八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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スミマセン!一回違うの挟んじゃってお待たせしました!

今度こそ間違いなくけーちゃんSSです!………………………………サキサキSSですね、はい。




最近姉の川崎沙希の様子がすこぶるおかしい件について【後編】

 

 

 

「はーちゃんはーちゃん!」

 

 

はーちゃ……お兄さんとの思いがけない遭遇に大はしゃぎの妹と、お兄さんとの思いがけない遭遇に縮こまっている姉に挟まれ、俺はお兄さんに声を掛けたっす。

 

「お兄さん、こんにちはっす!」

 

「けーちゃん、こんな所で一人でどうしたんだ?」

 

「無視っすか!?お兄さん酷いっす!」

 

「あ?どちら様でしたっけ」

 

どちら様か分からないのに「あ?」と威嚇するお兄さんマジ恐いっす!

 

「大志っす!川崎大志っす!」

 

「………………………………………ああ、毒虫か」

 

すっげぇ間があったっすけど、本気で忘れてたわけじゃないっすよね!?

もうこの際羽虫や毒虫扱いはどうでもいいっす!

忘れられるのが一番キツいっす!

 

「アンタ、いい加減うちの弟からかうのやめときな」

 

おおっ!姉ちゃんが、突然の遭遇によるテンパりよりもブラ魂の方が勝ったっす………と思ったけど、やっぱり目が泳いでるっすね……

 

「お、おう……すみませんでした。……なんださーちゃんも居たのか」

 

「だぁっ!?……だだだからアンタにさーちゃんなんて呼ばれる筋合いはないっての……」

 

お兄さんそれはないっす!急なさーちゃん呼びで、姉ちゃん声が裏返っちゃったじゃないすか!

せっかく立ち直った我が姉が目に見えてしぼんで行くっす……なんか指と指をグルグルもじもじさせて真っ赤な顔して下向いてぶつぶつ言い出したっすよ……

 

「す、すまん。けーちゃんからの流れでな。……で?今日は姉妹二人でショッピングかなにかか?」

 

「お兄さん!俺もいるっす!三人っす!」

 

「チッ!うっせーな羽虫が……」

 

俺もう泣いていいっすかね。

 

「ねーねーはーちゃんはなにしてるのー?」

 

姉ちゃんはしぼんでるし、もう頼りになるのはけーちゃんだけっす!

けーちゃん頼むっす!

 

「ん?今日は妹に買い物たのまれてな。あいつ受験生だから、頼まれたことくらいはしてやんなきゃな」

 

そう言うお兄さんは、しゃがんで目線をけーちゃんに合わせると、優しい兄の目でけーちゃんの頭を撫でてるっす。

俺にもたまにはその眼差しを向けて欲しいっす!

 

「じゅけんせー?たーちゃんといっしょだー!いもうとのおかいものなんて、はーちゃんえらいねー」

 

目をキラキラさせてお兄さんを見つめるけーちゃん。

ホントに大好きっすね。なんか複雑っす……

 

「ははっ、ありがとなけーちゃん。そういや大志も受験生じゃねぇか。こんなとこに居て大丈夫なのか?」

 

まさかの俺への心配っす!

デレ期っすか!?まさかのデレ期っすか!?

やっぱりお兄さんはこう見えてちゃんと優しいんすよね。

 

「なんとか大丈夫っす!ちょっとした息抜きっす!」

 

お兄さんの優しさに俺が元気に答えると

 

「チッ……そうか……小町と一緒に受かるんじゃねぇぞ……?」

 

前言撤回っす。期待はいつでも一瞬っす。

 

 

「うしっ。んじゃ俺は行くからな。じゃーな川崎。またな、けーちゃん」

 

「ひぇっ!?う、うん。じゃ、じゃあ……」

 

うちの姉はいつまでこの調子なんすか……

そしてやっぱり俺は無視っすね……

 

「あー、あと受験生なんだから風邪には気を付けろよ」

 

……お兄さん!俺一生ついていくっす!

 

「まぁ受験がんばれよ。応援してるぞ、第二志望」

 

「……………………」

 

飴と鞭で俺が陥落されかけている横では、立ち去ろうとするお兄さんをけーちゃんが離さなかったっす!

もう川崎家はお兄さんに攻め落とされる寸前っす!

