中編……だと……?
スミマセン……細かく描写してたらなんだか長くなっちゃいましたっ……
シーに詳しい方も行った事ない方も、ルミルミとの疑似デートをお楽しみくださいませっ!
「うわー……すごい……」
ウォータースフィアという地球儀の噴水のあるエントランスからイタリアの街並みを模した土産物店街のあるメインストリートへと入り、そこを抜けると一気に視界に広がるその景色に留美が感嘆の声をあげた。
眼前にそびえる火山と、その火山を囲むように広がる海に、俺も思わず目を奪われた。
こんな作り物の狭い海ごとき、いつも海沿いを通学している千葉県民を舐めるなよ!
……とかって思っていたのだが、地中海の名を冠するらしい、このメディテレニアンポートとやらの景色は、目の前の火山、周りのイタリアの街並みと相まって、とても千葉……いや日本とは思えないこの風景はあまりにも異国情緒漂い非日常的であり、作り物と分かっていてさえ心踊らずにはいられなかった。
ルミルミは初めてのそんな景色に大興奮のご様子で、もっと近くに行きたのだろう、ぴょんぴょんと駆け出す。
「ねぇねぇ!八幡っ!あの火山、プロメテス火山っていってね!?一日に何度か噴火するんだって!で、ちょうど噴火してる時にベネチアゴンドラに乗ってると幸せになれるんだってっ!後で一緒に乗ろ!?」
「ねぇねぇ!八幡っ!あっちに見える要塞みたいになってる所と海賊船みたいな所、中を探検できるらしいよっ!?後で一緒に探検しよっ!」
「あっ!八幡っ!今火山の所からジェットコースター落ちてきたよっ!あれってセンターオブジマウンテンっていって、超楽しいらしいよっ!あれも絶対乗りたいっ!」
入り口ですでにこのはしゃぎようである。
なんか事前に色々と調べてきてるみたいだし、よっぽど楽しみにしてたんだな。
こういう留美を見てると、普段の年不相応に落ち着いた姿は本当の留美じゃないんだな……と嫌でも気付かされる。
こんなふうに12歳くらいの女の子らしい自然な振る舞いをしている留美は、本当に可愛らしい普通の少女だった。
いつもこうしてりゃ、友達なんかに困るような子じゃねえんだけどな……なんかもったいねえなぁ……
おっと!いかんいかん!せっかく留美がこんなに楽しんでんだ。
一人で勝手にしんみりしてないで俺も楽しまないとな。
なんだか小さい頃の小町を遊びに連れてってやった時の事を思い出し、つい留美のはしゃぎまくる幸せな光景に頬を緩ませていると、俺の視線に気付いた留美がはっとなり真っ赤に俯いた。
「……なに見てんの……?八幡キモい……」
どうやら普段と違う自分のはしゃぐ姿を見られていた事が恥ずかしかったらしい。
ったく……気にしないで自然にはしゃいでりゃいいのによ。
× × ×
「八幡。私今日絶対に行きたいとこがあるんだっ!」
少しだけ落ち着いたようだが、それでも興奮を隠しきれない様子で嬉しそうに話し掛けてきた。
「そうか。もうこの際どこにでも付き合うぞ」
「うんっ」
どうやら留美が行きたい所というのは、このエリアの隣のアメリカンアクアフロントというエリアにあるらしい。
とりあえずそちらに向けて歩きだしたのだが、留美が急に爆弾を投下してきやがった。
「すごいねっ!ランドも好きだけど、シーの方が綺麗で好きかも!……八幡もシーって初めてだよね?」
ぐおっ!……ま、まぁいずれその質問は来るんだろうなとは思っていたのだが。
なんかこういう事言うの照れくせえんだよな……
「……いや、今日で二回目……だな」
すると留美はピタリと立ち止まると、急に声のトーンが落ちた。
「……初めてじゃないの?……八幡のくせに誰かと一緒にきたの?」
「おう、ちょっとな……」
「…………あっ!そっか。八幡て仲の良さそうな妹居たもんね。妹と来たんでしょ」
「い、いやー……小町じゃなくてだな……えっと由比ヶ浜、って覚えてるだろ?あのちょっとバカそうな、頭に団子乗ってるやつ……」
「………………二人で?」
あ、あれ〜……?
