ほのぼの回。
甘くなったかな?
「時雨、買い物に行きましょう!!」
リニスを喚び出した翌朝、いきなりリニスが買い物に行こうと言ってきた。元気だね~夜はあんなに激しかったのに。
「どうし…………あぁ、服か」
「そうですね。馴染から服を借りられますけどいつまでも借りている訳にはいきませんし…………それに、胸が少しキツいですから」
あ~リニスと馴染ちゃんには胸囲の格差社会があるからな…………順番で言うとリニス>モード≧馴染ちゃんってところだな。まぁ目測だから性格には分からないけど。
「後はモードレッドにも服を買ってあげないと。折角可愛いのにTシャツとジーパンって…………」
「なんだよ…………楽だから良いじゃねぇか」
リニスが言った通りに今のモードの格好は白地のTシャツとジーパン。似合ってることは似合ってるのだが女目線では駄目なのだろう。
「買い物となると新都の方に言った方が良いな…………ちょっと待ってくれ」
二人に相違って部屋の隅に置いてあった金庫の鍵を開け、中にあった物を二つ取り出して二人に渡す。
「ん、小遣い代わりだ。二人とも現代の通貨は持ってないだろ?」
「持ってないですけど…………」
「お、おい、シグレ」
「どうした?あぁ、通貨の価値が分からなかったか?」
「いや、聖杯から知識もらってるから大丈夫ですけど…………流石に一人百万円は多いんじゃないですか?」
金庫の中にぎっしりと詰まっているのは札束である。その内の二束=二百万円を二人に渡したわけだ。
「いいのいいの、どうせ貯まるばっかりで使いきれていないのが現状だから。たまには使わないとね」
「貯まるばっかりでって…………シグレは今何をしてるんだ?」
「投資家、色んなところに投資して幾らかの利益を分けてもらってる。正直に言って寝てても金が入ってくる状態」
気紛れで貸したところが急に売れ出したりして俺の懐は常に暖かい状態のままなのだ。万が一に備えて幾らかを現金で持っているが銀行の口座にはまだまだたくさんあるんだよ。
「そいじゃ行こうか。新都まではバスで良いな?」
「時雨と行けるならなんだって大丈夫ですよ」
「バスか…………乗ったことが無いから楽しみだな」
「っと、そうだ。二人ともこれを持っててくれ」
出ようとしていたがあることを思い出して机の中から銀細工のペンダントを二つ出して二人に渡す。
「これは?」
「呪いか何かか?」
「隠蔽の魔術をかけてある。気配察知のスキル持ちなら誤魔化せないだろうけどそれ以外なら確実に目を騙せる自信はある。俺の力作だからな、大事にしてくれよ」
二人はサーヴァントなのだ。セイバーとアーチャーがまだ喚ばれてなくて聖杯戦争がまだだとしても、警戒しておいて損はない。
「ふふっ、もちろん大事にしますとも」
「始めてのシグレからの贈り物…………絶対大事にするから!!」
ペンダントを受け取った二人は嬉しそうな顔をしてペンダントを握り締めていた。どんな効果であっても、二人は俺からの贈り物ということで喜んでいるのだろう…………二人が喜んでくれるなら、俺も嬉しいが。
「他には…………大丈夫だな。行くか」
そうして俺達は新都に向かった。家から出るときに雁夜から止められた様な気がしたが馴染ちゃんがチェーンソーをフルスイングしてたのを見て口を閉じていた。
ありがとう、馴染ちゃん。
ごめんね、雁夜。
「さて、着いたな」
「ほわ~…………」
新都に着いて目に入るのはビル、ビル、ビル。その光景はブリテン二は無かった物なので余程珍しいのかモードは子供のように目をキラキラさせながらビルを見ている。
「どうだ、現代の感想は?」
「すげぇな!!さっきのバスも乗ってもそんなに揺れ無いし尻は痛くならないし、ここも見たことない建物ばっかりだ!!」
「ブリテンと比べたら見たことない物ばかりですからね」
ブリテンの頃なら高い建物があったとしても城とかしか無かったし、全体的には低い建物ばっかりだったからな。
「…………なぁ、後で良かったら高いところに登ってみるか?」
「良いのか!?」
「大丈夫だ、あそこのビルの持ち主とは知り合いだから。話せば許可はもらえるはずだ」
「行きたい!!」
