八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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ルミルミかと思った?残念!もっとも危険なヒロイン(?)でした!

え?乙女じゃねーだろって?
いやいやなに言ってるんですか、立派な男女(おとめ)じゃないですか。


……いやホントすみません(白目)





天使にバースデーソングを

 

 

 五月。開け放たれた窓から流れこんでくる風が心地好いこの季節。

 そんな穏やかな風に頬を撫でられつつも、俺はここ最近自身を悩ませているとある病に苦しみ、今日もまた気だるい休み時間を、屍のような目で過ごしている。

 

 

 

 そのとある病とは、そう、わざわざ言うまでもなく……………………五月病である。

 

 別に社会人一年目とかいうわけでもないのに五月病とはこれいかに。いやいや、別に勤労に励んでいなくとも、この病は容赦なく学生も、そして俺も襲うのだ。

 

 なぜなら本日は五月八日。昨日までは愛しのマイホームでダラダラと自堕落に過ごせていられるGWを心から満喫していたというのに(受験生ゆえに実際は勉強漬け)、なぜまたこんな居づらい空間になど来なければならないのか……と。

 

 そして俺の病をさらに加速させる原因。それはそう、…………クラス替えで戸塚と違うクラスになっちゃったんだよ!

 神は学校生活唯一の楽しみを失ってしまった俺に、この場所でどう生きていけと申されるのか……!

 

 

 思えば四月頭からGWまでは本当に地獄だった。なにせ同じ教室に戸塚が居ないのだ。

 

 同じ教室に戸塚が居ない。

 

 なにこれ字面だけ見ても悲惨な世紀末すぎてヒャッハーな終末レベル。

 

「……はぁ〜」

 

 そして俺は「あー……今日も早く終わんねーかなぁ」と、ぽしょりと独りごちて深く深く溜め息を吐き出し、この居づらい空間から一刻も早く意識だけでも逃がすべく、我が机へと勢いよく突っ伏すのだった。

 

 

 しかし──

 

 

「どうしたの八幡? そんなに溜め息ばっかり吐いてると、幸せがどこかに飛んでっちゃうよ?」

 

 そんな時、ぽんっと叩かれた肩に感じる温かいぬくもりと共に、天上から降り注いできた天使の福音。

 

 ……おお、まだ神は我を見捨ててはいなかったのか……!

 

「よ、よう」

 

「よっ」

 

 天を仰いだ矮小なる俺の視界いっぱいに映ったのは、手を小さくひらひらさせて、照れくさそうにはにかみながら「よっ」と微笑む天使の姿だった。

 

 

× × ×

 

 

「うわぁ〜見て見て八幡! すっごく綺麗だねー」

 

「だ、だな」

 

 あ、あれ? ここどこ? 俺いつの間にこんなところに来てたんだっけ? なんて思いつつも、輝く笑顔の戸塚が可愛すぎて、思わず「戸塚の方がずっと綺麗だよ」などと、柔道後の材木座もびっくりなくらいベッタベタでヘドロ臭いセリフが危うく口から出そうになってしまった。それほどにこの美しい夜景をバックに佇むとつかマジとつかわいい。

 

「なっ!? ……も、もう八幡ったら! いつもそうやってからかうんだから……!」

 

 やだ! あまりにも可愛すぎて、普通に口から出ちゃってた!

 ぷくぅっと怒りながらも、ほんのりと頬を染める戸塚たんマジ天使。そのぷにぷに頬っぺをつんつんしたい。あれかな、ここは雲の上かな? 俺ついに召されちゃったのかな?

 

 いや、冗談とかではなく、これはもう天に召されてると言ってしまっても過言ではないレベルかもしんない。

 

 

 

 ──なぜなら俺は今、夜のディスティニーシーに戸塚と二人で遊びに来ています。

 

 

 

『どうかしたか?』

 

『あの、さ、八幡……その、ちょっとお願いがあるんだけどぉ……』

 

『よし、じゃあ明日にでも婚姻届用意しとくわ』

 

『違うからね!? てかなんで婚姻届が必要なの!?』

 

『ば、ばっか、冗談だ冗談。……で、お願いってなんだ?』

 

『もう! ……えと、あのね? 明日って放課後空いてるかな』

 

『おう、空いてるぞ。空いてるってか超空いてる。なんなら明日一日空きまくってるまである』

 

『あ、明日学校だよね……? えっとその、もし八幡さえ良かったらなんだけど……明日、放課後に一緒に遊びに行かないかな』『行くに決まってんだろ』

 

『食い気味すぎだよ! ……でもホント!? やったぁ! どうしても行きたいトコがあるんだ!』

 

 

 

 そんなこんなであまりにも楽しみにし過ぎていた俺は、昨日今日の記憶など一切なく、気が付いたらここで戸塚とシーの夜景を見ていたのです。

 マジで自分の私生活の中身の無さにびっくり。まぁ戸塚と二人で遊べる事に比べたら、昨日今日の記憶の欠落などほんの些末な事だしどうでもいいよね。

 

 

 

