仮想世界の先駆者   作:kotono

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第三十九話

『最近、手口がどんどん精神的なダメージを与える感じにシフトしている気がする............』

 空が明るくなって、部屋の窓から光が差し込みだした明朝、目を覚ましたオレの本日初めの心情がこれだった。

 セットした記憶の無い起床アラームがオレの耳に直接鳴り響く。

 本来、SAOでの目覚まし機能はどうやってかは知らないが、脳の覚醒を直接促すものらしく、音など要らない。

 それでも、目覚まし機能に音がつけれるのは、製作側の配慮、または遊びだろう。

 さて、この不必要なサウンドエフェクトが音量最大にしてセットされてる訳だが......これ超うるさい。

 現実世界なら耳がおかしくなりそうだが、仮想世界ならただただうるさい。

 大音量にしたヘッドフォンを耳に貼り付けられてる感じだ。

 

 このままでは気が狂いそうなので早々に止めたいのだが、それもできない。

 なぜなら、オレの体が縛られてあるからだ。

 それも、ただ縛られているだけではない。

 ここで、できれば直視したくない現実に目を向けることにしよう。

 

 目と鼻の先、僅か10㎝にも満たない距離にある青髪イケメンの顔。

 縛られて密着したコイツの体は昨日から継続して亀甲縛りのまま、装備が何故かインナーしか着ていない。

 

.......。

 

.................。

 

.......................。

 

 

「アルゴォォォォォォ!!!!?? いくらなんでもこれはないでしょ!!!!? っていうか、ディアベル!!!何でテメェはこの状況で寝てんの!!?オレが寝落ちする時、まだ起きてたよな!!!? おいコラ、さっさと起きやがれこの変態イケメン野郎!! そして、可及的速やかにオレを解放してくださいお願いします!!!ちょっ、寝息がかかってる!!? キモいキモい!!!いやぁっマジ%#%€¥¥&£%€$*#"!!!」

 響くアラーム音よりもうるさい叫び声を発しながらユウはじたばたしだしたが、眠りが深いのかなかなか起きない青い悪魔。

 そして、隣の部屋では、アルゴが満足気な笑みを受かべて隣の部屋の惨劇など気付くわけもなく、静かに寝息をたてていた。

 壁越しに騒音が入ってこないのも仮想世界の特徴なのである。

 

 

 

 

 

 時刻は移り変わって、お昼時。

 ユウは多すぎる人波に辟易しながらウルバスの南区へ足を動かしていた。

 あれから、起こしたディアベルと協力して縄を切って、もう一度ディアベルを縛って部屋に転がし、外に出たのだが、その頃には大分時間が経っていた。

 ちなみに、隣の部屋の住人はすでに出掛けていた。

 もはや、鮮やかな犯行過ぎて尊敬してしまう。

 尊敬したので、オレももっと鮮やかな手口を追究しようと思います。

 

 

「これで、鍛冶屋の情報すら嘘だったら一生外を出歩けないようにしてやろう」

 人の流れに乗って、歩を進めつつ、そうボヤく。

 

 まぁ、あの鼠は情報に関しては嘘はつかないので、これはただの愚痴で終わるだろうけど......

 

「あなたも武器の強化にきたの?」

 突然、いつのまにか隣にいたフーデットケープで顔を覆ったプレイヤーが話しかけてきた。

 

「............誰?」

 

 ここで素直に返答してあげないのがユウというプレイヤーである。

 

「......たった3日前にアナタとパーティ組んだ人ですが?」

「.................?」

「...........アスナよ。アナタは顔が見えないとわからないのね」

「............えっと、誰でしょうか?」

「えっ?あれっ?アナタ、ユウよね?」

「違いますけど......」

「うそ......違う......?あ、ごめんなさい。人違いでした。困らせてしまってすみません......」

「あ、あぁそういうことですか。気にしないでください。間違いくらい誰にでもありますよ」

「ありがとうございます。それじゃあ、私はこれで失礼します」

 そう言って、フーデットケープのプレイヤー、アスナは足早に去っていった。

「............」

 よし、作戦成功。

 どうやら、今日は戦闘用の装備じゃなかったコトもあって、うまく誤魔化せたようだ。

 他人のふりが成功したことにほくそ笑み、オレは止めていた足を動かした。

 

 

 

 カンカンカン......

 少し歩くと金属を叩く音が聞こえてきたので、オレは音源のほうに向かう。

 そこには割りと多くの人が集まっていた。

 そりゃあそうだ。なんせ、SAOで初のプレイヤー鍛冶士なのだ。

 商売にするくらいだから当然、NPC鍛冶屋より成功率は高いはずで、さらに二層開通して間もない。

 需要があるのだろう。そう言うオレも強化しにきたクチだし。

 しかし、これは結構待たなきゃいけないようだ。

 昼時というのもあって行列ができているし、これは一端出直すのも有りかもしれん。

 

「いやぁ、それにしてもよかった。これでアスナと二人で並んで順番がくるまで小娘の暇潰し相手するとかなさそうだし。騙しておいて正解だったなぁ.....」

 思わず、といった具合にひとりごちた。

 今日はオフなのだ。休日を無駄に浪費するのだけは避けなければいけない。

 すでに半日は鼠に食われているのだが、それはもう仕方ない。

 さぁ、ウマイ料理でも食いにいきますか!と、内心のみ盛り上げて、踵を返す。

 

「こんにちは、『ユウ』。私、あの行列が掃けるまでそこらで時間潰そうと思ってるの。ちょうど良いから小娘の暇潰し相手になりなさい」

 

 

 後ろを振り返ると鬼が立ってました。

 そういえば、あなた様も強化しにきたんでしたね......

「Yes ,ma'am」

「All right. Then come together.」(よろしい。では、着いてきなさい。)

「O..Oh,yes.」

 オレとアスナの2回目のバトルはオレの圧倒的、敗北でした。

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