「わーったわーった、連れていってやるけどまずは買い物からだな」
「確かこっちに服屋があったはずですからそこに向かいましょう」
「いつの間に…………って夜の内にか」
「えぇ、流石に細かいところまではともかく大雑把な地形は頭の中に入ってますから」
「シグレ!!リニス!!早く行こうぜ!!」
少し離れたところから元気よく手を振っているモード…………子供みたいだなとは思うがそれがモードらしいところなのだけどね。
「ふふっ、じゃあ行きましょうか」
「そうだな」
リニスの先導の元で服屋に向かう。リニスに案内された先にあったのはブランド物を扱っている新都でも有名な服屋だった。
「ここか…………始めて来るけど物は良さそうだな」
「馴染に聞いた店でもありますからね」
「すげぇ…………上等な服がたくさんある」
しげしげと服を眺めているモードは興味津々という具合だった。このまま服に興味を持ってくれればこちらとしても嬉しいんだがな。
「モード、こんなのはどうですか?」
リニスが手に取ったのはキャミソールとミニスカートという今の時季に合う物だった。
「スカートはちょっと…………あと肌が出過ぎだと思う」
「まぁ、モードの育ちがあれですからしょうがないですね、少しずつ慣れていきましょう。それだったらホットパンツと薄手の上着でっと。これならどうですか?」
「これなら…………大丈夫かな?」
「そうですか、それなら早速!!」
「えっ!?ちょ!?」
服を選んだかと思えばリニスはモードをつかんで試着室の中に入っていった。そして少し暴れるような音が聞こえる…………店に迷惑かけるなよ。
「ふぅ…………良い仕事しました」
「自分で着れるのに…………」
何故かツヤツヤした状態のリニスと少しヨレッとしたモードが試着室から出てきた。モードの格好は白いキャミソールの上から薄手の赤い上着を羽織り、下に履いているのは太ももが丸々出ているホットパンツだった。
「似合ってるじゃん。モードらしい格好だな」
「ほ、本当か?」
「オレ、ウソ、ツカナイ」
「なんで片言で喋ってるんですか、いきなり胡散臭くなってますよ」
「わざとだよ。似合ってるのは本当だから安心しな」
「…………えへへ~」
俺に誉められたことが嬉しかったのか、モードは顔を少し赤くしながら恥ずかしそうに微笑んだ。
「(なんだ、この可愛い生き物は?)」
『持って帰らなければ(使命感)』
「(こいつ…………頭の中に直接…………!!)」
『念話ですよ。生前にもやってたから驚くようなことでは無いでしょう?』
「(こっちじゃ念話するのは手間なんだよ。少なくとも前みたいに気軽にって訳にはいかないぞ。サーヴァントとの契約で出来たラインを利用すれば簡単だけど)」
『へぇ…………』
こっちの魔術とあっちの魔導との違いを知ったのかリニスは興味深そうにしている。が、すぐにその思考を中止して良い笑顔で俺の方を向いてきた。
「次は私の番です。時雨、感想聞かせてくださいね」
「ばっちこーい」
こうしてリニスとモードの服選びは進んでいき、店から出たときには大量の紙袋を抱えることになった。やっぱり女性の買い物は男が荷物持ちになるね。
~買い物の途中~
「おい、リニス。なんで俺は女性の下着売り場に連れられている?周りの女性からの白眼視が痛い」
「なんでって、それは時雨に私たちの下着を選んでもらう為ですよ♪」
「ガッティィィィィィィィィム!!」
「うわ黒色…………リニス凄いな」
「モードなら…………白とか合いそうですよ」
「せめて俺に聞こえないように話してください…………」
「いや~!!買いましたね」
「ちょっとした小山が出来るほどに買ったな」
「買いすぎじゃないか?」
「女の子の買い物はこんなものですよ」
「女の子(笑)」
「時雨、後で屋上ですね」
「おぅふ」
買い物を終えたは良いが荷物が多くなりすぎたので鶴夜を呼んで荷物を持って帰ってもらい、俺達は近くにあった喫茶店で休憩していた。後で鶴夜に酒を買って帰ろう。
「ご注文は御決まりですか?」
「珈琲」
「紅茶のミルクで」
「オレも珈琲」
「かしこまりました」
ウェイトレスが注文を聞いて帰っていくが…………モードって珈琲飲めたっけ?
