スミマセン><
活動報告には書いたんですけど、ちょっと執筆出来る時間があんまり無かったんで、締めだというのに更新が遅くなっちゃいました(汗)
これでも、ちょっとずつ時間作って少〜しずつ書いていって、思ってたよりも早く書けたんですよ?
てなわけで、サキサキ編ラストでっす!どうぞ
▼ ▼ ▼
「……で?どこ行くんだ?」
「……あ、えっと……」
ららぽを出た俺達は南船橋から西船橋へと移動し、駅前から乗ったバスに揺られていた。
「なんかここら辺で花見で調べたらさ、行田公園が良いって書いてあったんだよね」
「ああ、行田公園か」
「最初っから買い物を千葉にしとけは、駅から近いとこに千葉公園があったっぽいんだけど、最初にららぽで買い物って決めちゃってたから、ここら辺で探してみたんだ」
「……そうか」
……下調べばっちりじゃねぇかよ。
俺が多少驚きの目で見ると、その視線に気付いた川崎はハッとしたかと思ったら、途端に顔を染め上げてあたふたと言い訳を始めた。
「べっ!別にたまたまだからたまたま!ちょ、ちょっと携帯弄ってたら、たまたま花見情報が出てきただけだからっ……」
おいおい、たまたまがゲシュタルト崩壊起こし掛けてるぞ。
てか、たまたま弁当持ってきただのたまたまレジャーシート持ってきただのたまたま花見スポット調べといただの、どんだけ楽しみにしてたんですかねこの子。
あ、アレか。いざ家族で花見に行く際の予行演習的なやつか。
あっぶね。危うく勘違……って、コレはもういいか。
川崎にどういう意図があるかなんて俺にはさっぱり見当が付かないが、二人で買い物に行くと決めていた今日この日にわざわざ弁当用意してくれてたり、わざわざ場所調べたりしてくれてたんだ。少なくとも、今日という日を楽しみにしていたことは疑いようがない。
それなのにいちいち茶化すのなんて無粋ってものだろう。いや、茶化すって言っても脳内オンリーな話なわけだが。
川崎にどんな意図があるにせよ、今日に限っては俺も単純に花見を楽しんでみよう。そうでもなきゃ、ここまで楽しみにしてたヤツに失礼だよな。
恥ずかしいからあまり認めたくはないが、こいつと二人の買い物ってのも、なかなか悪く無かったし。
そんならしくもない思考を巡らせている俺と、必死に言い訳したあとは静かに俯いたままの川崎を乗せて、バスは目的地へとひた走る。
ほどなくして到着したバスを降りて広い公園に足を踏み入れると、そこには数百本にも及ぶ桜が、儚くも美しく咲き誇っていた。
× × ×
「……綺麗」
「!? お、おう、そうだな」
勘弁してくれよ……調子狂っちまうじゃねぇかよ……
咲き誇る桜に、そっと感嘆の声を上げて見つめる川崎の眼差し、横顔は、まるで乙女そのものって感じだ。
普段のこいつからは全く想像出来ないそんな表情に、俺は思わずドキリとしてしまった。
「なに?……どうかした」
しかしそんな乙女な眼差しも次の瞬間にはジャックナイフに早変わり。
もう気持ちが落ち着くところがないですよ。
「いや、なんでもない。うし、腹減ったし早く場所決めて食おうぜ」
「そ、そうだね……」
ん?なんかこいつまた緊張してね?
二人で居る事には随分慣れたつもりだったんだが、ここにきて急に緊張されちゃうと、俺にも感染っちゃうからやめてね。
「じゃ、じゃああっち行ってみっか」
「……うん」
平日とはいえ、春休み中で花見シーズンの公園はかなり賑わっていた。
子供を連れた母親グループや、カップル・友達同士で来ている連中。
そんな賑わう花見客の間に見つけたスペースに川崎から受け取ったレジャーシートを広げ、俺達は腰掛けた。
「ちょうど桜の下が空いてて良かったね」
「だな。すげーいい眺めだもんな」
そう。本当にいい眺めだ。
雲一つない澄み渡った青と、美しく咲き誇るピンク、そして辺り一面に広がる芝生の緑のグラデーション。
そして目の前に視線を向けると、ミニ丈ワンピースのまっさらな白から覗く黒レースのグラデーション。
やめて!俺、ずっと上を向いてないといけなくなっちゃう!首が疲れちゃうからその黒のレースを隠して!
