八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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中編からハテナが消えたよ!やったねたえちゃん!




恋愛ラノベよりも甘い香りのショコラをあなたに【中編】

 

 

『比企谷先輩っ! どうぞ、これ先輩の為に一生懸命作りましたっ』

 

『マジか? あんがとな家堀。すげー美味そうだわ』

 

『ホントですかぁ? 超嬉しい!』

 

『ばっか当たり前だろ? じゃあ頂くとするか。出来れば家堀にあーんてしてもらいたいんだが』

 

『えー? もう比企谷先輩ってばしょうがないな〜! えへへ、ちょっと恥ずいですねっ……! あ、あーん』

 

『あーん。……むぐむぐ……おお、マジで美味ぇ!』

 

『やった♪ だって先輩に喜んで欲しくて、あるものをた〜っぷり入れちゃいましたもんっ』

 

『え? こんなに美味いチョコケーキに、一体なにがそんなに入ってるって言うんだー!?』

 

『えっへへ〜、なんだと思いますかぁ?』

 

『分っかんねー、教えてくれよ〜』

 

『さぁて、なんですかねー? ふふふ、じゃあクイズです! 正解したら、チョコと一緒に私も食べちゃってもいいですよぉ?』

 

『なん……だと……? よぅし、じゃあ全身全霊を込めて答えちゃうぞ〜!?』

 

『やだぁ、比企谷先輩ってばギラギラしすぎですよぅ!』

 

『フッ、据え膳食わぬはなんとやらと言うしな。知らんけど』

 

『もう! 先輩のえっち! えへへ、それでは答えをどうぞ!』

 

『正解は……』

 

 

 

 ピンポーン。

 

 

 

 

『越後製菓!』

 

 

 

「…………いやなんでだよ……そこは愛情とかじゃねぇのかよ…………ふがっ……って、ハッ!?」

 

 

 ……なんだ夢か。てかもうあーんのくだり辺りから夢オチ丸出しじゃねーか。

 

「……ひ、ひでぇ……なんつぅ夢なのよ……恋する女子高生の夢じゃねぇよ……」

 

 にしても、ぐぅ……ね、眠い……

 

 

 ケーキを作り終えた私は、翌日に向けてさて寝るかとベッドに潜り込みはしたものの、あれやこれやと色んな妄想が捗ってしまって結局なかなか寝付けなかったのだ。もちろん妄想の中で私と比企谷先輩はR……じゅるっ。

 

 

 おまけにそれで大興奮して冴えてしまった頭が“明日なに着てこう!?” なんて考え始めちゃった結果……

 

「うっわ……」

 

 頭をガシガシと掻きながら部屋を見渡すと、そこは強盗でも押し入ったんじゃないかってほどに散乱してる。

 

 やっぱ私らしい格好で行くべきかな!? いやさ偶には気合い入れて生足ミニスカで悩殺しちゃう!? ……などと、クローゼットからキャビネットからありとあらゆる服を出しまくっては一人ファッションショーを朝方まで執り行っちゃったのだ。

 その結果、途中で力尽きて今に至る。

 

 ……や、やっぱ深夜テンションてのはヤバいのね……と、普段は整頓された部屋の惨憺たる有様を、寝呆けまなこな引きつった苦い顔でぼーっと眺めつつ、徐々に覚醒していく我が頭。

 そしてそんな惨状を目の当たりにしてようやくレム睡眠状態から完全に解き放たれた脳が即座に思い浮かべた重大な事柄……

 

「……やっべ、いま何時!?」

 

 床にぺたんと女の子座りしてベッドに添い寝していた体(お見舞いイベントにありがちなアレね。好きな男の子の看病中に「あ、わたし寝ちゃったんだ……」的な体勢☆)をガバァっと起こして机の上の目覚ましを見る。

 

「……げ」

 

 現在時刻はもう十一時過ぎ……マジかよぉ!? いつ小町ちゃんから連絡くるか分かんないから、今日は早めに起きて色々と用意しとこうと思ってたのにぃ!

 まだ決めてない服決めてメイクするだけで、どんだけ時間掛かると思ってんだ私のあほぉぉ!

 

 てかそもそも小町ちゃんからすでに連絡とか来てないよね!? これですでに比企谷先輩が家出たあとで、どこかで待ちぼうけさせちゃうみたいな展開だったら最悪っしょ! まじっべー!

 貴重な時間を割いてわざわざ出てきてもらうんだよ!?

 

 

 慌てて手に取ったスマホを見ると、そこには…………照れくさそうな比企谷先輩と幸せそうな私のラブラブツーショット待ち受けがっ……じゃねぇよ。ほっこりにんまりうへへってる場合じゃねぇわ。

 

「よ、良かったぁ……」

 

 とりあえずはセ〜〜〜フっ……! まだ連絡きて無かったぁ……!

