ダンジョンに英雄王がいるのは間違っている   作:あるまーく

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混乱するオラリオ

「きゅ、宮殿が…っ!タンムズ、今の爆発は一体何だ!?」

 

「わ、わかりません!連絡隊からも事前に報告はありませんでした…。」

 

「じゃあ何か!?フレイヤ(あの女)がやったんじゃないって言うのか!?」

 

「で、ですから、イシュタル様…。報告もないので自分にはわ、わかりません!?」

 

粉々に瓦解した宮殿の裏手。そこにある庭園で集まっていた『イシュタル・ファミリア』の面々は、突然歓楽街から隔離するように上がった炎。宮殿を、そして自身が治める街を半壊させた馬鹿デカイ閃光に、混乱していた。

 

先程まで戦争を前に興奮していた意識は、次々と起こるイレギュラーによって吹き飛ばされてしまった。

 

あの女が事前に察知して、襲撃してきた…。ありえない!あの女のホームの近辺には何人か人を置いた、何か起これば一人くらい戻ってくるはず…。

 

突然の出来事に混乱する眷族の者と違い、イシュタルは一人黙考する。

 

……それとも他の(・・)ファミリアが襲ってきた…?しかし、何で今日何だ?

 

分からない…。自身がいかに下界の子と違い、神と言えど情報が圧倒的に足りなさすぎる。ちっ、と舌打ちをしてから、今尚混乱しているファミリアに神威を飛ばした。

 

「……落ち着けお前ら(・・・・・・・)

 

超越存在(デウスデア)たるイシュタルが放ったそれは、混乱している眷族を静めるには充分すぎるものだった。

 

「いいかお前ら…。何処のどいつがやらかしたが知らないが、うちが襲撃されたんだ。…そいつらは絶対に許す訳にはいかない…」

 

自身の声音に聞き入れる眷族達、その瞳には既に襲撃者への憎悪が見てとれた。

 

「……儀式が始まるまでにはまだ時間がかかる。お前らはその襲撃者の足止め…。もしくは…」

 

もし、『フレイヤ・ファミリア』が攻めこんで来ていた場合の対処。それが違う者の場合は…。

 

「……殺せ!」

 

うちらのファミリアを舐めた真似に報いる罰を。イシュタルは自身の目の前にいる眷族に伝え、眷族はそれに答え、炎が燃える夜の街に疾走していった。

 

ーーーーーー

 

「一体何が起こってたのよ!?」

 

私エイナ・チュールは、本日のギルドの仕事も終わり家で夕御飯を食べ、もう寝ようかと思っていました。

 

最近はあの言うことを聞かない人が、ダンジョンに行かなくなったとベル君に聞いて、胃が大分安定していたのですが…。まぁベル君もベル君で、今日中層に入るんだとかで少し胃が痛くなったが…。

 

今、街はとてつもない大混乱に陥っています。

 

歓楽街の周りを囲むように燃える炎。そして、夜の街に轟く轟音。目撃者が言うには轟音の正体は、宮殿を貫く極大の閃光らしい…。

 

ありえない…。そう思っていたのですが、後から合流したミイシャも見ていたみたい。

 

そう私達は、夜中にも関わらず突然の事態に対応すべくギルドに向かっているのですが…。ああ…、またイレギュラー…。報告書とか色々書くのかな…。胃が痛い日が戻りそうです…。

 

隣で走っているミイシャも同じようで悲痛な顔をしてる。

 

……最近の私の不幸は絶対あの人のせいがする…、今度会ったら文句でも言ってやる!

