ダンジョンに英雄王がいるのは間違っている   作:あるまーく

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最近オバロを読みふけってました。


色々Ⅱ

ギルドへと着いた僕と王様であったが、着くなり直ぐに王様はソファーへと座り込み、き本を読み始めてしまた。

 

ギルドの中央でポツンと立つ僕は、内心で凄まじい汗をかいていた。

 

そ、そんな!?僕一人でエイナさんに今までの事を報告するの?そんなことしたら…。

 

脳内で般若と化したエイナさんに、ガタガタと震える兎(僕)のイメージが浮かぶ。

 

そのイメージの余波か、既に僕の体はガタガタと震えている。恐怖でだ。

 

そんな僕の肩に、ポンと手が置かれた。ビクッと体を震わしてから振り向けば…。

 

「ーーーやぁベル君!」

 

「……こんにちはわ」

 

笑顔を浮かべるヘルメス様と、その隣で憔悴しきったアスフィさんがいた。

 

話を聞くに、ヘルメス様達も18階層で現れた黒ゴライアスの事情聴取のために来ていたらしい。

 

そしてそこで罰則金(ペナルティ)を言い渡されたらしい。

 

ファミリアの資金の半分。それがギルドが提示したペナルティらしい。

 

極貧ファミリアの僕らとは違い、中堅どころであるヘルメス様のファミリアにはそれは凄い痛手だ。現に僕らも、同じ条件なら50万ヴァリスで済む。…僕らも痛手ですね。

 

主に話しをしたのはアスフィだったららしく、それで憔悴しきっていたらしい。

 

思わず同情してしまう僕の肩にポンと手を置かれた。

 

「死なないでください…」

 

……僕死んじゃうのかなぁ。

 

どうやらギルドの人、意外にも担当したのはエイナさんだったらしい。何でも、まだギルドは例の事件に追われているらしく、大変らしい。

 

そして先に全てを話してくれたらしい。18階層での黒ゴライアスの襲撃について。

 

……ジャガ丸も、そして偽ベルも。

 

「偽ベル!?何ですかその名前は!?」

 

「聞いていなかったのかい?あのアルミラージ君の名前さ」

 

そ、そう言えば、春姫さんがそんな風に呼んでたっけ。…あの時は王様への恐怖で良く覚えてなかったや。

 

でもその名前はないですよ!一体誰が付けたんだ。一言物申してやる!

 

「ちなみに名付け親は王様君だよ」

 

「いやぁ、とってもいい名前ですね。流石王様です!」

 

ソファーに座っている王様を指差すヘルメス様に、僕は笑顔で答える。…アスフィさんの視線が痛い。

 

その後一言二言激励を残して、ヘルメス様達は去っていった。

 

ヘルメス様達と話して大分楽になった。アスフィさんの言葉が気になるけど。

 

もう覚悟を決めよう。大丈夫、エイナさんはなんだかんだ優しい、きっと死ぬことなんかない。

 

自らを奮い立たせ、顔を上げると…。

 

「ーーーベル君~、こっちに来ようね」

 

笑顔で手招きするエイナさんを見つけた。瞬間、僕は悟った。

 

ーーー王様、神様、今までありがとうございました…。

 

ーーーーーー

 

「あれほど言ったのに、君って子はっ!!」

 

あれからエイナさんに連れられ、ギルドの中にある面談用ボックスへと移動していた。冒険者が担当官と打合せするため、遮音性に優れている。

 

その個室内にて、エイナさんの絶叫が木霊し、僕の耳を、そして体を震えさせる。

 

一体どれだけの時間がたっただかろうか、一時間、二時間、いや実際にはそんなにたっていないだろう。しかし、エイナさんの口撃は凄まじかった。

 

後ろに般若を出現させたエイナさんの矢継ぎ早な口撃に、僕は顔を青白くさせ、黙って受けるしかなかった。

 

「まったく…」

 

「すいません…」

 

一頻り言い終えたのか、大きなため息を吐く。僕はそれに、目元に涙を浮かべ答えた。

 

「でも良かったよ。君が無事に帰ってきてくれて」

 

「エイナさん…」

 

俯いていた顔を上げると、優しく微笑んでいるエイナさん。

 

その瞳には、うっすらと涙が見えていた。怒られたけど、心配していてくれたんだ。

 

何度も何度も心配していたと、告げるエイナさんに僕も頭を下げる。

 

そして偽ベルとジャガ丸の今後について、どうするか、どうするべきかを、僕に説明してくれた。

 