 ランドには何度か行った事があるのだが、初めて来たシーはそれはもう綺麗な所で、特にいま俺達が立っている場所──火山をバックに、ハーバー越しにイタリア風の街並みを見渡せるこの場所からの夜景は本当に素晴らしい。

 まるでヨーロッパのような街並みの、ひとつひとつの窓から零れだすオレンジ色の優しい灯り。そんな灯りがゆらゆらと揺れるハーバーの水面に映り込む様はなんとも幻想的で、なんというか本当に新婚旅行で海外にでも来てしまったかのような感覚に襲われまくっている。

 

 そう、新婚旅行。もしくは婚前旅行でも可。とにかくそんな素晴らしい旅行気分を、俺は戸塚(男の子)と心行くまで堪能しているのである。

 ……ねぇねぇ、なんで戸塚が男の子なの? わけがわからないよ。

 

「どうしたの? 八幡」

 

 果たして俺はこんなに幸せでいいのだろうか? という気持ちと、なぜ戸塚が男の子なのか、という永遠の謎という二つの問題について頭を悩ませていた俺の耳に届いた、心躍る春の囁き。

 そんな春風のような清々しい声のする方へと顔を向けると、そこにはきょとんと首をかしげる愛らしい戸塚。

 

 うん。やっぱもうなんでもいいや。え、なに? 戸塚が男? なにそれどうでもいいわ。だって戸塚は性別が戸塚なんだから関係なくね?

 むしろ俺は一体なにを悩んでいたというのか。数秒前の自分を殴ってやりたい。

 

「おう、別になんでもないぞ」

 

「そ? じゃあ早く行こうよっ」

 

 えへへと笑って、なんとも楽しそうにぴょこぴょこ駆け出す戸塚に遅れまいと、その小さな背中に向けて俺も一直線に走り出す。

 

 ……いや、走り出すのは背中に向けてじゃなくって戸塚ルートに向けてかもしれませんね。

 八幡まっしぐら! 戸塚大好きフリスキー!

 

 

× × ×

 

 

「今さらだけど、ホント急に誘っちゃってごめんね?」

 

 途中で購入したソフトクリームをぺろぺろしながらパーク内を散策していると、急に戸塚が上目遣いでそんな事を言ってきた。

 口の横に白いクリーム付けてぺろぺろしてる戸塚たんマジぺろぺろ。

 

「あん? なにがだよ」

 

「だって、いくらアフター6パスポートって言ったって十分高いし、しかも昨日の今日でシーに行こうだなんて、ホント急すぎだよね」

 

 そう言って戸塚は申し訳なさそうにしゅんとなる。

 

 まぁそりゃ最初はかなり驚いた。

 シーに行きたかったのならGW中にいくらでも行けただろうに、なにゆえ敢えてGW明けの平日を指定したのだろう、とか、単純に明日行こうだなんて本当に急だなぁ、とか。

 

 でも戸塚に誘われるのならば俺はいつでもどこでも馳せ参じるし、そんなのはどうだっていい。

 ディスティニーに行きたいと思い、その相手に俺を選んでくれたのが何よりも嬉しいのだから。

 

 そもそも戸塚「ぼくが急に誘ったんだから!」とか言って、危うく俺の分のパスポート代まで出そうとしたからね。

 それなのに俺に対して申し訳ないとか思うのはまったくの筋違いだっての。

 

「いや、来たいから来ただけだから気にすんな」

 

「えへへ、ありがとね、八幡っ」

 

 守りたい、その笑顔。

 

 

 そんな雑談を交わしながらとてとて歩いていると、気が付けば俺たちはアラビアンナイトの世界に迷い込んでいた。

 すげぇなシー。海のテーマパークなのに、パーク内にこんなアラビアンな街並みまで用意してあるだなんて。

 

「うわぁ……凄いねー」

 

「な」

 

 ディスティニーシーに入ってからというもの、本当に驚く事ばかりだ。

 さっきまでイタリアかと思ったてら気が付けば古き良きアメリカへ、今度は火山地帯かと思ってたらいつの間にやらジャングルの奥地へ、……そして今は、アラビアンナイトの妖艶な世界の中に迷い込んでいる。

 

 これは本当に世界中を旅している気分になる。

 最初はなんで海がテーマなのにジャングルとかアラビアとかがあんだよ……とか思っていたが、七つの海の冒険というテーマで考えれば、確かに趣旨どおりなんだよね、これ。

 

 ヤバい、エキゾチックな衣装を身に纏ったとつかたんとか、総武の制服(女子)を着た戸塚くらい見てみたいかも! なんて邪な事を、この妖しげなアラビアンナイトの世界を闊歩しながら真面目に考えていると、不意にシャツの袖がくいくいと引かれている事に気が付いた。

 

「ねぇねぇ八幡! あれ乗ろうよ!」

 

 なんぞや? と、瞳をキラキラと輝かせた戸塚が指差した先にあったアトラクションへと目を向けると……

 

 えぇぇえ……ア、アレはちょっと恥ずかしくないですかね……戸塚が乗ってる所は見てみたいけど。なんなら乗り始めから降りるところまで、全てを滞りなく動画で収めたいまである。

