八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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はい。安定の中編頂きました。


そして書いてみたら想像以上に酷い事になりました。八幡が。





私の青春ラブコメはまだまだ打ち切りENDではないっ!【中編】

 

 

 

「くぅ〜っ!ウマい!」

 

私は偶然の再会の嬉しさも手伝い、酒を一気にあおった。

 

「……いやいや先生、一気飲みって……それ日本酒の飲み方じゃないですから……」

 

「ははは!まぁたまにはいいではないか。私は嬉しいのだよ。こうして君と酒が飲めるだなんてなっ」

 

「たまにはっつか、いつもそうやって飲んでそうですけどね……。まぁ俺も嬉しいですよ。いつかこうして平塚先生と酒飲みてぇなって、ずっと思ってましたから」

 

……はぁ〜、これは驚いた。あの比企谷がなぁ……

 

「こいつ、言うようになったな!お得意の捻デレはどうしたのかね」

 

「たく……いつの話してんですか。そういうのはとっくに卒業してますんで」

 

悪そうな顔でニィっと歯を見せて笑う比企谷。

ふっ……どうやら、なかなかいい人生を過ごしてきたみたいだなっ。

ならば先ほどの件を問いただしても、のらりくらりと誤魔化したりはしないだろう。

 

「ところで比企谷」

 

「なんすか?」

 

「先ほどの小むす……君の後輩の事だが、本当にアレで良かったのか?あんな素っ気ない扱いで怒らせてしまったりとかは大丈夫なのか?付き合ってるとかでは無いのかね」

 

すると比企谷はビールを一口飲むと、事もなげに答える。

 

「あー、別にそういうんじゃなくて金沢は単なる後輩ですよ。今年の新人なんですけど俺が教育係にされちゃったもんで、社内でも結構一緒に行動してる時間が長いってだけで」

 

「ほう……その割には随分と懐かれていたじゃないか。少なくともあの娘の方は特別な感情を持っていそうだったが?」

 

私は数年ぶりに会った小憎たらしい教え子に悪戯っぽく笑いかけた。

ふふ、比企谷に対してこの言い方は意地悪すぎたかな。

どうせこいつは顔を赤くして「そ、そんなんじゃ無いっすよ!」とか言うの…

 

「まぁ否定はしませんけどね」

 

な、なん……だと……!?

 

「昔から小町に調教されてきたんで、どうやら俺はああいうタイプに好かれちまうみたいなんですよね」

 

こいつホントにあの比企谷か!?

好意も持たれていることをあっさりと認めたぞっ……

 

「ほ、ほう……い、意外だな……君がそういうのをなんの抵抗もなく肯定するとはなぁ……」

 

「……へ?……ああ、だからさっきも言ったじゃないですか。もうそういうのは卒業したんですって。いつまでも高二病患って、なんでもかんでも勘違いとか言って誤魔化してるような歳でもないんで」

 

そんな事を言って苦笑しながらビールをあおる比企谷は……なんというか、大人だっ……

くっ、な、なんだこの気持ちは……捻くれていた教え子の成長は嬉しいはずなのに、なんというか……物悲しさを感じるというか……なんか、置いてきぼり感?

 

はぁっ!な、なぜ私が置いてきぼり感を感じねばならんのだっ!

 

「そ、そうか。君も随分と成長したもんだな」

 

「成長というかなんというか……でもまぁ、俺の勝手で一方的な考え方で、せっかく俺なんかを想ってくれる相手の気持ちをそんなもの勘違いだと否定しちまうのも、あんまりにも失礼かな、と……いつからかそんな風に考えるようにもなりましたね」

 

遠く見るかのように、まだ半分ほどビールの入ったジョッキを見つめて微笑む教え子。

見つめているのは残ったビールなのか、それとも遠い記憶なのか……

 

「……ふっ。君は本当にいい成長をしたようだな。ではもう昔のように、自分の気持ちを誤魔化して逃げたりせずに、今後は彼女の気持ちと真正面から向き合うつもりかね?」

 

……確かに、与り知らない所での問題児の成長は正直少しだけ悲しくはあるかも知れない。

だが、私は敢えて喜ぼう!いい男になった君の成長をっ……!

 

「いや、金沢とは今でもちゃんと向き合ってますよ?」

 

「……へ?だがしかし付き合ったりしているわけでは無いのだろう?」

 

……ま、まさか付き合う段階などとっくに卒業して、け、結婚しているなどとぬかすつもりでは無いだろうなぁ……!?

