1人ブラブラするギル。
二人は別行動していた。
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「エイナとやら、金塊を換金したいのだが、どこにいけば良い?」
「…金塊って…あなたそんなの持ってるの?」
無論。ギルはそう返した。
ベルがホームに戻ってから、ギルはダンジョンを出てギルドに戻っていた。
そして、エイナを見つけて金塊を換金したい旨を伝えた。
……何を疑っている。王たる我が金塊を持っていても不思議ではなかろう。
エイナはギルがまたこのギルドに戻ってきて金塊を売りたいと言うことに疑問を持っていた。
なぜなら今のギルは手ぶら…確かに駆け出しの冒険者達が当面のお金を工面するのに、物品を売るのはあることにある。が、その売りたいものが金塊である。
……どう見たって持ってないでしょ…エイナはそう言いたかった。
が、この人の相手をするのは疲れると朝の時にわかったので、いちいち相手にしないで素直に伝えることにした。…たちの悪い冗談だとエイナは思っていた。
「はぁ…そこに換金所があるから金塊でも換金してくれるわよ」
そう言いエイナは、ギルド内にある換金所を指差した。ギルはそれにわかった、と告げ去っていた。エイナもギルが去っていたのを見て自身の仕事に取りかかった。
が、しばらくしたら換金所から悲鳴が上がりギルドにいる人物達はその悲鳴の上がった方向を見た。
悲鳴が上がった換金所、その相手ーーーギルを見てエイナはまた面倒ごとだと思って溜め息をついた。
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「べ、ベル君僕の言い方が悪かった!そうだよねベル君は昨日冒険者になったばっかなんだよね、…すごいじゃないか、冒険者になった次の日にゴブリンを倒すなんて!」
「誉めなくて良いですよ神様…。またダンジョンに戻りますから…」
「わ、わーっ、わーっ!?待つんだベル君そんな急いだって、いいことないよ、落ち着きなよ!?」
ヘスティア・ファミリアのホームでは、ベルがゴブリンを倒した報告をしに戻ってきていた。
……確かに冒険者になったばっかりだからモンスターを倒したのは嬉しいんだろうけど、…ゴブリン一匹じゃなぁ…。
ヘスティア・ファミリアは新興仕立てで、お金が全くない。なので、今日からダンジョンで稼いでくると息巻いて出ていったベルが、ゴブリン一匹倒しただけで戻ってきたことに少し落胆した。
……まぁ一緒に行った王様君は恩恵を与えてないのにダンジョンに入ったことにビックリした。
あの子、結局名前を教えてくれと頼んだら、「我は王だ!それ以上も以下もない」とか言って教えてくれなかったため、ヘスティアはとりあえず王様君と呼んでいた。
……まぁ今の状態のベルがダンジョンに戻ったらそれこそ無茶してモンスターにやられちゃうかもしれない。
お金を稼ぐのは今日は諦めて明日からまた、頑張ろう、そんなことを僕は思った。
「ベル君!もうダンジョンは良いよ、それより今日は正式に冒険者になったからパーティーしようよ!」
「……神様…。申し訳ないんですがパーティーの準備をお願いします。僕は今からまたダンジョンに戻るので…」
「ス、ストーップ!?待ちたまえベル君君も一緒に準備しようよ?そうだよ、今から僕たち二人でパーティーの準備して王様君を驚かそうよ!そうすれば王様君も喜ぶよ!」
僕はそう言って、今にもダンジョンに行きそうなベル君をひき止めながら言った。
王様君を引き合いに出したのがこうをそうしたのか、ベル君は渋々了承してくれた。
「それで、神様パーティーの準備と言っても僕余りお金も持っていないですよ…」
「ふふーん!何と君たちがダンジョンに言ってる間僕は買い物してきて、パンと玉子を買ってきているのだよ!今日はパンも玉子も全部使って豪勢にいこうよ!」