「お、おう。ちょっとした成り行きでな……」
「……………へー。八幡って、ああいうのが好みなんだ」
なんか留美さん激おこモードです……
ぷくーっと膨らんだ頬っぺと半目になった表情をこちらに向けもせず、横目で睨んでます……
「いやいや、別に好みだとかそういうんじゃなくてだな、去年の文化祭でちょっと奢ってもらっちゃった代わりに、一回行ってみっか!って話になってたんだ」
正直あん時はお互いに妙に緊張しちまって全然楽しめなかったんだよなぁ……
いや、まぁ楽しかったっちゃ楽しかったんだが、なんかすげえ探り探りだったんですものっ!
あれだったら、それこそハニトーを奢り返すくらいの方が良かったかもしれん……
ちょっとプロぼっちの俺には背伸びだったな、アレは……
「………………へー」
うわー……留美さん超不機嫌ですよ……
しっかし、このぷくっと膨らんだ頬っぺといい拗ねた感じといい、普段よく部室で目にするのとはマジ別もんだな。
なんつうか超可愛い。
あざとい後輩と違って、どちらかといえば戸塚とかめぐり先輩的なほわっとした気分になるようなぷくっと頬っぺ。
下手したらそれ以上?
ああ、そうか!アレだ……
まだポイント制を導入する前の小さかった小町を相手にしてるかのような、そんな気分だ。
つい本気でゲームやって負かしちゃった後の「もう小町お兄ちゃんとなんかやんないもんっ!」って涙目で怒ってた時と同じような、そんな感覚。
いや、そりゃ今だって小町はめちゃくちゃ可愛くて仕方ないんだが、やっぱあの頃とは別ものの可愛さなんだよなぁ……
と、こんな風に心の中ではルミルミ可愛い可愛い言っててもさすがに本人に言えるワケもなく不機嫌モードは継続中。そんなん言ったら確実にキモがられちゃうっ!
まぁ留美的には、私だって行く友達なんか居なくて今日初めて来たのに、なんで八幡ごときが友達と二人で来てんの!?キモい!……ってな所なのだろう。
あれ?自分で勝手に留美の思考を想像しただけなのになんだか涙出てきた☆
まぁ別にガハマさんは友達じゃねぇけどな。
と、激おこルミルミはもう俺をほっといて、とっとと目的地へと向かう模様なので、あんまり刺激すると余計にぷんぷんしちゃうだろうから黙ってついてく事にしよう。
ってか、ついてくもなにもゲートに入ってからずっと手は繋ぎっぱなしですからね?ついてくと言うよりは連れてかれるって感じですかね。
こんなに不機嫌なのに手は離さないんですね!ルミルミ。
しばらく黙って歩いていると堪り兼ねたのか、留美がこちらも見ずに急に喋りだした。
「……八幡。その一回だけ……なんだよね……?」
え!?急に?
「……お、おう。あれだけだな……」
「……………許すのは、一回だけだからね……っ!」
やったー!ルミルミに許してもらえるっ☆
…………なにが?
一回だけ?留美より先に友達と遊びに行っちゃうのが?いや友達じゃねぇけど。
良く分からんが、これはまた深く追及しちゃったら怒りだすパターンだろうか?
なんかせっかく機嫌直りそうだし、ここは言う通りにしといた方がいいか。
「分かった。了解した。一回だけだ」
すると留美はようやく俺に顔を向けた。
いや、まだ膨れっ面だし目だけはそっぽ向きっぱなしだけどね。
「じゃあ今回だけ許したげる。やくそく」
「お、おう。約束だ」
「…………ん」
ふぅ……まだ口は尖んがってるものの、どうやら許してもらえたようだ。
ふぇぇ……小さい女の子って難しいよぅ……
大きい女の子も全然分かんないけどねっ!