 

「ちゃんと真正面から向き合った上で……」

 

するとすっかりといい成長を遂げたと思っていた我が教え子は、途端にどんよりと目を曇らせ、ばつが悪そうに頭をガシガシと掻く。

 

「……全力で逃げてます」

 

「…………は?」

 

いやいや君はなにを言っているんだね……

そんな真剣な顔で逃げてると言われても……

 

比企谷は、「今回の飲みはちょっとした賭けに負けたから約束として仕方なく来ざるをえなくなった」と前置きした上で、

 

「……そもそも金沢みたいな普通のリア充と俺が釣り合うわけないじゃないすか……気持ちはもちろん嬉しいんですけど、ああいうのと付き合うとか俺には荷が重すぎるでしょ。ただでさえ他にも厄介ごと抱えてるんで、あいつと付き合うとか無理ですね。めんどくさいし。なのでちゃんと向き合った上で全力で逃げてる最中です」

 

……こ、こいつは真面目な顔して何を言っとるんだ……これじゃあ……

 

「……結局君は大して変わっとらんではないか!……まったく!せっかく君の成長に乾杯しようかと思ったというのに……」

 

呆れ果てて頭を押さえていると、その時初めて、比企谷はニヤァっと昔と変わらぬ腐った笑顔を見せた。

 

「人間、そんなに簡単に変われるもんじゃないっすよ。そんなに簡単に変われるようなら、そんなもの自分じゃ無いじゃないっすか」

 

「ふ、ふはははっ!まったく、やはり君はどうしようもない奴のままだな!まぁそうでなくては比企谷では無いといえるまであるなっ。よしっもう一杯いくか!…………乾杯っ」

 

 

どうやら今夜はいい酒が飲めそうだ……!

 

 

× × ×

 

 

しばらく近況などを肴に飲んでいたのだが、先ほど比企谷がふと洩らした言葉を思い出した。

 

「ところで比企谷」

 

「なんすか?」

 

「先ほど言っていた厄介ごととはなにかね?なにか問題でも抱えているのか?」

 

可愛い元教え子がなにか困っていることでもあるのならば、聞かないわけにはいくまい。

もっとも言い辛いような事ならば聞きはしないがな。

 

「あ、あー……まぁ大したことじゃないんですけどね」

 

そう言うと比企谷は苦笑いをする。

 

「えーと……まぁ他にも言い寄られている件があるといいますかなんといいますか……」

 

「な、なんだとぉ!?きっ、君はいつの間にそんなにモテ男になったというのかね!?」

 

なんということだっ!実に羨ま……けしからんっ!!

私を差し置いて、あの比企谷がより取り見取りとはなんと嘆かわしいことかっ……

 

「あ、や、いつの間にというかなんというか……まぁ平塚先生が居なくなった辺りからなんですけど……てか、じゃあそれ以前からなのか……」

 

「……ほう……ではなにかね……?私の知っている人物という事か……」

 

「いや恐いよ。なんでそんなに攻撃的なんだよこの人……」

 

成る程……それならば何人かは宛てがあるな。

というか、あれからずっと言い寄られているという事なのか……?

クソがっ……!

 

「……ああ、そう言えば先ほどの小娘の時にもぬかしてたな。ああいうタイプに好かれるとかなんとか…………なるほど一色か。いや、それとも由比ヶ浜だったりするのか?……まさか雪ノ下!?」

 

くそうっ!さすがに声には出さんが、リア充爆発すればいいのに……

 

「…………っす……」

 

「あぁ?聞こえんぞ」

 

「……全員っす……」

 

「リア充爆発しろぉぉぉ!!」

 

「うおぉっ!?」

 

こぉのスケコマシがぁ!!

なにが全力で逃げてる、ニィ……っだ貴様ぁぁっ……!

私にも幸せを寄越せぇ!

 

私はプルプルと震える拳をギュッと握り締めて冷静沈着に対応する。大人だものな。

 

「……ま、まぁ冗談はさておき……」

 

「冗談では無いだろ……」

「……一体どんな状況でそうなっているというんだね……」

 

「え、えーとですねぇ……」

 

比企谷は頭を抱えながら語りだした。

今夜は酒が不味くなりそうだ……

 

 

× × ×

 

 

「……俺はそんな事になってるとは全然知らなかったんですが……いや、正確には目を背けていただけなんですが、…………卒業式の後に……雪ノ下と由比ヶ浜から告られたんですよ」

 

「ほう……」

 

「まぁ当時は絶賛高二病を患ってたんで勿論逃げました。それでもあいつらは、逃げた情けない俺をちゃんと容してくれて、応える事が出来なかった俺と、その後もとてもいい友人関係を続けてくれていたんです」

