今までさがみんや折本、いわゆる原作読者の嫌われ者を色々書いてきましたが、この子は人気なんてびた一文無いさがみんと違って、人気もある代わりにとても嫌われてもいますよね……
相対的に見たら、下手したらさがみんよりも嫌いな人の数は多いのかもしんない(汗)
*さがみん→好き1・嫌い1000
に対して
*今回ヒロイン→好き10000・嫌い1100
みたいな?
てかたぶん、嫌いの濃度が濃い気がする……
だがしかし!もちろん私は好きですよ?好きだから書くんです。書きたいから書くんです。
なので「なんでこいつ書くの?嫌いだから早く終わらせろよ」的な意見は知りません☆
ではではどうぞ!
窓の外、日の暮れた寒々しい景色を眺めながらはぁと嘆息し、ひとり昇降口へと足を進める。
海浜総合とのクリスマスイベントをなんとか無事にやり過ごした俺たちは、すでに冬休みに入っている事によりほとんど人気の無い学校に、イベントで使用した備品などを片付ける為に一旦戻ってきていた。
片付け作業も終わり部室でのんびりとお茶をしたあと、部室の鍵を返しにいく雪ノ下たちと別れ、ひとり昇降口へと向かう道すがら、窓の外の寒々しい景色を眺めつつ溜め息を吐いていたというわけだ。
「あー、疲れた……」
それにしても、よくあの意識高い連中と一緒に、無事イベントを成し遂げられたもんだ。いや、無事ではないな、主に俺の心労が。
ま、なんにせよ、あいつらが手伝ってくれたからこその成功……だよな。
あの時、あいつらに頼って良かった……。とんでもない黒歴史を創っちゃったけど(白目)
あいつらと言えば……正直ちょっと意外だった。
学校に戻ってきてからの部室での一休みで、俺はてっきり「今日クリスマスどうしよっか? せっかくだし、みんなでぱーっとやろうよ!」とかって言われるもんかと思っていたから。アホの子に。
まぁこれからと言われても、俺にはうちの可愛い天使にパーティーバーレルをお届けするお役目があるから、もちろん断るつもりではあったが。
だがそれならそれで「じゃあ明日やろう!」という提案が出されていてもなんら不思議ではないのに、結局クリスマスパーティー等の話はついぞ持ち上がる事はなかった。
あれかな? 奉仕部は男子チームと女子チームに分かれてパーリーピーポーするのかな? ゆきのんとガハマさんの女子チームは、今からか、もしくは明日にでもゆきのん宅でパーリーピーポー?
じゃあ男子チームも明日はパーリーピーポーしなくっちゃ!
やだ、男子チームにはひとりしか居なかった! ひとりなのにピープル! 八幡泣いちゃだめ!
……と、こんな風にクリスマスパーティーとかに誘われるもんかと思ってたとか、秘かに期待しちゃってた自分がこの上なく気持ち悪い。
はぁ……これだから嫌なんだよ。こういう思考はとっくに卒業したかと思ってたんだけどなぁ。
さっきの思いがけないプレゼント(湯飲み)で、俺はまた無駄に期待してしまっていたというのだろうか。
……なんかウィンウィンなシナジー疲れのところに、また余計なシンキング疲れがアディションされてしまったなと、さらに深く息を吐きつつ駐輪場まで辿り着いた時だった。
後ろから、まるで仔犬が走り寄ってくるかのような、ぱたぱたという元気な足音が近づいてきた。
駄目だ、これはマズい。達観したつもりになっていながらも、所詮はしがない高校生でしかない俺は、この元気な足音にまたさらなる期待を抱いてしまう。どうかこの足音が、俺の想像している人物ではありませんように……
「ヒッキーーーっ!」
だがしかし、そんな願いは叶う事はない。
なぜなら今はもう冬休みの夕暮れどき。校舎には、俺たち奉仕部以外にはほとんど人気などないのだから。
× × ×
「……どうかしたのか? なんか忘れもん?」
元気に走ってきた仔犬、もとい由比ヶ浜が、膝に手を当てはぁはぁと息を切らせているのを少しのあいだ見守っていた俺は、呼吸が落ち着いてきたのを見計らってそう声をかけた。
決して期待などしないように、飄々と、淡々と……
「はぁ、はぁ……、ふぅ〜。……う、うんっ。……そ、その……大したことじゃないんだけど……」
息が整い、ようやく顔を上げた由比ヶ浜の顔は、熟れた林檎のように紅く染まっていた。こんなにも息を切らせてまで走ってきたのだから、そりゃ顔くらい赤くなるだろう。
それ位の事は誰にだって分かる。そう、特に意味はない。
「……て、てか雪ノ下はどうした? 一緒に鍵返しに行ったんじゃねーの?」
分かってはいるのだが、それでもなぜか俺は動揺して、余計な質問で時間を稼いでしまう。
結局のところ恐いのだ。恐くて仕方ないのだ。期待してアテが外れて落胆するまでの時間を先のばしにしたいだけ。
「あー、うん……あ、あはは、ちょっと忘れ物しちゃったからって、職員室に行っててもらったんだー」
そう言って気まずそうに笑って頬を掻く由比ヶ浜。
「……なんだよ忘れ物って。忘れ物あるんなら、部室なり教室なりに行くんじゃねーの?」
「え、あ、うん……わ、忘れ物ってのは、そのぉ……ヒ、ヒッキーに言うことがあったのに、まだ言ってなかったってゆー忘れ物……なの。……クリスマスの事、で……」
「……そ、そうか。……で、なんだ?」
なんでこんなにもじもじあわあわしてるのかは皆目見当が付かないが、どうやらこれは自分を誤魔化す必要がないくらいに予想が……期待が当たってしまっているようだ。
なんだよ、俺ちょっと嬉しくなっちゃってんじゃん。ホントダッセェなぁ……
であるならば、次にくるであろう由比ヶ浜からの言葉に返す言葉は決まっている。
そして満を持して由比ヶ浜が口を開く。その瑞々しく可憐な唇を弱々しく震わせて。
「……あ、明日さ、……そのっ……あ、遊びに、行かない……?」
「悪いが今からケンタ寄って小町にチキン届けてやらなきゃなんないから無理」
「即答だ!? しかもそれって今日の話だし!」
……ん? 今日の話? なにいってるのこの子。だから今日の話してんじゃねぇの?