なんつーの?これは女の子座りって言っちゃっていいの?正座を片方に崩したような座り方されちゃうと、正面に座ってるとマジ丸見えなんすよ。
てかやっぱ黒レースなのね。この子って見た目の印象(ヤンキー)と違って中身はとんでもなく純情乙女なのに、なんでこんなに黒レース大好きなんでしょ。
でも川崎が白とか履いてたらやっぱ似合わないか。いや、それはそれでめちゃくちゃそそるゲフンゲフン。
しかしこれはマジでいかん。俺が一人で楽しむ分には構わないんだが構わないのかよ。川崎は見た目はかなりの美人さんなのだ。
周りの目を引くくらいに美人な川崎が、黒い布をこんなに丸出しにしてたら、周りのけだもの共に見られちゃうかもしれん。
それは決して許されん。こんな素晴らしい桃源郷は俺の記憶の中だけに留めておきたい。
やだっ、俺ってば独占欲が強い彼氏みたい!
とまぁ冗談はさておき、周りの男共から見せ物になっちゃうってのは単純に可哀想だし、このままもうちょっと見ていたい願望をなんとか押さえ付けて、俺は意を決して川崎に話し掛けた。
「えーとだな……川崎」
「なに?」
……あれ?これどうやって伝えたらいいのん?
なんかさっき、すげーいい眺めとか言っちゃってなかったっけ俺。
いい眺め→パンツとか、まるっきり変態になっちゃわないですかね?
でもまぁあれだ。これが雪ノ下とか由比ヶ浜、あまつさえ一色ともなるとそれはもう大変な事態に陥りそうだが、川崎なら大丈夫な気がする。
前に見ちゃったことあるし、そんときも冷めた態度で「……バカじゃないの?」とかで済んだはずだし、今回もそんな感じで済む可能性大……だよね?
さよなら俺の黒い桃源郷。また会おうぜ!
「その、なんつーか……ま、前を隠してくれるとありがたいんだが……」
「……は?前?あんたなに言って、ん…………の…………」
最初訝しげな視線を寄越してきた川崎だが、見ないようにそっぽ向きながらも結局チラチラ見ちゃってる手癖の悪い俺の視線と、自分のむき出しの生足の奥を交互に見比べて、ようやく事態に気付いたようでカァッと赤くなった。
「〜〜〜っ!?」
ガバァッと両手でスカートの裾を押さえたかと思うと、茹でダコみたいな赤い顔と潤々の涙目で睨み付けてきた。
「……ぅぅ……ばか」
なにそれ可愛い。
触れる者みな傷つける切れ味鋭いジャックナイフなはずなのに、プルプルと涙目で睨み付けてくる川崎の目と「ばか」はとっても可愛かったです。まる。
× × ×
あー……腹減ったなぁ……
でもあれから暫く経つけど、肝心の弁当を持ってきてくれてるサキサキはずっとプルプルしっぱなしだしなぁ……
なんか「もうお嫁に行けない……」とか「パ、パンツくらいなら別になんてことないっ……」とか「やっぱこんな慣れないの着てくんじゃ無かった……」とかブツブツ呟いてるし。
まぁさっきららぽでもこんな状態から見事に復活したし、しばらくしたら復活すんだろ。
空腹を誤魔化すべく、目蓋の裏にしっかりと焼き付けた、今はもうハンカチで隠されてしまった桃源郷に思いを馳せていると、「んん!ん!」と咳払いが聞こえてきた。
「……じゃ、じゃあそろそろお昼にしようか」
おお!ようやくのサキサキ覚醒か。お昼とは言っても、そろそろ夕方なんですけどね。
チラリと川崎を見てみると、先ほどのららぽと同じように、無かったことにしてくれって空気を纏いながら鞄をごそごそしていた。
「そ、そうだな。……なんつーか、ご馳走様でした」
「は、はぁ?今から食べんのに、なんでご馳走様なわけ?」
あ、今更つい心の声が……
いやホントに美味でございました。
「えと……は、はいコレ」
「あ、ああ……さんきゅ」
あれ?なんかこいつまた緊張……って、あ。
場所取りからのサキパンですっかり忘れてたが、そういやこいつ、公園に入った辺りからまた緊張し始めてたっけか。
弁当渡してくれようとしてる手が若干震えてるし、緊張の原因はこの弁当にあるんだろうか?
弁当を受け取って早速蓋を開けようとした時、川崎が慌てて声をかけてきた。
「あっ!……あのさっ……」
「お、おおおう」
急にそんなに迫ってこないでください。ビクッとしてどもっちゃうじゃないですか。
「そ、その……た、大したもんじゃないから……」
「へ?あ、ああ」
ん?どうしたんだ?こいつ。
慌ててなに言いだすのかと思ったら、大したもんじゃないなんて一言を告げて、不安げにもじもじしてやがる。
別に大したもんじゃなくたって、わざわざ作ってきてくれた弁当にケチをつけるなんて事しないっつうのに。中身が木炭とか桃入りカレーとかでなければ。
こいつは由比ヶ浜と違って料理出来るはずだし、そんな破滅的な代物なんて入っているわけがない。
なにをそんなに不安がってんだか。
しかしその時、ふと俺の頭の中に、いつぞやの奉仕部部室での、今と同じように不安げにもじもじしている川崎の光景が頭をよぎった。
まさか……
そして弁当の蓋を開けた俺は、なぜ川崎がこんなにももじもじしているのかを理解するのだった。
うわぁ……地味……
× × ×
川崎から受け取った弁当は、おおよそ女子高生が作ったとは思えないほどの地味さだった。
なんつーか……茶色?