 

あの二人ならそうなんだろう。

比企谷のようなどうしようもない男に惚れ込んだ時点で、比企谷のそういう所も受け入れる覚悟は出来ていたのだろうな。

 

「あいつらとは、別々の大学でもちょくちょくと会っては、こんな風に飲んだり遊んだりして、いい大学生活を送ってたんですよ。俺にしてはとてもいい毎日を過ごしてましたね。まぁもちろん大学ではぼっちでしたけども」

 

「君はそこだけはブレないな」

 

いまでは憎むべきリア充だがな。

 

「で、まぁそんな悪くない毎日を過ごしてた時に、不意にあいつが目の前に現われましてですね……」

 

「……あいつ?……一色か……?」

 

「そうっすね。高校の頃にはそんなそぶり見せなかった癖に、なんとあいつ、大学にまで俺を追い掛けてきたんですよ……大して勉強得意じゃなかったはずなのに、残りの高校生活を全部勉強に費やして」

 

苦笑しながらそう言う比企谷ではあるが……ふっ、嬉しそうな感情が表情に滲み出ているぞっ。

 

しかしそこから比企谷は一気にドヨッとした表情へと変化した。

 

「……それからなんですよ……一色の猛烈なアタックが開始されたかと思ったら、今度はそれを知った雪ノ下と由比ヶ浜までが再燃しちゃいまして……」

 

「…………」

 

「結局その関係のまま今に至るって感じですかね……もちろん四人で会って飲んだりもしてんすけど、最初はいいんだけど次第にギスギスしだしちゃったりして、最終的には結局俺が罵倒されるんすよ……飲み屋の個室で土下座ですよ?いやまぁ俺がいつまでもはっきり出来ないのが悪いんですけどね……」

 

「そ、そうか……」

 

「あと、特に一色なんかは、社会人になって俺が一人暮らし始めた辺りから、かなりの頻度でメシ作りにとか掃除しにきてくれたりしますしね。悪いからもういいと断る度になぜか俺が振られるとか意味分からんでしょ……たぶん明日も来ますし……」

 

な、なんというか……

 

「で、その押し掛けがバレる度に、また雪ノ下達に呼び出しですからね……」

 

「き、君はそれで誰かを選ぼうとかは思わないのかね……?」

 

ここまでいくとこの状況を楽しんでるんじゃないのかコイツは?

 

「正直……ここまでくるともうどうすればいいのか分かんないんですよね……恐いし。あと恐い。あいつら、なぜか熱い友情を発揮していきなり結託したりしますしね……」

 

楽しんでるとかそういうのは一切無かった。

いや、まぁ四人で居られること事態は楽しんでいるのかも知れんが。そしてそれは彼女たちもそうなのかも知れんな。

 

「……そういや先生は留美って覚えてます?」

 

「留美…………あの千葉村とクリスマスの時の小学生か!?」

 

「そいつです。こないだ留美の成人式があって、なぜか俺が会場に付き合わされましてね……?」

 

せ、成人式!?

ぐはっ!?……も、もうそんなになるのかっ……

というかこの男、一色たちだけでは無いのか!

なぜコイツがあの時の小学生と未だに付き合いがあるのかとかはもう知らん!

 

「式が終わったあと、成人のお祝いしてくれって言って、どうしても家に来たいっつうから、なんか家に来たんですよ」

 

もう修羅場一直線の未来しか見えん……

 

「家でお祝いしてたらあいつらが乗り込んできて詰みました……留美なんてマジで妹みたいなもんだし、留美だって俺の事は兄貴くらいにしか見てないっつうのに……でもそれ言ったら今度は留美まで交ざって罵倒してくる始末で……」

 

 

コイツ本気で言ってんのか!?

全然分かっとらんではないか!

 

 

なんということだろうか……

あれだけ捻くれていて可愛げの無かった可愛い教え子が、数年経ったらとんだハーレム王になっていようとは……

 

 

 

 

続く

 







ありがとうございました!

八幡ファンの皆様、ならびにゆきのん、ガハマ、いろはすファンの皆様もゴメンなさい。
なんかみんなダメな大人になっちゃいました(白目)

あとサービスでちゃんとルミルミも出しときましたよwww


今回はほぼ八幡のダメな大人ストーリーになりましたが、次回の後編こそは平塚先生のお話です(^ω^)




ちなみにこの成人ルミルミを交えての八幡の修羅場世界線を八幡視点等で読みたいとかいう、けしからんリクエストは一切お受け出来かねますのでよろしくです♪(笑)



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