この事を知っているのはまだエイナさんだけらしく、上にもどう説明しようか迷っているらしい。

 

ジャガ丸は名前こそアレだが歴とした階層主。そんな存在をテイム出来るなど前例がない。…ですよね。

 

今は地上の事件に時間も人員も割いていているし、とてもではないが上に話しても冗談だろ、と一蹴され、話にすらならないのが目に見えている。エイナさんも半信半疑だそうだ。

 

偽ベルについては、その存在がギルドに来たことでバレている。一人でここまで来れるとは…、内心で相棒が起こした偉業に感嘆した。こちらは『ガネーシャ・ファミリア』がテイムしたと報告するらしい。何でも、都市でテイムしたモンスターを地上で飼えるのは、『ガネーシャ・ファミリア』のみなんだとか。

 

今は誤報告で済ますが、バレたらエイナさん自身も大問題だ。けれど…。

 

「ーーー君とダブって見えちゃうのよね」

 

……名前も『偽ベル』ですしね。

 

苦笑いを浮かべて告げられた言葉に、僕も苦笑いを返すしかできなかった。

 

けれど、所詮は問題の先送りにしかならない。具体的な策が見つからない限り、偽ベルは表を歩くこともできない。

 

「はぁ…。あの人には沢山迷惑をかけられるね」

 

「はは…」

 

ため息を吐いて出た言葉に、思わず僕も渇いた笑い声を上げる。

 

「そうだった。ごめんねベル君、ちょっとあの人とも話したいから呼んできてくれる?」

 

「王様とですか?分かりました、呼んできます」

 

ふと思い出したように、エイナさんから王様を呼んでくる用に頼まれる。内心で何だろう、と疑問に思ったが、心配も迷惑もかけてしまったエイナさんの頼みを断れる訳もなく、僕は面談室を出てギルドのロビーへと向かう。

 

ロビーへと戻った僕は、先程まで王様が座っていたソファーを見つけるが、そこに王様はいなかった。暇になってギルド内をうろついているのかと思い、周囲を見渡すが、何処にもいない。

 

余りにもエイナさんとの説教(かいわ)が長かったから、帰ってしまったのかな?と僕は、王様が居ないことをエイナさんに伝えるために戻ろうとしたが、ソファーに王様が読んでいたと思われる本が置いてあることに気付いた。

 

……珍しいな。王様がうっかり、物を忘れるなんて。

 

僕は王様が置いてあった本を持って、エイナさんが待つ面談室へと足早に戻っていった。

 

ーーー勿論、王様が居なくなった事にエイナさんは激怒した。

 

ーーーーーー

 

『ヘスティア・ファミリア』ホーム。寂れた教会の地下室。明かりが灯るこの一室に、二人の少女と、一匹の兎がいた。

 

「さて、じゃあ聞かせてくれ。君は一体何処で王様君に拾われたんだい?」

 

「そ、それは…」

 

ベットの上で問いかけるヘスティア。問われた春姫は、ソファーの上に座り込み、その膝に偽ベルを乗せている。が、歯切れが悪そうに、視線をあちらこちらへ移動させていた。

 

ーーー神に子は嘘を付けない。

 

神には下界の子供達の嘘が分かる。故に正直に答えるしかない。しかし、それを春姫はできないでいた。

 

何故なら救ってくれた英雄(じんぶつ)が、この世で最大とされる罪を犯しているからだ。

 

ギルに拾われ、そしてついに憧れの自由を得た春姫。そんな春姫に対しての最大級の試練。馬鹿正直に話そうものなら、どうなるか、それは箱入り娘だった春姫でさえ分かっていた。

 

「どうしたんだい?そんなに難しいことじゃないだろう?」

 

次いで問いかけられるその言葉。今の春姫には、同い年に見えるこの少女が恐ろしく見えていた。

 

……無論、ヘスティアは別段問いただしている訳ではない。ただ単に、ギルが拾ってきたなどと、言ってきたので、本当にそうなのかどうか、その程度にしか捉えていない。…若干、神の直感が警鐘を鳴らしているが。

 

そんな神の気持ちなど露知らず、黙っていた春姫は…。

 

「うぅ…、ひぐっ、うぇぇん…」

 

ーーー泣き出してしまった。

 

「ちょっ!?なんで泣くんだい!?」

 

突如泣き出した春姫に、ベットの上から飛び上がり近寄るヘスティアだが、春姫の肩に手をかけようとした時、その手を偽ベルに叩かれた。

 

