ギルドに行き、エイナに場所を聞く。
ギルのとった行動は。
「エイナとやら、『ソーマ・ファミリア』は何処にある?」
「はぁ…?いきなり来て、何を言ってるんですか?」
あのあと、二人と別れたギルは、『ソーマ・ファミリア』の場所を聞くためにギルドに訪れ、エイナに会っていた。
「貴方ねぇ、他のファミリアにいったい何の用があるのよ?」
「貴様には関係のないこと。とっとと案内するがよい」
「あ・な・た・は・ね・ぇーー!!」
ギルの態度に、怒り心頭のエイナだったが、ベルが最近『ソーマ・ファミリア』のサポーターを雇ったことを思い出した。
「……もしかして、あのサポーターのこと?」
「むっ?貴様知っておったのか。…まぁいい、そう言う訳だ、さぁ案内するがよい」
こ、この人は…!と悪態をついたエイナだったが、無関係ではないことを悟り、ギルを案内することにした。
「で、いったいファミリアに行って、何をする気?」
「ふん。雑種の集団の一つや二つ、無くなっても問題あるまい」
「何言ってるのっ!?」
ギルの物騒な物言いに、エイナは即ツッコミ、問題を起こさないことを条件に案内すると言った。ギルはそれに、ベルが世話になってることもあり、渋々同意した。
ーーーーーー
『ソーマ・ファミリア』ホーム前。
ギルとエイナはそこに立っていた。
「……王足る我が出向いたのだ、入っても問題あるまい」
「……駄目に決まってるでしょっ!!すいませーん、ギルドの者ですが、少しお話よろしいですかー?」
ずかずかと、他のファミリアのホームに入ろうとするギルを止め、エイナは門の前でファミリアの人を呼んだ。
「……ギルドの人が何の用かな?」
「あっ、すいません。私じゃなくてこの人が用があるみたいで…」
門の中から一人のヒューマンの男性が笑顔で出てきた。エイナは隣に立っている、ギルを指差しそう言った。
ザニス・ルストラ。『ソーマ・ファミリア』の団長である。ギルドの者と聞き、何事かと出てきたのだ。
「君かい、用があるのは?」
「ふん、雑種が…。本来ならこのような下種の集まり、潰すに限るが。…こやつとの約束で、此度は手出ししないでやろう」
この物言いに、隣で見ていたエイナは、「な、何言ってるのっ!?」と慌て、ザニスも笑顔は崩していないがその頬はヒクヒク動いていた。
「まぁよい。用件と言う程でもない、リリルカ・アーデは我が貰っていくぞ」
「はぁ…?」
ギルが告げた用件に、ザニスは素で驚いた。
……あんな役立たずが欲しいだと?
ザニスは内心で嘲笑した。
(まぁいい、こいつの態度にはムカついてるし、適当に吹っ掛けておくか…)
「リリルカ・アーデが欲しいだって?それならそれ相応の金が必要になるよ!」
「……ほう」
「そうだなぁ…。1,000万ヴァリスくらいなら譲ってやってもいいよ!」
「い、1,000万ですって…!そんなのあり得る訳ないじゃない!」
「……よかろう」
ザニスの提示した額に驚愕したエイナだったが、ギルは手で制止、上着から小袋を5つ取りだし、ザニスに放った。
「「えっ?」」
「これで問題はないな、…いつまでも下種を見ていると我の目が腐る、行くぞエイナ」
ザニスとエイナは二人揃って驚きの声をあげた。ザニスは受け取った小袋を見て驚愕し、エイナは急に歩き出したギルに、慌てついていった。
「ちょ、ちょっとっ!?本当にあんな大金渡したの!?」
「……口うるさいやつだ、貴様が穏便に済ませと言ったのであろう」
「……で、でも…」
まさか、あんな大金を渡すとは思わなかったから…。後ろをチラッと振り返ると、小袋の中身を見て、喜びの表情を浮かべるザニスが目に入った。
……あんな人に渡さなくても…
ザニスの、人を売り物のように言った言動に腹を立てていた。
「下種の事など考えるだけ無駄だ」
「あ、貴方もいいのっ?あんな大金渡しちゃって、
「口を慎めエイナよ!!我の臣下に対して無礼であろう!!」
ビクッと、ギルの剣幕にエイナは震えた。
「
その言葉に、エイナは目から鱗が落ちたようだった。
……なんだ、いつも言動がアレだったからわからなかったけど、優しいんだ…。
エイナはそれで先程の件を流し、機嫌が良くなった。
「ふふーん」
「……気持ちの悪い奴だ、なんだその目は…」
「人がせっかく…。貴方はっ!」
ーーーだが、ギルは知らなかった、リリは既にホームをあまり利用していなかったことに…。
そのせいで、リリにこの話が伝わらなかったことに…。
それが分かったのは、
ーーーーーー
「ベル君。そのサポーター君は、本当に信用に足る人物かい?」
「え…」
ダンジョンから帰った後、王様のいないときに、僕は思いきって神様にリリのことを話した。危険がなくなるまでリリを僕達のホームに匿えないかどうか、そう思って。
だが、話を黙って聞いていた神様は、ゆっくりと僕に問い返した。思わずテーブルを乗り出そうとしたが、神様の静謐な瞳に、何も言えなかった。
「君の話を聞く限り、そのサポーター君はどうもきな臭いように思える。…多分王様君も薄々気付いている」
唐突な出会い、彼女を付け狙う冒険者の存在。
「で、でも王様はリリのことを気に入って…!」
「それが君を守るためだとしたら?」
……ッ!そんな、じゃあ王様は…
「ごめんね、客観的な口振りでこんなことを言って。あの娘を見てきた君達が正しいのかもしれない。…でも僕は、あえて嫌なやつになるよ」
君達の方が大事だから、と言葉を続けて。
「君の言う冒険者の男に疑われる何かを…彼女は隠し持っているんじゃないかい?」
……それはもしかしたら、僕が考えないようにしてきたことなのかもしれない。
神様に真っ直ぐ見つめられる僕は、しばし動きを止め、それまでのリリとのことを、全部思い返していった。
「神様、僕は…」
「……何の話をしている、貴様ら…」
そこで、王様が帰ってきてしまい、僕は言葉を続けることができなかった。でも、
ーーー僕の覚悟を決めた目を見て、神様は優しく微笑んでいた。
「さぁ、この話はおしまいだよベル君。シャワーでも浴びてきたまえ!」
「は、はい」
王様が帰ってきたことによって、それまでの空気を一変させ、神様はそう提案してきた。僕もそれに同意して、シャワーを浴びに向かった。
ーーーーーー
「ヘスティアよ、何を話していた?」
「……サポーター君のことだよ…」
「ああ。それはもうすんだことだ、気にするでない」
ベルのいなくなった、小さな部屋でギルは問そう言い、ヘスティアは首を傾げたが、でも、と言葉を続けた。
「君は、
「はて、何のことやら?」
ギルはニヤニヤしながら、茶化すようにそう返した。ヘスティアはそれに取り合わず、真面目な顔で再度聞いた。
「君は本当に、サポーター君を信じるのかい?」
「……」
ヘスティアの真面目な雰囲気に、ギルもニヤニヤするのをやめ、その目を見返した。
「サポーターなんぞを、我が信用するとでも思うか?」
「ならーーー」
どうしてだい?と問い返す前に、ギルはだがと、言葉を続けた。
「信用出来ぬものを、我が臣下にするとでも思うか?」
「……ふふ。そっか、なら後は任せるよ!」
ヘスティアは笑顔でそう返した。