにやってきた。

ぐふっ……また恥ずかしい所を見られてしまった……

 

「それでは〜……留美が初めて彼氏を連れてきたお祝いにぃ、カンパーイ!」

 

「いや彼氏じゃないですからっ!」

 

「もー、八幡君てばそういうのいいからぁ!」

 

いやマジですって。

てかルミルミも否定しようよ!?

と留美を見ると、真っ赤に俯きながらもルミママと乾杯していた。

いやなんで!?

 

「じゃあ頂きましょー。八幡君召し上がれ〜」

 

「……八幡、食べて?」

 

「あ、や、頂き……ます」

 

なんか彼氏発言が流されちゃったまま食事が始まってしまいました。

あれ?俺ルミルミと交際スタートさせてないよね?

 

 

× × ×

 

 

端的に言うと、このご馳走はマジで美味かった。

ドリアなんかトロトロクリーミーだし、ポトフはソーセージをチョリソーに変えてたみたいでピリ辛で美味。

フライドチキンもカリッカリのジューシーでめちゃくちゃ美味いし、カリカリベーコンとカリカリクルトンに温玉をトロッと割ったシーザーサラダも、シーザードレッシングが手作りらしくて超美味い。

 

 

あまりにも美味くて、夢中で食ってる最中に留美がチラチラ俺に視線を向けてくるのもあんま気付かない程だった。

たまに目が合うとすぐ恥ずかしそうに俯いちゃうし。

 

「ごちそうさまでした。マジで美味かったです」

 

「ん〜、八幡君のお口に合って良かったわぁ!ねぇ?留美〜。ふふふっ、お粗末さまっ」

 

「お粗末さま……でした」

 

いやホント美味かった。やばいよ八幡胃袋掴まれちゃうっ!

すると留美がモジモジと上目遣いになって聞いてくる。

 

「あの……八幡」

 

「どうした?」

 

「……う、その……どれが美味しかった?」

 

「へ?どれが?……いやどれもマジで美味かったけど」

 

するとなぜか留美がぷくぅっと頬を膨らます。

え?なんか怒らすようなこと言っちゃった?

 

「だからっ……特にどれが美味しかったか聞いてんの。……ちゃんと人の話聞いてよバカはちまん」

 

はいスミマセンでした。

なんか超久しぶりのバカはちまん頂きました!

 

「いや、ホントどれも美味かったけど……そうだな。ドリアなんかすっげぇトロトロクリーミーで美味かったぞ」

 

すると、ぷくっと頬っぺだったルミルミが、一気に破顔した。それはもう嬉しそうに幸せそうに。

どれくらい嬉しそうかと言うと、ニヤニヤを誤魔化す為にリンゴみたいに真っ赤に染まった自分の頬っぺたをぐにぐにしちゃうくらいに。

うん。誤魔化せてませんね。

 

「良かったね〜!留美〜」

 

「うんっ!…………あ、べ、別になんてことないけどっ………………………えへへぇっ……ん!んん!」

 

「え?なに?ど、どうかしたんですか?」

 

するとルミママがニヤニヤと笑い、人差し指をピッと伸ばす。

 

「実はねぇ、そのドリア。八幡君の為にって、留美が一人で作ったものなのっ」

 

へ?マジで?

 

「八幡君が家に来るって決まってから、何度も何度も練習してたのよね〜、留美っ!?」

 

すると留美はものっすごい恥ずかしそうにチラッ、チラッと俺を上目遣いで見ながらぽしょぽしょと言葉を紡ぐ。

 

「前に……八幡が、サイゼのミラノ風ドリアを良く食べてるって言ってたから……八幡の好物なのかなぁ……って思って……ママ……っ……お、お母さんに教えて貰って、ずっと練習……してたのっ……」

サイゼさんごめんなさい。

留美のドリアの方が8万倍美味かったです。

 

なんかもうそんな留美が可愛すぎて、ルミママにからかわれるであろう事もはばからず、隣に座る留美の頭を優しく撫でた。

 

「ありがとなルミルミ。今まで食ったドリアの中でも圧倒的にダントツで美味かったぞ?」

 

 

すると頭を撫でられながら、気持ちよさそうにうっとりしていたルミルミは、恥ずかしそうにこう言うのだった。

 

 

「ルミルミ言わないで……キモいっ……」

 

 

 

 

続く





お久しぶりの短編集でしたがありがとうございました!

いやいやついにやってしまいましたよ、鶴見家へのお宅訪問。
ルミルミ可愛いよルミルミ(・ω・)

前にルミルミ短編書いたのが随分昔の出来事な気がしますが、待っててくれた人っていらっしゃるんでしょうかね〜?


今回のぼっち姫お宅訪問シリーズは、たぶん三話くらいになると思いますのでお付き合いよろしくです!
次回更新はまだまだ未定ですよー。



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