 でもなぁ……俺が乗るのはちょっとなぁ……

 

「一緒に乗ろうよっ」

 

「当たり前だろ」

 

 乗っちゃうのかよ。しかも即答かよ。

 だって天使の笑顔のお誘いを無碍に出来るはずがないじゃない。

 

 

 俺たちの目の前にそびえるアトラクション。それは、夜の闇の中に煌々と浮かび上がる、キャラバンカルーセルという豪華な二層式のカルーセル──分かりやすく言うとメリーゴーランドである。

 馬や馬車といったいわゆるなメリーゴーランドではなく、アラビアンなファンタジーらしく、そこにはラクダや象やグリフィン、そして魔法のランプの魔人が美しく飾り立てられていた。

 

 メリーゴーランドと言えば遊園地デートにおける鉄板イベント。まさにアハハ〜ウフフ〜な世界。男二人で遊園地に来て、夜のライトアップされたメリーゴーランドに乗るとか普通に考えたらマジでヤバい。それこそ海老名さんコースまっしぐらだ。

 だが戸塚とならなんら問題は無いか。むしろ土下座してでも一緒に乗りたいまである。どっちにしろ海老名さんコースで間違いはなかった。

 

 

 夜の闇の中を光り輝く乗り物に乗って走るカルーセルは中々の人気なようで、多少の行列に並んだ末にようやく乗車。ラクダや象に乗車ってちょっとおかしいか。

 

 アフター6は文字通り夜の六時から閉園まで遊べるパスポートなのだが、正味四時間ほどしか居られない上、水上ナイトパレードやら花火やらを観覧したいとあらば、あまりアトラクションを楽しむ時間は取れないパスポートである。戸塚が観たいと言っていたナイトパレードと花火までの時間を考えたら、どうやらそれまでの時間に遊べるアトラクションはこれだけになりそうだ。

 まぁ花火が終わったあとなら園内もかなり空くから、そのあとにまた散策するなりアトラクションを楽しむなりすればいいけど。

 

 こういうとき近場に住んでると便利だよね。あまりにも近すぎて、年パス持ってる雪ノ下がどれくらいの頻度で(一人で)遊びに来てるのか心配になるレベル。

 

 

 キャストさんにカルーセル内に通されると、ウキウキの戸塚がラクダに跨ったため俺は隣の魔人に跨る。魔人に跨るとかかなりシュール。

 それにしてもはにかみ笑顔で闇夜のラクダに跨る戸塚が、なんだか月の砂漠を行くエキゾチック美女みたいで超アジアンビューティー。

 マジでベリーダンスの衣装とか着てくれないかなぁ。わたし捗ります。

 

 

「ちょっと恥ずかしいけど楽しみだねっ」

 

 ほう。なんだか笑顔がはにかんでるなとは思っていたが、さすがに戸塚もちょっと恥ずかしいらしい。

 ならばなぜこのアトラクションをチョイスしたし戸塚。

 

「……お、おう、さすがに恥ずかしいな」

 

 メリーゴーランドって、大の大人が乗るのはホント恥ずかしいよね。高校生男子が大の大人とカテゴライズされるのかどうかは知らんけど。

 なんにしても、オリエンタルテイスト溢れるここ夢の海のカルーセルはそんじょそこらのメリーゴーランドとは一味違うとはいえ、やはり音楽と馬にのって(魔人だけど)ぐるぐる回るだけのこの乗り物は、年頃男子からしたらどうしたって恥ずかしいのだ。

 

 すると、俺の赤くなっているであろう顔をまじまじと見て、戸塚は悪戯っぽく笑う。

 

「あはは! やっぱりコレにしといて良かった〜! 絶対八幡恥ずかしがると思ってたんだよね。えへへ、いつもクールで格好良い八幡が恥ずかしがるトコ見たかったんだっ」

 

 おうふ……まさかの俺の為チョイスでした。

 やだ! ちょっとSっ気のある戸塚もなかなかイケるじゃない!

 まぁ確かに恥ずかしくてかなり嫌だけども、俺もそんな戸塚の照れ笑いを見れたからフィフティーフィフティーだな。どれだけ恥ずかしかろうとその笑顔プライスレス。

 

 

 

 そうこうするうちに、俺たちを乗せたカルーセルはゆっくりと動きはじめる。

 

「あ、始まるみたいだよ、八幡」

 

「お、おう」

 

 

 優雅なディスティニーミュージックと共に回り出すカルーセル。

 ゆっくりと上下し、夕闇に幻想的に浮かび上がるカルーセルの回転に身を任せ、恥ずかしげな笑顔で笑い合う男と女……もとい男と男の娘。

 

 

「アハハ〜」「ウ、ウフフ〜」

 

 

 最初こそ新たな黒歴史の幕開けかとも思ったこの一夜の砂漠の旅も、こうして戸塚と一緒に笑い合えただけで、一瞬にして素晴らしい歴史の一ページとなったのでした、まる。

 

 

× × ×

 

 