「モード、珈琲大丈夫か?」
「む、オレのこと子供扱いするなよ」
「背伸びしたい御年頃にはよくあることじゃないですか」
「お待たせしました、珈琲二つと紅茶のミルクでございます。ごゆっくりどうぞ」
注文していた物が運ばれてきて俺は珈琲をブラックで一口飲む。うん、悪くないな。それを見たモードが俺の真似をして珈琲をブラックで飲んだ…………が、
「苦い…………」
「だから言ったのに」
「ほら、ミルクが付いてますからそれと砂糖を入れてください」
「うん…………」
珈琲の苦さが駄目だったのかモードは珈琲を飲んでウェッという表情で舌を出し、付けられていたミルクと砂糖を入れて飲み直した。
「…………まだ苦い」
「クハハッ、やっぱりモードには早かったみたいだな。俺は使わないから俺のを使えよ」
「ん…………」
モードの珈琲に俺の珈琲に付いていたミルクを投下。もはや珈琲ではなくカフェオレに近いものになった珈琲をモードは飲み直した…………今度は大丈夫みたいだな。
「ふぅ…………シグレはよくこんなの飲めるな」
「慣れたらモードも飲めるようになるさ。だけど缶コーヒーだけは駄目なんだよな。なんか口に合わなくて飲めないんだよ」
「まぁ缶コーヒーは好みが別れますからね」
「あ~…………外でタバコ吸ってくる」
「ここに灰皿ありますよ?」
「外ならともかく密室で吸わない奴とは吸わない様にしてるから。二、三本吸ったら戻ってくる」
急にタバコを吸いたくなった俺はリニスとモードを残して喫茶店の外にあった喫煙所に向かうことにした。
「…………なぁ、リニス。少し良いか?」
時雨がいなくなった席で、モードレッドがそう切り出した。
「なんでしょうか?」
「リニスってその…………シグレのことが好きなんだよな?」
「えぇ、そうですよ」
モードレッドの質問にリニスは一切恥じることなく答えた。リニスからすれば時雨が好きだということは隠すことではないので恥ずかしがることも無いのだ。
「だよな~…………夜にあんなことしたし」
「モードも最後の方はノリノリだったじゃないですか」
「あ、あれは!!その…………慣れたって言うかなんというか…………」
モードレッドは恥ずかしがりながらもそう答えた。モードレッドは時雨のことを好いている、その事はモードレッド自身も時雨も気づいている事実である。しかし、そこにリニスという存在が現れた。しかも喚び出されたその日にモードレッドを巻き込んでヤった程。
確かにリニスのことは気に入っているが、モードレッドはリニスのことを知らないのだ。
「なぁ、リニスってシグレとどう知り合ったんだ?」
「どうって…………元の主から捨てられて死にかけてるところを時雨に拾われたのが出会いでしたね。その後で時雨と過ごしていく内に少しずつ、時雨に惹かれていって…………気が付いたらもうベタ惚れですよ、ベタ惚れ」
「なんか凄いな…………」
「まぁはっきり言って時雨の存在は異質ですからね。それでも波長が合う存在だとその異質さに惹かれるんですよ」
「異質か…………確かにそうだよな」
そう、時雨の存在は大多数から見れば嫌われるような存在である。しかし、中にはリニスやモードの様にその異質さに惹かれるような者も現れるのだ。
「そう言えば、モードは時雨とどう知り合ったんですか?」
「オ、オレか?」
「教えてくださいよ~私のことは教えたのだからモードも教えてくれないと不公平です」
「…………面白いことでもないぞ?」
「それは私が決めることですから」
にっこりと微笑んでいるリニスに何を言っても無駄だと悟ったモードレッドは溜め息をつき、時雨と出会った時のことを話し出した。
リニスとモードレッド
波長が合うのか割りと仲は良い。リニスはモード、モードレッドはリニスと呼び合える程に。
時雨の職業
投資家。結構適当にバラ撒いているが結果としてプラスになって時雨の手元に帰ってくる。今では寝ていても金が入ってくる状態である。
銀細工のペンダント
時雨のお手製のペンダント。隠蔽の魔術がかけられており、それを持っていると気配察知に優れていないと気付けないほど。今回はリニスとモードレッドがサーヴァントだということを隠すために使用した。
新都inモードレッド
Apocryphaじゃ見られなかった光景をモードレッドに見せてあげました。ごらん、あれが都会の光景だよ…………
モードレッドの服装
Tシャツジーパンから変えました。イメージはApocryphaでのモードレッドの私服。
可愛いモードレッド
うちのモードレッドは可愛い路線でいきます!!戦闘ではキリッとさせます!!異論は認めません!!
下着売り場in時雨
リニスはノリノリで、モードレッドは恥ずかしがりながら時雨に選んでもらいました。時雨の精神はガリガリ削られていきます。
モードレッドとブラック珈琲
鼻から愛が溢れそうになりました。
リニスとモードレッド
時雨がいない内に時雨を愛している女としての話し合い。綺麗に纏められるかが作者の不安。
感想、評価をお待ちしてます。