「に、偽ベル君!?」

 

『キュイイ!』

 

手を叩かれ後退したヘスティアの前に、偽ベルは春姫の膝から飛び下り、その進行を阻害するように立ち塞がる。

 

……たとえ幾度酷いことをされようと、彼は立派な雄だ。か弱き乙女を守るのは、雄として当然の事。それを本能で理解している。

 

立ち塞がる偽ベルに、ヘスティアは近付くことが出来なくなる。そして、伸ばした手を引っ込めて、小さくため息を吐く。

 

「はぁ…。分かったよ、僕も無理強いするほど聞きたかった訳じゃないからね。後で王様君本人に、聞くことにするよ」

 

まぁ彼が答えるとは思えないけど、と再度ため息を吐くヘスティア。彼に無理に聞き出そうとすれば、いくらヘスティアとは言え、ありがたい拳骨が待っている。…それで済めば良い方なのだが。

 

ヘスティアがもう聞いてこないことを理解した春姫は、目尻に浮かんでいた涙を拭い、前に立ち自分を守ってくれた偽ベルを抱き上げる。

 

「ぐすっ、ありがとう偽ベル…」

 

『キュイイ!!』

 

礼を言われて、それに答えるように鳴き声をする偽ベルに、ヘスティアも良くなついているなぁ、と嘆息する。

 

とりあえず春姫の話は聞かないことにしたヘスティアは、このまま自分のファミリアに入るのか否か、本当に良いのかだけ聞くことにした。自身のファミリアの事情を包み隠さずにだ。

 

「大丈夫です!春姫は王様にこの身を捧げます」

 

「ぶふっ!?は、春姫君…。君、自分が言った言葉の意味、分かっているのかい?」

 

「わ、分かっています!」

 

とんでない発言をした春姫に、ヘスティアは思わず吹き出してしまった。顔を真っ赤に染めながらも、ハッキリと答える。

 

本気で二人の間に何があったのか問い質したくなるが、神に二言はない、と心のうちで抑止し春姫をベットの上で横になるよう指示する。

 

恩恵を与えるために春姫の背中を見たヘスティアは、そこに何も書かれていないこと(・・・・・・・・・)に、他の神の元から逃げ出してはいないことに一先ず安堵した。春姫が脱ぎ出した時から、偽ベルはもうそちらを見ていない。

 

そしていざ恩恵を授けようとしたその刹那…。

 

「ーーー春姫殿ッ!!」

 

「み、命ちゃん!?」

 

地下室へと繋ぐ階段を、落下するようにやって来た命の

大声で遮られる。

 

その呼び名に起き上がったため、上に股がっていたヘスティアはベッドから転がり落ち、頭を強打する。

 

春姫と命の視線が合い、一瞬の静寂の後…。

 

「はるひめどのぉ~!」

 

涙で顔をぐちゃぐちゃにした命に抱き付かれた。抱き付いた春姫をベッドに押し倒し、その体を離すまいとしっかりとその手で包み、わんわんと泣く。

 

そして春姫もその抱き締められた人物に、再び会うことが出来た友達の温もりに、涙腺が決壊したかのように泣き出し、抱き締め返した。

 

「みことちゃ~ん!」

 

ベットの上で抱き合う少女の姿に、現状が理解できないヘスティアは頭を擦りながら、何なんだと小さく呟く。

 

「春姫ー!!」

 

次いでやって来る男の声に、偽ベルの本能に電流が走った。

 

春姫は恩恵を授けるために、今は上半身に着ていた着物を脱いでいる。故にその素肌が露になっている。

 

少女の柔肌を守るのも雄として、そして紳士兎(おうさまのペット)として当然の義務。

 

「ここか、はるひ…」

 

『キュイイ!!』

 

階段から新たに顔を出した大男を、偽ベルは鳴き声を上げ蹴り飛ばした。

 

「ぐはぁっ!?」

 

「お、桜花!?」

 

大男の体を蹴り続け地下室の上、寂れた教会まで突き進む。途中で見かけた少女にはなにもしない。

 

教会の祭壇へと吹き飛ばされた大男ーーー桜花は、突然の偽ベルの強襲に驚きながらもその身を立ち上がらせる。

 

「何をする偽ベルッ!?」

 

『キュイイ!!』

 

階段の前で立ち塞がる偽ベルに問い質すが、モンスターの言葉は理解できない。

 

「……そこを退いて欲しい、会いたい奴がいるんだ」

 

『キュイ、キュイイ!!』

 