あ、迷いなく返答しちゃったけど、そういや由比ヶ浜“明日”って言ったわ。
「おう、すまん。てっきりこれからみんなで遊ぶだのなんだのという提案かと思って、用意しといた返答そのまま返しちゃったわ」
「どっちにしろ断わる気まんまんだっ!?」
由比ヶ浜は激しくツッコんだあと、むーっと頬を膨らませる。
おう……このひと月弱でちょくちょく見かけるようになった、どっかの養殖フグとは大違いな天然物だぜ。
「むー……ヒッキーまじムカつく! せっかく追い掛けてきたのに取り付くヒマもないんだもんっ」
「暇じゃなくて島な」
「島!? え、なんで? どっか冒険とか行くの!?」
ホントこの子、なんでウチに入れたんだろう。一応総武って県内有数の進学校なんですけど。
「まぁ待て、確かに今日は断わる気満々ではあったが、別に明日の提案も断わるとは言ってはいない」
「島は流された!?」
……このままだとお前が恐い部長様に島に流されんぞ。来年受験生なんだから、少しだけでも勉強しような。
そんな俺の親心など露知らず、由比ヶ浜はまたももじもじしはじめた。
「えと……じゃ、じゃあ……明日、なら……いいの?」
ぶっちゃけ、まだ勝手な期待の段階でも、明日と言われればやぶさかではないとは思っていた。
しかしこうももじもじと遠慮がちに訊ねられると、どうにも居心地が悪い。
「……まぁ、その……なんつーか」
明日なら別にいいぞ、の簡単な解が口から出しづらいんだよ……そんなに不安そうに大きな瞳を潤まされると……
「……あれ、だろ? クリスマスってか、今回の件の打ち上げも兼ねて……とか、なんだろ……?」
「っ! ……う、うん、まぁ……そんなとこ」
「じゃあまぁ、別に構わないっちゃ、構わない……」
「マジで!? えへへ〜」
バッカお前、この程度の事でそんな嬉しそうな顔して尻尾ぶんぶんすんなよ。勘違いしちまうだろが……
「あ、あれか? 明日は三人でどっかでチキンとケーキでも食うのか? なんなら戸塚も呼ぶか」
そうだねそうしよう。戸塚と一緒にクリスマス過ごせるとか、キリストの誕生日を祝うどころか俺が昇天しちゃうかもしれんけど。
「や、やー……その、明日はー……ふ、二人で遊ばない……?」
「……?」
……は? なんか聞き間違えたかな。
二人ってどういうことだってばよ。え、なに? クリスマスに俺と由比ヶ浜の二人で出掛けるって事?
いやいやいや無理無理。
「……すまん言ってる意味がよく分かんねぇんだけど……その……そ、そう! あれだ! ゆ、雪ノ下はどうした雪ノ下は。打ち上げ兼ねてんだろ……?」
「そのっ……! ゆ、ゆきのん明日無理なんだって! ……で、でね? これからゆきのんちで二人で女子会するんだけど、」
なんだよやっぱり二人でパーリーピーポーかよ。俺聞いてないんですけど。
「だからヒッキー仲間外れで可哀想じゃん!? ……だ、だから……明日は二人でとか…………ダメ、かな?」
マジかよ……
別に二人で女子会すんのは全然構わないんだが、だからといって、なんで明日俺と二人で遊びに行くって話になんだよ……
「……いや、しかしだな」
こいつはそれでいいのかよ。クリスマスに男女二人で外出とか……
俺にはよく分からんが、そういうのって、女の子にとってはとても大事なことなんじゃねぇの……?