 ドンッと、本日のラストを締めくくる花火が夜空と天使の横顔を眩しく照らす。

 舞浜で花火とか、ここらに住んでいる市民からすれば、あまりにも日常の出来事過ぎてさして大したことでも無いのだが、無いはずだったのだが、それはやはりそれを見るシチュエーションと一緒に見る人物次第なんだなぁ……としみじみ思う。

 

「終わっちゃったねー、花火」

 

「そうだな。でもたまにはいいもんだな、こうしてディスティニーの花火をちゃんと見んのも」

 

「ね!」

 

 

 俺たちは今、火山の麓にそびえる城塞フォートレス・エクスプレッションの城壁にある見晴台から夜空を見上げていた。

 

 ここディスティニーシーは『ようこそ! 冒険とイマジネーションの海へ!』というテーマが示す通り、乗り物系アトラクションだけではなく、こういった城の中や海賊船の中なんかも、アトラクションとして探検出来るテーマパークなのである。ホント金かかってますね。そりゃ毎年毎年パスポート代を際限なく上げやがるわけだわ。

 

 そんな見晴台から眺めていた水上ナイトパレードと花火もついには終わりを迎えると、大音量で流れていたBGMも大音量で響いていたゲスト達の歓声も引き潮のように静かに引いていき、他にゲストの姿の見えないこの場所に残されたのは、夢の国に不釣り合いなほどの静寂と二人分の影だけ。

 

 

 どんな時も常に笑い声で溢れているイメージがあるディスティニーでも、こんな静かな一瞬があるんだな……なんて、眼下に広がる作り物の海と対岸のイタリアの街並みを眺めつつ思っていると──

 

「八幡、今日はホントにありがとね。ぼく、すっごく楽しかった」

 

 とても優しく柔らかい声音で、不意に天使が囁いた。

 

「……」

 

 それはこっちの台詞だ! ……なんて考えつつも、その一方で「またか」と考えてしまう俺もいる。

 

 今日の戸塚は一体どうしたというのだろう。……いや、今日というよりは昨日俺をシーに誘った時からか。

 確かに戸塚はとても配慮深く、三歩後ろを歩く大和撫子タイプの男の子ではあるのだが(大和撫子タイプの男の子ってなんだよ)、それにしたって昨日から、急に誘った事を何度も申し訳なさそうに謝られたり、嬉しそうに何度もお礼を言われたりしている。

 

 まぁあまりにも突然のお誘いだった故の申し訳なさからくる配慮なのかもしれないが、ここまで何度も何度も謝られたり嬉しそうにお礼を言われてしまうとさすがにむず痒い。

 

「……あー、戸塚」

 

「ん? どうしたの?」

 

 せっかく純粋に楽しんでいる戸塚にこんな事を聞くのは無粋なのかもしれない。

 しかし、それでも、どうしても気になってしまった俺は、遠慮がちにではあるものの、思い切ってこう訊ねてみる。

 

「……なんだ、その……なんかあったか? なんつうか、昨日急に誘ってきたのも驚いたし、それにいつもに比べてやけに何度も謝ったり礼とか言ったり、それにいつもよりなんか嬉しそうっつーか」

 

 それにいつもより可愛さも八万倍増しだったりね!

 

 

 そんな俺からの疑問ではあるが、え、そうかなぁ? なんて、なんでもないような返しが来るんだろうなと思っていた俺に届いた戸塚の返答と表情の変化は、少なからず俺を戸惑わせるものだった。

 

「……わっ、バレちゃった? えへへ、やっぱり八幡は凄いよね。なんでもお見通しだ」

 

 まさかとは思ってはいたが、やはり急に昨日誘ってきたのも今日の様子が些か変なのも、それなりに理由があるという事なのか。

 

 え、なにこれ、もしかして告白とかされちゃうんじゃね? なんて期待していると……いや、そこは期待しちゃマズいだろ。とにかくドッキドキで戸塚の様子を窺っていると──

 

「実は、ね……」

 

 なんかあながち冗談でも無いんじゃないかというくらい顔を赤らめた天使。

 えぇ、マジでヤバいって。これで告白されちゃったら、俺オッケーしかねないんだけど。いや、むしろウェルカムどんとこい。なんならここで式の日取りまで決めちゃいますか!

 

 

 戸塚はその可憐で瑞々しい唇をゆっくりと開く。そしてもじもじと身を捩らせると、上目遣いでこんな思いがけない言葉を口にするのだった。

 

 

「今日、ぼくの誕生日なんだ」

 

 

× × ×

 

 

 ──なん、だと……?