構える桜花に、偽ベルは首を振って答える。言葉で通じないなら、行動で示すほかない。

 

桜花は偽ベルへと走り出す。偽ベルも向かってくる桜花を迎撃するため疾駆する。

 

子兎(にせべる)は守りたいものを守るために、Lv.2(強大な敵)へと立ち向かう。

 

ーーー冒険をしよう。

 

……ちなみにこの冒険は、二人の神達が止めに入るまで続いた。

 

ーーーーーー

 

「ーーーそれで?何のようだ雑種」

 

「……雑種じゃない、アイズ。ちゃんと呼んでアイズって。リピートアフターミー、アイズ」

 

「……我は挑発には死を以て遇するぞ」

 

ギルドの前。噴水場となっているその場所に、同じ髪色を持つ男女がいた。水場を囲うより建造されている囲いに腰掛け、ギルはその双眸を釣り上げアイズを睨み付ける。

 

ガーンとショックを受けたアイズは、その肩を下げしょんぼりとした瞳でギルを見つめる。

 

ここに移動するまでの間、あの時の礼を何度かしていたのだが一蹴され、いまだ雑種と呼ばれている。

 

「ふん、それで一体何用だ。我を呼びつけておいて、下らぬ用ではなかろうな」

 

不機嫌そうに、そしてつまらなそうに吐き捨てた言葉に、アイズは顔を俯かせる。

 

今回アイズがギルを呼んだのは、自身の悲願(・・)のためだ。ファミリアのメンバーには、誰一人として伝えて来ていない。

 

他ファミリア間において、主神を通さないでこのようなことをするのは不味い。そんなことアイズとて、ベルとの訓練で分かっている。

 

……それでも強くなりたい。どうしても目指す場所(いただき)があるんだ。

 

そしてアイズは意を決して顔を上げ、口を開いた。

 

「私と…、付き合って下さい!」

 

「お断りだ」

 

……出てきた言葉には大事な部分が抜けていた。

 

強くなるために師事を、あわよくばあの謎のスキル(・・・・・)の習得方法。それをお願いしたかったのだが…。

 

天然娘アイズやらかす。

 

そしてアイズはガガーンと、ショックを受けた。

 

ーーーーーー

 

「な、何で…」

 

建物の影。そこからギルドの前の広場の、二人の金髪の男女を覗き見ていたエルフの少女は、今の出来事が信じられないといった風に、かすれた声を出していた。

 

エルフの少女ーーーレフィーヤは、ホームの館を一人でたアイズの後を、追って来ていた。

 

「アイズさんが…、そんな…」

 

最早驚きで言葉が続けられなかった。自らが崇拝する者が言った言葉にだ。

 

ズガァーンッ!と極大かつ幻想の雷がレフィーヤの頭部天辺に炸裂した。途方もない衝撃を被った全身は硬直し、真っ白になった。

 

しかし、レフィーヤは再起した。それは今回の遠征で心身とも強化されていたから。小鹿のように震える体に活を入れ、体に炎を灯す。

 

噴水の縁から立ち上り何処かへ行く金髪の男。その後に続くように、憧れのアイズも後を追っていた。

 

……アイズさんに告白されて断れる人なんていない。でも…。

 

レフィーヤの目にはあの二人がほほ笑み合うカップルにしか見えていなかった。

 

……あれはあの男の何らかの策略だ。魔法か何かを使ってアイズさんをたぶらかしているに違いない。

 

ーーー助けなくちゃ。

 

あの男からアイズさんを守れるのは自分しかいない。変な決意がレフィーヤの体の中を駆け巡る。

 

そして、その光景を見ていた人物(ストーカー)は彼女一人ではなかった。

 

ーーーーーー

 

バベルの塔。その中の一室。眼下の光景を見ていた女神は薄く笑っていた。

 

「ふふっ、あなたが何者なのか教えて貰おうかしら」

 

それは人を惑わす妖艶な女神の笑み。そして、娯楽(たのしみ)を見つけた神の笑み。

 

そして視線を横に向け、そこに佇む自慢の眷族に指令を下す。

 

「機を見て接触しなさい。そして彼が何者なのか、私に教えて。少しばかり手荒(・・)にしても構わないわ」

 

了承の意を答えた男は、その双眸を眼下の金髪の男へと向ける。

 

その者はこの都市で唯一人、頂きに立つ男。

 

都市最強の冒険者。たった一人のLv.7。

 

猛者(おうじゃ)』ーーーオッタル。

 

 

 






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