 

「えー……!はーちゃんいっちゃうのー……?けーちゃん、はーちゃんといっしょにあそびたいー!」

 

目をバッテンにしてはーちゃ……お兄さんを離さないけーちゃん。

うーん。これはどうしたものかと困っていると

 

「こらっ!ダメでしょ!?けーちゃん!はーちゃんが困ってるでしょ!?」

 

おお、姉ちゃんが立ち直ってけーちゃんを(たしな)めてる!と思ったのはほんの一瞬だったっす。

期待を込めて振り向くと、けーちゃん以上に目をバッテンにして、真っ赤にテンパってたっす。

 

どうやらけーちゃんを嗜めてたんじゃなくて、これ以上一緒に居る事が『むりむりむりむり……』らしいっす。

てか姉ちゃん気付いてないっすね……

俺は悪いとは思いながら、これ以上ドツボにハマらないようにそっと耳打ちして教えてあげたっす。

 

「姉ちゃん姉ちゃん……はーちゃんって言っちゃってるよ……」

 

 

「……………っ!○×◇☆□△〜〜〜っっっっ!」

 

 

なにかよく分からない言葉を絶叫しながら走ってっちゃったっす……

気付かないままの方が幸せだったっすかね……ごめん姉ちゃん……

 

「お、おい大志……川崎のヤツ、なんか変なもんでも食ったのか……?」

 

お兄さんドン引きっす!

こんな姉ちゃんでごめんなさいっす!

 

「さ、さぁ……たぶんトイレにでも行ったんすよ……」

 

 

言ったあとに気付いたっす。

これって……フォローの仕方、合ってるっすかね……?

 

 

× × ×

 

 

結局涙目でいそいそと帰ってきた姉ちゃんと一緒に、お兄さんも一日付き合ってくれる事になったっす。

だって、けーちゃんがお兄さん離さないんすから。

 

あ、ちなみに帰ってきた姉ちゃんにトイレに行ったって誤魔化しといたって言ったら殴られたっす。

なんとなく予想は付いてたけど理不尽っす!

 

それにしてもけーちゃんがあそこまでお兄さんに懐いてると、実の兄としては正直複雑っすけど、まぁもしかしたらお兄さんもそのうち本当の家族になるかも知れないっすからね。

 

もしお兄さんが本当の家族になるとした場合のシミュレーションをしてみたっす。

 

 

①お兄さんと姉ちゃんが夫婦に

 

②俺と比企谷さんが夫婦にっ!

 

③お兄さんとけーちゃんが夫婦に……

 

 

…………うん。オススメは②っすけど、残念ながら①っすかね……

てか③はさすがにマズいっすね……!

 

でも目の前で楽しそうに手を繋いでぶんぶん振ってるけーちゃんを見ると、結構あり得そうだから恐いっす!

 

「はーちゃんっとおっでかっけはーちゃんっとおっでかっけ♪」

 

なんかもうけーちゃんを寝取られた気分っす……NTRってやつっす!

 

「あの……比企谷。なんか悪いね、こんなことになっちゃって……」

 

「おう、気にすんな。まぁ暇だしな」

 

「そ、そっか」

 

なんか会話は弾まないなら弾まないなりに上手くいってるみたいっす。

照れっ照れでお兄さんと頑張って話している姉ちゃんは、本当に恋する乙女っすね!

それにお兄さんと姉ちゃんでけーちゃんを挟んで手を繋いでいる姿は、なんだか夫婦みたいっす。

でも言ったらたぶんサンドバッグっす。

 

 

そして今気付いたっす!これって俺、空気じゃないっすかね!?

姉ちゃんはともかくけーちゃんまでも取られちゃって、俺切ないっす!

 

だったら今から比企谷さんと二人で遊んでも誰にも文句は言われないっすね……………ダメでしたっす……なんだかお兄さんにすげぇ睨まれたっす……

シスコンパワー恐るべしっす。

 

「あー!はーちゃんはーちゃん!けーちゃんあれほしー!」

 

そんなシスコンにけーちゃんが何かをねだってるっすね。

何事かと思って見てみると、どうやらけーちゃんはゲームセンターのUFOキャッチャーを指差してるようっす。

 

「けーちゃんあのぴんくのうさぎさんがほしー!はーちゃんとれるー!?」

 

「UFOキャッチャーか……俺苦手なんだよなぁ……でもまぁちょっとだけやってみっか」

 

「ごめん比企谷!別に無理とかしないでいいから。もう、けーちゃんダメでしょ!」

 

「ああ、気にすんな。ちょっとだけだ。川崎はなんか欲しいのあんのか?」

 

「は、はぁ?バ、バッカじゃないの!?あたしがこんなの欲しがるわけないじゃん!」

 

なんかイチャイチャしてて楽しそうっすね……どこの新婚さんっすか。

俺消えた方がいいっすかね……

あと姉ちゃん?こんなのって、姉ちゃんの部屋ぬいぐるみだらけじゃないっすか。買ったやつから作ったやつまで。

 

恥ずかしがってないで、こういう所で女の子アピールしなきゃダメじゃないっすか……

でもそんな事言ったら恐ろしい目に合うと思って口を塞いでいると、またけーちゃんが爆弾を落としたっす!

