そして、市街の上にやって来たベルは。
アイズと訓練することになった。
「起きろベル」
「……むにゃ…。あれ王様?こんな早くにどうしました?」
まだ夜明けが始まってない時間。僕は王様に起こされた。
「さっさと支度をしろ。ダンジョンに行く前にせねばならん」
「ふぁい。ちょっと待ってて下さい…」
僕は今だ覚醒してない頭で着替え、王様と一緒にホームを後にした。
そうして、いつも行っているバベルとは反対側、都市をぐるりと囲っている市街の上にやって来た。
「王様、いったいここになんの……。えっ!?」
「おはよう?」
「ふん、雑種が。後は貴様の仕事だ」
黄金の髪をたなびかせ、その二つの瞳と目が合った瞬間、頭が真っ白になった。
……なんで、アイズさんがここにっ!?
固まった僕を、金髪の二人は首を傾げて見ていたが、僕はその二人にゆっくりと背を向けた。
そして直後、元来た道に向かって全力疾走を開始した。
「……何処へ行く気だベルよ」
「グェッ!?」
が、逃げ出そうとした僕の首根っこを王様が掴み、僕はカエルが潰されたときの鳴き声を出して、その場で止められた。
アイズさんはその様子を見て、大丈夫?と首を傾げていたが、全然大丈夫じゃないです!
「ええっ!?なんで、どうして、…ええっ!?」
「朝から元気なやつだ…。それだけあれば問題あるまい」
「今日から、少しの間だけ、闘い方を教えるの」
僕の疑問に答えたのはアイズさんだった。いや、聞いてないですよ、王様!
「いやいや、無理ですって王様!?」
「何を狼狽えておる、貴様にとっては願ってもないことだろう?」
そうですけれどっ!でも、心の準備が…。
しかし、いつまでも狼狽えている僕を見て、アイズさんは逆に落ち込んでいた。
「嫌なの?」
「い、嫌じゃないですっ!嫌じゃないんですけど…」
こんな弱い僕の為に、アイズさんが師事するなんて本当によいのだろうか…。
僕が一人悩んでいると、王様がちっと、舌打ちをした。
「いつまでもうじうじ悩むでない、たわけ。王足る我の決定だ、貴様らの言い分等どうでもよい!」
王様の剣幕に何も言えなくなり、僕はアイズさんと訓練することになった。
……でも王様、ありがとうございます!
内心で王様に感謝して。
ーーーーーー
「グェッ!?」
闘い方を教授することになった矢先、アイズの蹴りによってベルは吹っ飛んだ。
その体は、地面を擦りながら勢いを落としある程度進んだ所で止まった。しかし、ベルは意識を落としのか、ピクリとも動かなかった。
「……雑種、そんなに貴様死にたいのか?」
「……!?」
先の路地裏の時と同じ様に、ギルは背後に槍を出現させた。アイズはそれを首を勢いよく横に振って否定した。
「たわけぇ!いきなりベルを蹴りよって、何が違うかっ!」
「ま、待って!今のは、始めてで、その…」
アイズも初めて闘い方を教えるため、何をどうしていいか分からず、ベルの獲物がナイフと知り、とりあえず体術の見本を見せようとした。
が、慣れないことをしたためか、近くにいたベルを蹴り飛ばしてしまった。
「次は、大丈夫、…?」
「貴様もしや、我をおちょくっているのか?」
首を傾げての頼りない言い分に、ギルは頬をひくつかせ今にも射出させようかと思った。
「う~ん?」
「起きたかベルよ?」
「……ごめんね、大丈夫?」
が、ベルが起きたためとりあえず見逃した。次やったら確実に仕留めると、心の中で決めて。
その後はギルの提案により、アイズとベルが闘う形式で教えることに落ち着いた。