ダンジョンに英雄王がいるのは間違っている   作:あるまーく

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リリの今後について話すベルとヘスティア。

ギルは一人、何かに気づき街に消えていってしまった。




王の試練
先生


「……王様は行っちゃいましたけど、リリの今後について話して大丈夫ですか、神様?」

 

「王様君は、本当にフリーダムだねぇ…」

 

「あはは…」

 

とあるカフェテラスで、ギルを除く三人で、リリの今後について話をしていた。

 

しかしギルは、話す前に何かに気づいたのか、一人街に消えていってしまった。

 

ヘスティアはギルのいつもの態度に呆れ、リリは神様の言うことを聞かないギルに乾いた笑い声をだした。

 

「……君の事情は概ね理解した。王様君とベル君に、恩義を返すって君の言葉が真実ならね…」

 

「か、神様っ!?」

 

「あり得ません。リリはお二人に多大な恩を受けました。その恩に報いるためなら、リリは命も捧げましょう」

 

ヘスティアの辛辣な言葉に、ベルは驚いたが、リリはまっすぐ目を見て、そう返した。

 

「……うん、わかった。君を信じるよ」

 

「よ、良かった…」

 

「……でも、リリはまだ正式(・・)にファミリアを脱退していません。本当によろしいんですか…」

 

リリは顔を俯かせたまま、言葉を紡いだ。

 

「『ソーマ・ファミリア』を脱退するには、恐らく大量のお金が必要になります。…王様が取り返して貰った分もございますが、足りないとリリは思います」

 

「金か…」

 

「あの、ファミリアから抜けるって、そんなにお金かかるんですか?」

 

「その主神次第だね。申し出を取り合わない(ヤツ)もいるさ」

 

リリはあの後、ファミリアにて自身の足跡を書き換え、一応行方不明(・・・・)となっている。……その際リリは隠蔽工作を行うため、他のファミリアの者とは会っていない。

 

ーーーだからギルが既にお金を払っていたことに気づかなかった。

 

「でもお金が貯まったら、リリは自由になれるんでしょ?」

 

「……そうですが…」

 

「だったら僕が、今以上に稼ぐよ…だから」

 

「そんな、ベル様にそんなご無理をーーー」

 

「リリも一緒に頑張ろうよ!」

 

させられない。そう言おうとしたが、ベルが言った言葉を理解し、リリは驚いた。

 

「……はい。リリは精一杯頑張ります!ベル様、よろしくお願いします!」

 

「うん!」

 

「流石、僕のベル君だぜっ!」

 

二人のやりとりを、ニコニコしながら見ていたヘスティアはベルの腕に自身の腕を組み言った。

 

途端、ベルは顔を真っ赤にさせ、リリは一瞬だけきょとんとしたが、直ぐにはっとして。

 

ーーーぱしっ!とベルの反対側の腕に抱きついた。

 

「なっ!?」

 

「リ、リリッ!?」

 

「違いますっ!ベル様は神様のではありません!」

 

突然、両腕に抱きつかれたベルはパニックの極みに陥った。

 

ヘスティアはリリの行動に驚きの声をあげた。

 

「何をしているんだっ!?君は王様君が好きなんだろう!?」

 

「リリは王様にお仕えしているんです!好きなお方は……」

 

チラッと、横目でベルを見やるリリ。その視線に気づいたヘスティアは、憤慨した。

 

「うがーっ!?ベル君から離れろーっ!!」

 

「神様こそ離れて下さいっ!!」

 

間で挟み撃ちにされたベルは、パニックの中事が終わるのを願った。

 

ーーーーーー

 

「いい加減覚悟を決めるがよい、雑種」

 

「……」

 

日が当たらない、路地裏にてギルは虚空に喋りかけた。

 

先程、カフェテラスで集まった時に視線を感じ、その気配を追いかけ、この路地裏まで追い詰めた。

 

そして、路地裏の奥からスッと、金色の髪を揺らしながら一人出てきた。

 

「……あの時の雑種か…。見逃すのはあの時が最後だと言ったはずだ、先の不躾な視線、その身で払うがよい」

 

「待って」

 

右手を上げ、あの時のように槍を出現させた瞬間、現れた金髪の髪の者ーーーアイズは、ベルがこの前落としたプロテクター(・・・・・・・・・・・・・)を出した。

 

それに見覚えがあったギルは、一先ず射出するのを止めた。

 

「むっ。それはベルのではないか、何故に貴様が持っている?」

 

「……この間、ダンジョンで会ったとき、落としてたから…」

 

拾った、アイズはそう言ってギルの方に近付き、それを渡した。

 

「……あやつめ、またこやつに借りを作るとは…。ちっ」

 

受け取ったプロテクターを観察した後、軽く舌打ちをし、槍を消した。

 

「ふん。盗み見していた不敬は許してやろう、雑種」

 

「待って、まだ用が、あるの」

 

「相も変わらず、煩わしい雑種だ。さっさと述べよ!」

 

もう用はないと、反転して戻ろうとした矢先呼び止められ、ギルは不快感を隠そうとせず言った。

 

「……この間の、お礼を言いたくて…」

 

「雑種のことなど、いちいち覚えておらん!礼などいらん!」

 

アイズは、怪物祭にて助けてくれたお礼をしようとしたが、ギルはそれを切り捨て、戻ろうと歩き出した。それを見て、しょぼんとしたアイズだったが。

 

ギルは、数歩歩いた所で止まり、何かを思い付いたのか、アイズに向き直った。

 

「……雑種、礼がしたいと申すなら、我に考えがある」

 

「……?」

 

「何簡単だ、ベルに闘い方を教授してやれ」

 

アイズは、その内容に首を縦に振った。

 

ーーーーーー

 

「じゃあサポーター君は、王様君をどう思ってるんだい?」

 

「その、こんな人がお父さんならなぁと……」

 

「あっ。わかるよリリ、僕もよく思うし…」

 

「う~む。何となく分かるかなぁ…」

 

三人とも過去の記憶を思い出すように、上を見た。

 

「お父さんですね」

 

「お父さんだね」

 

「僕神様だけど、王様君はお父さんだね」

 

「何を抜かしておる、貴様ら…」

 

「「「うわあっ!?」」」

 

三人が同じ結論を出したとき、戻ってきたギルが後ろから声をかけ、三人は仰天した。

 

「お、王様…」

 

「い、いつから…」

 

「聞いていたんだい…?」

 

「ふん。貴様らが、天を仰いでる時からおったわ」

 

三人は戦慄した。ギルに聞かれ、いったい何をされるのかと…。

 

「さっさと帰るぞ貴様ら…。明日は早いぞ」

 

「「「えっ?」」」

 

「貴様らが王としての我を慕うのは当然。だが、家族としてどう思うのかは、貴様らの自由だ」

 

怒らないことに疑問を持ったが、三人は顔を見合わせ、もしかして許してくれるのではと、ギルに向き直った。

 

「お父さん…」

 

「お父さん…」

 

「お父さん…。いや、お義父さんっ!ベル君を僕に下さいっ!」

 

「ふん!」

 

「アイタァッ!?」

 

一人調子に乗ったヘスティアに拳骨が落ちた。

 


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