一番分かりやすいのが大きすぎる独神と言うね……ゲフンゲフン
× × ×
激おこルミルミに引っ張られるように連れられていたら、気付けば街並みはイタリアから古き良きアメリカの街並みに。
二回目とはいえやっぱすげえな……マジでこの一瞬で違う国、違う時代に来ちゃった気分だぜ……
いやホント千葉の誇りでしょ、この夢の国!
頭に東京って入ってる所は気にしたほうが負けな。
東京とは違うのだよ東京とはっ!
古き良きアメリカの街並みを抜けると、今度は目の前にタワーオブキラーという巨大なタワーがそびえ、さらにその近くには豪華客船までもが停泊している。
いやまじ夢の国はアメリカンドリーム!ここだけでいくら掛かってんの?
夢の国なのにこんなん見ちゃうとこぼれ出るのは夢の無い話ばかり……
「すっごーい……八幡!この建物フリーフォールなんだって!後で乗ろっ!……わ〜……あっちのおっきい船はレストランになってるんだって!すっごーい……」
ああ……俺にもこんな風に純粋な頃あったのかな……
なんかルミルミの心からの感動に心洗われました。
さらに橋を渡り進んでいくと、ようやく留美の目的地があるようだ。
そこはケープゴットという、アメリカ田舎街の小さな漁村をイメージして作られたエリアのようだ。
その漁村を進んでいくとひときわ混んでいる店舗があった。
どうやらあそこが留美の目的の場所らしい。
店内に入ると熊、クマ、くま!
なんかもうもふっとした熊まみれっ!
ちょっと猫みたいのもあるが、基本は熊だな。
そういやさっきから、老若男女がこんなような熊のぬいぐるみを抱えて歩いてたな。
ふと隣の留美を見ると、すっげえ目をキラキラさせてる。
「八幡!ここはねっ?シーにしか売ってないダッフルくんとシェル・メイちゃんっていうテディベアのお店なのっ!」
もうはしゃぐ姿を見られるのなんて気にしないくらいの大はしゃぎ。うわーっうわーっと目を輝かせては、あっちこっちと走りまくる。
手を繋ぎっぱなしなもんだから、俺もあっちこっちと走らされまくり。
「ホントはこっちまで来なくてもエントランス近くとか途中のお店でも買えるみたいなんだけど、やっぱりこっちがメインのお店らしくって、どうしても来たかったんだ……!」
……ホントに普通の女の子なんだな、こいつは。
なんだかこんな留美を見れて嬉しくなってきちまったよ。
すると留美はそのぬいぐるみを品定めしながら語りだした。
「……前にね、親戚のおばさんがおみやげだよってダッフルくんを買ってきてくれたの……今も私の部屋に居るんだけどね、友達居なくて一人ぼっちなの……今までは私もぼっちだったからそれでも良かったんだけど、……最近私がぼっちじゃなくなっちゃったからさ、ダッフルくんにも友達あげたいな……って。……だからシーに来たら、絶対メイちゃん買おうって思ってたんだ……!」
そういう留美はとても優しい笑顔でぬいぐるみを選ぶ。
今も部屋で一人ぼっちの友達に、最高の相棒を選んであげようとしているのだろう。
「……そうか」
「……うん……。でもダッフルくんは男の子でメイちゃんは女の子だから、友達というよりは恋人って感じなんだけどね。……まぁだから私と一緒で丁度いいかな……」
…………え?なんだって?
なんかとんでもない発言しませんでしたかね、ルミルミさん。
よし。取り敢えず落ち着こう!聞き間違えのハズだしなっ!