 

 それが、戸塚からの告白を聞いて初めて頭に浮かべた言葉だった。

 

 そう……か。今日五月九日は、戸塚の誕生日だったのか。そういや戸塚の誕生日、聞いたこと無かったな。

 

 ぶっちゃけて言えば本当は聞きたかった。ただそれはどうしても躊躇われてしまったのだ。

 人の誕生日を聞くのは、人付き合い経験の乏しい人間にとっては実はとても難しい。

 俺はこいつに誕生日を聞ける程の間柄だろうか? とか、聞かれて「なんで?」と言われないだろうか? とか、誕生日を聞く事によっての見返り──要はこちらの誕生日も知って欲しいアピール──を疑われないだろうか? とか余計な事を考えて自己防衛に走ってしまうから。

 どうしたって頭を過るのは、なんでコイツ居んの? って顔された誕生会や、当時好きだった子に何気ないフリして誕生日を聞いた時にされた嫌そうな顔。

 

 

 そんな下らない事を考えなくとも、戸塚なら純粋な笑顔で教えてくれるだろう。

 そんな事は分かっている。だが分かっている事と理解する事はまた別の問題なのだ。どうしても最後の最後で線引きをしてしまう。戸塚は俺の事を友達と思ってくれているのだろうか、と。

 こんな事なら由比ヶ浜の誕生日パーティーの時にでも流れで聞いておけば良かったなぁ……なんて、何度悔やんだ事か。

 

 聞くに聞けず、さんざん悔やんだ戸塚の誕生日がまさか今日だとは。そしてその誕生日に、わざわざ俺をディスティニーに誘ってくれたとはな。

 なにこれ俺ってば幸せ過ぎないかしら。なんも言えねぇ!

 

「そうか。その……なんだ、おめでとな」

 

「うん、ありがと!」

 

「つーとアレだな。戸塚の方が先に十八になったんだな」

 

「えへへ、そうだよー。ぼくの方が八幡よりちょっとだけお兄さんなんだからねっ」

 

 そう言って戸塚はえへんと胸を張る。

 こんな可愛いお兄さんがいたら世の中ブラコンだらけになっちゃうね。まぁどっちかっつーと弟……いや、妹にしか見えないが。しかも世界一可愛い妹に。

 いや待て、世界一可愛い妹って言ったら全世界が小町の名を挙げるのは必定。つまり戸塚には申し訳ないが、世界一可愛い妹の座はすでに決まっているのだ。

 ならばやはりここは世界一可愛いお嫁さん一択で。

 

 

 

 ……ん? 十八……?

 そういや十八っていうと、戸塚ってもう結婚出来る歳になったって事か。まぁ戸塚なら十六で余裕で結婚出来そうだけど。

 

 そ、そしてそんな日に敢えて俺を新婚旅行気分を擬似体験出来るディスティニーシーに連れてきた……だと? やはり先ほどの葛藤に間違いは無かったのか。

 

「よし戸塚、あと三ヶ月待っててくれ」

 

「なにを?」

 

 すんごい可愛い顔でこてんっとされちゃいました。なんかもう邪な事ばっか考えてた自分が浄化されてしまいそう。

 

「……いや、すまん、なんでもない」

 

「?」

 

 

 

 

 と、冗談はここまでにしておこう。本当に冗談かどうかはひとまず保留の方向で。

 

 

 ──戸塚は自分の誕生日にわざわざ俺を誘ってくれた。しかも高校生活最後の誕生日に、だ。それもあんなにも急に、そしてあんなにも嬉しそうに。

 

 戸塚は俺なんかと違って人気者だ。クラスが変わってからもその事実に揺らぎはない。

 ならば黙ってたって誕生日を一緒に祝ってくれる奴なんてごまんと居るだろう。クラスメイト、元クラスメイト、テニス部の部員たち。

 

 それなのに戸塚は俺を誘った。しかもあまりにも急に、申し訳なさを感じてまでも。

 そうまでして誕生日に俺とディスティニーに来たかったというのだろうか?

 

「あのね」

 

 急に黙り込んでしまった俺。そんな俺の思考を表情から読み取ったのか、戸塚はなぜ今日という日を計画したのかをゆっくりと話し始める。

 

「ぼくさ、前にも言ったかもしれないけど、こんなだから男の子の友達ってあんまり出来た事がなくってね? ……だから、今までは誕生日といえば家族と過ごすか女の子達と過ごすかだったんだ、ぼく」

 

 高校生男子の口から「誕生日は女の子達と過ごしてた」なんて言葉が出たら、普通の男共からしたら羨ましいとか嫉ましいとかの感情しか湧かないだろう。

 でも戸塚が言うとそれは全く別の意味となる。本当は男友達とも過ごしたかったのに、男友達とばか騒ぎしたかったのに……まるでそう叫んでいるかのよう。

 

 そして眼下に広がるヨーロッパの街並みを模した夜景が映る海を眺めながら、ふわりと吹いた春の夜風に揺れる髪を押さえて戸塚は言葉を紡ぐ。

 

「……でも別に女の子の友達がお祝いしてくれるのが嫌だったってわけじゃないんだよ? むしろすっごく嬉しかったし、こんなにたくさんのお友達にお祝いしてもらえるなんて、ぼくって幸せ者だなぁって思ってた」

 

 そう言って嬉しそうに笑う戸塚の笑顔に嘘はない。

 

「でもね、たまにクラスで男の子達が騒いでるの聞くと、ちょっと羨ましかったんだぁ。「え、なに今日お前誕生日なの? じゃあ帰りにみんなでゲーセンでも寄ってこうぜー! 今日くらいはおごってやるよ」なんて言ってるのを聞いちゃうと、ね」