いなり寿司にサワラの西京焼きに切り干し大根等々。
唯一とも言える彩りが筑前煮に入った人参の赤色と言うのも、また郷愁をそそる。
そして…………ああ、里芋の煮っころがしか。
お袋の味と言うよりは、もうお婆ちゃん味ってレベルの地味さの弁当をまじまじ見ていると、川崎が気まずそうに謝ってきた。
「……なんか、地味で悪いね……あたしさ、基本地味なものしか作れなくってさ。せっかくの花見だし、少しは見栄えのいいのに挑戦しようかとも思ったんだけど…………そ、その……せっかく作るんなら、得意料理にしたいな、と……ホントごめん」
いやいやちょっと待て。
アホかこいつ。なんでわざわざ作ってきてくれたってのに、地味なこと程度で謝られなくちゃなんねぇんだよ。
確かに地味は地味だが、めちゃくちゃ有り難いっての。
それに……地味と思われようともあえて得意料理を選んだってことは、その、なんつうか……一番美味いものを俺に食わせようと思ってくれたからだろ?
だから俺は川崎の不必要な謝罪なんか無視して、いただきますと一言お断わりを入れてから煮っころがしを口に運んだ。
「……うめっ……」
マジで美味い……
シンプルな里芋だけの煮っころがしなのに、本当に美味い。
煮崩れないくらいの絶妙な柔らかさに炊き上げられた里芋は、出汁・砂糖・みりん・醤油がしっかりと中まで染み込んでいて、丁寧な下処理をした上に、一度きちんと冷まして味を馴染ませたんだろうなって事が窺える。もしかしたら前日の晩から準備してたのかも知れない。
愛情のたっぷりこもった極上の家庭の味。得意料理だと挙げるだけの事はあるわ。
だから、俺は不安げに上目遣いで見つめてくる目の前の少女に、この気持ちをきちんと伝えてやんなきゃならない。
ふ、普段だったら恥ずかしくて絶対に言わないんだからね!
「川崎、マジでうめぇわ」
すると心配そうに暗い顔をしていた川崎は、パァッと笑顔の花を咲かせた。
「……そ、そっか。良かった」
「おう。こんな美味い煮っころがし食ったことねぇわ。これならいくらでも食える」
愛情込めて作ってくれたにもかかわらず、不安げだった川崎を安心させてやりたいという思いと、本当に美味いと感じたことを伝えたいという思いが重なりあって、俺らしくもなく素直に絶賛してしまった。
すると今度はその素直な感想に、川崎は逆に居心地悪そうにもじもじしてしまう。
「……あ、あんたちょっと褒めすぎだっつうの……たかだか里芋くらいでさぁ……」
「いやだってマジで美味いし」
「〜〜〜っ…………マジで芋くらいでバカじゃないのっ……」
なぜだか罵倒されました。
俯いてしまった川崎。だが、僅かに見える口元が上に歪んでしまわないようにプルプルしてるのが見えた。
耳まで真っ赤にしてるし、これは褒められて喜んでるってことでいいんだよね?
この子はホント素直じゃないですね。それ俺が言っちゃうのん?
「でもさ……」
「あん?」
「あ、や、褒めてくれたことはホント嬉しいんだけどさ…………やっぱ、地味だよね……完成した弁当見たら我ながらビックリしちゃってさ……彩りとかそういうの、全然無いじゃん?……これでも一応女子高生だってのに……なんだかなって思っちゃって」
……つい今しがたまでニヤつきを抑えようとしてたのに、そんなことを言いながら徐々に沈んでいってるのが分かった。
いつかの部室でも得意料理を言いにくそうにしてたくらいだし、やはりこいつなりに気にしてるんだろう。
ったくよ……んなこと気にすんなっつの。
だってさ、
「別に、マジですげぇ美味いんだから、そんなことどうでも良くねぇか?」
「……比企谷………わっ」
「うおっ!」
その時、突然強い春風が辺りを駆け抜け、花見客達のコンビニ袋やらゴミやらが宙を舞った。
客達がキャーキャーわーわー笑いながら、飛ばされた自分の荷物を拾いに走る中、その突然の春風によって、辺りは一面桜色に染まっていた。そして手元の弁当に視線を向けた俺は、思わず口角が上がってしまった。
「……それに……ホレ」
「なに?」
「まぁ確かに地味っちゃ地味だが、足りない彩りならこいつらが勝手に華やかにしてくれんだろ……知らんけど」
春風に美しく舞い踊る桜吹雪の悪戯で、地味な里芋の煮っころがしには、数枚の桜の花びらが彩りを添えていた。
× × ×
花見を終えた俺達は、無言で帰路についていた。
てか、弁当の時の彩り発言から、川崎がまったく目を合わせなくなった。
なに?やっぱあの発言って恥ずかしかったの?俺も言っちゃった後にどうかと思ったんだよね。
だって川崎さん、俺がああ言ったのをぽかんと惚けた顔して見つめてたかと思ったら、ハッとなってまた湯気が出そうなほどに赤くなって俯いちゃったんだもん。
『なにこいつ自分に酔ってんの?超恥ずかしいセリフ言っちゃってんだけどーwキザなぼっちとかwww』とか思っちゃったのかな?ハチマンマダナカナイ。
くっそう!やっぱ花見なんて来なきゃよかったよぅ!