あたりを見渡して見ると、その熊のグッズが所狭しと溢れかえっている。
雪ノ下には申し訳ないが、パンさんグッズよりもよっぽど力が入れられていそうだ。
今ルミルミが吟味しているのと同じ形のちっちゃいぬいぐるみの付いたキーホルダーみたいなのやストラップなんかもあるんだな。
売れると見るやこの力の入れよう。マジでドリームは商魂逞しいぜ。
そうこうしてる内に、留美の選別が済んだようだ。
まぁ選別と言っても念で殴り付けて兵士にする訳ではなさそうだが。
「うん……!この子に決めたっ!」
バトル前のポケモントレーナーのような決めゼリフで、むふ〜っと満足した様子でひとつのぬいぐるみを抱える留美。
そして俺は留美からそのぬいぐるみをヒョイっと奪い取る。
「ちょっ……八幡なにすんの!?」
「買ってくっからちっと待ってろ」
「……はぁ?別に私は八幡にそういうの求めてない」
「いいから外のベンチにでも座って待ってろ。子供はそういう遠慮とかすんじゃねーの!」
「ばか八幡っ!子供扱いしないでっ!ばかっ!知らないっ」
むくれて外に出て行っちまった……
いやそれにしてもバカバカ連呼しすぎじゃないですかね……中学生の女の子にこの仕打ち……さすがの八幡でも泣いちゃうよ?
× × ×
ぬいぐるみを購入し、外に出るとむくれっツラの留美がベンチに座っていた。
「ほれ」
ぬいぐるみを渡そうとしたが留美は受け取らない。
ふーんっ!て感じでそっぽを向いたままだ。
「……いらない。私は八幡に買って欲しくて連れてきたわけじゃないから。なんかそういう女きらいだし」
ホントにしっかりした子だな……思わず笑っちまいそうになるわ。
でもここで笑ったら完璧に激おこになっちゃうから笑わんけどね☆
「そう言わずに貰ってやってくれよ。俺はホントに留美に感謝してんだよ」
そう。俺は留美に返したくても返せないほどに感謝しまくっている。
相模の件だけではない。
千葉村での俺のどうしようもない失策で救えなかった留美が、自分の力でこんなに元気にこんなに笑顔なってくれている事に、他でもない俺自身が救われているのだ。
「それに留美の中学進学祝もあげられてないしな。それにあれだ、友達が出来たお祝いとかも全部含めたらこれじゃ足んねぇくらいなんだし、せめてもの俺からのプレゼントっつう事で……なっ」
すると留美はむくれたままだが俺の手からぬいぐるみを奪いとると、顔を半分うずめてギュッと抱きしめた。
「ばかはちまん……じゃあしょーがないから貰ってあげる……」
そうは言いながらも、半分だけ見えてる顔からのぞく瞳はとても嬉しそうにしてくれてるから、一応正解って事でいい……のかね。
こんな女の子の態度を見ちまうと、また俺の溢れ出るお兄ちゃんスキルが発動しちゃうぜ!
俺はそっと頭を撫でて、この素直になれないお姫様に感謝の意を伝えた。
「そっか。貰ってくれてありがとな」
すると留美はより一層ぬいぐるみに顔をうずめてギュッと抱きしめると、真っ赤になりながらもいつものこいつらしく、一言の悪態と一言の感謝の気持ちを伝え返してくれるのだった。
「だから子供扱いしないでっ!ばか八幡っ…………でも……ありがと……。大切にする……」
続く
やばいですね……ルミルミ可愛いですね……
ルミルミデートお楽しみ頂けましたでしょうか!?
今回は無駄にシーの描写を多くして長くなってしまったので、次回はシーはあっさり終わらせて帰り道メインで(笑)
次回で留美編は終わらせますねー!
といってもその次はまだ何も考えてませんが><
それでは今度こそ!今度こそ後編になりますので、ルミルミファンの皆様はのんびりとお待ちくださいませ♪