「だって……! ヒッキーまだハニトーの約束果たしてくれてなじゃん……? こーゆートキでもないとヒッキー絶対出て来てくんないし……」
……それを言われると弱い。なにせあの無責任な発言の言質を取られてしまっている上に、つい最近も夢の国でそんな話をしてしまったのだから。
「……ダメ……?」
ぐぅっ……! このすがる仔犬のような眼差しは破壊力が凄すぎる……
こんなのに抗えるヤツいんのかよ? いや、そんなヤツ居るはずがない。ちなみに抗うのが無理なソースは雪ノ下。
「……ま、クリスマスじゃなくて打ち上げだし、な……。今回はお前らに世話になっちまったから、まぁ仕方ねぇか」
そう。これはあくまでも打ち上げ。たまたま合同イベントの翌日がクリスマスだったというだけで、そこに深い意味などないのだ。
「むぅ、ホントヒッキーって捻くれてるよね。……でも、えへへ、ありがと!」
意味などないと分かってはいるが、由比ヶ浜のこの幸せいっぱいな笑顔を見てしまうとどうにもむず痒く、ついついそっぽを向いてしまう。
にしても、まさか由比ヶ浜と二人でクリスマスにどっか行く事になってしまうとは……
明日、俺のメンタルは耐えられるのだろうか?
「あー、んで明日はどこ行く予定なんだ? パセラでハニトーとかか? もちろんサイゼでもいいぞ。むしろ推奨」
「……えと、ね」
由比ヶ浜はもじもじと答えを言い掛けて、何かを思い出したかのように突然「あぁっ!」と叫び声を上げた。
「やばい! あたしゆきのん待たせたままだった! どうしよう超怒られちゃうよ!」
マジかよそりゃマズいだろ。凍てつく波動で凍らされちゃうだろうが、なぜか俺が。
「あたしもう行くね! ヒッキー、また明日!」
「お、おう」
そう言って慌ててぱたぱた駆け出す由比ヶ浜。その姿、ご主人様へと全速力で走っていくわんちゃんの如し。
あれ、まだ明日の予定なんも聞いてないんだけど。あとでメールとかしてくるのかな?
すると、ある程度距離が開いたところで由比ヶ浜はくるりと振り返り、口に両手を当てて大声でこう叫ぶのだ。
「ヒッキーっ! あーしーたー、9時に舞浜の改札の前でまってるからねーーーっ!」
「は?」
由比ヶ浜はそれだけ叫ぶと、今度こそ手をぶんぶん振って、元気に走りさっていった。
「……おい、それはズルいだろ……」
異論反論どころか、質問さえも一切容さない、一方的な夢の海へのズルいお誘い。
つい先日交わしたばかりの『いつか』のお話は、こんなにも早く強制執行されてしまうようだ。
続く
というわけで、まさかまさかの初?ガハマさんヒロインでのクリスマスSSでした☆(クリスマスSSのタイトルが『ズルい女』て……)
メインヒロインを書いた方がむしろ変化球と言われるどうも作者です
ガハマさんとシーデート?それって特典小説でやったんじゃね?と思った読者様もいらっしゃるかと思います(汗)
だからホントはランドに行かせたかったのですが、原作だと1週間前くらいに行ったばっかなんですよねぇ……
でも実は、私特典小説は最後まで読んでないんですよ><
三巻くらいで『なんかこれじゃ原作のコピペ&焼き増しじゃね?』とか思ってちょっと冷めちゃって買うのを忘れてました。まぁ金欠だしいっかな?と
で、気が付いたら終わっちゃってたというね(白目)
なので私の中では初のガハマシーデートなので、特典小説を読んだ方も読んでない方も、気にせずお読みくださいましm(__;)m
ちなみに今年のクリスマスモノはこれだけです。なにせ去年ムチャクチャやりすぎてハゲかけましたから笑
もし二話で済むようなら後編はクリスマスに投稿。三話になるようなら二話目を今月半ばくらいに投稿して、三話目をクリスマスに投稿する予定です!
ではではノシ
注)すいませんここからは直接はこの短編集に関係の無い話なので、あざとくない件の香織に興味がある読者さまのみお読みくださいませm(__)m
しばらく放置してて気が付かなかったんですが、あざとくない件がいつの間にかお気に入り5000を突破していたようなんです!
ホントありがたや〜
で、記念になんか書こうかとも思ったんですが、なにせ原作がエタってるもんで『あざとくない件』としてはなんにも書くネタがないんですよねー
で、記念に「なんか書きたい書きたい〜」と色々考えた結果、なにを血迷ったのか、書くんじゃなくて描いてしまいました(錯乱
描いたとはいっても、普段絵なんて全く描かない私が、紙に鉛筆で描いたラフ絵を携帯で撮影しただけという、いわゆる地雷な代物なのですが(吐血)
そんな、マジで見なければ良かったと思いかねない地雷な香織イラストなのですが、そんなんでもよろしければ、あざとくない件の一番新しい話の後書きの下〜の方に、今夜か明日にでもひっそりと載せときますので、興味がありましたらちょっとだけ見てそっ閉じしてくださいませm(__)m
挿絵というにはおこがましいので、あくまでも「作者のイメージってこんなんか〜」程度の、オマケな気持ちでおなしゃす
掲載が完了しましたら、活動報告にてお知らせいたしますね〜