早く俺に布団を頂戴!一刻も早く包まりたいよぅ!
内心一人でそう悶えていると、いつの間にやら地元の駅まで到着していた。ちょっと意識飛びすぎじゃないですかね。
俺と川崎は地元は一緒なのだが、中学が違うだけあって学区が違う。つまりは駅から家までが逆方向なのだ。
ということでここでお別れだ。ようやくこの恥辱地獄から解放されるのか……
いや、一人になってからの方がより一層自覚しちゃうんだよね、黒歴史って。
来るべき夜のベッドタイムに内心悶え苦しんでいる俺のことなどお構いなしに、ようやく川崎が口を開いた。
「あ、あのさ、比企谷……」
「お、おう」
なんすかね。トドメなの?追い打ちかけられちゃうんですかね。
「も、もうすぐ新学期じゃん……?で、さ……も、もしまた同じクラスになったら……あたし、あ、あんたの弁当作ってきてあげようか……っ?」
「……へ?」
「あ!いや!べ、別に他意は無くって!……やっぱあたしもう少し料理上手くなりたいっていうか……す、少しは地味から脱却したいじゃん!?……だ、だからさ!あ、あんたが見たり食べたりして協力してくれると助かるっつうか……ど、どう!?」
「お、おう」
「マジで!?……っしゃ!!じゃ、じゃあ約束ね!」
「……おう」
「じゃあねっ……」
言うが早いか、川崎はバッと顔を逸らして立ち去っていく。
……あんなに必死に迫られたらノーなんて言えないし、そんなに嬉しそうな顔されたら訂正できないだろうが……
つうか約束って……まだクラスが一緒になるとは限らないだろ……
「あ」
逃げるように立ち去ろうとしていた川崎が、なにかを思い出したかのように声をあげると振り返った。
「それと、けーちゃんの入学祝いの日も、家に来んの楽しみにしてるからさ。そん時もあたしが料理作るから、また美味しいって言ってくれたら……まぁ……嬉しい……かも、知んない」
そう桜色にはにかんだ川崎は、ご自慢のポニーテールを愉しげにゆらゆら揺らし、今度こそ家路についたのだった。
はぁ……参った。
どうしてくれんだよさーちゃん。そんな笑顔見せられちまったら、さすがの俺でも勘違いせざるをえないだろ……
ま、あくまでもクラスがまた一緒になっちまったらの話だ。
あんまり細かい事は、もしも、もしもクラスが一緒になっちまってから考えればいいよな。
「くぁっ……うし、帰るか」
ぐぅっと伸びをして空を仰いだ視界に広がったのは、美しく咲き誇る桜の花と美しく舞い散る花びら。
顔先をヒラヒラと横切っていく桜の花びらを目で追いながら、ふと考えることは一つだけ。
──ああ、また美味い里芋の煮っころがし食いてぇなぁ……
了
ありがとうございました!
やー、丸々サキサキは初めてでしたが、お楽しみいただけましたでしょうか!?
今までなかなか書きませんでしたが、サキサキって、可愛いですね☆
そして、けーちゃんの入学祝いまでやっても良かったんですけど、けーちゃんが出て来た瞬間にさーちゃんSSじゃなくてけーちゃんSSになっちゃうんで、今回はやめときますねー(笑)
まぁ、もしもいずれ気が向いたらけーちゃんSSとして書くかも(^皿^)?
それではまたお会いしましょう!
追伸……
作者は元千葉県民ですが、当時は柏らへんに住んでたので千葉や船橋には行った事がありません!
だって柏さえあれば、他に何も要らなかったんですもの。
なので、今話で出て来た花見スポット等々の情報はググって調べた程度の知識です><;
このSSを読んで下さった読者さまの中で、もしも千葉や船橋らへんにお住まいの方で「おいおい、こんなん全然ちげーよ」とお思いの方がいらっしゃいましたらスミマセン(汗)