 

「……って安心してる場合じゃなかった……」

 

 一瞬だけ緩みかけた気持ちも、鏡に映った酷い有様な自分を見て一発で引き締まる。

 前ボタンが全部はずれて軽くお胸がチラリズムしちゃってる乱れたパジャマ姿な上、さらに芸術が爆発してボンバヘッになってる頭の私。うう……乙女ェ!

 

 こ、こんな乙女のカケラが一切見られない酷い有様な私を、これから急いで最上級な私にまで仕上げなきゃならんのか……っ! 人生ハードモードやでぇ……

 でもホントいつ連絡くるか分かんないから急がなきゃ。

 

 うし! ムーンプリズムパワーでちゃちゃっとメイクアップしちゃうぞー!

 

 と意気込み掛けた刹那、廊下に響き渡るとたとたという足音とママンの声。

 

 

「香織ー、お客さまよー」

 

 

 ほえ?

 

 

× × ×

 

 

 さっきの夢の中での一幕。

 

 正解は? ピンポーン。越後製菓!

 

 ……って、夢かと思ってたらあのピンポーンは解答ボタンの音じゃなくて家のチャイムの音だったのか……だから英樹が夢に出てきちゃったのね……

 

 

 それにしても……お客さま……?

 

 客とは招かれた人、訪れた人のことである。

 ちなみに今日の私の予定は比企谷先輩と会ってチョコ渡してイチャコラする予定しか入ってないから(イチャコラ出来るとは言ってない)、招かれたという前者は当て嵌まらない。だって誰も招いてないもん。

 つまりは後者、訪れた人ということになる。

 

 

 そこで問題である。……えっと、誰?

 

 私は友達と遊ぶ際には事前に予定を立てておくタイプなのだ。前日までになんの予定も立ててないし当日もなんの連絡もないのに、いきなり誰かがウチに遊びに来るなんて、小学生時代以来とんと無い。

 

 だってほら、女の子って遊ぶにあたっては色々と大変なんですのよ? つい今しがたまであれこれ考えてた服装やらメイクやらだけにはとどまらず、果てはムダ毛処……げふんげふん、げっふんげっふーん!

 

 ……や、やっだー! 可愛い女の子には頭髪以外に毛なんて生えてこないんだよっ? 腕とか脛とかあんなトコとかショリショリなんてするわけないじゃな〜い! デリケートゾーンは女だけの秘密の花園なんだからねっ♪

 

 うおっほん! 閑話休題だゾ☆

 

 

 とまぁ女の子はある程度の多感な年頃になると、磯野野球しようぜー! なんて、休日になんの連絡も無しにいきなり家まで押し掛けるのは、よほどのサプライズイベントでもなければマナー違反なのである。都合だって悪いかも知れないんだし。

 まずは先方が心の準備をしておける為に、先にお伺いを立てておくのが紳士淑女の基本よ?

 男子諸君! いきなり彼女の家に行って「わー、来てくれたんだー、嬉しー」とか言われて鼻の下のばさないようにね! 『んだよコイツいきなり来んじゃねーよ……いきなり来られても困るっつの……こっちにも色々と準備あんだよ……マジでどこまでもデリカシー無ぇなぁこの男……そろそろ潮時かもねー』とか思われてる危険性だってあるんだぜ? (偏見)

 ……あ、元カレ……じゃなかった、友達の延長線上だったアレね。とにかくアレもいきなり来たりしたこともあったなぁ……ぶっちゃけ勘弁してよって感じでしたよ、ええ。

 

 

 

 てなわけで考える。約束なんてしてない上になんの連絡も来てない現状、紗弥加たちって可能性は高くはないかな。

 ……あ、無神経な襟沢なら微レ存。あいつちょくちょく遊びに来んのよね〜……。なんなら仲間内で一番来てるまである。

 ……まぁ今のところ一応事前に連絡は入れてきてるけども、いずれ『帰ってきたら襟沢がマイルームで煎餅食ってくつろいでました♪』なんて事態が起きそうでわりと怖い。

 

 

 

 

 ────しかし、そこで私はあるひとつの危険な可能性を思い浮かべてしまった。

 ま、まさかヤツが!……ヤツが今日という日を嗅ぎつけて来やがったんじゃっ……!

 

 

 ひ、ひぃぃぃぃぃぃ! それはヤバいよ! 死んじゃうよ!

 今日の予定なんて白状しようものなら即処刑。白状しなかったら一日拘束。

 いやんもう詰んでるじゃなーい!

 

 

 ち、ちちち違うのよいろは! 今日はそういうんじゃないからぁぁ……!