 

「なんでー?さーちゃんのおへや、くまさんとかわんちゃんとかうさぎさんでいーっぱいなのに……むぐっ」

 

けーちゃん恐ろしい子っす……!

もう姉ちゃんのハートはブレイク寸前っす!

 

茹でダコみたいに真っ赤になって涙目の姉ちゃんを気付かってか、聞かなかったことにしてUFOキャッチャーを始めるお兄さんは大人の男っす!憧れるっす!

 

 

「あー……クソっ!だめか。もう一回」

 

「おぉぉ……はーちゃんがんばれー!」

 

「が……がんばれ……」

 

何度目かのチャレンジっすけど、戦況は思わしくないみたいっす!

そして姉ちゃんの応援は蚊の鳴くような声すぎてお兄さんには届かないっす!

 

「お!え?ま、まじで?お、おーっ!こいこいこいこい!」

 

「おー!はーちゃんすごー!」

 

「うそ……」

 

な!なんと六回目のチャレンジで、まさかの二個取りっす!けーちゃんご希望のピンクのうさぎと、姉ちゃんが好きそうな茶色の熊のダブルゲットっす!

 

「よぉしっ!」「やったー!」「……うん」

 

どうやら戦果は上々のようっす!

いやぁ、愛の力は偉大っすね!

 

「ほい、けーちゃん」

 

「やったー!はーちゃんありがとー!」

 

けーちゃん大喜びっす!よかったっすね!けーちゃん!

 

「んでこっちはほれ。さーちゃんにやる」

 

「だからアンタにさーちゃん呼ばわりされる筋合いないって言ってんでしょ!そ、それにそんなのも要らないっての!」

 

まったく……大人しく貰えばいいじゃないっすか。

そんな物欲しそうな顔しちゃって……

 

「そうか。じゃあ俺も要らんから捨てるっきゃねぇな」

 

「なっ!?そんなの勿体ないじゃん!……じ、じゃあ仕方ないから、あ、あたしが貰っといてやるよ……」

 

「おう、そいつはあんがとよ。ほれ」

 

「う、うん……」

 

そうやって姉ちゃんに戦利品を渡すお兄さんはニヤリとしてたっす!

すでにあの姉ちゃんを手玉に取ってるっす!さすがっす!勉強になるっす!

 

そして姉ちゃんは乱暴に受け取りながらも、嬉しくて我慢ならない笑顔をなんとか抑えようと、こっそりと太ももをつねっていたっす!

よかったっすね!姉ちゃん!

 

 

× × ×

 

 

それからあっちこっちと三人で遊び回って、今は帰路に着いてるっす。

え?一人足りてないって?それは言わない約束っす。

 

遊び回ってる最中、やっぱりけーちゃんは何度か姉ちゃんのメンタルをゴリゴリとブレイクしにきたっすけど(バレンタインの話題とか家でお兄さんの話題を出すとかっす!)、さすがに姉ちゃんももう神経尖らせて警戒してたのか、なんとか未然に防いで事なきを得たようっす。

 

「なんか悪いね。わざわざ送ってもらっちゃって……」

 

「まぁお前んちとウチは意外と近いみたいだから気にすんな。あと……これだしな」

 

けーちゃんは遊び疲れたのか、今はお兄さんの背中で幸せそうに寝息をたててるっす。

ホントに楽しそうだったっすもんね!