 

ーーーーーー

 

男は炎上する街を、何事もないように歩いている。

 

歓楽街としてきらびやかな光を灯していた場所は、燃える炎に呑まれ、その輝きは赤色の炎に変わっていた。

 

街を囲むように燃えていた炎は、建物から建物へと移動し、その勢いは増していき。燃える炎から灼熱の業火に変わっていく。

 

……まるで誰かの心のように。

 

「おい、お前っ!ここで何している!?」

 

男の眼前に武器を構え、敵意を向ける娼婦達が現れる。

 

「……」

 

男は何も答えない。表情も変えず、目の前に現れた娼婦に目を写す。

 

しかし男は立ち止まることもせず、娼婦達の方向ーーー正確には後ろに控える建物に歩んでいる。

 

「お前聞こえないのか!?これ以上動くと…ッ!?」

 

娼婦は愕然とした。男の後ろの空間が歪み、そこから顔を覗かせる自分達と同じ数(・・・・・・・)の武器に…。

 

「ぁ、あ!?も、もしかしてお前が…」

 

その異常な光景に、その娼婦は答えに辿り着き他の娼婦達も戦慄しながらも答えに至った。

 

……誰がこの騒動の犯人なのかを…。

 

「お、お前ら!?こいつをイシュタル様に…」

 

……それ以上は言葉に出来なかった。

 

顔を覗かせていた武器は、その名を口にした瞬間。娼婦達を貫いた。

 

閃光と同じ速度で射出された武器は、その一撃で娼婦達は屍とかした。

 

その悲惨な光景を前にしても、男は何も語らず歩みを止めることはなかった。

 

ーーーーーーー

 

ギルドの前。そこにはオラリオ最強のファミリアの主神が揃っていた。

 

『ロキ・ファミリア』主神、『悪戯者』ロキ。

 

『フレイヤ・ファミリア』主神、『美の女神』フレイヤ。

 

一人は、自身のファミリアが遠征に出てるため、このイレギュラーに対し動くすべがなく、情報を求めギルドに。

 

もう一人は、眼下で起こったイレギュラーにホームに戻り、情報を求めるようファミリアのメンバーを動かそうと。

 

だが二人は出会うまで、このイレギュラーの犯人はこいつだと思っていた。何故ならイシュタルはオラリオの都市において、一級品の実力派ファミリア。

 

それがこうも一方的に攻められるとしたら、都市最強のファミリアを冠しているファミリア以外考えられない。

 

ロキは天界でも『悪戯者』と悪名名高い女神。隠し玉の一つや二つ持っていてもおかしくない。第一、天界で神相手に争い事を望んでいた者だった。

 

フレイヤもまた、イシュタルと同じ『美の女神』。イシュタルとの確執もまた他の神々も既知のこと。いつ襲撃していてもおかしくはない。

 

そう思っていたのだが、お互いに顔を見合わせた瞬間驚愕した。

 

その驚愕した表情を見た瞬間、お互いに分かってしまった…。

 

こいつではないと…。

 

「……ロキ、私達の間でややこしいことは…」

 

「わかってるちゅうねん…。うちも何も分からんわ…」

 

「……そう。あなたも…」

 

お互いに溜め息を吐き、この騒動の原因が分からないことに難色を示した。

 

以前として歓楽街の炎はとまどることを知らず、今もこの騒動に街の子供達、神々もその方向に目を向けている。

 

そうしていると、ギルドに疾風が走り、何人かの集団ーーー『フレイヤ・ファミリア』の第一級冒険者、そしてオッタルが姿を見せた。

 

「フレイヤ様…」

 

「状況は?」

 

突如として現れたオッタル達に二人の神は驚愕することもなく報告を聞く。

 

「……詳しいことはわかりません。今歓楽街に何人か送りましたが、この火の勢いですと…。我々はフレイヤ様にもしものことがないようここに参りました」

 

「……そう」

 

混乱が収まらない状況。致し方ないとはいえ…。

 

「気に入らないわね…」

 

「あぁ…」

 

二人の女神は、自身の預かり知らない騒動に夜の街を照らす満月をその端正な相貌を崩し眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




中途半端に終わってしまい、申し訳ない。代わりに次回予告を書いておきます。

ーーーーーー

「貴様がイシュタルか…」

「なっ!?」

ーーー運命の邂逅をする二人の神。

「私の願いは…っ!」

ーーー自分の答えを得る、狐人。

そして…。










「……貴様には、人類最古の地獄を見せてやる…!」


ーーー黄金の鍵が開く。

次回『神殺しの王』
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