3人のラビットファミリー   作:シロイルカ

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1話

ある夏の日。

私、香風智乃は、普通に家で夏休みを過ごしていました。

最近は、どこかへ行く用事が出来ないので、部屋の中でクロスワードやパズルでもしています。

でも、私は正直それでいいのです。

 

すると、

 

 

ガチャン

 

と、玄関を開ける音が聴こえました。

バイトはお休みだから、お客さんじゃないはずだし、ココアさんでも帰ってきたのかな?

 

「誰かいないのかー?」

 

いや、これはココアさんじゃない。どう考えても男性の声だ。

お父さんは元々家ににいるから違うし…………お休みの日を勘違いして、お客さんが来てしまったのか?

でも、どこかで聴いたことのある声。

そのような声の人がいたか、私は冷静になって考えてみた。

 

「んー……………………はっ! もしかして…!」

 

誰が来たか大体を検討して、慌てて玄関へ向かうと、

 

「なんだチノ。いたんじゃないか」

 

「………お、おおおおおお兄さん⁉」

 

そう、玄関の音の正体は、私の実の兄である香風孝史だった。

 

「あれ? お前が動揺するなんて珍しいな………もっとクールなやつだと思ってたのに」

 

「さすがに、いきなりお兄さんが来たらビックリしますよ!」

 

「だよな? にしても、ここに来るのは何年ぶりだっけ?」

 

「お兄さん。私が小4の時に出ていったので、ちょうど四年ぶりですよ?」

 

 

「ああ、そうだったな? 久しぶりすぎて、親父とじいさん、どっちから挨拶しよう?」

 

……お兄さん。早速その事を言わせるのですか。

 

「……チノ?」

 

「あ、すみません。その、お父さんはいますが、おじいちゃんは……」

 

「じゃあ、親父から先に挨拶を……」

 

「そうじゃなくて…! お父さんとおじいちゃんは今、両方家にはいないと言いますか、おじいちゃんはもう、亡くなってしまったので………」

 

「……嘘だろ?」

 

「私も、最初の時はそう思いました。ですが……」

 

「…………」

 

どうしよう。

いくらなんでも、この話は唐突すぎましたでしょうか…?

お兄さんが黙ってしまいました。

 

「……そうか。俺が、もっと早くに帰ってこれば……」

 

「……お兄さん……」

 

なんだか、今度はお兄さんが可哀想になってきました。

……でも…!

 

「お兄さんは、決して悪くなんかないですよ」

 

「……チノ」

 

「お兄さんは、向こうの方でも頑張ってきたんでしょう? おじいちゃんはきっと、そんなお兄さんを、天国で見ていたはずです」

 

私は、自分を責めるお兄さんの手を優しく握りながら、そう伝えた。

 

「……チノ……」

 

お兄さんも、温かい表情になってきました。

 

 

すると、

 

「誰この人⁉」

 

ヤ、ヤバいっ…!

このタイミングで、ココアさんが帰ってきました。

よりによって、ココアさんにこんなところを見られてしまうなんて……

 

「コ、ココアさん。これは……」

 

なんて対応をすれば……

 

「ココア? この人、チノの友達なのか?」

 

「い、いえ。友達といいますか……」

 

「チノちゃん! この人とどういう関係なの⁉」

 

「ええ⁇」

 

ああもう、混乱してしまいました……

こうなったら、唐突でも言うしかないです…!

 

「ココアさん! この人は、私の実の兄の、香風孝史です!」

 

「そうなの⁉」

 

「お兄さん! この人は、ここのバイトのココアさんです!」

 

「マジで⁉」

 

「だから、これでわかりましたか?」

 

「………………」

 

あれ? 沈黙が続く……

さすがに驚いているのかな…?

 

『……ああ、これはどうも』

 

いや、意外と普通だったみたいです。

お互い、挨拶しながら握手までし合っていますし。

 

「いつも、チノがお世話になっています」

 

「いえいえ。それはこっちの方ですよ」

 

というか、意外と気が合うのでしょうか?

でも、確かに、私とココアさんって性格が反対だし、お兄さんともそんなに……

 

「って、バイトの子がいるってことは、もしかしてチノも?」

 

「気づくのが遅いですよ」

 

「もう一人の子も合わせて、バイトさんは全部で三人いるよ♪」

 

「……なんか、俺がここにいない間、随分と変わったな」

 

「……お兄さん……」

 

お兄さんは、ここの雰囲気や環境が変わって嬉しいのでしょうか?

それとも、寂しいのでしょうか…?

 

 

「……そういえば、お兄さんはなぜここへ?」

 

「チノ。お前も気づくのが遅いよ。まあ、簡単に言えば、向こうの仕事で上手くやれなくてさ?」

 

「やめちゃったの?」

 

「まあね? だから、自分の家というか、このラビットハウスに戻ってきたんだよ」

 

「連絡くらい、くれればよかったじゃないですか」

 

「いや~しにくくてさ?」

 

「いきなりやって来る方が気まずいと思いますが」

 

「じゃあ、これから香風家で暮らすことになるのですか?」

 

「多分、そうなるはず。………多分な?」

 

「多分?」

 

 

「いや、実は親父にすら言ってないからさ? 向こうでの仕事を辞めたことと、ここに来ること」

 

 

……えっ…?