 

 嘘はない。でも少しだけ寂しそうなこの笑顔を見ると、やはり戸塚もそういう物に憧れる部分もあったのだろう。

 

 

 

 ──正直な話、戸塚はとても異質な存在だ。端的に言うと浮いている。

 それはあの文化祭のあと、クラス中からヘイトを集める俺になんの気兼ねもなく話しかけて来たり俺と同じ班を組む事になっても、クラスの誰一人として戸塚に嫌悪感を抱かなかった事が証明している。

 

 それはあまりにも可愛らしい中性的な顔立ちと、さらにそれを上回る可愛らしい中身ゆえの賜物だ。

 戸塚を天使のように特別視しているのは何も俺だけではない。俺と同じように“みんな”も戸塚を特別視しているのだ。

 

 

 しかしその特別視というやつは、本人からすればとても厄介な代物で……

 

 特別視。つまり異質。つまり浮いている。

 俺もその辛さはよく理解しているつもりだ。なにせ俺ってば特別視されすぎて、いつでもどこでもすげぇ浮いてるからねっ(白目)

 

 

 でも逆に、悪意か無関心な特別視の俺よりも、善意と関心な特別視に晒されてきた戸塚の方が、下手したらキツいのかもしれない。

 だって、俺みたいに全てを捨てたり諦めたりが出来ないのだから。

 

「だからね」

 

 しかし、だ。そんな俺の底の浅い心配などどこ吹く風。次の瞬間の戸塚の笑顔には、寂しさなど微塵も感じられなかった。そこにあったのは、迷いの無いいつもの純粋な笑顔そのもの。

 

「だから八幡とお友達になれた今は、ぼく毎日がとっても楽しいんだ! だって、いつも強くて格好良い八幡と友達になれたんだもん」

 

 ば、ばっか、そんなに眩しい笑顔で、急にそんなこと言うんじゃねぇよ。思わず惚れ直しちゃう上に「なんだよ友達かよ」ってガッカリしちゃうだろうが。

 

「だから今年の誕生日は、どうしても八幡と一緒に遊びたかったんだー! でもゲームセンターとか映画は前に行ったし、せっかくならもっと特別でもっと思いっきり楽しめるところにしたくて、だからちょっと悩んだけど、思い切ってディスティニーに誘ってみたんだ。あはは、悩みすぎてお誘いがギリギリになっちゃったけどね」

 

「……そうか」

 

 そうか、とは答えたものの、その言葉は決して額面通りの意味だけではない。

 友達からの元気な言葉に対する額面通りの返答である「そうか」と、戸塚の元気な笑顔に納得にしたことに対する、額面とは別の「そうか」である。

 

 ──そうか。こいつって、俺が思ってるよりもずっと強い奴なんだったっけな。

 

 戸塚は俺を強いとか格好良いとか言うけれど、本当は戸塚の方がずっと強くてずっと格好良い男の子なのだ。

 弱いテニス部を……弱い自分を強くする為に、自分から率先して動いて一生懸命行動し、そんな戸塚に触発されたのか昼休みの練習にも他の部員も参加しはじめ、何時の間にやら部を率いるまでになっていた。

 マラソン大会の時のあんな無茶なお願いにも部員達が黙って参加してくれたという事は、戸塚の主将としての人望だって申し分ないのだろう。

 

 それに俺もなんだかんだいって、実は何度も戸塚に救われている。

 職場見学のあとの由比ヶ浜との確執。文化祭のあとの癒し。修学旅行や生徒会役員選挙のあとの雪ノ下達との関係崩壊寸前の時だって、戸塚は俺の表情や態度からなにかしらを感じ取り、話し掛けてくれたり遊びに連れ出してくれたり元気が出そうな食べ物を勧めてくれたりと、優しくそっと寄り添ってくれたっけ。

 

『ぼくじゃ、役に立たないと思うけど……』

 

『……でも、困ったら言ってね?』

 

 ……か。

 アホか。むしろ役に立ちすぎだっての。なんなら戸塚が居なかったら全てが上手くいかなかった可能性だってある。

 だからそんな戸塚が俺なんかと一緒に過ごした事で喜んでくれたのなら、俺なんかが一緒に居る事で誕生日を楽しんでもらえたのなら、それは友達として光栄の至りだ。むしろ俺には分不相応すぎんだろ。……

 まったく、俺なんぞの底の浅い心配など、こんなにも強くて格好いい戸塚には無用の長物だったな。八幡反省。

 

 

「それに、さ」

 

 戸塚の素晴らしさに改めて感激していると、どうやらまだ話は終わってなかったらしく戸塚はさらに言葉を続ける。

 すると戸塚はなぜか急にもじもじと身体を揺すり始め、前髪をいじいじと弄ったりパーカーのジップを上げ下げしたりと落ち着かないご様子。え、どしたのん? そんなに恥ずかしがっちゃうような流れだったっけ?