 ふ、不適切かもしんないけど違法性は無いんですぅ! こ、ここは厳しい第三者の目で調査をぉぉ!!

 

 居留守居留守! ここは居留守一択でしょう!

 って母がすでに応対しちゃってる以上それは無理な相談ですよね(白目)

 戦々恐々ぷるぷる震えていると、ガチャリと無遠慮にドアが開かれた。

 お、お母たまノックを……

 

「ちょっと香織〜? あんたまさかまだ寝てんの〜?」

 

 そう言ってドアを開けたお母さんは…………えぇぇえ……な、なんでそんなにによによしてんのぉ……?

 なんか変態みたいな目をしたママンが、ニヤつく口元を片手で押さえてますよ? あらまぁいやだわぁ! って井戸端会議してるおばちゃんな感じ。

 

「なに、ちゃんと起きてるんなら返事くらいしなさい? せっかくだからもう連れて来ちゃったわよぉ?」

 

「……は?」

 

 ち、ちょっとママンなに勝手なことしてくれちゃってんの!? ま、まだ心の準備ってヤツがさぁ!

 

 

 そんな娘の魂の叫びなど知ったこっちゃないお母さんは、寝癖で爆発した髪やはだけたパジャマ姿な私のみっともない姿も部屋の惨状もちゃんと見もしないで、ゆっくりとゆっくりとドアを開いていく。

 

 そしてほとんどドアが開いた辺りで、ようやく娘のあられもない姿を認識した母は冷や汗をかいて一言。

 

「……あ……」

 

 ……あ、じゃねぇよお母様。

 

「ちょ、ちょっと連れてくるの早かったかしらぁ……?」

 

 そう言いながらもすでに止めること叶わず、慣性の法則により惰性で開いていくドアの隙間から覗いたとある人物。

 

「!? ……す、すまんっ」

 

 その人物は私のあられもない姿と散らかった部屋を視界におさめた直後、真っ赤な顔をぷいと逸らす。

 理解が追い付かずに完全に固まっている私に出来る事といえば、まるでスローモーションのように逸らされていく愛しの横顔を、ただゆっくりと見送ることのみ……

 

「ご、ごめんね香織ー……あんたゆうべあれだけ楽しみにしてたから、まさかこんな時間までそんなだらしない格好してるなんて思わなかったのよー……てへっ」

 

 年甲斐もなく頭をコツンとして、ぱたんと静かにドアを閉める母。

 私はしばし閉じられたドアをぼーっと見つめながらも、次第にこの状況の整理を勝手に遂行していく人間の脳の優秀な仕事っぷりにいたく感心しつつ、深く深く息を吸いこむのだった。

 

 

 

 

「……っいぃぃぃぃやぁあぁあぁあぁあぁぁぁぁっっっ!」

 

 

 

 

 全力で叫びました。なんていうか超シャウト。

 嗚呼、今日お父さんゴルフで良かったな……

 嗚呼、こんなに叫んだのって、いつぞやの表参道以来だな……(遠い目)

 

 

 

 …………ななななんでぇ!? なんで比企谷先輩が家に居んのぉ!?

 ひいぃやぁぁぁ! 酷い有様見られちったよぉぉぅ!

 だ、大丈夫! ボタン全開とはいえ、ちゃんと隠すトコは隠れてるから、具までは見られていないはず! 具ってなんだよ。

 ぷるぷるプリンの上にちょこんと乗ったさくらんぼ的なヤツですね分かります。

 

 そんなことよりも(そんなことじゃないけども!)寝起きノーメイクやら爆発した頭やら部屋の惨状やらを全て見られてしまったよあたしゃ。

 ち、散らかしまくってる下着まで見られてないよね!? よだれのあととか付いてないよね!?

 ……ふぇぇ……もうお嫁に行けないよぅ……! 責任取ってよぅ……!

 

 

 

 ────なんということでしょう。

 偶然出会った本屋さんから始まり、あのカフェやディスティニーシー、アキバ竹下表参道とたくさん秘密の逢瀬を重ねてきた私達だけど、どうやらそんな二人の最終決戦場は……まさかの香織ちゃんのお部屋♪になりそうです……

 

 

 

 

 

 

 色々とやりたい事もやらなきゃいけない事もあるけれど、と、とりあえずまずはブラを! ブラを着けさせてぇぇっ!

 

 

 

続く

 




今回もありがとうございました!
実は今回ラストまでが前回の中編?で済むはずだったんですよね〜(苦笑)


ついに舞台は香織のお部屋へ☆
香織の恋は無事に成就するのか!?

てなわけで、次回後編でお会いいたしましょう(^^)/



あ、先に言っておきますが、この部屋にいろはすが乱入して血みどろのパーティーとかにはなったりしません(笑)


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