 

「だから、本当に許してくれるか心配で……」

 

「……お兄さん。さすがに、お父さんには前もって言った方がいいですよ?」

 

「だよな?」

 

「なら、私達も一緒に言おっか?」

 

「いや、それは俺だけで言うよ。確かに緊張はするけど、自分で言わなくちゃいけない気がするからさ?」

 

 

そう言うと、お兄さんは「親父の部屋へ行かせてもらう」と言いながら、ここを去っていった。

すると、

 

「チノちゃんのお兄さんって、カッコいい人なんだね?」

 

「そ、そうでしょうか?」

 

て、私ったら、何照れているんだろう…?

いくら、自分の兄が「カッコいい」って言われたからって……

 

 

 

 

「ここが、親父の部屋だっけか?」

 

そう呟きながらもノックをすると、

 

「チノか? それとも、ココア君か?」

 

親父からはそう返事が返ってきた。

まあ、俺が来たことは知らないしな。

……よし!

 

「親父、俺だ」

 

「……この声は、タカシか?」

 

「ああ。帰ってきた理由が話したいから、部屋へ入ってもいいか?」

 

「……いいよ。入りなさい」

 

許可が出されると、俺は、緊張でわずかに震えている手で部屋のドアを開けた。

すると、

 

「いらっしゃい。久々のお客様」

 

……つまり、「お帰り」という意味だな?

 

「ああ。ただいま」

 

「ここに座りなさい」

 

俺は、親父が指を差した椅子に座った。

 

「それで、孝史はなぜ帰ってきたんだ?」

 

……よし、恐れずに言うぞ!

 

「……実は、向こうでの仕事が上手くいかなくて、チノや親父も心配してるんじゃないかと思ったから…………逸そのこと、このバーで働こうと思って」

 

「………………」

 

さあ、どんなに辛いことを言われてもいいから、親父、答えてくれ……!

 

「タカシ、お前はもう大人だ」

 

……大人だから、そんなに甘いことはさせないって?

 

「タカシは、もう私と同じ大人だから、自分のことは自分で決めなさい」

 

「親父……」

 

「バーで働きたかったら構わないし、またここで住むことになれば、チノも喜ぶだろうしな?」

 

……親父は、俺が思っていたよりも優しい人だった。

というか、俺が勘違いしていただけなのかもしれないな?

すまない、親父。そして、

 

「ありがとう、親父」

 

 

 

翌日

いつものように起床すると、今日からは、私、ココアさん、お父さん、そして、お兄さんの四人での朝食になります。

 

「そういえば、チノちゃんのお兄さん」

 

「ああ、タカシでいいよ」

 

「じゃあ、タカシさん。昨日、お父さんにわかってもらえて良かったね♪」

 

「ああ。俺、もう22歳だから、親父には、『大人なら自分で決めなさい』って言われて。だから、今日から親父とバーで働くつもりだよ」

 

「そっか~♪ それなら、毎日タカシさんの様子を見に行かなきゃね?」

 

「その時間帯は、もう寝る時間ですよ?」

 

「でも、夏休みだよ?」

 

「夏休みだからといって、睡眠時間は変わったりしません」

 

「……相変わらずだな、チノは」

 

「そうなの。チノちゃんったら真面目すぎるから……」

 

「そうじゃなくて……」

 

『?』

 

「相変わらず、野菜は苦手なんだな? 特にセロリは」

 

「……///」

 

お兄さん、わざわざそんなことを覚えているなんて……

 

「そ、そんなことないですよ……!」

 

「でも残してるぞ?」

 

「……あ、後のお楽しみで、取っておいてあるだけです!」

 

「おいおい。嘘が下手すぎるぞ?」

 

「う、嘘なんかじゃ……」

 

「……でも、二人はすごい仲良しさんなんだね?」

 

わ、私とお兄さんが⁇

 

「まあね?」

 

「お、お兄さん…!」

 

「違うのか?」

 

「……違うと言いますか、その……」

 

でも、私がすごく幼い頃は……

 

 

 

チノ(6歳)

 

「なあチノ」

 

「なんですか?」

 

「お兄ちゃんが、今からチノにクイズを出そう!」

 

「……クイズ?」

 

「チノ。1+1は?」

 

「……2ですか?」

 

「正解! じゃあ、2+2は?」

 

「……4ですか?」

 

「……正解。だけど、せっかく間違わずに答えれるんだから、『ですか?』なんて聞かないで、もっと自信持って答えてみなよ」

 

「…………」

 

「だって、チノはこの俺の妹なんだからさ?」

 

「……はい…!」

 

 

 

ああ、思い出すと、なんだか恥ずかしいです……

……でも、やっぱり、昔は仲良かったのかもしれませんね。

 

……じゃあ、今はどうなんでしょうか?

お兄さん自信は、「今でも仲良し」って言っているけど……

私は、今のお兄さんと、上手くやれるのでしょうか…?

正直、そこが心配なのです。




2話へ続きます。お楽しみに!
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