 

「そ、その……クラスが替わっちゃってから、前みたいに毎日会えなくなっちゃったじゃない……? だからその……誕生日くらいは、八幡と一緒に居たかったな、って」

 

「よし、すぐにでも結婚しよう」

 

「な!? も、もう! ぼくすっごく真剣に話してるのに、八幡はすぐそうやってぼくをからかうんだからっっっ!」

 

 

 これはあかん。あまりの愛おしさについプロポーズしちゃった。だって仕方ないよね? このシチュエーションでプロポーズしない男なんて健全とは言えない。あれ? 不健全かな? むしろ病気だね。

 あと真っ赤に頬を染めてあたふたしている戸塚よ。フッ、甘いな。今のはからかったどころか、八割がた本気だったぜっ。

 

 未だ愛らしくぷくっと怒っている戸塚の頬っぺをつんつんしたいな〜、なんて思いつつも、これ以上戸塚を愛でるのは理性がヤバそうなので一旦落ち着こう。

 そして一旦心を落ち着けてみると、ふと疑問に感じてしまった事がひとつ。

 

「つーかそういう事なら、早めに誕生日だって教えてくれてれば良かったんじゃねーの?」

 

 そうなのだ。なんで戸塚はそう言ってくれなかったんだ? そうしてくれてればもっと事前に色々と準備できたし、本日のパスポート代だって俺が払ったのに。

 

「むー、からかっといてすぐそうやって話そらすのは反則だよ八幡!」

 

 だが戸塚は俺からの質問など気にも止めず、まだぷんぷんと怒ってて可愛くて仕方ない。

 

「おう、すまん彩加」

 

「っ〜〜〜!! も、もぉぉぉ! だからそういうとこズルいってばぁ!」

 

 やだもうこのままお家に持って帰っちゃおうかしら! やはり一家に一人は欲しいよね、戸塚。まぁ俺が買い占めちゃうから他のお家には譲れませんけど。

 

「……だって」

 

 戸塚は真っ赤な頬っぺたをあらかた膨らませてようやく損ねた機嫌をいくらか落ち着けたのか、未だつんと尖らせた唇のままで、俺からの質問に対する解答を始める。

 

「なんか、自分から誕生日アピールするのも少し厚かましいし恥ずかしいでしょ……?」

 

 と、意外にも俺と同じような理由で誕生日のお知らせを躊躇っていたようだ。

 なんと奥ゆかしい大和撫子か。あえて名前は出さないけど、なんの臆面もなく「ちなみにわたし四月十六日ですよ、先輩」とか言えちゃうどこかの撫子に是非とも教えてやりたい。

 

「それに、ほら、八幡って優しいから、ぼくが誕生日教えちゃったら、気を遣って色々と準備とかしてくれちゃいそうだし……たぶん今日のパスポート代とかだって出してくれちゃったでしょ……?」

 

 ちょっといろはすー!? ねぇ聞きましたー!? これこれ、可愛い女の子にはこういうのが欲しかったんだよ!

 

「確かに誕生日に男友達と騒いで遊びたいっていうのはあったんだけど、でもぼくがしたかったのは八幡に気を遣ってもらって遊ぶとかそういうんじゃなくって……。だからホントは今日誕生日って言わないつもりだったんだ。あはは、八幡にはすぐ様子がおかしいってバレちゃったけどね! 八幡にそう聞かれて嘘は吐きたくなかったから」

 

 ほんのりと頬を染めて、にっこりと微笑む戸塚。この子ホント天使すぎんでしょ。「フハハハハ、八幡よ! 神々の気紛れにより我がこの現世(うつしよ)に降臨した記念すべき日を知りたいとな!? フッ、では仕方ないのう、どうしてもと言うのであれば、教えてやらんこともないぞ?」みたいなことを去年の十一月くらいにほざいていた材木座と同じ人類とは思えない。てかただの回想なのに死ぬほどうぜぇ。

 もちろん興味なかったから放置して帰ったけど。

 

 

 ──しかし。

 

 

 確かに戸塚は本当に優しくて気遣いの出来る奴だ。これは揺るぎない事実である。……あるのだが、でもその気遣いが、ほんの少しだけ寂しいと感じてしまう時もある。

 

「アホか。んな事に逆に気を遣ってんじゃねぇよ」

 

「……え?」

 

 俺からの思いがけない言葉に、僅かに表情を強ばらせる戸塚。

 俺はそんな戸塚の頭にぽんと手を起き、ぐしゃぐしゃと乱暴に撫でてやるのだ。

 

「あー、あれだ。そういうとき相手に気を遣うもんじゃないんじゃねーの……? その……と、友達なんだから。……みずくさいから、これからはやりたい事とかあんなら、気を遣わずにはっきりと言え」

 

 なんか言ってる事があまりにもキザったらしくて、恥ずかしすぎて戸塚の方を向けやしない。だからこそ俺は乱暴に頭を撫でてるのかもしれないな。戸塚にこんな情けない顔を見られないように。

 

「ちょ、八幡! もう! やめてよぉ! ……えへへ、うん……! でも分かった、友達だもんね! これからは遠慮なく言うね。だからこれからもずっと仲良くしてね、八幡っ」

 

 

 

 

 ──馬鹿馬鹿しい。なにが寂しく感じる時がある、なにが気を遣わずにはっきりと言えだよ俺。他の誰でもない、俺自身こそが今まで一番戸塚に気を遣ってたじゃねぇか。

 ……いや、違うな。俺が気を遣っていたのは戸塚にではない。自分自身に気を遣っていたのだ。

 

 思えば俺は今まで、心の底から本気で戸塚を友達だと思った事があっただろうか?