 

 

 

 

ウチに到着すると、お兄さんはけーちゃんを部屋まで運んでくれたっす。

やっぱりこういう時のお兄ちゃんスキルの高さは見習うべき所っすね。

 

お兄さんをウチに招き入れてしまってめちゃくちゃ照れまくりの姉ちゃんだったんすが、さすがにこのまま帰すワケには行かないからと、なんとか声を絞りだして「お茶でも……」と誘ったっす。

でもお兄さんは比企谷さんの買い物を届けなくちゃならないからとお断りしてきたっす。

 

「比企谷……今日は本当にありがと。けーちゃん大喜びだったよ」

 

「お、おう。俺も結構楽しめたしな。それにちょっと前に約束したじゃねぇか。今度こういう機会があったら、またけーちゃんと遊んでやってくれってよ」

 

そういうお兄さんの顔は、普段見せないような男前の笑顔だったっす。

 

「アンタ……そんなの覚えてたんだ……そ、その……ありがと」

 

もう姉ちゃんデレッデレっすね。お兄さんはまじでジゴロっす!

そんなジゴロが照れた様子で「じゃあな……」と帰ろうとしたところ、姉ちゃんがまさかの呼び止めっす!

 

「あっ……!ひ、比企谷っ!」

 

「ん?どうした?」

 

すると姉ちゃんは俯いてしばらく黙り込んでいたっすが、おもむろにバッグをゴソゴソしだしたっす。

 

「……はい。……これアンタにやるよ……」

 

「は?なんだこれ?なんで俺が貰い物すんの?」

 

「……アンタバッカじゃないの?見て分かんない?……その……チョコレートだよ……バ、バレンタインのっ……!」

 

「え?……マジで?くれんの?……てか今日ってまだバレンタインじゃなくねぇか?」

 

「別にそんなのいつだっていいでしょ。ただの今日のお礼だから……!べ、別に大志用に買っといたってだけのやつだから気にしないでいいよ……!」

 

姉ちゃんバカっすか!?なんで余計な一言加えるっすか!?

てかそんなの弟用とか言ったらまたブラコン扱いっすよ!?

 

「あ、そうなの?てか大志用を俺が貰っちゃっていいのかよ」

 

「いいよ……大志にはあとでチロルでも買っとくから……」

 

姉ちゃん……今年はチロルっすか……

 

「そ、そうか……じゃあ有り難く貰っとくわ……その……サンキューな」

 

「…………うん」

 

あ、甘酸っぱいっす!なんすかこれ!

弟の前でこの青春ラブコメ劇を見せ付ける姉ってどうなんすかね!?

あ……!もしかして俺って存在してないっすか!?

 

 

 

そしてお兄さんは帰って行ったっす。

幸せそうな顔して見送った姉ちゃんは、次の瞬間俺を睨み付けてきたっす……

 

『大志……今見た光景は忘れろ……』

 

目は雄弁にそう語っていたっす……

 

 

× × ×

 

 

「ふ〜っ……あったまったぁ」

 

やっぱり冬場の風呂は極楽気分っね。

俺は風呂上がりに牛乳をコップ一杯飲んでから姉ちゃんの部屋に向かい、ガチャリとドアを開け一声掛けたっす。

 

「姉ちゃ〜ん。風呂あいたから入っちゃえ……ば……………あ"っ……」

 

「………………あ」

 

 

やばいっす……俺、もう死んじゃうかも知れないっす……

 

「たぁいーしぃぃ……なぁんーでぇノックしぃなぁいーんーだぁぁぁ」

 

 

はぁ〜っ!!もう目の前に半泣きで真っ赤に染まった姉ちゃんが、殺意のこもった目を向けて迫ってきてるっすぅぅぅ〜……!

 

 

 

 

俺は……俺はもうここまでみたいっす……

 

でも姉ちゃん安心するっす!

もし!もし俺が生き延びたとしてもさっきの光景、姉ちゃんがヤバイくらいのニヤケ顔でお兄さんからもらったぬいぐるみを抱き締めてベッドの上をゴロゴロ転がり、あまつさえチューしかけていたなんて事は、絶対に!絶対に誰にも言わず墓場まで持っていくっすからぁぁぁっ!

 

 

ああ、意識が遠退いていくっす……みなさん……おやすみなさいっす……

 

 

 

 

 

最近俺の姉ちゃんの様子がすこぶるおかしいんすけど、まぁなんか幸せそうだからいいっすよね。

 

 

 

 

おわりっす!

 





初めてのサキサキだったのですがいかがでしたでしょうか!?

なんかサキサキの気持ちを知っている大志目線だと、サキサキがスゴい可愛く感じてしまいました(笑)
てか私って、ベッドで悶えさせんの好きすぎwww


あとこのお話のヒロインは決してけーちゃんでは無い事を、この場を借りて高らかに宣言しておきますっ!



そして次回は…………………です!

たぶん明日更新しますんでお楽しみにっ!

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