「ほ、本当ですか神様!?…でもそうすると明日からが…」
「そこはほら、明日から君が頑張ってくれればいいんだよ」
「……そうですね、わかりました神様!僕明日から頑張ります!」
じゃあ準備しようか、そう言い神様は買ったものを料理し始めた。僕は装備を買った残りのお金でパーティーの飾り付けるための材料を買いに行った。
……結論から言うとほとんどお金が残ってなくて折り紙ぐらいしか買えなかった…。
神様はこういうのはお金じゃないよと言っていたけど、王様は王様って言われるくらいだからこんなショボくちゃ怒るだろうなぁ…
僕は内心でそう思いながら飾りつけを行った。
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「今帰ったぞベルよ!王の凱旋である!」
「あっ、お帰りなさい王様」
「戻ってきたのかい王様君?お帰り!」
時刻は夕方、王様はあれから何をしていたのか、今帰ってきた。
「ふむ、ちゃんと返事があるか…して何故部屋の様相が変わっておるベルよ?」
「ふふーん!今日はベル君が正式に冒険者になったからパーティーするんだよ王様君!」
「ほう、なかなかどうしてわかっておるではないか墮神!我もそう思っていたぞ」
「だ、墮神!?ひどいね王様君!」
「お、王様ー!墮神はいくらなんでもひどいですよ!」
呼称などどうでもいい。ギルはそう言い捨てホームに唯一あるソファーに腰かけた。
「そ、それで王様…。どうしてこんな遅かったんですか?」
「何、貴様らと一緒の理由だ」
一緒?ベルは手ぶらで帰ってきたギルに疑問を抱いた。が、詳しく聞こうと思ったその時キッチンから神様が料理を持って戻ってきた。
「じゃじゃーん!お待たせ!じゃあパーティーしようよ!」
「は、はい!じゃあ王様こんな貧相なパーティーですが、よろしいですか?」
僕は、王様に内心びくびくしながら尋ねた。…やっぱり怒るかなぁ、と思っていたのだが。
「何を言うベルよ?貴様が精魂尽くして準備したのだ、それに文句を言うほど無粋ではない。逆に誉めて遣わすぞベルよ、我の心情をきちんとわかっていたのだから」
王様はフッと、笑いながらそう言ってくれた。…やっぱり王様はやさしいなぁ…僕はほめられて嬉しかった。
神様もねっ、と僕に微笑んでくれた。
そして乾杯ーーーまぁ普通の水だが、しようとしたとき王様が、しばし待て。と、待ったをかけた。
神様と僕は首をかしげ、グラスを置いたとき、すいませーん、と教会の外から声が聞こえた。
…?なんだろうこんな時間にこんな場所に来るひとなんかいるのかな?
僕はそう思い神様の顔を見た。神様も同じでようで、誰だろぅ?と言っていた。
逆に王様はすたすたと、教会の外に出ていった。…王様には知り合いがいないはずだから、謎がますます広がった。
しばらくすると、王様が戻ってきた。
その両手に何かの箱と瓶を持ってきて。
「せっかくベルが冒険者になったのだ。我からベルにこれをやろう!」
そう言って、王様はその手の箱をテーブルに置き、ふたを開けた。
ーーー中から出てきたのは美味しそうなイチゴのホールケーキだった。
「お、王様ー!これどうしたんですか!?」
「王様君これどうしたんだい!?」
僕と神様二人揃って声をあげた!…王様はお金を持ってなかったはずじゃあ!?
「我もここでは、金がなかったからな、我が宝物庫の中身を売ってきた。それではパーティーをするとしようか!」
そう言って王様は水を戻し、買ってきた瓶から飲み物を入れ直した。
……王様…僕のためにお宝を売ってくれるなんて…僕は泣きながら三人で乾杯した。
神様も意外そうだったのか、最初は驚いていたけど、王様が僕のためと言う理由を聞いたとき微笑んでいた。
安物のパンと玉子も美味しく感じたし、何より王様が買ってきてくれたケーキは泣くほど美味しかった。
この日のパーティーは本当に楽しかった。