 ……分かっている。多分それは無いだろう。俺は俺に気を遣いすぎて、どこかで線を引いてしまっていたから。

 

 友達だと思ってたのが俺だけだったらどうしよう。

 

 友達だと思ってたのに、クラスが……学校が違ってしまった瞬間に一切の連絡が途絶えてしまったらどうしよう。

 

 そんな、自分を深く傷つけるであろう事態から自分を守る為に、俺は戸塚にでさえも線を引いてしまっていた。だから俺は未だに自分はぼっちだとか馬鹿な事を平気な顔して嘯(うそぶ)けるのだ。

 

 

 ──ふざけんな、世の中にこんなに恵まれたぼっちが居るわけねぇだろ。

 

 

 こんなにも真っ直ぐに俺を友達だと言ってくれる戸塚。それなのに俺は、そんな戸塚の目の前でさんざん黒歴史を語ってぼっちアピールをしてきた。

 俺が自身をぼっちだと宣う行為は、誰よりも戸塚に対して一番失礼な行為ではないだろうか?

 

 自分に気を遣うあまりにそんな非道い行為を平気で行っている俺が、戸塚に対して「友達なんだから気を遣うな」だなんて……「気を遣われると寂しい」だなんて……おこがましいにも程があんだろ。

 さっきの戸塚の気遣いに感じた寂しい思いを我が身に置き換えたら、果たして俺は今までどれだけ戸塚に寂しい思いをさせてしまったというのだろう。

 

 本っ当にどうしようもないアホだな俺は。

 こんなアホが、果たして戸塚の友達などという身に余る重責を担う資格などあるのだろうか?

 

 

 ──でも、それでも、そんな俺を天使は友達だと言ってくれる。

 だから俺は戸塚のこの眩しい笑顔に誓おう。もう、下らない自分可愛がりはやめよう、と。もう、ぼっちだなどと卑下するのはやめよう、と。もう戸塚に遠慮するのはやめよう、と。

 ……戸塚は俺の友達だと、胸を張って言えるようになろう、と。

 

 

 そして俺は言う。今までの人生でずっと誰かに言いたくて、でも誰にも言えなかったこの言葉に、ありったけの思いを込めて。

 

 

「おう。これからもよろしくな、親友」

 

「っ! えへへ、うんっ!」

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

「あ! 八幡!」

 

「おう」

 

「今日ぼくのお願い聞いてくれたから、八幡の誕生日は期待しててねっ。八幡が喜んでくれるなら、ぼくなんでもするから!」

 

「なんでもッ!?」

 

「ひっ、ちょ、恐いよ八幡……!」

 

「お、おおおう、す、すまんな」

 

「う、うん、すごい詰め寄りだったからビックリしたよぉ……。あ、な、なんでもって言ったって、ぼくに出来る事だけだからね……!?」

 

「……お、おう!」

 

 

 

 

 それ以来戸塚に遠慮する事をやめた俺は、エキゾチックな戸塚か制服姿(女子)の戸塚で散々悩んだ末、誕生日に家に招いて小町の制服を勝手に借りて戸塚に着てもらう事(男の子としての最後の矜持らしく残念ながらジャージとスパッツだけは着用)となるわけだが、それはまた別のお話。

 

 ちなみに恥ずかしがる戸塚を言い包めて撮影会をしたため怒ってしばらく口をきいてくれなくなったり、勝手に制服を借りて戸塚に着せた事がバレて小町にもしばらく口をきいてもらえなくなったりと、涙で枕を濡らす日々が訪れる事となるわけだが、それでもあえてこれだけは言わせてもらおう。

 

 

 

 

 

 我が生涯に一片の悔いなしッ!

 

 

 

【挿絵表示】

 






ルミコンの皆様まことに申し訳ありませんでしたm(__;)m
ルミルミは次回へ持ち越しですm(__;)m



というわけで、イイハナシダナーをラストで台無しにする作品を書く事でお馴染みな作者がお贈りした、この短編集では初のとつかたんでした☆

ま、まさかメインヒロイン(ゆきのんガハマいろはす)以外で初の生誕祭SSが戸塚とは……汗
こちらの短編集では戸塚は書かないと決めていたはずなのに、つい出来心で('・ω・`)
(あとラストのしょぼい落書きも出来心ゆえのご愛嬌という事で…白目)


そして毎度毎度デートと言ったらディスティニーでホントすみません。
私あそこら辺はディズニーくらいしか分からないんで、きちんと描写を書こうとするとディスティニーデートくらいしか書けないんですよね……(´Д`;)




ではまた次回お会いいたしましょうっ!ノシノシ


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